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【感想】FXドラマ『ザ・オールド・マン 〜元CIAの葛藤』シーズン1

8/17(水)にDisney+で何やら渋い雰囲気のドラマが全話一挙配信された。
正直当初はノーマークだったのだが、監督の名前を見てスマホを操作する手が止まる。

ジョン・ワッツ!?
あのMCU版スパイダーマンを3本撮った?
いや、どうせ製作総指揮だろと思ったら本当に監督しているらしい(全7話の内の第1・2話を担当)

ただ、この時点では「楽しみ!」というテンションにはならず期待半分不安半分。
というのもジョン・ワッツはMCU版スパイダーマンの1作目である『ホームカミング』に新鋭として抜擢されて以来そのシリーズ作品しか撮っていない。
(裏を返せばよくそんな人にリブート2回目・通算3代目スパイダーマンを任せたよなぁ)

当然ケヴィン・ファイギのコントロールも入っているだろうし、大ヒットした『ノー・ウェイ・ホーム』はサプライズ要素に下駄を履かせてもらっていた面もある。
もちろん無能な映画監督ではないが、MCUを離れたときにどこまで撮れるのかは過去作がまだ少ないため何とも未知数。

果たしてこの采配はどう出るのか?
そんな気持ちで配信当日に再生ボタンを押した。

この人の作家性は「子供の目線から見た大人の怖さ」
MCUに抜擢されるきっかけとなった『COP CAR/コップ・カー』

あのサイコ警官は怖かった…
MCU版スパイダーマンでもその作家性は遺憾なく発揮。

しかし、本作に子供は出てこないw
渋い初老の男性ばかり。
だってCIAですからね。リタイアしてる年齢。
ただ、じゃあ作家性は感じられないのか?というとそんなこともない。
渋い男たちが繰り広げる物語は「大人の怖さ」を存分に味わえるものになっている。

さらに冒頭から炸裂する悪夢演出!

  • 主人公をどこまで信用していいのか?

  • 画面に映っている人は実在の人物なのか?

  • それとも主人公にだけ見えているのか?

序盤に限らず、例えば第2話の検問のシーンのあれも最高だったなぁ。
ジョン・ワッツの面目躍如。

そこにまさに『COP CAR/コップ・カー』を彷彿とさせるパトランプを使った照明演出が入ってくる。
赤と青に照らされてクラクラ。
車の赤いライトに照らされた中での不格好な格闘アクションも良かった。
お互い素手の殺るか殺られるかの戦い。
老いてスピーディーに動けないという制約を設けることで、決してスタイリッシュではないが無骨な良い味。
スパイダーマンのケレン味溢れる空中戦とは対照的。
ツカミはOK

ただ、正直ジョン・ワッツから演出が交代した第3話以降は若干の失速感は否めない。
あまり印象に残るショット(映像)が無いのである。
回想シーンも説明のための回想シーンになってしまって悪夢的なクラクラ感は減り、ミステリーを語ることに追われている。
その割にプロットは追われる・逃げる話でシンプルなので演出で見せ場を作らないといけないのだけどもう一歩何か足りない。
イラク戦争(『トップガン マーヴェリック』と同じく劇中では戦争の敵国は一応ぼかされているが)への自己批判もあまり深掘りされず。

第6話以降は金かかってそうな大規模な撮影も出てきて少し盛り返して幕。
第7話の、暗殺者が敵に囲まれた状態から脱出すべく逆に敵陣に乗り込んでいくシークエンスは結構良かった。
まぁ「ん?シーズン1最終話なのにこいつのアクションが最大の見せ場なのか?」と思わなくもないけどw
主人公サイドが車内で会話してるだけで画の見せ場が乏しいことへの対策なのかもしれない。

シーズン1は完全にシーズン2ありきの尻切れとんぼで終了。
ようやく戦いが始まったくらい。
まだ未解決の謎も残っているのでシーズン2を気長に待とう。
ジョン・ワッツはスター・ウォーズの新作ドラマを撮るみたいだけど次回も演出してくれるだろうか?

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