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SANSUI SAUNA が掲載されました!


商店建築2024年3月号「サウナ大特集」

昨年、千葉県柏市にオープンした施設「SANSUI SAUNA」が、建築インテリアの専門誌「商店建築」の2024年3月号のサウナ特集に掲載されることになりました(されました)。プロジェクトが立ち上がったのはもう1年以上前になりますが、関係者で原稿をまとめていたところ、限られた誌面の中にはどうも書ききれてない感覚が残り、勝手ながら自身のnoteに残すことにしました。ぜひ「商店建築」の誌面と合わせて、その舞台裏的なものとして楽しんでもらえると嬉しいです。

SANSUI SAUNA 外観

この施設は、「仕事に子育てに頑張る女性のための施設」として位置づけられました。店舗オーナー、企画者、アーティス ト、設計者、施工者が企画立案と同時にチームを結成し、プロジェクトがスタートしました。完成写真を見ていただくと、「え、これサウナ?」という印象がありますが、この施設、サウナを作ると言いながらアート空間になっているのが大きな特徴と言えます。

施設の総合プロデュース及び自身のアート制作を手がけているアーティスト MASAKO.Yさんとの協業です。長年のお世話になっている施工会社ダブルボックスさんからご縁いただき、事前情報では「アーティストとの仕事」だと聞いたので、てっきり岡本太郎みたいな人が来るのかと思ったら、目の前に現れた人は、岡本太郎みたいな人でした。いい意味で。(笑)

完成した今でこそ、各々の役割分担がされていたかのような説明をしていますが、発足当初は誰が何をどこまでやるかという分担がはっきりしておらず、キックオフミーティングでMASAKOさんが持参されたコンセプトブックを見て、私は直感的に「あー、この世界観を実現することが今回の自分の仕事なのだな。」と察したという状態でした。

持参された雪舟の山水画イメージ
初期イメージ(c) MASAKO.Y
初期イメージ(c) MASAKO.Y

施設は完全予約制で、 個室サウナに加えて、お湯を掛け流し、ためたお湯に頭全体を浸す「頭浸浴ヘッドスパ」をセットで 体験できる施設となっています。豆知識ですが、「ヘッドスパ」という言葉は、タカラベルモント社が商標登録している日本独自の造語だそうです。世には「ドライヘッドスパ」という水を使わないマッサージもありますが、今回の頭浸浴は書いて字のごとく、浸すほどに水とお湯を使います。

そんな感じでサービスの概要は概ね決まっていて、なるほど、と。では次は空間のレイアウト、そんないきなりの話でしたが、初回の打合せでヒアリングすると同時に概ねのレイアウトは確定した。、、、ということになりました。(図示)

「大体決まったね!」と関係者で書き殴ったスケッチ

これは女性専用で、大衆サウナでもなければ個室サウナでもない。1〜2名のお客さんが、アート空間を独占してアート空間に没入して内気浴を楽しむ、そんなイメージでした。

そこからはMASAKOさんとの世界観のヒアリングとすり合わせ、コンセプトの具現化など、当然のことながら紆余曲折あり、多くの時間を費やしました。彼女の作品がどのような素材で作られているか、またどのような環境下で制作をしているか、現場で作業ができるのか、あるいはアトリエで制作したものをパネル化して現場で組み立てた方がいいのか、などなど。

パウダールームと位置付けている六角形平面の空間は、MASAKOさんのオリジナルの手法で制作された金箔で覆い尽くされた部屋になっています。金箔一枚一枚の重なり代も見込んだモジュールで部屋の内法寸法を先行して決めています。そこへ、2000枚におよぶ金箔を現場でひとつひとつご本人が貼っいて、全てを貼り終えた金箔の壁面に大きな地球が描かれています。

