10月15日

今日ははなの葬式の為に帰省した。前日、兄が家に泊めてくれたので兄の家から朝5時起きをかまして成田空港に向かった。特に記憶がないのは眠気もあったからだと思う。道中ははなの事と眠さと早く機内の席に座って眠りたいという事だけを考えていたと思う。機内に着いた後、順調に飛行機は出発。出発前か出発後なのかは覚えていないが、またはなの事を思い出し泣いてしまった。1つ席を飛ばした先の人に見られたらいけないと思い、静かに涙を流した。20分後には4時間睡眠という事もあり、気づけば眠ってしまっていた。目覚めると到着まで約30分だった。俺は今の素直な思いを文字に収める為、noteを開き、思いを綴った。飛行機到着は予定よりも10分程早まったようだった。こんな事は中々ないので、はなが俺を導いているのかもと思ったりもした。ただ、空港から博多駅行きまでの電車はもう10分もすれば出発だった。人が機内から出るのを待っていると電車出発までもうあと5分しかなかった。俺は走った。やはり俺ははなに導かれているのか、電車出発の10秒前に乗車することができた。9時26分、博多着。次に乗る電車は直近で28分発だった。ただ地下鉄からJRのホームまでかなりの距離がある為、2分でたどり着くのは厳しいかと思った。あとで気づいたことなのだが、もし28分発の電車を逃すと恐らく俺は10時23分に地元の最寄駅に着くことになり、11時からの葬式には間に合うものの、家にいるはなの姿を見れなかっただろうし家から車まではなを運ぶ事もできなかっただろう。結果、俺は地下鉄からJRまでの区間を2分で乗り継ぐことができた。おかげで、地元の最寄りに10時3分に着くことができ、はながいる家まで帰省することができた、タスキが1本に繋がった感覚だった。実家に帰ると、はなは仏壇の前で寝ていた。目が空いていることが印象的だった。まるで、まだ生きているかのように。毛は柔らかくふさふさなままだった。体は冷たくて生きていた頃のあたたかみはなくなっていた。目を閉じさせる事もできなかった。はなの匂いを覚えておこうと俺は匂いを嗅いだ。最初は正直はなから嫌な匂いがしたらどうしようと思った。しんだはなは俺にとってとても怖かった。亡くなった人を見る時、俺はいつもまるでその人ではない別の誰かのように感じてしまうからだった。人を前にしているのに動かない、話さない、そして冷たい。そんな不自然な現象を味わうのはいつも怖い。だから、はなだってそうだった。あんなに明るくて元気で笑顔だったはなちゃんが正反対になってしまうとこを俺はみたくなかった。だから、俺ははなの変わらない部分、柔らかい毛を車内でいつまでもずっと触っていたのかもしれない。車から持ち出すはなはいつもより重たかった。はなに今の体のままで見る最後の家を見せてあげようとした時、はながまだ生きているかのようにはなと接していた。葬式場までの道中、俺ははなの毛を触りながらまた泣いた。涙だったり鼻水がどうしようもなく出てとまらなかった。はなに俺の涙と鼻水をあけてあげようと思った。汚いけど、どうにか俺が目の前にいるってことを知らせたかった。気づいて欲しかった。戻ってきたよって知って欲しかった。君が僕を遠い地から呼んできたんだよって。葬式場につくの、小太りの中年男性が僕ら家族を迎えてくれた。車内から男性ははなを運んでくれた。ビジネス的な所作が見えたら嫌だなと思っていた。その男性が葬式場にはなを連れて行く時、箱の中で眠っているはなを人目見てくれたことで俺は少し安心した。葬式場に着き、男性が話し始めると、何だか泣きも収まってしまうような、少し笑ってしまうような雰囲気の人だった。そして、突如「無料の」と言い出した時は、少し萎えたがあまりにも悲しい雰囲気よりも何だかちょっと抜けた、笑ってしまうような、少しふざけられた感じの方がなんとなーくはなちゃんに合ってると感じた。後ほど、母親に真剣というのは時に笑ってしまうようなこともあると伝えられた時はなるほどなと納得した。あの男性は凄く真剣だったに違いない。正直、葬式場の中で何をやったのかはあまり記憶がないがら体重を測ったりしてもらった時はまだ泣いてなかった。