強くなるヤツならないヤツ

ここで話をするのは柔術の強さについてである。
道場に長年いると練習量はもちろんだがそこを差し引いて見た時に上達する人としない人がいる。
しかし、白帯の時は誰でも上達はする。
上達スピードに個人差はあるがその点はさして重要ではない。
上達の早い遅いはいずれ来る長い停滞にしてみれば結局その差は埋まるようになっている。
ここで柔術の上達が常に右肩上がりのものではないと言う事がわかるだろう。

柔術の上達の仕方とは急に伸びる場合もあるし、ある日突然スランプに陥り停滞してしまう事もある。
そう言う歪な上達の仕方をする。
なぜその様な事になるのかと言うとそれはゲームの多様性がそうさせるのであり、フィジカル、身体能力のみが勝敗を分けるものではないからである。
しかし逆にフィジカルを鍛える事により陥ってしまった停滞から抜け出す方法もある。
各個人が抱えている悩みを解消する為の選択する力が上達を捗らせるポイントになるのだ。
白帯の後半で停滞する者。
青帯で停滞する者。茶帯で。
それはその人の目的と手段が大きく関わっている。
例えば週2回楽しく良い汗を流す為に柔術が出来れば良いと思っているものが10年同じ思考で柔術を続けた時に黒帯になっているだろうか?

答えは否。

なぜならばその人の1番の目的は人生にとって気持ちの良いコミュニティで活動する事だからだ。
しかし、それが間違いなのかと問われればそれも違い、10年柔術を通じて楽しいと感じれるコミュニティを作り上げたその人は柔術を経て大切なものを得ているからだ。
そう言う形があっても良いと思う。
しかし、今回は上達の話。
停滞から抜け出し、勝利を得たい。黒帯になりたいと言う話を優先させたい。

まず上達をするには三つのポイントがある。
一つめは適切な練習量
二つめは適切な練習相手
三つめは適切な目標である。

一つめの適切な練習量とは
柔術をやる時間ももちろんだが何を練習し何が得たいのかを明確にしてから練習に時間を割くかが重要になる。
問題点を探す為の練習も良いだろう。問題点の修正、改善の為の練習もある。ではそれを考えた時にアイデアや時間はあるだろうか。
ただスパーリングをし問題点を探す為の時間を長く過ごしすぎているのではないだろうか。
YouTubeやレッスン、セミナーで得た新しい技を試すのは良い。
しかしそれで止まってしまうと停滞がやってくる。
また恐ろしいのはその時間は満足感を与え長く足を引っ張る要因になりえるのだ。
練習量の中には新しい技術のテスト、自分に足りてない部分の修正、技術の選別、スタイルを確立させクオリティを上げる事に時間を費やすと言う事が必要になって来る。
そして上手くいっていない要因として一番気をつけないといけない事は技を出す前や技の応酬の前に本当に自分の準備が整っているのかと言う事が柔術の強さを分ける。
判断力の速さとフィジカルの強さは同じ意味合いを持つ。
フィジカルが優れていなくとも正しくそして素早く動けるなら柔術は上手くいく。
ミスをできるだけしないと言う事が勝利に一番近いのである。
ミスをしてもそれを取り返せるフィジカルがあっても良い。
要はミスをしない能力かミスをリカバリー出来るから体力があれば良いのだ。
そしてそこを考慮した練習が出来ているかと言う事だ。
城を作るなら土台から。土台に時間を割くのだ。技よりももっと手前の見えづらいポイントを多く練習しなければならない。
そうすれば正しい技術の選択が出来る様になり、練習しなければ行けないポイントが明確になる。

次に適切な練習相手についてだ。
適切な練習相手とはいつも同じ相手であっても構わないが、一方的にやっつける事が出来る相手のみではならない。
もちろんそのレベルの練習相手は必要ではあるがそれだけだと練習をなぞるだけになりあまり上達につながる事はない。
練習相手はやっつける事が出来る相手、五分五分になる相手、まだ敵わない相手の三段階が最低限必要になる。
やっつける事が出来る相手には新しい事を試したり、自分が不安なパートの修正のためにテストしたりする事が出来るとても重要な役割だ。
しかしそれは反面、気持ちの良い練習にしかならないリスクもある。
これを行い過ぎると停滞がやってくる。
そして停滞の中で1番危ない停滞が起きる。
チャレンジする事が怖くなってしまうのだ。
こうなるともう自分より強い相手と向かい合う事はストレスでしかなくなり、自分より強い相手からしか得られない経験値を逃してしまう事になる。
五分五分の相手には自分が積み上げた技術やスタイルが本当に正しく上達に繋がっているかを確認する為に重要になる。
五分五分の相手とは裏を返せば自身の中では1番負けたくない相手と言う事になる。
要は妥協出来ない練習になるのだ。
すると些細なミスが命取りになり集中してどこにミスがあるのがトラブルシューティングをするための原因を記憶する事が出来るのだ。
ここで間違ってはいけないのが五分五分の練習は競る練習になり『やった感』が1番濃く残る。
だから自分が実際上達していなくても練習そのものに満足してしまいがちになるのだ。
必ず五分五分の練習をした後は五分五分から六対四、七対三に今後する為の上達のキーポイントを見つけるようにしないといけない。
そして自分よりも強い相手にはスタイルの粘り強さを確認する練習をしなければいけない。
少しでも長い時間ポジションをキープしたり、ギブアップを一本でも取られない様に工夫し抗わなければいけない。
ここで重要なのはこの工夫をいかに楽しむかがキーになる。
柔術とは元来弱者の考えた格闘技だ。
その中には弱者がいかに強者と戦うかと言う工夫が詰まっている。
強い相手に触れる事で柔術の技術体系の守る、カウンターを取るチャンス、タイミングを学ぶ事が出来る。
ただやられてしまうだけでなく相手の動きを目で追い記憶し、対策を練り生き延びるゲームをする。
これが上達に繋がる。

そして三つめ適切な目標である。
適切な目標とは言わば精神状態である。
誰かに勝ちたい。上回りたいと言う気持ちが上達に1番作用する。
一番簡単なことは大会に挑戦してしまう事だ。
しかし、ハードルの高さを感じてしまう人もいるだろう。
だから道場の友人でも先輩でも何でも良い。
この人より強くなりたいと言う目標を作る事が大切なのだ。
少しでも前に進もうとする純粋な気持ちの前には様々な工夫があり停滞するぐらいなら今より弱くなっても良いから更に強くなってやると言う気持ちが大切なのだ。
弱くなるのは誰しも怖い。だから苦手なパートに挑戦出来ない。
しかし停滞の落とし穴はそこにある。
常に揺らいでいないと上達の扉は開かない。
柔軟な気持ちといつかはこうなってやると言う堅い意志で人は一つ一つ上達していくのだ。
誰しもにそのチャンスはある。
だから停滞に悩んでる人は一度振り返り考えてほしい。
なぜ停滞してしまったのか。伸びていた時はどんなマインドでどんな練習をしていてどんな相手がいたのかを。
人は誰だってやり方さえ間違わなければ強くなれる。

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