42話-杉江アマゾン大輔という漢
昔、私が茶帯で細川さんと試合した時に見た、あの鬼のような杉江アマゾン大輔さんを見て以来、畏怖を感じていた。
当時の柔術家からしてみると、圧倒的にフィジカルが違い過ぎて、全員薙ぎ倒されると言う表現をした方が良いぐらい差があった。
その倒した相手の中には、ビル・クーパー、マイク・ファウラー、セオドロ・カナルなどの世界的な有名な選手も多く、世界三大大会のヨーロピアン選手権ライト級2位と言う日本人には、絶対無理と言われた最難関階級でのタイトルを持っていた。
私はそんな激戦区の中戦うアマゾンさんに憧れた。
試合中の怖さを感じさせる集中力。
筋肉質な身体から出る瞬発力。
アマゾンさんの影響で、私がウェイトトレーニングを真面目に取り入れたのは言うまでもない。
名古屋と言う練習相手がいない中で、ALIVEの社長と作り上げたフィジカルトレーニングと工夫した練習で世界と戦っていたのも魅力的だった。
アマゾンさんは28歳の時に一度選手を離れていた。
私が名古屋で当人を見た時は、「ゾンさん」という愛称で総合格闘技の方に力を入れていた。
しかし数年後アマゾンさんは柔術界に帰って来た。
そして国内、階級、無差別のあらゆる大会に出場し優勝していた。
私もブラジルに行ったりオーストラリアに行ったりしていて、中々巡り合わなかったが、東京に来て初めてあの日本人最強と呼ばれた柔術家と対戦出来るチャンスが来た。
私はついにこの時が来たと思った。
そして、大輔さんやD練に新しく加入した八隅さんに練習を付けてもらい、アマゾン戦に向けて準備をした。
そして大阪、世界館へ。
初のメインイベンターとして気合いが入った。
セコンドは健一さんが来てくれて万全の状態だった。
試合前、「俺が日本最強になる。」と思いマットに上がった。
私はアマゾンさんを一心に見た。
アマゾンさんはゆらーっとしていて、集中していないように見えた。
そして試合が始まった。
私は引き込み際の速いパスガードを警戒し
最初は組み合い脚を触ってフェイントから引き込もうと思った
瞬間。
アマゾンさんが消えた。
背負われたっ!
と気がついた時には投げられて腕を取られていた。
腕十字固めの形になりもの凄い力で引っ張られた。
胸に激痛を感じた。
私の甘いクラッチで
ディフェンス出来るわけもなく腕が伸びた。
試合時間18秒。
私は唖然とした。
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