まつりの話

今日は神社のまつりの話です。
「祭」というと、いわゆる屋台が出て、花火が上がって、盆踊りのようなことをやるという祭(フェスティバルに近い)を想像される方が多いと思います。神職が「神社でお祭りをやっている」と言っても、そちらを想像しているとなかなか話が噛み合いません。神社で行われる「祭」は祭典、セレモニーの方が近い概念のように思います。

神社のお祭りは、大きく大祭、中祭、小祭、諸祭(雑祭とも)に分類されます。

大祭は主に3つ、祈年祭、新嘗祭、例祭です。

2月の祈年祭は田植えの祭、11月の新嘗祭は稲刈りの祭で、いずれも米作りとともに生きてきた日本人にとって非常に大切なお祭りです。
例祭は、神社ごとに日が決まっていて、神様が降臨した日、神社が鎮座した日など特別の由緒のある日に行われるお祭りです。その他、例えば社殿の建替えや神輿の渡御などのために一時的に神様を移動させる遷座祭なども大祭に分類されます。

中祭は主に皇室に関わるお祭り、今上陛下のお誕生日に行われる天長祭、初代神武天皇御即位の日とされる紀元祭などがそれに当たります。
小祭は大祭、中祭以外の、例えば毎月行う月次祭などです。

諸祭とは、厄祓いや初宮詣、七五三など、いわゆる「ご祈祷」や「お祓い」などと呼ばれる類のもので、参拝者の為に神様に願い事を申し上げるという点で、神社の由緒に則り神様のために行う祭典とは少しが毛色が違います。

大祭、中祭、小祭、諸祭の分類によって、神様にお供えするお供物、神職が身につける装束、祭典の次第、その他準備物等が変わってきます。当然お祭りの重要性が増せば増すほど、お供物の種類は多く、装束もより正式で立派なものに、次第も複雑なものに変化していきます。

皇室祭祀と伊勢の神宮は特別なのでこの限りではなく、また神社によって独自のルール(これを「一社の故実」と言います)がありますので、必ずしも全てがこの通りではありませんが、神社で言うところの「祭」の概念は以上のようなものです。
屋台が出る「祭」は、神様と参拝者双方により楽しんでいただくための一種の賑やかしや、神事とは別に地域独自のルーツをもつ行事と考えていただければいいと思います。

「まつり」という言葉は、「祀る」「奉る」からきていると考えられています。
祀るは神様を奉斎すること、奉るは差し上げることですので、神社に神様をお招きし、お供物を差し上げたのが祭の根元と言えます。

「祭」という漢字を見ますと、左上は月、これは肉のことで(部首でもにくづきと言いますね)、右上の又は右手を、下の示はお供物を置く台を表します。つまり、右手で台の上に肉(お供物)を捧げる様子を表した漢字です。やはり祭の本義はお供物を供えることのようです。

また、「政」を「まつりごと」と読むように、祭はすなわち政治活動でした。日本では国の政治のトップ=宗教のトップだった時代が長く、象徴天皇制と政教分離の原則が日本国憲法により規定されるまで、神道の長であった天皇が国の政治のトップでもありました。(実際は将軍職が政治を行っていた時代も長くあったのでやや乱暴な言い回しではありますが…それでもやはり政権の正当性を主張する為には天皇の力が必要でした。)

いずれにせよ、日本における「まつり」は、国家としての活動そのものだったと考えることができます。元来国家の運営活動だったまつりは、現在は皇室の繁栄、国家の安寧等を祈る行事に姿を変え、古式に則り全国神社で行われています。

大抵の場合、神社のホームページや境内の掲示などに主な祭典日程が記載されています。毎月1日と15日(1日だけのところもあります)に行われる月次祭は、毎月参列することをルーティンとしている方も多いのでおすすめです。お気持ちで初穂料を納めれば誰でも参列可能なお祭りが多いので、機会があれば参列してみてはいかがでしょうか?

#神社 #神道

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