見出し画像

【訪問看護の転職】訪看の”あるある不満”を経営者が徹底分析!転職時に気をつけることも

訪問看護に魅力を感じて働いていたとしても、様々な理由から転職を決意する人も少なくないはずです。

確かに転職は看護師やリハビリ職にとってキャリアの重要な節目となり、転職して良かった!と思えるケースも多いことでしょう。

ただ、転職には様々なリスクや注意点が存在していることも忘れてはなりません。

今回の記事は、訪問看護の転職につながる”あるある不満”を、訪問看護ステーション経営者(えん訪問看護ステーショングループ)である私が、徹底分析してまいります。

また、転職時に気をつけることまで解説しているので、特に訪問看護ステーションから訪問看護ステーションに転職をしようとしている人は、ぜひ最後まで読んでみてください。


そもそも、看護師・リハビリ職はどのくらい転職をするものなの?

本題に入る前に、看護師やリハビリ職の平均的な転職回数をおさえておきましょう。

明確な看護師の転職回数を示したデータは、かなり古いものになってしまうのですが1.1回と示されています(厚生労働省)。

最近のデータでは、令和2年に「転職者がいる事業所の割合」が算出されており、そちらによると医療・福祉産業は38.3%という数字が示されています(厚生労働省)。

つまり、3つの事業所に少なくとも1人以上は転職経験者がいるということです。

全職種においては33.0%とのことなので、医療・福祉業界は比較的転職が多い傾向にあると言えます。

まずは我々にとって、転職は身近な存在であるということをおさえておきましょう。


看護師の転職理由ランキング

では次に、なぜ転職をしようと思うのか、看護師の転職理由をランキング形式で見てみましょう。

転職経験のある看護師202人に「転職理由」についてアンケート調査を実施したところ、以下のような結果が得られました(Biz Hits)。

1位:転居のため
2位:人間関係への不満
3位:夜勤がつらい
4位:収入を上げるため
5位:労働時間への不満
6位:希望の診療科にうつるため
7位:仕事内容への不満

Biz Hits


1位の「転居のため」はプライベートの変化によるもので、避けられない場合も多いことでしょう。

夜勤も訪問看護ステーションではあまり考えられない事象かと思われます。

この中で、訪問看護ステーションにおいては「人間関係への不満」「仕事内容への不満」をしっかりと読み解く必要があると考えております。


訪問看護における”あるある不満”を徹底分析

私が思うに、訪問看護ステーションにおいては以下のような不満が多いのではないでしょうか。

  • 管理者がコロコロ変わって落ち着かない

  • 看護師とリハビリ職の連携が取れず、雰囲気が良くない

  • 独自のルールが多すぎて制度を守っているのか不安

  • 上層部の方針が理解できない


管理者がコロコロ変わって落ち着かない

管理者が頻繁に交代することで、職場の安定感が失われることがあります。

これはリハビリスタッフが立ち上げた訪問看護ステーションや、大手の訪問看護ステーションに多い傾向です。

特にスタッフ10人前後をいきなりマネジメント出来るような管理者は数少ないため、入社後必ず*ハレーションが起こります。

半年ほどは管理者もスタッフもお互い頑張ろうと様子見をしますが、結局ハレーションを解決出来ず、管理者かスタッフが辞めていきます。

当たり前ですが、企業側としては管理者の育成を重要視する必要があるのと、求人者側は離職率や管理者がどのくらい務めているかを調べても良いかもしれません(難しい部分かと思いますが。。)

