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【感想】HBOドラマ『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』第1話

イギリスではチャンネル4、アメリカではHBO Maxで放送・配信され、絶賛を通り越して社会現象となっていた本作。
チャンネル4のストリーミングサービスであるAll 4では視聴回数の新記録を樹立。
海外メディアの上半期ドラマランキングにも結構入っている。

ただ残念ながらエミー賞のノミネートからは漏れてしまった。
まぁピークTV時代で作品数が多すぎる問題はあるのかなぁ。

そんな『IT'S A SIN』が遂に日本でもAmazonプライムのスターチャンネルEXで配信開始。

脚本は『ドクター・フー』のラッセル・T・デイヴィス。
監督は全5話ともピーター・ホアー。
さらに製作総指揮も兼任しているラッセル・T・デイヴィスの信念の下にゲイのキャラクターには実生活でゲイを公表している俳優を起用している点も話題。

恋人、敵、犯罪者、聖人などは演じるものだが、ゲイというものは演じるものではない。

この辺りの議論はNetflixのドキュメンタリー『トランスジェンダーとハリウッド:過去、現在、そして』でも触れられている。

世界的にLGBTQというテーマを映画やドラマなどの作品を通して描くという段階から次の段階に入ってきたということなんだと思う。

そんな『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』、本日の配信開始に合わせて第1話を早速見た。

先ほど書いた通り本作の主人公(群像劇なので主人公に相当する人物は複数いるのだが)はゲイ。
主人公がLGBTQという設定の映画やドラマ自体は今やそれほど珍しくはない。
「ゲイが主人公」と聞いて「斬新な設定だ!」なんて言う人はもういないだろう。
ただ、過去に作られてきた多くの作品は「LGBTQや同性愛者の生きづらさ」を描いてきたと思う。
これ自体は別に間違いとは思わない。
差別や偏見といった問題や社会制度の不足など日本も海外もLGBTQの方々が生きやすい社会はまだまだ実現していないと思うから。
ただ、こういった作品が数多く作られた弊害として「LGBTQや同性愛者は可哀想な人だ」というまた別の偏見(思い込み)も生まれてきてしまったように思う。
実は先日ある映画を見ていて「このゲイの彼が報われる結末であってほしいなぁ」と無自覚に見ている自分に気付いた。
彼がゲイだから報われてほしいのか?
なぜ?ゲイは生きる上で大変なことが多くて可哀想だから?
逆に言えばノンケの登場人物は酷い目に遭ってもいいのか?
いや、本来そこに区別は無いはずだ。
確かにいわゆる性的マイノリティの人の方が前述のように生きる上で大変なことは多いのかもしれない。
でもだからといって可哀想と決め付けるのも違う。

本作はまさにそこに応えている。
差別や偏見(主に家族をはじめとする周囲の無理解)は描かれているが、主人公たちはゲイのコミュニティで楽しく暮らしている。
ゲイの友人もしくはLGBTQに理解のある友人もいて、第1話では盛大にパーティーをするシーンもある(ここでセックスしまくるシーンの音楽とカット割が最高)
生きづらさの描写が全く無いわけではないが、そこまで重苦しくは描かれていない。
(ただ、それは第1話に限った話で、あらすじを読むと第2話以降は必ずしもそうではないのかも)

ではゲイを主人公に据えた本作のテーマは何なのか?
それはHIV・エイズ
なんとイギリスでは本作の放送後にHIV検査数が記録的な回数に達するという社会現象にまで発展したという。
第1話の時点ではまだ「ゲイだけが感染する謎の伝染病」として新聞に記事が載っているというところで終わっている。
1980年台のロンドンではHIV・エイズはまだ未知の病。
この辺りは脚本のラッセル・T・デイヴィスの実体験に基づく描写らしい。

第1話の冒頭、息子がゲイだと知らない父親からこっそり渡されたコンドームを主人公があっさり捨てるシーンがある。
「ゲイの自分には必要ないもの」と考えていることが分かる場面だ。
僕はまだ第1話しか見ていないので、この先誰が感染するのか、または感染しなくても偏見や差別をはじめとするどんな苦難が待っているのかは現時点では分からない。
第1話は割とポップな仕上がりだったがシリアスなストーリーになっていくのだろうか?

LGBTQやHIVを本作がどのように描いていくのか。
僕自身もHIVに関して知識が十分なんてことはなく無知だと思うのでそこも学んでいきたい。
残り4話をしっかり見守ろうと思う。

『IT'S A SIN 哀しみの天使たち』はAmazonプライムビデオのスターチャンネルEXで毎週火曜日に1話ずつ配信。

そういえば日本にも『神様、もう少しだけ』というHIVをテーマとしたドラマがあった。

これも名作である。

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