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日本貧困化のメカニズム

1.米国民主党政権による中国ビジネスの拡大

 1998年、当時のクリントン米大統領が訪中した際、同盟国であった日本に立ち寄らずに帰国した。当時はこれをマスコミは「ジャパンパッシング」と表現した。ジャパンバッシング(日本叩き)の次は、ジャパンパッシング(日本素通り)というわけだ。
 なぜ、クリントン大統領は日本に立ち寄らなかったのだろう。それは、ウォール街による中国投資ビジネスが興味の中心であり、そこから自身も巨大な利益を得ることができるからだ。
 当時の日本はバブル崩壊の影響で不況に喘いでいた。バブル経済の時には、アメリカ企業、アメリカの不動産を買い漁っていたが、それが米国政府の反感を買ったことは間違いない。現在の米中対立を見ていると、かつての日本を見るようだ。
 しかし、日本の好景気は計画的、戦略的に潰された。1987年のリゾート法で無駄な投資を膨らませ、1990年の総量規制で一気にバブルを崩壊させた。バブル崩壊時にババをつかんだのは個人投資家であり、外国人投資家は日本を売り抜けた。この結果、日本は膨大な資産を一気に失った。
 クリントン大統領の態度はあからさまだった。金を生まない日本には興味がない。これから金を生む中国こそ、重要なパートナーであるという認識だった。
 そして、米国民主党政権は中国のWTO加盟の後押しをし、中国企業の米国での上場の便宜を図った。そして、ウォール街は中国投資に力を入れた。
 日本政府も日本商社と共に中国投資を猛烈に推進した。
 日本の衰退と共に、為替は円安に転じ、輸出産業は好景気となったが、消費者にとってエネルギー価格が上がり、デフレスパイラルで日本市場は収縮し、収入も下がっていった。
 豊かになった中国人観光客は、貧しくなった日本に旅行に来て、きれいな空気と物価の安さ、最高のもてなしを楽しんだ。
 

2.トランプ大統領誕生と戦後レジーム脱却

 米国トランプ大統領の登場は、この流れを変えた。トランプ大統領は、最初からウォール街の国際金融資本やグローバリストこそ、貧富の格差を生み出し、世界に戦争を拡散させていることを見抜いていた。
 そして、米国が中国を支援して、共産主義から民主主義に転換するのを待つという戦略は間違いだったと認めた。中国とのデカップリング政策を進めていった。
 一方、日本の安倍首相は「戦後レジームの脱却」を政策に掲げていた。この政策の定義は曖昧だが、気分としては「戦後、米国に押しつけられた体制を変えたい」というものだろう。そして、憲法改正により軍事力を高め、国として自立したいと考えている。
 トランプさんも日本が軍事力を増強するのは賛成している。彼は基地を縮小し、米軍を撤退したいのだ。
 同時に、中国の脅威という点で両者は共通していた。安倍さんとトランプさんの性格という個人的な理由だけではなく、両者が話し合う中で、中共と民主党、グローバリストという共通の敵が見えてきたのではないか。
 互いに一国の代表なので、公的な発言はできないが、国内外に共通する敵対勢力を見いだしたのだと思う。
 マスコミが執拗に個人攻撃してくるという点でも両者は共通している。その背後の中共マネー、あるいは国際金融マネーの存在も共通認識していたに違いない。
 この流れは現在も継続している。
 

3.対外資産世界一の日本、負債世界一の米国

 アベノミクスは、株価を上げることで景気回復を目指す政策と言われているが、株価は上がったものの、景気は回復していないし、デフレ脱却もできていない。
 日銀の異次元緩和、マイナス金利、国債の買い入れによって、通貨発行量は増やしているはずだが、なぜかデフレ脱却にはほど遠い。赤字国債を増やすと、ハイパーインフレになると脅かす学者も多いが、デフレ脱却もできないのに、なぜハイパーインフレになるのか理解できない。
 デフレ脱却できないのは、通貨の流通量が増えていないからであり、誰も銀行借入をしないからである。銀行は、バブル時に無理やり資金を貸し付け、バブル崩壊時に「貸し剥がし」を行った。それで倒産した企業は多いし、その時の恨みと不信感は簡単に消えるものではない。だから、銀行から借り入れをしないのだ。
 「資金調達は直接市場から行うもの」であり、「ビジネスとは投資である」という考え方が広まっている。これは個人も大企業も同じだ。
 結局、日銀が発行した円は投資に回っている。大量の資金が個人や法人に流れ、それが消費に回れば、インフレ圧力が増す。
 しかし、大量の資金が。株や債権市場に流れれば、株価が上がる。株価がインフレになっても誰も困らない。むしろ、喜ばれるのである。
 米国はコロナ対策でドルを刷りまくっているが、誰かが米国債を購入しなければ、ドルは刷れない。米国債や米国の債権を世界一所有しているのは日本である。日本の対外資産は世界一だ。そして、対外資産赤字の世界一は米国だ。
 しかし、日本の対外資産は使えない。債権を売却すれば、債権の価格が下落する。大量にドルを売れば、ドルの価値が下がり、対外資産の価値も下がってしまう。
 日銀が刷った円は対外資産に変わっている。日本の対外資産は使えず、アメリカは借金してその金を使っている。
 

4.金融商品によるリスクの付け替え

 中国は不動産バブル崩壊の危機を迎えている。中国人は資産の多くをマンション等の不動産投資に回している。しかし、供給過剰であり、不動産価格は下落している。
 自分の資産を運用するだけでなく、銀行から頭金を借り入れ、投資としてマンションを購入しているのである。
 もし、不動産バブルが崩壊すれば、住宅ローンとして貸し付けていた中国の銀行は倒産してしまう。
 しかし、これらの債権を分散し、ハイリスクハイリターンの金融商品として販売すれば、銀行のリスクはなくなる。この手法を指導しているのは、ウォール街である。
 同様のことは米国でも行われている。簡単に貸し付けを行い、その債権を分割して、金融商品の中に隠してしまう。
 日本の年金等を運用する投資家は、利益を確保するために、高利回りの金融商品を大量に購入している。その中身は中国の不良債権かもしれないし、米国の不良債権かもしれない。
 もちろん、危ない債権を購入するわけはない。投資家は格付けを信用して金融商品を購入するのだ。しかし、格付け機関は民間企業であり、国際金融資本がコントロールしている。
 高い格付けで金融商品を大量に販売し、その後投資不適格な格付けがなされれば、投資家は売却せざるを得ない。しかし、買い手がつくはずがない。
 あくまで仮定の話だが、コツコツ日本人が働いて溜めた年金や預金が不良債権に化けてしまう可能性があるのだ。
 中国の不動産バブル、米国の株バブル、債権バブルは、必ずいつか崩壊する。そして、その影響は確実に日本が被ることになる。
 更に、日本の投資家が海外の高利回り金融商品を買いあさっている中で、米国、中国の投資家は、日本の不動産や株式を買いあさっている。これらの利回りは良くないが、安定資産としての価値がある。
 日本は不良債権を買い取り、米中資本は日本からの借金で日本の資産を購入している。この循環を断ち切らない限り、日本はどんなに働いても貧しくなる一方であり、働かないで簡単に借金した連中が贅沢と安定を手にすることになるだろう。
 

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