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【百人一首鑑賞】千早ぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは 業平

季節が全く違うのですが、映画の公開も近いですし。そして、「ちはやぶる」という枕詞の魔法にかかっている私の個人的なこだわりもあって、今日はこの和歌をみなさんと味わってみたいと思います。

作者。平安のプレイボーイ、在原業平

古典の時間に習った「伊勢物語」の主人公とされている人ですね。父方母方ともに家系をさかのぼれば天皇にいきつくという、高貴なお家の出のお方です。伊勢物語では、好いた女性を都から連れ出して、雨宿りした廃寺の中に閉じ込めておいた思い人を鬼に食べられる?話があったと思います。子供のころから恵まれた環境に生きつつも、成人となってからは恋に生きた男性だったのでしょうか。もしくは、仕事面でうまく昇進しなかったことを悔いてのことであったのか。今も昔も、男性の人生には共通するものがあるように感じます。業平は和歌も上手で、六歌仙・三十六歌仙のひとりでもありますが、今回は和歌を味わうことに主眼をおきたいので、功績についてはさらっとだけ触れました。

和歌「千早ぶる」を味わう。

千早ぶる神代もきかず龍田川 からくれなゐに水くくるとは

(詠んで味わう)ちはやぶる かみよもきかず たつたがわ からくれないに みずくくるとわ

和歌は詠むことで味わうことができると思います。そのため、和歌をすべてひらがなで表記してみました。

■現代語訳

不思議なことが起こっていたという太古の神の時代でさえもこんなことは聞いたことがない。一面に紅葉が浮いている龍田川が、真っ赤な紅色に水を染めているとは。

■語句解説 

・ちはやぶる…「神」にかかる枕詞。

・神代(かみよ)…太古の神々の時代。

・水くくる…水で絞り染めする。

言葉で撮影する。

竜田川は確か紅葉の名所だと古典の時間に習いました。紅葉の季節になると日本人はその美しさに心を奪われます。紅葉狩りという季語もあるぐらいですから自然にうまく癒されている民族でしょう。

だれだって美しい景色をみると心が動きます。今だったら、美しい風景を見て感動するとスマホやデジカメで写真を撮影し、インスタやface bookにアップ、というところでしょうか。

昔の人は、カメラなんてありませんから、言葉で撮影したのですね。写真の上手下手もあるように、和歌も上手下手があったことでしょう。仮に業平が平成の御代に生きていたとして、カメラマンになっているような気もします(笑)

「ちはやぶる=千早振る」の響きと威力

ちはやふる。漫画や映画の題名になるくらいですから、印象に残る言葉です。韻が良い、というか、一度聞くと忘れられない。千早振る、と書くそうで「ちは やぶ」の連体形で意味は「猛々しい」「荒々しい」。神にかかりますから、神様のとてつもない力に尊敬をこめて、の言葉でしょう。

漫画「ちはやふる」の主人公の女の子もこの枕詞をきっかけに競技かるたの世界に入っていきます。言の葉の威力は人生をも変える。そして言の葉を集めた和歌。皆様もどうぞ、自由に楽しく、歌を味わいください。


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