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Honda FC 同期ZOOM Meetingを見て ----Honda FCの哲学と伝統を思う


はじめに

 JFL(日本フットボールリーグ)に所属するHonda FCに、2013年入団した鈴木雄也選手、砂森和也選手(現鹿児島間ユナイテッドFC所属)、栗本広輝選手(現USL、Colorado Springs Switchbacks FC所属)。

 去る5月10日、今は、それぞれ別のチームでプレーする3人が、新型コロナウイルス禍でのリーグ中断の機に、ZOOMで1時間半に渡る、オンラインmeetingを行った。対談の内容は、砂森選手がblogにアーカイブを期間限定公開しているので、ぜひ、そちらを視聴いただきたい。
 私は、あくまで、個人的な感想を、Honda FCの思い出にからめて記したい。

 Honda FCの選手は、真面目で、ストイックにサッカーを追求する姿勢が素晴らしいと、終始、圧倒される思いで、オンラインmeetingの空間に引き込まれた。
 それは、Honda FCの試合の、洗練された質の高いプレーのようでもあり、視聴された多くの皆さんと共有する空間は、あたかもHonda都田サッカー場にいるようで、幸せな気持ちでいっぱいになった。

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〈Meetingのテーマ〉

・Jチームとたたかうときの本音
・対戦して嫌だったチーム・選手
・Honda FCが強い理由・常勝メソッド

〈3選手の経歴〉

・砂森和也選手(Honda FC - カマタマーレ讃岐- アスルクラロ沼津-鹿児島ユナイテッドFC 、JFLベストイレブン(2014年、2015年)
・鈴木雄也選手(Honda FC 2015年より今季まで、主将を務める)
JFL MVP(2014年、2018年、2019年)、JFL ベストイレブン(2014年 - 2019年)
・栗本広輝選手(Honda FC - Fresno FC - Colorado Springs Switchbacks FC、移籍初年度でキャプテンに任命される)
2015年、2018年 - JFLベストイレブン、2016年、2017年 - JFL MVP・ベストイレブン

1. 90分の試合で、相手にどうやって勝つか

 「サッカーは90分で相手に勝つ」ゲームであることを、改めて教えられた。ピッチの上で、Honda FCの選手は、何を見て、どう考えているのか。どういう点で、かけひきをしているか、ということがよく伝わってきて、まるで、勉強会のようでもあった。
 「細部へのこだわり」が、単にテクニックの話ではなく、常に試合の上でどうであるか、というところに焦点がある。終始サッカーの本質について話しているので、手の内をさらすようなリスクも冒していない。話のバランス感覚も、あたかも、ゲームをコントロールするかのようだった。司会を務めた、砂森選手の進行の手腕や、爽やかな人柄に負うところも大きいだろう。

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 テーマ2の苦手とするチーム・選手のところで、「うまさ」と「強さ」について話題がでた。昨今の日本では、「自分たちのサッカー」という言葉がよく使われている。素人考えだが、その言葉が浅い意味になり、語弊が生じているのではないかと思う。サッカーは、うまさを競うスポーツではなく、あくまで90分の試合で、相手に勝つためのスポーツである。
 ボールをパスで保持していくスタイルのHonda FCでも、「自分たちのサッカーをするだけ」という表現はしばし聞かれるが、その意味するところは、勝つためのプロセスにあるのだろうと思った。

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2. 考え、言語化する能力 

 3人の言語化する能力の高さにも驚きを覚えた。話が面白くて、あっという間の1時間半であった。きっと、Honda FCの選手は、いつもこういうことを考え、チームメーイトと話しているのだろう。ピッチの上で、「For the team」でまとまるには、コミュニケーションや、徹底して意見を交換することが必要だ。
 「各々の選手が自分のことにもくもくと取り組む」、「犠牲心」と選手は言い表していたが、私にはとても印象に残っている試合がある。

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 チームのフォーメーションを試行錯誤をしている時期で、ライバルチームに降りしきる雨の中、あれよあれよと失点し、0-4で敗退した。その試合には、私の友達のジュビロサポーターの人が来てくれていた。どう思ったかなと心配していたら、友達は、「面白かったよ。Jリーグのチームだったら、チームが崩壊しかねない状況だろうね(あくまで、その人の意見)。サラリーマンっていうか、不本意かもしれない、不慣れなポジションを一生懸命やっている」と。
 ファンとして嬉しかったのもあるが、浜松でも磐田でも、藤枝でも、静岡で見るサッカーは、面白く、以前のサッカー観戦とは、私には全く別の風景が広がった。

