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LINEA-MINIボイラー周りの不具合対応

こんにちは。

さて今回は、みなさん興味津々エスプレッソマシン、当店で使用しているLINEA-MINIの機械系の話で、とくにボイラーの話題です。本稿では、エスプレッソマシンを使った経験があって、ぼくと同じお悩みがある人を想定読者として書いていますからベーシックな部分の説明はあまり入れません。

過去に書いた機械系のお話はこちらで ⤵︎

LINEA-MINIの抽出圧力低下とスチーム系不具合の対応

リンク先の記事ではエスプレッソマシンの基礎的なこともかるめに書きましたので、必要のある方は参照なさってください。



さて、今回の件です。

毎朝、店に出勤して一番でやることは手洗い。そしてエスプレッソマシンとホットウォーターディスペンサー(=給湯機)に電源を投入することです。

2021年3月10日の朝も同様にして手を洗ったあとにマシンに向き合うと、ドリップトレーの天板にどろりとした薄黄色の物体がありました(=写真)。

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もちろんこんなことは初めてで、数秒ことばを失いましたが気を取り直して物体をよく見ると、物体が飛散していました。落ちてきた雰囲気であったため直上を見ると案の定、LINEA-MINIの抽出口近くに同じ色の物体が付着していた跡がありました。

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朝、ぼくが視認した時点ではすでに上からの滴りはなく、落ちていた物体もある程度は固形化していたように見えました。

抽出口の付近であったため食品衛生面がかなり気がかりになりましたが、物体がペースト状であったことと、その色味から食品用グリスかなと見当をつけ、まずはドリップトレー上にある機具類を退避させてLINEA-MINIの電源を投入。様子を見ることにしました。

その日、現象は再発せず、翌日以降も発生しなかったのですが、1週間経ったところでドリップトレー上の同じ位置になにかが滴下した跡がありました。当初のそれに比べると2回目以降に滴下していた物はかなり液体状でしゃぶしゃぶだったものの、この現象が3回、4回と、やはり1週間に一回の頻度で再発しました。この間、LINEA-MINIの電源が入っているときには謎の物体(液体)が滴ってくるケースはなく、決まってLINEA-MINIの電源を落として帰った翌朝に滴下していました。

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(2021/04/14の様子 ⤴︎)

滴下が回を重ねるごとに落ちてきた物の濃度感は薄まっていましたが4回目になっても現象の終わりが見えないし、なにより原因が不明でしたので販売代理店の機械メンテナンスサポートに対応をオーダーしました(2021年4月14日)。オーダーしたのは次の4点。

(1)コーヒーボイラーの外側からグリスのような色の液体が垂れてくる。
(2)ホットウォータースパウトのお湯の出が悪い。
(3)スチームノズルから水が垂れてくる事がある。
(4)ガスケットの状態を見て、交換が必要なら交換してほしい。

前回の件

LINEA-MINIの抽出圧力低下とスチーム系不具合の対応

の時と同じく、これまで解決を先送りにしてきたが気になっている点も一緒にオーダーしました。特に学びのなかった(3)と(4)について結論のみここに書いておきますと、(3)はスチームノズルのパーツを交換してもらい、(4)のガスケットは交換不要と確認してもらったので現状維持としました。

一方、今回は(1)と(2)の対応でコーヒーボイラーとスチームボイラーの理解をすこぶる深めることができましたので、以下で詳述します。

そして、そのメンテナンス作業中にLINEA-MINIの内部を観察していて新たに発見した事象があり、技術員の人と相談して追加で対策をすることになったのが次の2点。

(追加事案)
(5)ボイラーへ浄水を送る管に漏水跡を発見。

(6)コーヒーボイラー本体とボイラー蓋の継ぎ目からガスケットのゴムがはみ出していた。

この(5)と(6)については以下で詳述します。


(1)コーヒーボイラーの外側からグリスのような色の液体が垂れてくる。

結論として、例の物体は止水剤であるとの見解でした。

コーヒーボイラーに備わっている小さなドレン管から、しみ出す程度の漏水が発生していて、コーヒーボイラーとドレン管の接続部に施されている止水剤が漏水した水分と一緒に滴下してきたという話でした。

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上の写真はメンテナンス前。写真右側に見える銀色で箱型のパーツがコーヒーボイラーで、ボイラー側面に取り付けられている黒いコックの付いた円筒状のパーツがドレン管(終端が黄土色)です。ボイラーとドレン管の接続部にクリーム色っぽくガビガビと付着しているのが水に含まれるスケール(石灰分)が凝固したもの。写真下側がマシン前面、パドルハンドル側です。