まずははなの毛の好きな部分をキーホルダーやお守り用に切った。母はお守り用に、はなのお腹の部分の毛をごっそり切っていた。そして、各自のキーホルダーにはなのけも入れた。俺ははなの額のところの毛をキーホルダー用に切った。はなの薄い額の毛が柔らかくて好きだったからだ。ハナ自身もその額を撫でられるのが好きだったと俺は勝手に思っている。その後、はなに線香をあげて祈ったりお経を唱えてもらったりした。いつから泣いたのかは覚えてないけど、お経を唱えてもらってた時はもう泣いていた事を覚えている。口が曲がりながら泣いていて、マスクつけといてよかったとその時はマスクに感謝した。父ちゃんは口カスが相変わらず少なかった。お経の時は父ちゃんは泣いてなかったかも。お経が終わって最後、お清めとして濡れたティッシュを渡された。俺は額と背中を濡らしてあげた。はなの毛が真っ直ぐになった。その時にはなの耳がピンと立って若い頃のはなに戻ったかのようだった。そして、はなに最後の水を飲ませてあげる時になり、濡れたティッシュで鼻の口元を濡らしてあげた。口のついでに鼻も濡らしてあげた。そして、このままハナとの別れがきそうだったので俺は坊に最後にまだだっこできますか?と少しの勇気を振り絞って言った。もちろんですと言ったような返事を聞いて母の助けを借りながらはなを棺の中から出すためにまずははなのまわりにある花と一緒に火葬する予定だったぬいぐるみ、おかしを取り出した。そして、はなだけになった棺の中からはなを抱こうとしたが、俺はどう抱いたらいいのかわからなかった。はなの首が取れてしまわないだろうか、冷たくなってやしないだろうか、変わってしまったはなを味わうことが怖かった、いつものようにはなを抱くことが何だか怖かった。俺は母ちゃんにはなを取り出してもらって、母ちゃんから俺にはなを渡してもらった。その時の感覚は今でも覚えている。涙でグスグスの中、それまで俺は自分がはなの葬式を前にしてあれやこれやといらないことを思考したり思い浮かばせたり目の前のことを考えずにどうでもいいことを考えてそのことに絶望してその絶望だったり不快感にまた悩みみたいな自分の事しか考えていない状態に心底絶望したりでも必死ではなの死を見ようとはなのことを思い出したりみたり思い出や感謝を頭に浮かべたり、ただその行為がまた茶番に思えてしまってまた自分に絶望したり失望したり、やっぱり俺は何かしらの治せない精神疾患か何かでこんな大事な場面でもしっかり目の前のことを味わうことができなってしまってるとか、頭がおかしくなってしまってもう2度とそうやって大事な瞬間瞬間を絶望でしか感じられなくなった人間なんだとそう思ったり。今後、自分の子供が生まれた瞬間幸せな瞬間だってそんなふうに考えてお前は絶望を味わうんだとそう思ったりもした。幸せな瞬間なのに自分だけそれを味わえず苦しく絶望してしまうのが怖くて恐ろしくて、そうなってしまうことに俺はいつも絶望してきた。今この瞬間も実際にそうなってしまっていて心底死にたいと思ったりもした。それをはなの死で紛らわそうとしている自分が気持ち悪くて頭がおかしくて苦しくて本当に自分が大嫌いになった。ただ、俺は、はなを抱っこした時にはなが生きているように感じていたのは確かで、抱っこした瞬間にはなが冷たいなんて思わなかったことは確かで、自然とはなにほっぺたをつけていた事は確かで、はなのにおいをまた感じていたのは確かで父ちゃんが後ろで泣いていたのは確かで、あの頃みたいだなって思ったのは確かで、はなが俺が目の前にいることに気づいていてあの瞬間は少しでも目が覚めて生きていたんじゃないかと思うくらいにははなは生きているようだった。生前にはなを抱いた時とはまるで違う感覚を抱いた時に持ってしまうのが俺は怖かったんだと思う。だから触るのも怖かったんだと思う。でも、はなはあの瞬間おれはこの現世に戻っていたんだと思う。はなの柔らかい毛の感触は何も変わらずら暖かさを感じた。ハナの顔がほっぺに当たる感触は全く生きていた頃と一緒だった。