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スニーカー界のレジェンド。史上最年少でエアージョーダンのデザイナーになった男に話を聞いてみた

ドウェイン・エドワーズという男をご存知でしょうか?彼は19歳でデザイナーになり、30歳という若さでNIKE、エアジョーダンシリーズのディレクターに就任したスニーカー界の伝説です。今は自分のデザインだけでなく、次世代のフットウェアデザイナーを育てるためのPENSOLEというアカデミーまで運営しています。デザイナーとして、教育者として、経営者として世界的に活躍する彼と話をする機会があったのでシェアしたいと思います。

雅彬:まず最初にデザイナーになろうと思ったきっかけは何だったの?

ドゥエイン:長いストーリーだが手短に話すよ。生まれ持って目にしたものは何でも上手く描くことが出来たんだ。そして11歳の時に初めてスニーカーの絵を描いた。それから授業中もずっとスニーカーの絵を描いていたんだ。おかげで学校でのトラブルは絶えなかったけどさ。そんなある日、スニーカーのデザインコンテストを見かけた。応募したらなんと優勝したんだけど、高校生だったという理由で仕事を得ることはできなかった。その出来事がフットウェアデザイナーになりたいって思いをより一層強くしたんだ。そこでフットウェアデザインを学べる大学を探したんだけど、そんな学校はどこにもなかった。僕は一旦夢を諦めて高校卒業後は仕事についた。最初の仕事はLA Gearっていうフットウェアのブランドだった。そこでは目の前で靴のデザインの現場を見れた。そんな時、新規事業のアイディアを公募があったんだ。僕のアイディアは、「僕をフットウェアデザイナーとして採用してくれれば毎日新しいデザインを考えるよ」というもの。6ヶ月後、突然会社のオーナーから呼び出され、何とその仕事をくれたんだ。ちょうど19歳の誕生日を迎えたばかりだったよ。

雅彬:自分から行動を起こしてチャンスを掴み取ったんだね。デザインしている時って何が見えているの?デザインのプロセスを教えて。 
 
ドウェイン:面白い質問だね。実は紙の上に何かを書き始める前に僕の頭の中では既に出来上がっているんだ。まず最初に数時間、時には数日をかけて90%のデザインが出来るまで頭の中で考えるんだ。それから初めてデスクに座り、残りの10%を紙の上で足しながら完成させるんだ。紙に描いてる時間は5分くらいさ。僕に見えるのは白黒のデザインだ。だから、No.2の鉛筆しか使わないんだ。
 
雅彬:想像するプロセスが手を動かすプロセスよりも重要ってことだね。フットウェアデザイナーとして成功している中で、どうしてPENSOLEっていうフットウェアデザインの学校を立ち上げたの?

ドウェイン:いくつかの理由があるんだ。まず、自分と似たような境遇の若い世代、貧困層で将来の希望がなく、下手したら刑務所に行ってしまうような子ども達の道筋を作ってあげたかったんだ。もう一つは、自分のキャリアとしての成果を自分のデザインした”物”にしたくなかったんだ。自分の才能を誰かの会社を裕福にするために使うんじゃなく、自分の才能を人々と共有したかったんだよ。PENSOLEを創設したのは、時世代のフットウェアデザイナーの育成に貢献することで業界全体を自分がこの業界に入った時よりも良くしたいんだ。創設してから数年だけど既に100人以上がプロのデザイナーとして活躍しているよ。

雅彬:次の世代に自分の才能を手渡す作業だね。自分が最高のデザイナーになることと、他人にとって最高の先生になることは違うと思うんだけど、どんな工夫をしてるの?

ドウェイン:素晴らしい質問だ!そんな革新的な質問をされたことはなかったよ。そうだな、まず僕の人生におけるゴールは常に昨日の自分よりも良い自分になることなんだ。このゴールは僕のデザインや教育へのアプローチにも影響している。もし、何かで秀でた存在になりたいなら、規律や自制心が必要になる。素晴らしいっていう評価を得るには、そのゴールに向かって邁進して掴み取るしかないんだ。僕はいつだって最高を目指してきた。けれど今は自分が最高のスニーカーを作るんじゃなくて、デザインという業界に貢献したい。もちろん、今でも自分のことはデザイナーだと考えている。けれど、僕は農家でもあり僕の生徒達は種なんだ。その種を業界全体に蒔くことが出来れば、フットウェアデザイン業界を底上げすることが出来るんだ。
 
雅彬:確かに農業のようなプロセスだよね。次の世代に知識やメソッドを残していく上でどういったことをしているの?

