『フードテック革命』世界700兆円の新産業「食」の進化と再定義 解説
序章
2016年開催の食×テクノロジーイベント『スマートキッチン・サミット』
◆キッチンOS という考え方
料理レシピがプログラム化され、IOT技術で調理家電をコントロールするという考え方
サミットでの主要な議論は『これから何がキッチンにおけるキラーアプリになるか』ということ。
2019年には植物性プロテイン(タンパク質)を用いた代替肉スタートアップのImpossible Foodsが世界最大の技術見本市「CES2019」でふるまったインポシブルバーガー(写真①)が大きな関心を集め、フードテックが広く世に知られるターニングポイントとなった。
これからのトレンドイシューは
①サイエンスと食の融合
②フードビジネスとしてのプラットフォームの勃興
③ライフスタイルの中での「顧客体験」の価値創造
というフードイノベーション
本書の目的
①フードテックトレンドの理解
②事業創造のトレンドを知ること
第一章 今、なぜ「フードテック」なのか
フードテックの市場規模は700兆円(諸説あり)、その理由として
①食品、流通、外食など市場規模がとてつもなく大きい
②フードテックを活用した新しいプロダクト&サービスが登場し、すでに萌芽しつつある市場が一気にブーストする可能性がある(スマートキッチン、パーソナライズドフード、スーパーフード)
③フードテックを活用することで、食の供給問題が解消され、潜在的に存在していた市場へのアクセスが可能となること(需要はあるが、優先順位的に今は届いていない人達にも必要な食品が届けれれる)
④肥満、栄養失調、健康被害、気候変動、地域福祉、フードロスなどの解消で生まれる市場創造。それはウェルネス&ヘルス市場、旅行、音楽、エンタメなどの産業と食が連動するビジネスとして活性化する可能性がある
フードテックの投資が集まっている領域
①植物性代替肉のような新素材
②食料品デリバリー
③ロボットレストラン
④食のパーソナライゼーション(個人別に食品をカスタマイズするサービス,EX;その人の腸内細菌の状態に合う食品を提供等)
今求められる「食の価値の再定義」
フードテックが注目される理由として深刻な社会課題解決の手段であるとともに、もう一つおおきなドライバーがある。それは生活者の変化による「食の価値の再定義」である。2017年にインスティテュート・フォー・ザ・フューチャーのレベッカ・チーズニー氏が旧来の価値に加え、12項目の新しい価値を提示した(表1)。そして未来のフードテックはこれらの価値を実現させるべきものであると述べた。
表2にあるように食に求める生活者のニーズが広がる中、旧来の大量生産、大量販売を前提としたマスマーケティング向けのバリューチェーンでは必ずしも人々が求めるニーズに対応できなくなってきている。
しかし技術の進化とそれに伴うアクセスコストが下落しインターネットが人とモノがクラウドでつながり、個人別情報(DNA・腸内細菌・ストレス情報)が安価で検査可能な時代となっており、これまでに取れなかった生活者のニーズが理解できるようになりつつある。
今、このロングテールに位置付けられる価値はどのような広がりがあるのか?どのようなテクノロジーで満たすことができるのか?食品メーカーも家電メーカーもキッチンメーカーも外食も『食品リテール(小売り)』もベンチャー企業もアカデミアも多くの企業・ステークホルダーがこの無限に広がる大海原に商機を感じその獲得を目指して動き出している。
Food for Well-being という考え方
「生活者の多様なニーズに応える」にあたって理解しておくべきことが
Food for Well-being という考え方である。
予防医学研究者の石川善樹氏は2017年のSKSジャパンで以下の様に述べた。
「料理や買物など、時短や効率を追求した結果、人々はどういう状態に陥ったか。それは肥満である」
米国の調査では、加工食品が増え、調理家電が普及し、料理に時間をかけなくてよくなったぶん、人々が時間をかけるようになったのは
