【感想】テレビアニメ『Sonny Boy』

Sonny Boy：全話完走。最高に変な作品。だが、そこが良い。ストーリーが直線的に進んで謎が解き明かされるのではなく、脚本上大胆な省略を挟みつつ各話テイストを変えて毎回違うことをやるチャレンジ。アニメ的な動きの快楽の乏しさを補って余りある色彩の快楽も素晴らしい。 https://t.co/axlJqeOPnV

— 林昌弘，Masahiro Hayashi (@masahiro884) October 3, 2021

『Sonny Boy』は2021年7月から放送されていたテレビアニメ。
第1話を見た時点の感想はこちら。
確か放送からは少し遅れて見たんだっけな。

好評を耳にして『Sonny Boy』の第1話を見た。すげぇ！何のこっちゃ全然わからん！新型コロナの影響でシーズン1で打ち切りになってしまったマーク・ウェブ監督のNetflixドラマ『ザ・ソサエティ』っぽさもあるのが嬉しい。

— 林昌弘，Masahiro Hayashi (@masahiro884) July 22, 2021

公式サイト掲載のあらすじは以下の通り。

長い長い夏休みも半ばを過ぎた8月16日。学校に集まっていた中学3年生・長良〈ながら〉たちは突然、思いも寄らない事態に巻き込まれていた。長良自身はもちろんのこと、謎の転校生・希〈のぞみ〉や瑞穂〈みずほ〉、朝風〈あさかぜ〉ら、36人のクラスメイトとともに、学校が異次元に漂流してしまったのだ。しかも彼らは、漂流と同時にさまざまな《能力》を入手。人知を越えた能力に大喜びし、好き勝手に暴れ回る者もいれば、リーダーとして他の生徒たちを統率しようとする者も、元の世界に戻るための方法を必死で探す者もいる。渦巻く不信や抑えきれない嫉妬、そして支配欲からくる対立。次々と巻き起こる不可解な事態を前に、少年少女たちは突如として、サバイバル生活に放り込まれてしまう。果たして長良たちはこの世界を攻略し、無事に元の世界に帰ることができるのだろうか……？

出典：https://anime.shochiku.co.jp/sonny-boy/story.html

物語は既に漂流しているところから始まる。
余計な前置きは無し。
当時は「劇伴が無い」ことも話題になっていた記憶があるな。
ツイートにも書いた通り第1話を見た時点ではNetflixドラマの『ザ・ソサエティ』みたいな話なのかな？と思っていた。

ザ・ソサエティ | Netflix (ネットフリックス) 公式サイト

ザ・ソサエティ：シーズン1見終わった。SFでパッケージングしてるけど学校＝社会というアイデア自体に真新しさは無いなと侮り始めてた第3話ラスト！あそこからSFミステリー色は薄まり一気に政治ドラマに。あの選挙って大統領選への強烈な風刺だよな…？リーダーが女性というのも興味深い。 https://t.co/I3GXfKHG7v

— 林昌弘，Masahiro Hayashi (@masahiro884) May 12, 2019

これもクラスの生徒だけが世界に取り残されるというストーリー。
シーズン2継続が決まっていたのだが、コロナ禍で撮影困難ということで残念ながらシーズン1限りで打ち切りになってしまった。

しかし、最終回まで見終わった今となってはこの予想は大外れだった。
そもそも公式サイトあらすじの「果たして長良たちはこの世界を攻略し、無事に元の世界に帰ることができるのだろうか……？ 」も別にそういう話じゃなかったよね感が強いｗ

蓋を開けたらとにかく変で不思議な作品。
序盤は確かに生徒たちが孤島で新たな社会を構築する過程が描かれるのだが、第4話『偉大なるモンキー・ベースボール』から風向きがおかしくなってくる（褒めてます）
夏目真悟の脚本がキレキレ。

さらに黒幕っぽかった明星や敵役と思われたあき先生もあっさり本筋から退場してしまう。
とにかく夏目真悟の脚本がキレキレ。

第7話『ロード・ブック』や第8話『笑い犬』に至ってはストーリーは止まっているのか進んでいるのかさっぱりわからない。
漂流の謎も説明されたような煙に巻かれたような。
夏目真悟の脚本が（以下略

といった感じで本作は脚本もといシリーズ構成が本当に素晴らしい。

『Sonny Boy』は「テレビアニメという枠そのもので遊ぶ」という点でHBOの『ラヴクラフトカントリー』やDisney+の『ワンダヴィジョン』など最近の海外ドラマに通じる面白さがある作品。各話構成の独特さはルカ・グァダニーノの『僕らのままで／WE ARE WHO WE ARE』を思い出したりも。

— 林昌弘，Masahiro Hayashi (@masahiro884) October 3, 2021

僕があまりテレビアニメを見てこなかったせいもあるかもしれないが、先週の続きと思って見始めたら全然違う話が始まったり時間経過が大胆に省略されたりして「どうなるの！？とあなたがハラハラドキドキしていた話はもう片付きました。今日は別の話です」といった作りがとても新鮮。
テレビアニメというフォーマットそのもので遊んでいる。
ツイートした通り最近の海外ドラマにも通じる面白さ。

これらの作品は意図的に各話のテイストをガラッと変えているのが本当に面白い。
僕の中では『Sonny Boy』もその系譜に位置している。
遂に日本からもこういった作品が出てきてくれた。
嬉しい。

最後に、僕がアニメを見る際に注目している絵の快楽について。
実写では不可能な動きの快楽を楽しみに見ているのだが、本作は正直に言うと動きはそこまで激しくない。
その点は不満っちゃ不満なのだが、まぁこういう脚本で魅せる作品だとそうなるのも仕方ない面はあるかなと思う。
ただ、本作の色彩はそれを補って余りある素晴らしさ。
毎話色んな世界が出てくるし、それが色鮮やかに表現されて文字通り世界が広がる感覚がたまらない。
なので僕の中では本作は正真正銘アニメ作品です。

『Sonny Boy』は地上波放送は終わったけれど各種サービスで配信中。

TVアニメ『Sonny Boy -サニーボーイ-』公式サイト

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