ホーム告知201804_裏_選手名鑑

 対談とは関係ないが、私は、この3年あまり、Honda FCの試合を一人でも多くの人に伝えたいと願って、自作で試合告知や選手一覧のフライヤー・パンフレットを作って配布している。2018年のロシアW杯の時に、「注目する国・選手」のインタビューを行った。JFLは、選手とファンの距離が近いが、飾り気なく、真面目なHonda FCの選手のみなさんは、ファンの取材に快く応じてくれた。
 新型コロナウイルス禍でできた時間で、そうだ、あの選手おすすめの国、選手の試合の録画を見てみようかな、と私は勉強になっている。みなさんも参考にいかがだろうか。
 練習見学の後など、すれ違ったりする時、鈴木選手が仲間とサッカーの話をしているのをよく見かけるが、このチラシでは、具体的な選手ではなく、対談でも話されていたような視点を教えてくれた。鈴木選手は、容姿言動共々、強烈な個性の持ち主であるが、持ち前の素直さで嫌味にならない魅力が、この対談でもよく現れていたと思う。

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3.  Honda FCの強み

 Honda FCの魅力の一つは、阿吽の呼吸の連携だと私は思っている。単に止める蹴るの上手さだけでなく、チームのサッカースタイル、チーム哲学の共有に裏打ちされているのだなと、改めて思う。対談で、栗本選手が特に、OBの人たちの存在や、強化方針について、感謝の念と共に話してくれていた。創部から50年になる伝統があり、また現在は、社員中心の企業チームなので、選手の移り変わりが少ない。
 日本で哲学のあるチームの筆頭、鹿島アントラーズについて、鈴木選手の評も、なるほどと興味深いものがあった。

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 よく、「海外では、サッカー選手の移籍は当たり前」という言葉を日本で耳にすることがある。私は、ラ・リーガの超ミーハーライトファンだが、欧米では、クラブ哲学がまずあって、監督や選手が変わってもサッカーは変わらないクラブが多い。また、カンテラ(育成下部組織)や、チームのレジェンドの存在など、基本的に選手は大事にされている。選手のチーム愛も強いと感じる。引き抜かれることで移籍金をチームに落とす、あるいは、プレースタイルがチームまたは、監督と合わない、という、ある程度移籍に筋が通っている印象がある。

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 そこは、サッカー文化の根ざし方の違いもある。日本では、Jリーグでもビッグクラブの多くは、前身の企業チームの後ろ盾と歴史があるチームがほとんどだ。ヤマハのように企業が街に根ざしている地域もある。地域リーグでも、企業だけでなく、教員や学校のOBのチームも多い。日本のサッカー文化のあり方の一つではないか、とこの頃私は思っている。企業チームであるHonda FCに、私が一度だけだが、実際に訪れたラ・リーガの街のスタジアムに通じるものを感じるのは、そういったことにもよるのではないだろうか。

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4. 所有するサッカー専用スタジアム、「Honda 都田サッカー場」

 Honda FCの強さに、「Honda都田サッカー場」の存在もあると思う。JFLのファンの間では、「聖地」と呼ばれている。
 私が、2012年、初めて都田を訪れ、メインスタンドに座った時、懐かしいサッカーの原風景のような場所に帰ってきたような気持ちがした。

 コンパクトで、すぐ目の前で迫力あるプレーが見られるサッカー専用スタジアム、審判の控え室やロッカールーム、通路を飾る歴代の選手一覧、ハーフタイムの地元ゆかりの人たちのショー、育成下部組織、そして、芝の管理人。サッカーの試合に必要なものが、簡素であってもここには全てある。「見つけた」と思った。

Honda選手名鑑


 関東から、ローカル線で訪れたのだが、「もう1試合見てみようかな」「もう1試合」と、往復9時間が全く苦にならなかった。「都田」という歴史と独自の文化があり、山々に囲まれたのどかな風景も、私は気に入った。「浜松駅から遠くないですか?」と聞かれることがあるが、都田だからいいのだ。選手にもサッカーに専念するのに、心地よい場所でないだろうか。
 さらには、本田宗一郎氏の本田技研の伝統、職人気質、こだわりの精神も、クラブ哲学に反映されているのかもしれない。
 Honda都田サッカー場のメインスタンドは、スタイリッシュで、実に本田技研らしいデザインである。