「Snacking(おやつを食べること)」
これによって、肥満が増え、生活習慣病も増えていった。
これからのフードテックは、このテクノロジーの進化によって、人々の人生をどのように豊かにするのかという思想があって初めて価値を生むと考えるべきである。
第二章 世界で巻き起こるフードイノベーションの全体像
シグマスシス(本書著作チームメンバー所属)では、食分野における現在地とこれから狙うべきポジション、組むべき相手の道しるべとなる「フードイノベーションマップ」を作成している。
Food Innovation Map Ver2.0
①生活者体験
・購買体験の進化 ⇒デリバリー、ピックアップ、Farm to テーブル
・家の中の食 ⇒代替タンパク源、完全栄養食、医食同源、未来の調味料
・家の外の食 ⇒フードロボ、シェフスキルのコンテンツ化、サブスク
シェアダイニング、コミュニティーの為の食
・調理の進化 ⇒利便、レシピ、パーソナライズ、精密調理、食育・食学
コミュニケーション、マインドフルネス(癒し)クッキング
・防災・非常時の食 ⇒自然災害、感染症、極地、自給率
・文化継承・創造 ⇒レシピ、技、道具、地域性、食材
・無理なくロス削減 ⇒サービス系、技術系、コミュニティー
②実現する仕組み
・次世代食材生産 ⇒垂直農業、アクアテック、植物性プロテイン、発酵
培養、微生物、エッジ生産、生物多様性
・次世代パッケージ ⇒鮮度維持、可視化、品質保持、感染症対策
・食・料理体験向上コアテクノロジー ⇒フレーバーサイエンス、VR・
AR、音・空間・映像演出、ディスプレー、カメラ
・新フードデータ構築 ⇒調理実績、摂取実績、生活者の行動と嗜好、
栄養データ、データ収集プレーヤー
③センシング技術、先端素材
・未来の物流 ⇒ドローン、無人自動運転配送
・AI、センサーなどベース技術
・ユニークな素材
食の進化を見通すキートレンド
・超個食化食
・小売り×フードテックの挑戦
・シェアリングエコノミーと食
・レストランの進化+フードロボット
第三章 With&Afterコロナ時代のフードテック
予防医学研究者 石川善樹氏
人類の生きるリズムの変化
第一フェーズ・・・自然にリズムを合わせていた時代・72候
第二フェーズ・・・機会にリズムを合わせていた時代・5勤2休
第三フェース・・・不確実に合わせる時代
「時間」「空間」「仲間」サンマ(3間)を自分で設計する事態に。
今までは時間を創り出す調理家電・・・「セーブ・ザ・タイム」から
調理時間そのものを豊かにする・・・「エンリッチタイム」へ
食ビジネスの変化
①冷凍食品・・保存料や添加物の必要が無いヘルシーな食べ物・保存も利く
溶かして食べるではなく、ひと手間もふた手間もかけて料理を楽しむ
(サンマの変化で人々は単純に時間を持て余すようになる)
②デリバリーサービス・・従来飲食店モデルからデリバリー前提のモデルへ
ユニクロ的な食
ユニクロ・・生活を豊かにするための普通の服(個性を発揮することにとらわれない)を技術(テック)を使って先進的な服を開発している。
新しいフードコンセプトを実現するためにフードテックを使うという視点
テックから物事を考え始めると、それが制約条件になってしまうからである
第四章 代替プロテインの衝撃
代替プロテイン市場
①代表格:インポシブルフーズ・・インポシブルバーガー2.0
インポシブルフーズの植物性パティは世界15,000店以上のレストランで採用されている。
②名を馳せる存在:ビヨンドミート
米マクドナルドもビヨンドミートの植物性パティでPLTPlantLettuceTomato)バーガーを販売し、米ケンタッキーにも植物性フライドチキンを提供。
米グーグルのセルゲイ・プリン氏はオランダの培養肉スタートアップMosaMeatに出資。Twitter共同創業者のビズ・ストーン氏は「食はリアルなSNSである。世界中の人々に植物性プロテインを供給し地球環境を救うというビジョンの壮大さに圧倒され投資を決めた」
何故代替肉はここまでの盛り上がりを見せているのか?