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上の写真はメンテナンス中の様子です。写真上側に見える箱型のパーツがコーヒーボイラーで、ボイラーの蓋が取り外されていてボイラー内部が露出している状態です。写真手前側のボイラー側面に空いている穴がドレン管が取り付けられていた箇所。ボイラーからお湯が抜かれて、管を取り外して清掃してもらっています。

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そしてメンテナンスしてもらったあとの写真が上のものです。国内製の止水用シールテープを施してもらい、ボイラーとドレン管の接続部をきれいにしてもらいました。

イタリアのラ・マルゾッコ社製であるLINEA-MINIに使われている止水剤はイタリア製・・・かどうかは分かりませんがイタリアの規格に適合している剤で、これが日本での使用環境下において剤の性能が100%発揮されないケースがあるそうです。とはいっても、止水剤がまるで溶けてしまってコーヒーボイラーからお湯が滝のように漏れてきた・・・などということはなく、また日々のエスプレッソ抽出の圧力が減少したこともありませんでした。

止水の観点でいえば、毎週1回の頻度で1滴ほど水の滴下があったわけですが、これが必ず朝に発生していました。この理由は、マシンの稼働中(電源ON中)はコーヒーボイラー内の水がお湯になっていることで膨張していて、このためコーヒーボイラー自体も膨張していることから、コーヒーボイラーとドレン管の接続部が締め付けられている形になり漏水が発生しにくく、逆に、電源がOFFのときはコーヒーボイラーが膨張していないため今回のケースでは漏水が発生しやすい状況であった、との見解でした。


(2)ホットウォータースパウトのお湯の出が悪い。

まず、なにが問題だったか。見出しに書いた文字通りなのですが、ホットウォータースパウトから出てくるお湯の量がLINEA-MINI購入当初より格段に少なくなっていました。

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・・・当店でぼくは、このスパウトから出てくるお湯をコーヒー抽出やペーパーリンスなどを含めて一切なににも使用していないのですが、毎週1回ここから合計2リットル分のお湯を出しています。

このスパウトから出てくるお湯はスチームボイラーに入っているのですが、スチームを取り出した程度ではスチームボイラー内のお湯はなかなか減りません。お湯が減らないということはスチームボイラー内にずっとお湯が溜まった状態であるわけですが、ここのお湯はただの浄水ですから溜めておくと当然ながら劣化して傷みます。浄水ゆえにむしろ水道水よりも劣化が早いです。LINEA-MINIのスチームボイラーには2リットルのお湯が溜まっていると仕様書に記載されていますので、こうした理由から毎週1回、スチームボイラー内のお湯を2リットル分出して新鮮な浄水をスチームボイラーに給水して、水の入れ替えを行っています。

週1回、という頻度には科学的な理由はなく、経験則からの判断と、水道代や作業時間といったコストをにらんでバランスを取ったつもりで週1回に決めています。実際、カフェラテなどの作成中にミルクをスチーミングしたり、スチームワンドの洗浄の際にスチームを取り出していたりすると1日のうちに何度かスチームボイラーに給水されるタイミングがありますので、水質の維持については業務中の給水と週1回行う2リットルの入れ替えという頻度をもって適度な回数であると考えています。

・・・余談はさておき、そういうことで定期的にホットウォータースパウトからお湯を取り出している中、だいぶ以前・・・1年以上前からかもしれませんが、だいぶ以前からこのスパウトからの吐水量が漸減してきている印象をもっていました。なににも使っていませんので経過観察(放置)してきたのですが、2021年に入っていよいよ出てくるお湯の量が極めて少なくなり、これはマシンに異常がある、もしくは異常発生する予兆かもしれないと危機意識をもつようになったところで(1)の止水剤事案が発生したため迷わずこちらの対応もオーダーしました。吐水量が極めて少なくなったときは500mlを取り出すのに2-3分は掛かっていたと思います。正常な状態なら30秒かかりませんから、異状であったといえます。

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上の写真はホットウォータースパウトの根元にあるパーツです。左上へ伸びた先細りしているほうがホットウォータースパウトから熱湯を取り出す際に回すハンドル(マシン前面)へ接続するほうです。パーツの右下へ伸びたほうにスチームボイラーから熱湯が供給される管が接続します。そこに飛び出すように取り付けられているパーツにクリーム色っぽいカスのような物が堆積していますが、これが凝固したスケール(浄水に含まれる石灰分が凝固したもの)です。ここからお湯が送り出されて先端のスパウトからお湯が出るのですが、その経路がこのスケールでかなり詰まっていてお湯の通りを阻害してスパウトからの吐水量を減衰させていました。

