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コレクションとは何か?

1.コレクションとは何か?
 
 ファッション専門学校では、一つ一つ作品を作ります。デザインをして、パターンを引いて、縫製して、作品を発表します。
 しかし、本来はコレクションを作ることが大切です。
 コレクションは「収集」の意味です。コレクションとは何かを集めることです。
 例えば、フィギュアを集めている人は、「フィギュアのコレクション」を作っているわけです。
 ある人は女性ばかりを集めるでしょうし、ある人はロボットばかりを集める。それぞれの人に個別のテーマがあります。
 コレクションを見せるということは、一つ一つの作品を見せるのではなく、コレクション全体のまとまりを見せています。全体の趣味やセンスが評価の対象になります。
 ファッションではこれが非常に重要です。ファッション専門学校では、一つ一つの作品を作っていくので、コレクションを見ても、個々の作品を見ます。コレクションを紹介する雑誌もコレクションの代表作を掲載するだけで、全体を紹介するわけではありません。最近は、ネットでコレクションの全作品が見られるようになったので、ようやくコレクションの構成や全体像が理解できるようになりました。
 全体を見て初めて、共通のテーマのようなものがうっすらと見えてきます。
 コレクションとは、デザイナーの将来予測であり、未来の解釈であり、未来への願望であり、未来に対する自分のビジョンでもあります。
 その未来のストーリーを表現するために、ショー全体を構成し、作品を並べます。
 なぜ、オープニングにこの作品を出したのか。なぜ、途中で少し異質な作品が出てきたのか。なぜ、最後の作品はこれなのか。それら全てに意味があります。意味もなく作品を出すことはあり得ません。
 
2.コレクションとファッションショー

 コレクションをファッションショーのことだと思う人が多いのですが、ファッションショーはコレクションを発表の方法の一つに過ぎません。
 コレクションを展示会で発表する方法もあるし、写真集で出すかもしれない。もちろん、WEBで発表することも可能です。
 とは言っても、ファッションショーは華やかですし、服を着て見せるという分かりやすい発表方法でもあります。
 但し、とてもコストが掛かります。そのコストに見合う効果があるかが問題です。


3.ファッション専門学校のファッションショー

 ファッション専門学校で行う新入生歓迎ショー、文化祭ショー、卒業製作ショー等は、ファッションショーですが、コレクションになっていないことが多いと思います。一人一人が作りたい作品を並べただけでは、コレクションと呼べません。
 もし、コレクションと呼ぶならば、まずテーマを決めて、そのテーマに基づいて皆が作品を作り、ショーを構成すべきです。全員の作品を並べることより、コレクションの質を高めることが目指す。そうなって初めて、コレクションと呼ぶことができます。
 そういう意味では、学校という環境の中でコレクションを作るのは非常に困難です。コレクションを作るには、一人の人間が全てに目を通し、コントロールしなければなりません。
 コレクションを作る作業は個人が基本になります。企業の場合も、デザイナーやクリエイティブディレクターという一人の人間が全てをプロデュースすることになります。
 
 
4.様々なコレクション

 デザイナーがデザインした服やアクセサリーでまとめたコレクションなら、デザイナーズブランドのコレクションということになります。
 あるいは、オリジナルの商品と仕入れ商品などを組み合わせて、一つのコレクションを作る。これはセレクトショップのコレクションです。ショップの品揃えもコレクションと言えます。
 古着を中心にしてコレクションを作れば、古着屋のコレクションになります。
 ファッション雑誌もある意味ではコレクションです。テーマに基づいて編集し、コレクションを作っています。読者は掲載された個々の商品だけでなく、雑誌のコレクションの趣味の良さやセンスを評価するのです。

5.白いシャツのコレクション

 少し具体的に考えてみましょう。
 例えば、シンプルな白いシャツからコレクションを作ると仮定します。
 最も一般的なのが、オーダーシャツの店に飾ってあるような、襟のバリエーション、カフスのバリエーションを組み合わせたコレクションです。
 普通の綿ブロードで作るか、超長綿の細番手のブロードで作るかによってコレクションのグレードが変わります。
 あるいは、ドレスシャツのシルエットではなく、オーバーサイズのシルエットにすることにより、個性的なコレクションを作ることもできます。
 別のアプローチとしては、素材のバリエーションでコレクションを作る方法もあります。
 シルクの白いシャツ、リネンの白いシャツ、ウールの白いシャツ、ナイロンの白いシャツ等で構成します。素材のセレクションがコレクションのテーマということです。
 シャツから出発して、プラスワンのコレクションを作ることもできます。
 例えばシャツと蝶タイのコレクション。無地のシャツにプリントやジャカード織のタイを合わせるのか。あるいは、プリントのシャツに無地の蝶タイを合わせるのか。プリントの柄を何らかのテーマで統一するのもいいと思います。様々なバリエーションが考えられる。
 あるいは、着用する人をテーマにしてみる。
 シンプルな綿の白いシャツだけど、親子で着用することを考える。お父さんが着るシャツと息子のシャツ。お母さんのシャツと娘のシャツ。おじいちゃんのシャツ、おばあちゃんのシャツ。それぞれのシルエットも素材やパターンも異なる。家族で白いシャツを着るというテーマでコレクションを作る。
 この場合は、どんな家族かがコンセプトになります。オーガニックな暮らしを大切にしている家族か、世界中に散らばっている家族か。あるいは、スポーツをしている家族、音楽家の家族かもしれません。その設定によって、コレクションの内容が変わります。
 以上は、ほんの一部です。コンセプトは無限にあります。服のデザインだけでなく、新しいコレクションのテーマやコンセプトを考えてほしいと思います。
 
6.デザイナーの仕事

 デザイナーの仕事は、「服をデザインすること」だと思っている人が多いけど、最も大切な仕事はコレクションのテーマを決めることです。
 もちろん、ここで言っているのは、コレクションを作るデザイナーの場合です。売れ筋商品をコピーするだけのデザイナーなら、テーマは不要です。また、ライセンスブランドもテーマはライセンサーから与えられるので、テーマを自分で考える必要はありません。
 こういう環境の中で、雑誌をめくりながら売れそうなものをデザインしていくというのは、本来のデザイナーの仕事ではありません。
 売上規模が小さいアパレル企業でも、少ない型数のコレクションは可能だと思います。10型でも20型でもいいので、コレクションとして発表する。そこに価値があります。
 先程、白いシャツに蝶タイを組み合わせるコレクションというお話をしましたが、蝶タイを作るデザイナーとコラボをしてもいいと思います。
 そして、共同で白いシャツと蝶タイの売り場を取っていく。あるいは、白いシャツと蝶タイのネットショップを立ち上げる。
 これをデザイナーではなくて、バイヤーが行うこともできます。新しいショップのコンセプトを決めて、それに見合うコレクションを設定し、商品を仕入れることでコレクションを完成させるのです。
 この時に、そのコレクションを顧客が求めているものなのか、を見極めることが重要です。作りたいものを作るのではなく、顧客が求めているものを作りたくなるのが、デザイナーやバイヤーの感性です。
 時代性とは、トレンドのデザインの服を出すことではありません。誰もが知っているコレクション情報やトレンド情報は既に過去のものです。それを追いかけたのでは、差別化もできません。
 時代と共に生きていく中で、時代に先駆けてコレクションを作っていくことが大切です。それが時代性を理解するということです。

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