その理由は「これから世界100億人の胃袋をどうやって満たすのか?」の問いと同じ。
鶏がふ化から57日目の重さ
1957年当時 → 905グラム
2005年 → 4202グラム と生物として無理をして大きくしている。
理のある畜産の在り方は、豚熱や鳥インフルエンザなどの感染症を発生させる原因でもある。
地球上の人間全部で消費する水は200億リットル/日、食料10億トン/日
家畜の牛15億頭が消費する水は1700億リットル/日、食料600億トン/日である。現在の家畜はこれまでの技術革新により動物を生き物としてでなく、食肉、牛乳、卵を生産する機械として進化させている。
つまり、多くのスタートアップのミッションは「家畜に頼らないプロテイン供給」である。
フードデザートで親の世代が貧困で糖尿病などを患っていた米のZ世代(1990年代後半~2000年生まれ)は健康に気を付ける世代となっているが、ベジタリアンやビーガンへのハードルは高いため、その前段として植物性プロテインが注目され一気に火が付いた。
世界のスタートアップや大企業が狙っている市場は年間2400億円に達した代替プロテイン市場ではなく、世界の184兆8500億円の食肉市場であり78兆1440億円である乳製品市場であり、17兆6530億円である鶏卵市場である。
③ジャスト・・・完全植物性のマヨネーズを販売
主力商品のシャストエッグは通常の卵より環境負荷が圧倒的にすくなく、飽和脂肪酸が66%少なくコレステロールは100%カット、逆にプロテインは卵より多い。
第五章 「食のGAFA」が生み出す新たな食体験
料理レシピとは、ジャガイモや牛肉などの「食材」と、その「分量」が記載されており、切る煮る炒めるといった「手順」があり、そこに「写真」が付いているものである。
レシピ進化の3段階
バージョン1.紙媒体のレシピをデジタル化したおの
バージョン2.レシピを動画化したもの
バージョン3.レシピのソフトウェア化・・ソフトウェア化されたレシピがスマホから調理家電を制御して料理をすること
またIotでつながった調理家電は、どんな料理がどんな地域でどんな曜日や時間帯で作られているのかデータ収集ができる。こうした生活者の消費動向や調理実績は食品メーカーや飲料メーカーにとって喉から手が出るほど欲しいデータであり、モニター調査よりも精度が高い。
今後はキッチンOSを中心に、レシピを開発する会社、調理家電を開発する会社、買物体験(EC)を司る会社、食材を作る会社(ミールキットなども含む)に、食材を届ける会社がシームレスにつながる。これにより、個々人の「好み」「健康状態」「保有する調理家電」に応じて、料理がパーソナライズされる時代に入る。
第六章 超パーソナライゼーションが創る食の未来
2018年10月シアトルスマートキッチンサミットで米Habit(ハビット)がパーソナライゼーションを発表して注目を浴びた。ハビットから送られた飲料を飲み、血液検査と口腔内粘膜を採取しハビットに送る、ハビットはそれを分析し、ユーザーの体質、消化の特徴を診断、それに基づいて採るべき栄養素や運動などコーチングするというもの。将来はミールデリバリーまで繋げたいという内容。これはパーソナライゼーション2.0と言われる。
2.0のままであれば、「AIの言うがままに与えられたものを食べる世界」「一人一人が別々のものを食べる孤食の世界」となってしまう。
パーソナライズ3.0ではどんなサービスになるのであろうか?