金箔仕上げのパウダールーム

結局noteでも書き切れないくらいのストーリーがあるのですが、金箔ルーム以外にも、そこまでするかというくらいに空間は手が込んでいます。アプローチの壁は左官の掃きつけ仕上げで、ドイツ壁とも呼ばれるようですが、土を小さなハケでパッパッと掃き付ける手法です(吹きつけではなく掃きつけ)。踏石は作家のatreliermaticの外山翔氏によるもの。この現場のためにひとつひとつ制作いただきました。ホールの特殊照明はニジミナト氏によるもので、ユラユラと流れる光で空間全体に動きをもたらしています。壁面は「ジョリパットのローラー仕上げ」というと建築関係の方は知っている方も多いですが、今回はその既製品のローラー自体にMASAKOさんがオリジナルで彫り込み加工をしているので、仕上がりも独自の表現となっているのも面白いです。(MASAKOさんは彫刻科だったのだそう。)

アプローチの踏石設置中。
(C) SANSUI instagramより
アプローチの土壁サンプル(色土モルタル掃き付け仕上げ)

そしてホールに設置された巨大ソファは、比叡山から着想して作られています。大まかなボリュームを決めて、色々な場所に腰掛けもたれかかることができるような形状を模索していて、多面体で構成されている座面は、寸法出しは私がしたものの、全ての面のグラフィックと手描きのメッセージはMASAKOさんが制作しています。検証用の模型も彼女の制作によるもので、緑のグラデーションが表現されているのが見て取れます。

ソファ模型
納品直前に家具工場で仮組みをして確認

そして「サウナ室」においては、オーナーでもありCONKSGROUP代表の松島さんによるこだわりが満載で、使い手目線での様々な要件をいただきました。部屋のサイズや天井高さなどの寸法はもちろん、サウナ室で汗を含んだ嫌な空気が滞留しないような空気の流れもシミュレーションして、コンディションに応じて調整ができるような仕組みも考慮しています。熱源となる電気ヒーターも部屋の広さに対しては、あえてオーバースペック気味の容量を用意して、その調整幅を広くできるよう考慮しているなど、設計目線だけでは行き届かない部分を多くフォローしていただいています。

ちなみに水風呂も女性専用ということもあり、冷たすぎる方には「足し湯」ができるよう専用の蛇口も取り付けています。浴びるためのシャワーとメイク落とし用のシャワーを分けて設置しているのは、MASAKOさんからのアドバイスだったり、とにかく皆んなで意見を出し合い、良いと思うものは取り入れていく、逆に要らないと思ったものは潔く無くす、そんな制作プロセスでした。

オープン後、オーナーは地元の託児所サービスと提携をして、忙しいママさんがお子さんを預けてサウナを楽しめるサービスを提供したり、引き渡し後もさらにアップグレードしているようで、本当に素敵な施設だなぁと感心するばかりです。

空間作りに携わっていると「想いをカタチに」とか「こだわりを詰め込んで」とか「無いものは作る」など色々と聞きますが、改めてこんなに大変で面白いことなんだなと感じるプロジェクトでした。

女性の方はぜひ体験してみてください。
制作時の苦悩、、ではなく、今回のようにそれぞれの立場を尊重しながら一つの形としてプロジェクトをまとめていく時に考えたことも以前のnoteに書き記しているので、そちらもぜひ合わせてご笑覧ください。

プロジェクトをレンダリングするということ

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インスタの動画制作も秀逸
こう見えて真面目にやってます。

制作風景はSANSUI SAUNAのインスタグラムでも公開されています!


<商店建築2024年3月号>

SANSUI SAUNA
Sauna + Head Spa / Chiba JAPAN

アート・総合プロデュース: MASAKO.Y
設計: テントプラント 高橋将章 湯画
協力: 企画/寺田和弘
進行/ドットエレメントスタジオ
アート施工/三井栄子
飛石制作/Atelier matic 外山翔
アート照明/ニジミナト ガウンデザイン/簑輪花
施工:ダブルボックス 和田重文 灰田務 小松一平
撮影:益永研司(「商店建築」掲載写真すべて)

運営: CONKS GROUP
経営者:CONKS GROUP 松島亘

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