ドウェイン:生徒達が実社会で活躍する方法を教えるために、僕自身が良い例となって導くようにしているよ。生徒達にとって僕は従来の教師といった存在ではないんだ。ブルース・リーの「私は君に何も教えていない。ただ君が君自身を探求する手助けをしているだけだ」という言葉が僕のアプローチを集約している。また彼の「人生とは君の師であり、君は常に学びの状態にある」という言葉はまさにその通りだと信じている。 僕は生徒達にスキルをを教えているわけじゃなく、彼らが人として、そしてデザイナーとしてのポテンシャルをフルに発揮出来るように手助けしているんだ。
 
雅彬:僕も格闘技を20年近く練習しているけど、未だに終わりが見えない。今はアートもやっているけど、やればやるほど学ぶことが多くなるよ。商業的に成功しているアーティストとそうじゃないアーティストとの大きな違いって何だろう?
 

ドウェイン:知名度じゃないかな。多くの人の才能は大体同じくらいだと思う。けれど、もし君の作品を誰も見なかったらどうやって人々は君の才能に気付けるだろうか?もちろん、大企業や大きなエージェンシーで働くっていう方法もある。けれど、どんな環境にいたとしても毎日自分の目指す最高の形を追求していくことが大切だ。その過程で他人が君をどう思ったっていいじゃないか。僕らは他人によって定義づけられるわけじゃない。重要なのは最高の自分に集中すること。すると、ある時点で世界が君の本当の姿を発見するんだ。

雅彬:ビジネス的な観点からみて、デザイナーとしての経験はアカデミーの運営にどう役立っている? 
 
ドウェイン:すごく役立っているよ!ビジネスは僕にとって新しいデザインの挑戦なんだ。 どうやって日々の問題をクリエイティブに解決することが出来るか、どうすればもっと良い方法を見つけることが出来るか日々自分に問いかけている。もし、将来ビジネスをやろうと思っているデザイナーがいるとしたら、デザインの知識や経験が役立つってアドバイスするよ。ビジネスにおいてビジョンを具現化する過程はデザインにおいてアイディアを形にしていくプロセスにすごく似ているんだ。僕にとってPENSOLEは最高のデザインで、世界にもっともっと伝えたいことがある。毎日朝起きるのが本当に楽しみなんだ。僕らがやっていることを世界に披露することがね。

雅彬:もしアカデミーを始める時に今と同じ知識と経験があったら、何を変える?

ドウェイン:そうだな、決して楽な道ではなかったけど、何かをやり直したいとは思っていないんだ。 多くの人が気付いていないけど、人間は成功からじゃなく、その逆で失敗から学ぶんだ。何かを成し遂げようという意思を持って取り組むことで、たとえ失敗したとしても最終的には良い結果に繋がる。ほとんどの人はまず挑戦しない。始める前に失敗しているんだ。だから過去を振り返って何かをやり直したいとは考えない。常に前を向いて進んでいるよ。
 
雅彬:もし20歳の時の自分に電話をかけることが出来たらどんなアドバイスをする?

ドウェイン:僕の人生では本当に色んなことが起きたからいくつかアドバイスがあるよ。まず、「決して楽な道じゃないぞ。自分にとって大切な人の死も経験する。決して会いたいと思わないような出会いも経験する。同じ人達から称賛と批判を受ける。成功するよりも多く失敗する。それでも全てに感謝しよう。もしも簡単に為せることなら、目指すに値しない。

雅彬:最後により良い世界を実現するために何かメッセージを 
 
ドウェイン:本当に良い質問ばかりだよ。そうだな、「誰かにインスピレーションを与える人であることに集中するんだ。人々が君を必要とする日がやってくるから。」


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