①ヒトをより賢くするパーソナライゼーション
自分が食べているものに対して、何故それを食べているのかという意義付けが出来るということ。これまで出来なかった調理方法ができるようになる、使ったことのなかった食材を料理に取り入れられるようになる、フードロス問題に貢献できる、など自身を成長させてくれる仕組みをもっていること。
②コミュニティーを意識したパーソナライゼーション
ヒトは個人個人の好みに沿って食べるよりは、誰かの好みのものを一緒に食べるほうが幸せを感じる。食事を通して自身の家族や友達、周りの人をもっと知る、喜ばせる、そういった要素が無いと非常につまらないものとなってしまう。食というのは、自分自身が美味しいと思うモノをシェアしたり、憧れの人が食べている同じものを食べたり、故人を懐かしんだり、他社を想いながら食べることが楽しみである。
③システムシンキングに基づくパーソナライゼーション
DNA検査を基にしたサービスは人種差別の引き金になる懸念もあり、ヒトの都合だけを考えていては社会や地球全体にとって正しいかどうかは分からない。パーソナライゼーション機能だけでなく、サステナビリティーに向けた価値や社会全体にとっての価値提供などが大切という議論がある。
ガストロノミー(美食学)の進化
例えば、雨の映像が流れ空間でパチパチ弾けるポッピングキャンディーを食べて雨の雫を感じる演出や、木の幹の真ん中にいるような空間でカカオバターでできた球体の料理を口にいれることで木が水を吸い上げていく生命の感覚を味わってもらう、原始地球で大雨が降って植物プランクトンが生まれる過程の海の中はラーメンのスープの様な味だったと言われる。空間演出に食の体験をドッキングさせることで付加価値を付けることができる。
映画館に食の体験をドッキングする施設があると、映画の完成度も上がると思います。
最新のデバイスとして電極を介して口にいれたUSBで味覚情報を人に送ることができる。移動ができなくなった人に対して音とデバイスで食べた感覚を提供することができるのです。
第七章 フードテックによる外食産業のアップデート
外食産業を変える4つのトレンド
①フードロボット
②自販機3.0
③デリバリー&ピックアップ
④ゴーストキッチン&シェア型セントラルキッチン
①フードロボット
19年1月ラスベガスの「CES2019」では原料の粉からパンを焼き上げ、陳列するまでが可能なロボットが展示された。ロボットには焼き立てのパンの香りが漂い、品質も予想以上に美味しかった。
②自販機3.0
ペットボトルの自販機が1.0、カップ珈琲自販機で見られる砂糖やミルクなどを調整できるマシンが2.0、出来立てのラーメン屋カスタマイズサラダ、カスタマイズスムージーなどを提供する小型の無人レストランというべきものが3.0となる。
③デリバリー&ピックアップ
スマホ予約・決済システムを活用し受取拠点で人手を介さず注文者が料理を受取出来る仕組みやウーバーなどのデリバリーなども進化を続けている。
④ゴーストキッチン&シェア型セントラルキッチン
店舗を持たないデリバリー専用レストランが複数入居するゴーストキッチンや複数のレストランが集まったシェア型のセントラルキッチンが増えている。これらはデリバリー&ピックアップのフロント側の変化に合わせたものである。
超未来レストラン-OPEN MEALSの取り組み-
オープンミールズは、日本発で「食のデータ化」のプロジェクトを進めるチームである。18年に米テキサス州オースチンで開催された「SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)」で東京から寿司の形状や味、食感といった料理を構成する要素をデータ化して転送しSXSW会場に設置した3Dフードプリンターで再現する「寿司テレポテーション」というアイデア展示を行い世界中から注目を浴びた。
寿司テレポテーションのコンセプト動画
デリバリーを支えるゴーストキッチン