パーツを清掃してもらうと吐水量はLINEA-MINI購入当時を思い出させるしっかりした勢いに復帰しました。


(5)ボイラーへ浄水を送る管に漏水跡を発見。

修繕前の現況が下の写真です。

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ポンプからコーヒーボイラーとスチームボイラーへ浄水を供給する経路の一ヶ所で漏水が発生して、スケール(浄水に含まれる石灰分)が凝固してすでに漏水跡になっていました。すこしピンがボケてしまっているのですが、クリーム色っぽいガビガビしたカスのような物体がスケールであり、漏水した跡です。

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上の写真がメンテナンス後。シールテープで止水措置をやり直してもらいました。


(6)コーヒーボイラー本体とボイラー蓋の継ぎ目からガスケットのゴムがはみ出していた。

メンテナンス作業中に視認して、以前には気が付かなかったので以前の記録写真を確認したところやはり当時はゴムは見えていませんでした。経年劣化であるとの見立てで、ゴム(Oリング)を交換して対策してもらいました。

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上の写真がメンテナンス前。写真奥の箱型の部品がコーヒーボイラーで、蓋と本体の隙間から黒い物体がはみ出ています。この黒い物体がゴムでした。最初に見つけたときはギョッとしました。

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上の写真はメンテナンス中の様子です。コーヒーボイラーの蓋が開けられて丸い縁に汚れのように付着している黒い物体がゴムです。かなり溶けていることが分かります。

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上の写真もメンテナンス中です。先の写真と角度が変わっていますが、溶けていたゴムを清掃してもらい新品のゴムに取り替えてもらったところです。

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上の写真がメンテナンス後です。コーヒーボイラーの蓋と本体の隙間からゴムがなくなっています。ついでに   コーヒーボイラーへ接続されている管の接続部に付着していたスケール跡も清掃してもらいました。


Tips1:スチームボイラーの清掃

ホットウォータースパウトのお湯の出が悪いという今回の件で、期せずスチームボイラーの内部を視認することができました。滅多にない機会でしたので自分の記録のためにまとめたものをここ(note)にも公開します。これをごらんの方のお役に立てば幸いです。

LINEA-MINIを正面から見て右側の内部写真が以下です。大きな円筒型のパーツがスチームボイラーで、そこにカド丸・三角形のパーツがボルト3本で取り付けられていて、そこへ2本の管が入っています。この三角形のパーツは熱交換器(=プレ・ヒーター)で、2本の管はそのままスチームボイラー内の熱湯に常時浸っていて温められています。2本の管のうち下にある管に浄水が流れてきて、常温の浄水がスチームボイラー内の熱湯による温度で温められます。そして上の管からコーヒーボイラーへぬるま湯になった浄水を供給しています。
(写真 ⤵︎)

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経路としては、ダイレクトにコーヒーボイラーへ浄水を送ってもいいわけですが、浄水が常温では給水する都度コーヒーボイラー内の湯温が急激に下がることになりますから、エスプレッソを連続抽出するのには具合が悪いです。このため熱交換されてぬるま湯になった浄水がコーヒーボイラーへ供給される仕組みになっています。

上の写真で、熱交換器の直下にコックが設けられた管が見えます。スチームボイラーのドレン管です。

下の写真は、そのドレン管からスチームボイラー内の水が(お湯が)排出されている様子です。排水して清掃が行われます。

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ぐるりと反対側。LINEA-MINIを正面から見て左側の内部写真が以下です。

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こちらにもカド丸・三角形のパーツが取り付けられていますが、ここには管ではなく白いチューブが入っていますね。こちら側の三角形のパーツはヒーティングエレメント=電熱部品です。

ヒーティングエレメントをスチームボイラーから取り外した様子が下の写真です。管のように見える曲がりくねった部分が直接熱くなってスチームボイラー内の浄水を沸かします。

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ちなみに、ヒーティングエレメントに灰色っぽい汚れのような物が付着していますが、これも浄水に含まれるスケール(石灰分)です。技術員の人いわく、あえてスケールは清掃しないのだそう。今回のメンテナンスではこの清掃は本題ではないし、半端に清掃をすると却ってスケールが遊離してボイラー内で浄水中を漂い、場合によってはまたどこかで目詰まりを発生させる恐れがあるため、とのことでした。これくらいのスケールですから衛生面の問題はありませんし、機械故障の観点からも問題ないとの見解でしたので承知しました。

