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【感想】NHK新春特番『あたらしいテレビ2022』
『新春TV放談』の後継番組として2020年から始まった『あたらしいテレビ』
毎年見てきたのですが、昨日の放送を見ていて思ったことをつらつらと。
「テレビを見る」の定義
いきなり文句で恐縮だが、この番組に限らず他の各種調査でも「テレビを見る」をどう定義しているのかが分からないことがとにかく多い。
これとか↓
まぁこの記事もソースはNHKの調査なんですけどね。
例えば今パッと思い付くだけでも
テレビ機器で地上波の番組を見る
スマホでTVerにある番組を見る
スマホでYouTubeに違法アップロードされた地上波の番組を見る
スマホでTikTokに流れる地上波の番組の切り取り動画を見る
この中でどれは「テレビを見る」にカウントされて、どれはされないのか?
(上の4つはあくまで例でMECEとかは全然意識してないので悪しからず)
今回の『あたらしいテレビ』だと恐らく
テレビ機器で地上波の番組を見る
なのかな?
でもドラマ部屋ではU-NEXTで配信されてるHBOのドラマと地上波のドラマが同列に語られているのに対して、U-18部屋では「Netflixがあるからテレビはあまり見ない」というテレビ対Netflixの構図になっててよく分からない。
Fire TV Stickを使ってるか否かが重要ってことなんですかね?
確かにスマホで見るのとテレビサイズの画面で見るのは全然違う体験じゃんという議論はそれはそれで価値のあるものだとは思いますが。
そういう前提が一切提示されてないのが問題。
(念のため書くと個々の出演者の方々の問題では全然なくて、基礎をちゃんと固めてない番組側の問題です)
新旧の構図で「あたらしいテレビ」を論じるなら「いまのテレビ」を定義しないとダメだと思うのだが…
これ何年もこのフワフワ状態なので、素人的には「TVerで見られるとテレビ機器が無くてもいいことになって受信料が徴収できなくなっちゃう」というNHKのポジショントークなのかなぁと陰謀論を唱えたくなっちゃいます。
万人が納得する正解の定義を示せとは言わない。
ただ、少なくともこの番組における定義は議論の大切な前提になるので示してほしい。
それをやらないのであれば昨夏に放送された『コンテンツ・ラヴァーズ』みたいにコンテンツの中身の話に特化すればいいんですよ。
コンテンツの中身の話と視聴環境や産業の側面など外側の話を一緒にやろうとするからグチャグチャになる。
あんな曖昧な土台の上で四面楚歌になってたU-18部屋のゆなさん可哀想だったよ…
YouTubeやNetflixとは?
もう一つ気になったのはU-18部屋の出演者の紹介テロップに「YouTubeを1日2時間」とか「Netflixを1日3時間」とか表示されるんだけど、具体的に何を見てるかが分からない点。
僕は恐らく学生時代からの友人や会社の同僚に比べるとNetflixを見てる方だと思う。
ただ、例えば同程度の時間をNetflixに割いている人がいたとしても日本のアニメ、韓国ドラマ、数年前に劇場公開してた映画を見てるとかだと正直全然違う世界の住人なんですよね。
地上波テレビにしたって報道、バラエティ番組、ドラマのどれを見てるかで全然違うわけで。
十把一絡げにしちゃうのはちょっと解像度が粗いなぁと。
コンテンツの存在をどうやって知るか問題
そんなわけで議論はイマイチだったものの興味深い発言は随所にあった。
ドラマ部屋がHBOの『メア・オブ・イーストタウン』で盛り上がるのを見たかまいたち山内。
佐久間さん(※元テレ東の佐久間宣行プロデューサー)は『メア・オブ・イーストタウン』が面白いってどこで聞いたんやろ?それが凄い。俺生活してて『メア・オブ・イーストタウン』なんて1回も聞いたことない。
これは実はガチで深刻な問題。
今ってかなり能動的に調べないとコンテンツの存在を知ることすら出来なくなってる。
ちょうど昨年末に配信された『POP LIFE: The Podcast』でも同様の問題意識が話されていた。
ちなみに『メア・オブ・イーストタウン』は配信開始の1ヶ月半前にエミー賞のノミネート発表、さらに3週間後にエミー賞の授賞式があったからまだ比較的見つけやすい方だったとは思う。
その証拠(?)にごく普通の会社員で業界に何のコネも持ってない自分も上記のニュースをチェックしていたことで配信開始の週末に見れている。
メア・オブ・イーストタウン:エミー賞16部門ノミネートのHBOドラマ。人生・家族の崩壊と再生。ミステリーの皮を被ったヒューマンドラマ。女性の物語という文脈もあるし、捜査過程を通して差別・偏見の怖さも描かれている。街の風景を映した撮影(特に第5・6話)も良かった。 https://t.co/FVTtCEyGZe
