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BBT(ビジネス・ブレークスルー)大学院MBA課程の教授方法

私は、ビジネス・ブレークスルー(BBT)大学院で「現代版企業参謀」という戦略の科目を教えています。この記事では、BBT大学院のユニークな教授方法についてご紹介したいと思います。MBA課程への入学を検討されている方は勿論なのですが、企業研修などのビジネス教育全般に関わる方々にとって参考としていただけるのではないかと思います。

BBTはオンラインの学校?

ビジネス・ブレークスルー大学は、経営コンサルタントである大前研一さんが作ったオンラインの学校です。
オンラインの学校であり、教員は授業をビデオ収録し、学生はネット上で好きな時間にそれを視聴することができます。電車内でスマホで視聴したり、速度を上げて視聴することもでき、通学の必要がなく比較的隙間時間で学習できるので、それがこの学校の特徴と思われがちなのですが、本質はそこではないと私は考えています。

高い視点での強制的なアウトプットの繰り返し

学生の視座を如何に引き上げ、Cレベルでのビジネス判断に耐えるものにしていくかというのは、非常に難しい問題です。BBT大学院では、これをケーススタディを使って行っています。毎週、「もしも、あなたが〇〇の最高責任者ならば、どうするのか?」という質問に答えさせるのです。出題者はテーマとなっている企業や組織の課題を提示しませんので、学生は様々な情報ソースから課題を見つけ出す必要があります。そして、それに対して自分なりの解決策を導き出すとという訓練を毎週繰り返すのです。
このトレーニング(敢えてトレーニングとここでは呼びます)の優れている点は、最高責任者という高い視座が要求されることです。ディスカッションはプラットフォーム上でなされるのですが、これが他の学生にも見えてしまう。Cレベルの回答ではないと、いささか恥ずかしい思いをしますので、視座を如何に上げられるかを自分で考えるようになります。あたかも、英語を授業で勉強しても話せるようにはならないのと同じように、教室で経営学を勉強するのと実務上業績を出せることの間には大きな差があります。このような疑似的なアウトプット訓練は、その差を埋めるものですし、なにより高い視座でのアウトプットが要求され続けるので、それに慣れなければならず、学生の意識にも大きなインパクトを与えます。
毎週アウトプットを強要して、批評してもらい、模範を観察するというのは、お花やお茶、武術のお稽古のように、アートを教える際の標準的な教授方法なのではないかと思います。それをビジネス教育に取り入れていることが何よりの特徴と言えます。
毎週のケーススタディだけではなく、お稽古事の「発表会」に当たる取り組みも用意されています。事業計画を担当教員の指導を受けながら作っていくもので、卒業研究と呼ばれています。

テキストでのディスカッションの利点

ケーススタディだけでなく、普段の授業でも否応なしにアウトプットが要求され、プラットフォーム上でテキストでディスカッションが行われていきます。私もMBAの学生でしたので経験があるのですが、教室での授業では議論が高度になる前に発言を行い、授業に貢献した感じを出してお茶を濁すことも可能なのですが、テキストでのディスカッションでは学生が書いたものが残ってしまい、他の学生から見えてしまうので、そうはいきません。テキストでアウトプットすると、論証の構造が丸見えで、貧弱なことを書くと恥ずかしいので、学生にとっては非常に厳しい。しかし、優れた他人の論証を見て学ぶことができますし、他人のよいところを取り入れて真似をしているうちに自分の力になっていくものですので、むしろテキストでの議論の方がビジネス教育としては優れているということができると思います。

徹底した実務教育

BBTでは徹底した実務教育を貫いています。そのため、教員は経営者やコンサルタントなどの実務家が大多数を占めています。プロフェッショナルスクールですので、これはある意味当然なのですが、研究機関である大学が設置するビジネススクールでは必ずしもそうなっていません。例えると英語において、英語学を研究する研究者はもちろん必要なのですが、英会話の学校だと研究者が教員だと少し違和感があり、むしろネイティブスピーカーを教員とした方がよいように、実務のプロフェッショナルがプロの実務家を養成するということが、この学校では当然視されています。ですので、ゆくゆくは博士課程などに進み、研究者になりたいと言う人は、向いていない学校と言うことができるでしょう。実務家養成に極端に最適化してしまっているのです。
但し、実務家として優れているということと、それを教授できるということは別物なので、その両方を兼ね備えた講師を見つけ出すのは容易ではなく、そこにこの学校の希少性があります。ビデオを使用しているというのは、実は学生のためだけでなく、これらの「教えることができる実務家」の講師を確保するためにも重要なことなのです。

企業研修などのビジネス教育全体への示唆

企業研修会社などの講師を観ると、職業的な講師の方々が多く存在しているのが現実です。現役を退いて講師をされているというのであればよいのですが、実務家としてのマネジメント経験や自分で判断を行ってのコンサルティング経験なしに講師が一般的なコンテンツを講義するだけなら、実務家である講師による映像講義の方が実務家養成と言う意味では効果が高く、繰り返し使用できるため安上がりなのではないかと思います。
殆どの教育は集合で行う必要はなく、ビデオ講義+オンラインミーティングなどで十分なのであり、今後は研修企画を行う方はそれを先ず志向すべきなのではないでしょうか。そして、講義は極力優れた講師が行ったもののビデオで行い、むしろ疑問点の解消やアウトプットさせる方に時間を使うべきなのです。集合教育を行うのであれば、それは忙しい多くの人が一同に会する希少な場なので、特に講義などに時間を使うべきではないと言うことができるでしょう。そのような時間はインタラクティブなアウトプットのトレーニングに使った方がいいと言えます。研修会社が作ったコンテンツを繰り返しているだけの講師は、もう必要ないと思います。

BBT大学院
『ビジネス・ブレークスルー大学大学院』

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