そして、ヒーティングエレメントを取り外したスチームボイラーの様子が下の写真です。内部に見えている棒状のパーツは反対側から入ってきている熱交換用の管です。管にもスケールが付着しているのが見えますが、ヒーティングエレメントと同じ理由で清掃はしませんでした。

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なかなか、眼福です。

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下の写真(再掲)はスチームボイラーを左側から見たところです。写真右側がマシン前面、パドルハンドル側です。

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コーヒーボイラーは満水状態で動いているためスケールの付着というのはさほどないそうですが、スチームボイラーは水の層と蒸気層に別れていて、水が満ちていない蒸気層にスケールが付着しやすいとのこと。それがスチームボイラー内の全体に付着していく仕組みだそうですが、今回、スケールの付着はほどんど見られなかったと報告いただきました。

ここにスチームボイラー内の水量を測る水位計があって、水位計のセンサーにもスケールが付着していましたからセンサーは基本的に蒸気層にあるか、水層と蒸気層の境界にあるのだと思います。センサーに水が触れなくなると浄水を供給して、定められた水位を保持するということだと考えられます。

また、ホットウォータースパウトからお湯を取り出すときは、スチームボイラー内の蒸気圧を利用してお湯を送出しているので、ボイラー内の蒸気圧がなくなるとお湯も出なくなる仕様だそうです。なるほど毎週1回2リットル分のお湯を出しているときには、スチームボイラーの圧力計の針がどんどん下がっていきます。スチームボイラーの最底部から写真右側に向けて出て、その後上方へ伸びている管がホットウォータースパウトへお湯を送る経路です。スチームボイラーの上部に蒸気層がありますから、蒸気圧で上からお湯を押して下の管から送出するのだと思います。


Tips2:コーヒーボイラーの清掃

LINEA-MINIの筐体を開けたら判明したコーヒーボイラーのゴム劣化。この修繕のために期せずコーヒーボイラーの内部を見ることができました。これも滅多にない眼福なことです。下の写真は再掲です。メンテナンス中で、清掃中です。

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下の写真も再掲ですが、ゴム交換と清掃を終えたコーヒーボイラーです。写真右側がマシン前面、パドルハンドル側。写真手前側のボイラー側面に空いている穴がドレン管が取り付けられていた箇所です。

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コーヒーボイラーの背面側です。写真奥がマシン前面、パドルハンドル側。前掲の写真に比べると引きで撮っています。

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コーヒーボイラー背面へ接続している管は2系統に分岐していて、コーヒーボイラーから写真手前側へ伸びてきて直下に曲がって銀色のスチームボイラーの影に消えている管が、コーヒーボイラーから抽出口へお湯を供給している管です(下の写真で黄色いマーカーで丸く囲んだ管)。コーヒーボイラーの底部にもヒーティングエレメント(=電熱部品、下の写真で赤色で丸く囲んだ箇所)が設置されていて、ボイラーと抽出口の間でPID制御(=Proportional-Integral-Differential Controller)で温度管理が行われています。コーヒーボイラーのヒーティングエレメントは赤丸の反対側(右側)にも同じ物があって(写真では見えていませんが)、2本で温度管理されています。

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もう1系統、黄色いマーカーの矢印で示した黒い箱に電極のような青い線と赤い線が入っていて、そこからさらに右側下方面へ曲がって見えなくなっている管があります。この管はコーヒーボイラーのもう一つのドレン管で、通常はこの管が使用されていますね。黒い箱は電磁弁。電気のON / OFFで開け閉めが行われる弁で通常は閉まっています。抽出口を清掃する際にポルタフィルターにブラインドフィルターを取り付けてバックフラッシュさせますが、そのときにマシン前面のドリップトレーに排出されるお湯がこの経路を通っています。電磁弁はそのときに開く仕様です。





今回の対応の発端となったコーヒーボイラーの止水剤が溶出した件では期せずボイラーの内部まで見ることができてとてもよい経験になりましたし、ホットウォータースパウトのお湯の出が悪い、という件でも結果的にはスチームボイラーのメンテナンスは不要でしたが、「不要」ということを確認するためにスチームボイラーへのアクセスは必要でした。スチームボイラーの水抜きをして内部の状態を確認できたこと、これもとてもよい経験でしたし、当店ではマシンの定期保守契約を結んでいないのでこの点からも購入から4年半、業務使用を始めてから3年半が経過したこの時期に状態の確認ができたことは良かったと考えています。

(了)

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