— 林昌弘,Masahiro Hayashi (@masahiro884) August 28, 2021
ちなみに配信開始日はこの記事で知りました(とはいえ読んだその場でiPhoneのカレンダーに登録したり個人の手間で頑張ってる感はある)
あと、BIMが泣いたコンテンツとして紹介されてたNetflixドキュメンタリーの『オクトパスの神秘:海の賢者は語る』もアカデミー賞2021長編ドキュメンタリー賞受賞作品なので(マウント取るような言い方をしたいわけではないのですが)メジャーというか本来的には有名どころのはずなんですよね。
ただ、じゃあアカデミー賞やエミー賞のノミネートを注視していればOKかというと全然そんなわけでもないのが今という受難の時代…
番組趣旨からはズレそうだけど「このコンテンツ供給過多の時代にどうやって面白そうな作品を知るか?」は興味深いテーマになりそう。
『新春TV放談』の形式なら山内が佐久間Pにあの場で直接質問できたんだけどなー
新作を見るか問題
もう一つはU-18部屋での発言。
普段テレビは見る?昔は見てたけど…という話の流れで。
ひかりんちょ「過去のものが面白いってどうしてもなっちゃう」
(中略)
酒寄颯太「新しいの見る気にならない」
ゆな「それがダメじゃん」
酒寄「だってNetflixがあるじゃん」
ゆな「何で冒険しないの?知ろうとしてないんだよ!」
ちょっとここ議論を整理した上で深掘りしてくれる大人がいてほしかったなぁw
地上波のテレビ番組を日常的に見るか?
地上波テレビやNetflixといったデバイスやサービスは関係なしにして、新作を見るか?
という話がごっちゃになってる。
恐らくあの場で話されていたのは
地上波のテレビは見てない。
面白いか分からない新作をわざわざ見なくても、過去にハマった作品を配信サービスで再視聴すれば十分楽しめる。
面白いか分からない新作を労力かけて探してチャレンジするよりも動画配信サービスのレコメンドに従う方が効率も打率も良い。
ということだったんじゃないかなぁと。
あくまで放送に乗った発言を基にした僕の解釈ですが。
ノスタルジー消費とフィルターバブルという現代の病理。
10代の子たちにも襲いかかってるのだろうか。
(これは自分も含めてインターネットでエンタメ楽しんでる人全員に当てはまる現象なのでU-18部屋の出演者の方々がどうとかって話ではないです。念のため)
この辺の調査とか読んでも新作がどれくらい見られてるのかはよく分からないんですよね。
Anime is also a key consumption driver for Netflix. Some of it is monetized globally, attracting significant viewership across Southeast Asia and beyond. Approximately 25% of Japanese consumption on Netflix is driven by Korean dramas, a key competitive differentiator for Netflix, while U.S. content drives 15%. Netflix’s originals (U.S., Japanese and anime) drive 10% of platform viewership.
“The premium video segment in Japan is increasingly competitive. Local content is critical, as illustrated by TVer’s growth over 2020-21, while Amazon Prime Video and Netflix’s licensed anime libraries have contributed over 40% of consumption on the platforms during 2021,” said MPA’s managing partner Vivek Couto.
僕は「新作を追い続けていないと人間として文化的に堕落する」という半ば強迫観念に取り憑かれた過激派なんですが、やっぱり新作を見るという体験は(その作品が面白くてもつまらなくても)人生を豊かにすると思います。
作品を面白いと感じる事は、つまらない作品に出会って「なぜこの作品はnot for meなのか?」を考える事と表裏一体。
2022年もノスタルジー消費欲求とフィルターバブルに抗う1年になりそうだなぁ。
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