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アパレル業界紙経営再建の提案

1.アパレル業界新聞の資産とは?

 アパレル業界新聞の生き残りについて考えたい。
 業界新聞の資産とは何だろう。良い記事を書く記者か。あるいは、新聞を購読してくれる読者か。それとも、広告を掲載してくれるスポンサー企業か。
 私はどれも違うと思う。業界新聞の最大の資産は業界内のネットワークとコミュニティだ。
 ネットワークとは、いつでも取材に行ける業界内の企業やショップが沢山あるということ。業界新聞が指定すれば、社長のインタビューだろうが、チーフデザイナー、トップセールスの営業や店長、最も成績の良い販売員など、あらゆる人を取材できる。
 コミュニティとは、業界内のコミュニティは無数にあり、そこで様々な情報交換が行われていること。しかし、業界内コミュニティに、業界新聞が関与しているとは限らない。その意味では、潜在的資産ということになろうか。

2.購読収入、広告収入は減少

 業界新聞の主な収益源は購読料と広告料である。購読料収入は減少傾向にある。昔は、アパレル企業では必ず業界新聞を取っていたし、社員個人でも購読していた。しかし、現在は個人の購読も減っているだろうし、企業の購読も減っていると思う。
 これを増やすには、独自のコンテンツが必要である。スマホで検索して確認できるような、プレスリリースを紹介するだけの記事では有料で購読する意味がない。
 購読者が減少すると、広告媒体としての価値も下がる。更に広告数が減るだろう。
 更に、業界紙の広告には根本的な問題がある。業界紙の読者層は業界人である。したがって、広告も業界人向けの業種に限定される。
 海外生産が主流になると、紡績や合繊メーカーの販売先は海外になる。日本国内限定の業界紙に広告を出しても効果がないのだ。
 同時に、アパレル企業は製造卸から製造小売に業態転換している。昔は小売店向けの広告にも意義があったが、製造小売業のアパレル企業にとって意味のある宣伝媒体とは消費者向けの媒体なのだ。
 

3.ファッショニスタとインフルエンサー

 業界紙の経営改善には、購読料収入と広告収入の拡大が必要である。
 購読料収入を上げるには、読者層を拡大することだ。アパレル製造小売業が主流となった現在、アパレルが最も重要視している優良顧客の情報を紹介しなければならない。
 それをファッショニスタというならば、毎日ファッショニストを取材すべきである。
 もちろん、インスタをチェックしてインフルエンサーにアプローチすることも重要だ。
 ファッショリスタ、インフルエンサーの双方は、ファッション業界紙から取材の申し込みを受けて、悪い気がするはずがない。まず、通っているショップ店員へのアピールになる。
あるいは、その人達が好きなブランドとタイアップして、商品をプレゼントしてもいいだろう。
 こういう記事が掲載されれば、ファッショニスタやインフルエンサーをチェックするためにも業界紙を購読することになる。大量のインスタをチェックするのも大変である、もし、インスタを編集し、常に人気ランキングが分かるような紙面ができれば、注目されるはずである。更に、週刊より日刊の強みもある。
 「業界紙とはこんな紙面作りでいい」という思い込みを捨てて、全く異なる紙面を作ること。それにより、大量の情報を蓄積することこそ、新聞社の資産につながる。新聞社の資産は取材力ではない。情報の蓄積なのだ。
 

4.海外企業からの広告を

 紙面が変われば、広告も変わる。ファッショニスタ、インフルエンサーが紙面に登場するならば、彼らが身につけているブランドの広告とのタイアップも可能である。
 更に、重要なことは、そんなブランドを展開するアパレル企業にアピールしたい企業の広告を取ることである。
 例えば、中国やASEANの縫製メーカー、雑貨メーカー、テキスタイルメーカー、輸出企業、商社等の役に立つ情報を取材し、それと共にタイアップの広告を掲載する。
 もし、紙面が刷新され、日刊のファッション雑誌の要素が入ってくれば、日本市場に進出したい海外企業からも広告が取れるだろう。

5.情報収集のためのコミュニケーション

 ファッショニスタやインフルエンサーのインタビューだけでなく、常にファッショニスタの情報収集を行うことが、業界紙経営再建のポイントになる。
 たとえば、ファッショニスタの情報を集めたければ、セレクトショップ、ブランドショップの優良顧客情報を収集することだ。それには、常にショップの販売員とのコミュニケーションが欠かせない。
 例えば、謝礼を支払ってでも、定期的なアンケートを行うことはできないのか。販売員とのコミュニケーションから得られるものは大きい。生の人や商品、売上の情報が得られる。それには、継続的なコミュニケーションが重要になる。会社の社長のコメントよりも、販売員からの情報を編集した方が読者には参考になるはずだ。
 例えば、東京に100人の匿名販売員ネットワークを作ることはできないのか。自分が情報を発信すれば、それらをまとめた情報がフィードバックされる仕組みを作る。
 海外企業からの広告を取るためには、日本の展示会に出展した企業をリスト化して、定期的にコミュニケーションを取ることから初めてもいいだろう。そして、広告出稿の受け付け体制を構築するべきである。
 このように、あるべき新しい業界紙を想定し、それを実現するために社内の組織改革や意識改革を進めていくことが、経営再建につながると思う。

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