デリバリーが増えると、レストランの営業と両立することがシステム的に難しくなる。その課題を解決する形で生まれたのがデリバリーに特化したゴーストキッチンである。広い駐車スペースや広い客席、視認性の良い場所、アクセスの良い場所、など家賃が高い物件である必要なくなる。
外食ビジネスの未来
今までの飲食店は食材、シェフ、レシピ、調理、場所、顧客という機能が一か所にあつまりバンドルされてはじめて成立しているサービスであった。だからこそ立地や回転率が大事であり、そのために高額な賃貸負担を負いオペレーションの効率化が最大の命題になっていた。デリバリーはそれをアンバンドルし「場所」の制約を無くしたサービスと言える。
ロイヤルホールディングスの菊池会長は「今の世の中にある労働は3つあり、肉体労働、頭脳労働、そして感情労働である」感情労働とは学校の先生や医者のように自分の感情をコントロールして模範的にカウンターパートと接する働き方である。今後は肉体労働はロボットに、頭脳労働はAIに置き換わっていく。絶対に置き換わらないのが感情労働であり、それこそが人間の働く意味である。
ロイヤルHDの完全キャッシュレス研究開発店「GATHRING TABLEPANTRY」を出したのは顧客が満足を感じる部分に人を配置し、皿洗いや掃除、レジなどは機械に任せるという発想です。つまり機械に置き換えても付加価値が下がらない部分を機会に任せるということ。(人と機械の役割分担)
また、ロイヤルHDはセントラルキッチンを所有しており、カレーはシェフが丁寧に味を調えながら鍋で作り、ビーフシチューは牛肉を手切りにするなど手間をかけて調理しています。セントラルキッチンで1次加工したものを店舗で最終加工して出している。コロナで家庭向けに冷凍してネット販売する「ロイヤルデリ」が好調です。意外と売れることが分かりました。
ミスターチーズケーキ田村氏
コロナ禍でネット販売やテイクアウト、デリバリーに挑戦する動きが盛んになりましたが、思う様に売り上げが立たないのが多くの現実です。それは顧客がレストランに対して求める価値とのズレがあるから。顧客は料理だけでなく一緒に行く人や時間、過ごす空間も含めた体験価値があるからこそわざわざレストランに足を運んでいた。その体験価値の重要性が改めて浮き彫りとなった。
これまでのレストランは料理を仕上げてすぐに食べてもらえる「箱」に最適化された料理を作るプロであったが、デリバリーでは20分以上も後に食べる料理にチューニングし直す必要があり、それが非常に困難である。
またこれまでは六本木ならこんな店、渋谷ならこんな店と、極めて細分化されたエリアでターゲットとポジショニングを考えそのマーケットで勝ち進めば人が来てくれたモデルだったが、デリバリーだとそれも成り立たない。
また顧客に店の存在を知ってもらうためのツールは基本的にはネットになるが、デジタル空間の影響力がどれだけあるかが重要になり、食べてもらう前のコミュニケーションの良し悪しがカギを握る。
レストランで食べる体験と全く異なる状況でレストランと同じ料理を提供していては料理や店の価値が下がりやすい。シェフ個人に紐づけたネット通販やテイクアウト専用のサブブランドを作ることが有効。オンラインでしか買えないアイテムがあり、店舗でしか買えないアイテムがあることが良い。
例えば自宅でも体験できる「非日常の体験」を提供するスイーツ。チーズケーキを冷凍で届けることで、最初は冷凍でアイスケーキとして、次は半解凍で外と中のコントラストを愉しむ、完全解凍ではブリュレの様な滑らかさを味わうという、自宅でゆっくり時間を掛けてスイーツを愉しむ体験を提供する。
従来のレストランは「客数」「客単価」「営業日数」という要素で売上のトップラインが決まっていたモデル。しかし今回のコロナを経て固定店舗の売上に加えてネット通販という新たな収益をえる道筋が見えてきた。これまでレストランビジネスの収益を阻んできた店舗の大きさという天井が突如としてなくなったことを意味する。これまでのレストランの努力の成果はミシュランの★や食べログなどの点数でしか貯まらなかったが、これからは店舗以外の収益から「数字」となって返ってくる時代となった。