*ハレーション:ひとつのミスやトラブルが影響して、周囲の人や仕事に悪影響を与える状態


看護師とリハビリ職の連携が取れず、雰囲気が良くない

看護師とリハビリ職の間でのコミュニケーション不足が原因で、職場の雰囲気が悪化することがあります。

これはお互いに見えない壁を作っているケースが多いです。

「訪問看護からのリハビリ」という制度上の理解が欠けている場合が多く、看護師とリハビリのベクトルの先が別に向かっている事業所が多いです。

特にリハビリ職が所長・管理職の場合は、看護師に対する現場理解が必須です。この点が疎かになると、高確率で組織崩壊が起こります。

お互いの仕事内容や感情特性、思考パターンを理解し合い、連携を強化することが必要でしょう。

求人者はステーションを実際に見学して雰囲気を確かめたり、連携方法を聞いてみるのも一つです。


独自のルールが多すぎて制度を守っているのか不安

ある一部の訪問看護ステーションでは、独自のルールで運営されることがあり、不正行為につながるリスクがあります。

『赤信号みんなで渡れば怖くない』ではありませんが、不正や返戻に悪意がある場合は、最悪指定取消まで進展する重大案件です。

確かに実際に転職をしてみないと分からない点ではありますが、最低限自分のキャリアを守るためにも、訪問看護の制度を理解するクセはつけておくべきでしょう。


上層部の方針が理解できない

上層部・会社の方針が理解できないという不満は、かなりよく聞く話です。

上層部・会社の意図がスタッフに伝わらない場合、組織としての一体感が失われます。

この点、上層部の問題なのか、管理者からスタッフへ情報を下ろせてないのか、課題としてはこの2パターンがあると考えます。

確かに、スタッフの人数が増えれば当然経営者の声は届きにくくなりますが、経営者が一対多数で伝達出来る手段を身につけることが重要です。

基本的には管理者へしっかり下ろして、管理者からスタッフへ下ろせる仕組みと組織風土にしていくことが必要かと思います。


ご紹介した内容は、確かに転職するときには見えにくい部分も多いかと思いますが、業界としてどのような不満が出やすいのかを理解しておくことは非常に重要です。

これらを理解しておくだけでも、転職における失敗リスクは減らせると考えております。


転職時に気をつけること【訪問看護→訪問看護】

次は、転職時に気をつけることについてお伝えします(訪問看護ステーションから訪問看護ステーションVer)。

主に気をつけないといけない点は、以下の3パターンです。

  • 元職場で担当していた利用者とのコンタクト

  • 元職場のスタッフの引き抜き行為

  • 管理者→管理者、管理者→起業パターン


元職場で担当していた利用者とのコンタクト

辞める際、担当利用者にB訪問看護ステーションに移るのでBステーションでどうですか?と説明をしてしまうケースや、関係が良かったため退職後にも自宅に行ってしまう等のケースにたまに遭遇します。

そして、行くつく先は転職先のB訪問看護ステーションで訪問することになってしまうケース。これは完全にNG行為です。

辞める際に担当利用者に伝える内容などは、既存のステーションの上司に確認をとっておくようにしましょう。

また、前の職場で知り得た個人情報を使用する行為もNGです。

退職後も何らかの利用者とのアクションがある場合は、元々の職場に確認しながら進めないといけません。


元職場のスタッフの引き抜き行為

転職先のBステーションが良くて、元職場のスタッフにオススメする行為はよくある話です。

転職者を見つければ紹介手当などを設定している企業もあるので、インセンティブ目的で声をかける行為も目立ちます。

この点、確かに難しい部分でもあると感じており、元々仲良い同僚同士でご飯行った際などに、会話の中で転職の話が出るのは正直普通のことかと思います。

しかし一方で、同僚に転職意思がないのに金銭目的などで転職後の条件などを提示したりしてしまうと、明らかな引き抜き行為と見なされる可能性があります。

内容のエビデンス(メッセージの内容等)が発覚されれば、法的な効力が発生する可能性も出てきます。

特に一人の同僚だけではなく、複数人を手当たり次第引き抜くのは、高確率でNG行為になるので注意が必要です。


管理者→管理者、管理者→起業パターン

管理者はステーションの顔にもなる存在なので、近場への転職はシコリを生まないようにしておいた方が良いです。

転職後に元職場の悪口を周りに言ってしまうケースや、内部情報をベラベラ喋ってしまうケース等は結構あるあるです。

元職場のルールブックなどの機密情報をコピーして転職先で流用してしまうなども散見されます。

一般スタッフと違い、管理者や経営者になると訴訟リスクも上がってくるので、退職後の立ち振る舞いは気をつけておいた方が良いでしょう。

ちなみに小耳に挟んだことですが、とある大手ステーションで、レイヤーが高めに設定されている管理者がスタッフと利用者を結構引き抜いて起業したことが問題になったらしく、かなり揉めているとのことです(訴訟案件)。