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5.  触発され活性化する視聴者の意識

 具体的には、ぜひ、対談を聞いていただきたいのだが、砂森選手が「圧がある」とあげたチームに、私は同じようなことを感じていて、個人的にうれしくなってしまった。この対談は、きっと、聞いている人がそれぞれに、「共感」や「意識の活性化」への触発を与えられたのではないか。それが、ネットをというデジタルメディアを通して、非常に濃密な空間を作り出す一因になったのだと思う。
 「なるほど」「やっぱり」とか、「あの時の試合だ」と思い出が掘り起こされたり、聞いている方も饒舌になってくる。

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 砂森選手が名前をあげたチームは、内部の事情と思われる理由で監督が脈略なく変わり、チームの成績に浮き沈みがよく生じる。カテゴリーを落とした時に、私のご贔屓チームとの対戦で、「勝機があるかも」とちょっと思ってしまったりする。ところが、どんなにチーム状態が悪くても、頑張っていいサッカーしている程度のチームとでは、「個」の力が全く違うのが、素人の私にも一目瞭然なのだ。ボールをなかなか取れないし、ボールを持つをあっという間にPAエリアまで運ばれる。
 それを、そのクラブのサポーターの友達に言ったら、「当たり前。どれだけ強化費がかかっているか」と、何度目かの降格に呆れ果て、ため息をつかれた。もちろん潤沢な資金も強さの理由だろうが、下部組織や設備といった伝統の力もあるのだろう。

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 鈴木雄也選手の話にでてきた、2013年の野津田での、FC町田ゼルビアさんとの試合。私も、ゼルビアサポーターや関係者だけでなく、関東の仲間や知人がたくさん試合会場にいた。あの時は、チームがなかなか結果がでていない時期で、Jリーグ経験のあるチームとの試合を見るのは私は初めてだった。「どれくらい通用するのか」全く見当がつかなかった。

 ところが、終始、ゼルビアさんを圧倒する試合展開で快勝。ファンである私が腰を抜かすほど驚き、同時に誇らしい気持ちでいっぱいになった。鼻が野津田の山より高くなりそうだった。ゼルビアさんも関東のご贔屓チームの一つなので、100%手放しとはいかなかったが。
 また、試合に来てくれた、サッカー通の友達が、Honda FCのサッカーを「実に面白い」と言ってくれたのも嬉しかった。さらに、「ここ一番で勝つ」、Honda FCの底力を初めて経験した試合でもあった。
 その後、「勝たなければいけない試合」で勝つHonda FCを何度も目にすることになったが。
 勝たなければ、というより、やはり調子がイマイチだった、ある年のリーグ前半、ライバルチームとのダービーマッチで、アップの気合の入り方が全くいつもと違う試合があった。その時、首位だったライバルチームを、試合開始から、押し切って勝利。普段、手を抜いているわけではなく、WOWOWで都並敏史さんが解説でおっしゃっていた、「ダービーに順位は関係ない。特に、調子が悪い方は、ダービーを起爆剤にして波に乗りたいというのがある」というのは、こういうことかと勉強になった。都田で、サッカーの面白さを私は教わっている。

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おわりに

 JFLの選手がこのように、長く自分たちのことをしゃべってくれる機会は、今まであまりなかったのではないか。お知らせして見てくださった、他チームのサポーターや関係者の仲間も、「とても面白かった」と言ってくださった。
 今回のZoom対談は、中日新聞の静岡版で、Honda FCの担当記者の川住貴さんが、5月17日記事に取り上げてくださった。
 Honda FCに興味をもって、試合を見に来てくれる人が、一人でも増えて欲しいと私は願っている。

※一番最初の集合写真は、2015年3月7日、JFL開幕戦のHonda FC vs 流経大ドラゴンズ龍ヶ崎戦のスタメン集合写真である。3選手をスカウトし、将来を嘱望されながら夭折された、故松田大輔強化担当の追悼試合となってしまった。

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 その年の終わりに、初めて3選手揃って、JFLベストイレブンを受賞した時、砂森和也選手が「天国の松田さんに恩返しができました」とコメントしていた。
 相手のドラゴンズさんには、2018年にHonda FCに入団する石田和希選手が出場。

 読んでいただき、ありがとうございました。

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