第八章 フードテックを活用した食品リテールの進化
食品リテールが直面する課題を解決するフードテック活用の3つの切り口
①新たな生活者接点の構築
医食同源×パーソナライゼーション・・・個人別の栄養サポート
②ウェルビーイングを生む体験の創造
グローサラントの進化や店内で野菜の栽培(無農薬)
③調達方法の革新
スタートアップや異業種とのコラボレーション
新型コロナの影響もあり、食品小売りの現場では人との接触を避けるべく、作業の自動化やロボットの導入が進む
第九章 職のイノベーション社会実装への道
日本でもフードテックのコミュニティの動き
国内において、ここ数年で立ち上がったカンファレンスやコミュニテー
の一部を紹介
①Smart Kichin Summit Japan 【主催】シグマクシス 2017年
②日経フードテック・カンファレンス
【主催】日経新聞社&日経BP 2019年
③日経テクノロジーNEXTフードテックトラック 【主催】日経BP 2018年④テックプランター/フードテックグランプリ 【主催】リバネス 2020年⑤FOODIT FOODIT TOKYO 【主催】FOODIT TOKYO実行委員会 2015年
味の素 生活者のUXを激変させる食の新事業を創造していく
2019年にDX推進委員会を立ち上げ、組織の生産性や従業員のエンゲージメント、サプライチェーンマネージメントの高度化をデジタル活用で図るプロジェクト。新事業モデルやスタートアップとの連携も強化していく。
キーワード「パーソナル栄養」
がんや脳卒中、心筋梗塞の3大疾患プラス認知症のリスクを血液検査で測定し、個人に併せてそれに陥らない状態を作る食生活の改善指導、必要なアミノ酸の提供までをセットにしたソリューションを2020年度に展開する計画
第十章 新産業「日本版フードテック市場」の創出に向けて
12項目のフューチャー・フード・ビジョンを提唱
①「自ら作れること・作ること」を大切にする社会
もっと一人ひとりが”つくる”ことに時間を使え、作れる人が増える社会へ②調理時間の価値最大化
③一回一回の食を大切に感じられる世界
④超バリアフリ-ダイニング
個人の思想、信条、ライフスタイルを反映した食生活が世の中に広がって
きている。
・・・ヴィーガン、ベジタリアン、ペスカトリアン、フレキシタリアンetc
⑤食学・料理学のコアスキル化
⑥ニッチな食ニーズにも対応してれる社会
例えばギフモという会社が提供する圧力鍋「デリソフター」は嚥下に
苦しむ家族と同じものを食べたいという親を救いたいという思いから
生まれた調理機。食材の形を変えず柔らかくすることができる。
⑦サイエンス&テクノロジーを通じた日本食文化・技の刷新、世界への発信
特に日本食の発酵食品は健康で環境にも優しい食体験を世界に発信できる⑧食・料理を通じて孤独を減らす
⑨食・料理を通じた地域コミュニティーの復活
事例:「okatteにしおぎ」は食を中心としたまちのパブリックコ
モンスペース
⑩食に関わる移動ゼロ化(究極の地産地消)
現在フードマイレージで東京は1%など、その過程で膨大な輸送エネルギ
ーを使っている状況を改善する。輸送中の品質劣化、減損リスクも最小化
することができる。
⑪自分ゴト化して働ける食産業
⑫「廃棄しない」が前提の食システム・食生活
廃棄をゼロにしないまでも、今起こりつつある様々な取り組みやテクノロ
ジーを活用していくことで廃棄しないことを前提とした社会システムは
作ることができる。
これから日本より発信していくべきこと
①課題先進国としてのポジショニング
人口減少社会・高齢化社会・4割に迫る単身世帯は先進国で類を見ない
事象である。
②和食が持つポテンシャルの最大化と開放
【引用】
田中宏隆 岡田亜希子 瀬川明秀 著
外村仁 監修(2020)「フードテック革命」日経PB