その瞬間はさっき言ってた絶望なんて全部忘れてた、ただハナを抱いた時の感覚を覚えることに必死だった。その事しかおれは考えていなかった。その後、ハナの額ををもう一度最後に撫でて棺は閉じてしまった。ハナを最後に撫でた後、生前にハナのデコを撫でた後になる少しつり目になってしまう顔になっていた。それはもうハナが生き返ったのかと思って、ハナからの何かのサインなのかと思ってその顔を最後に焼き付けて俺は席に座った。俺は席に戻りハナの棺の蓋が閉じられるのを見届けた、顔はあの吊り目のままだった。棺は閉じられ、俺は最後にハナの棺桶の上にハナを手向けた。正直その時は色んな感情でぐちゃぐちゃだった。花を受け取りハナの棺の上に乗せて俺はありがとうと思い伝えた。本当にその言葉しか出てこなかった。それ以外はもう思い浮かばなかった。でも、この言葉が全てなんだと思う。俺はきょどりながら席に戻った。きょどったこと、場に合わないことをしていないかとかそんな感情が少しあった自分がまた情けなくダサくて気持ち悪かった。弱かった。自分をまた責めた。その後、坊が何をしたのか言ったかは覚えていない。本当にあの花の手向け方でよかったのかとか、最後のはなの顔は吊り目でよかったのかとか、まだずっとハナの顔を見てたいとか展開早すぎるだろうとか、ハナの棺の前でずっと言いたい事とか思いたい伝えたい事がたくさんあるのに、とか無意識レベルでそんなことを思いながら周りの状況は過ぎていった。気づけば、部屋の中から出ていて、まだ火葬を見届けられるから後で思いを伝えようなんて思っていたらもうハナは火葬に向かっていることを後で知り、正直最後の別れのつもりじゃなかったのに何だよと思った。つくづく何も伝えてこねぇなと思った。その後、はなの毛をキーホルダーにつめている間、自分が葬式の間にまた違うことを考えていたり違うことで絶望していたりしていたことに絶望していた。俺は自分の感情が目の前の出来事でどうなるかとか、その瞬間自分が何を考え感じたのかにとてもこだわりがあるようだった。このこだわりから外れることがどうも許せないらしく、出来事に対してこう感じているべき、目の前のことを見ているべきなど、不真面目すぎる人間の感情と思考、それと自分のこだわりが合わないことに苦しんでいるようだ。どう思うかどう感じるかなんてコントロールするとか、自分の思うようにあるべきなんて思うものでもないのに。なんなら思考でコントロールなどできないのだ。もしコントロールできるならお前はいつも幸せを感じながら生きられるだろう。

そうこうしてるうちに、骨になったはなちゃんが出てきた。俺は、その骨をはなちゃんだと思えなかった。はなちゃんが骨になるなんてそんなこと想像できないからだ。意味がわからないからだ。そもそも、本当に死んでしまったことすら信じられていないのだから。そしてこの世に一体しかいないハナという存在が不思議で仕方なかった。もう2度と動いているハナを見ることができないなんて訳がわからなかった。喉輪と喉仏を1番最後に骨壷に収めて、蓋を閉めた。カプセルにも犬歯と爪と後一つ何かの骨を入れた。俺の赤いカプセルには犬歯と爪が入っている。犬歯が大きかったので爪を無理やり詰め込んだ。最後に、仏壇にハナの写真と骨壷を置いて写真を撮った。そうこうしてると、白い犬が2体部屋から出てきた。ハナの生まれ変わりとか、天使2体かとか、天空城かとか、犬を亡くした人間を慰めるために飼っているのかなぁとかそんなことを思った。初めに母ちゃんに興味持っていて俺には興味がなさそうだった。俺も可愛いとは思ったがあまり興味はなかったし神主のおばさんにも興味はなかった。2体の話をしていて、一匹がハナと同じ乳がんになっていた事を知り、今は元気そうでよかったと思った。2体の話はその後も続いていたが、俺はハナの遺影をずっと眺めていた。ハナが寂しくないようにハナが2体に嫉妬しないように俺はずっとハナを眺めていた。2体は割とどうでもよくてハナのことしか考えてなかった。最後に骨壷を持って俺たち家族は外に出た。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?