驚かれる内容かもしれませんが、社会性が乏しい(人が多い)医療職はついつい自分の目先の利益欲しさにやってしまうこともあるのです。

そして、それをしたということは逆にされるということでもあります。

起業をしたいなら、元いた会社に応援してもらえるくらいの関係性になるのが理想です。


企業が競合他社への転職制限をかけることは可能か

上記に挙げたような例はNG行為ではありますが、少なからず散見される行為でもあります。

では、企業側の立場として、これらの行為に制限をかけることは可能なのでしょうか。

この点、実は企業間でも賛否両論あり、それぞれの立場の正義があるため難しい問題だと感じております。お互い感情的になってしまうケースが多いのも事実です。

実際、私も過去に何回かこのようなケースに遭遇し、顧問弁護士に相談したこともあります。

私が思うに、企業側で退職時に同一エリアで就業制約しているケースは多いのですが、基本的には訪問看護の業態だと『職業選択の自由』の方が強いので制約は難しいと考えております。

結論、同一エリア(近場への転職)でも、スタッフは制限を受けないという解釈で良いと思います。

ただし、前述した通り、不躾な行為が増えると個人や企業への注意喚起や訴訟リスクは増えるため、やはり「飛ぶ鳥跡を濁さず」という気持ちで転職に望んだ方が良いでしょう。


【注意喚起】年収が高すぎる訪問看護への転職は気をつけたほうが良い

最後に、転職理由ランキングにも挙がっていた「収入を上げる」についても触れておこうと思います。

転職をするからには今の年収よりも上げたい!と思うのは自然のことでしょう。

しかし、年収が高すぎる訪問看護への転職は、大きなリスクも潜んでいることを理解しておく必要があります。

ちなみに、以下の求人はどのように感じるでしょうか。

「スタッフ募集!550万円以上保証!!」

私は、大手以外の一般スタッフで上記のような求人は、理想論の可能性があると考えています。


首都圏(特に東京)は看護師という人材の奪い合いをしてる状況にあり、市場が高騰して年収相場が上がるのは需給のバランスで仕方ないことだと考えます。

とはいっても、法改正が示す通り、売上が各社上がっている訳ではありません。

もちろん各社、加算やルートの効率化などは図っていると思いますが、大きな努力の割には1-10%程度の収益UPにしか過ぎないでしょう。

となると、労働分配率(人件費率)を一気に上げて、給与を捻出している企業も多いはずです。

東京のスタッフ募集で「600万円/700万円」という年収水準の求人を見ますが、通常の訪問看護から考えると1.4-1.7倍くらいの給与です。

通常稼働率(1日5件前後)で人件費率(法定福利費込み)を考えると、80%前後まで上昇していることになります。

果たして、この数値に違和感を持てる人はどのくらいいるでしょうか。


先日、あるYouTubeを拝見しましたが、訪看を立ち上げて軌道に乗るまでの資金が3,000-4,000万円かかる試算をしていました。

こちらの代表は資金力がありそうなので文句はありませんが、大抵の新規事業所は代表与信があまりなく、このような膨大な額の借入は難しいのが現実です。

創業間もない会社には、小さく産んで大きく育てる(最小限の借入で大きく伴走するという考え)という考えで融資をしてくれます。一般的には1,000-2,000万円が関の山でしょう。

売上が順調に上がり、稼働率が上がり、採用がコストをかけずに、そして退職するスタッフがいても訪問の穴を埋めずにまわせる会社運営であれば、年収が高かろうと問題はありません。

ただ正直、そのような会社は世の中になく、中小企業のどの会社も苦労しており、大手も大手で別の苦労があると推察します。

訪問看護の業態を理解すればするほど、”高すぎる”年収には危険が隣り合わせであることも分かるかと思います。


このように相場にそぐわない高年収を提示している会社は潰れる可能性が高く、いざ再転職するときは潰れた会社にいたというだけでマイナス要素になってしまうこともあります(私の場合、年収が高過ぎれば自身の会社選びが悪いと判断する場合もあります)。

目先の年収ももちろん大事ですが、実績・実力に見合った昇給・賞与がもらえて、450→500→550→600万円と段階的に年収を上げていける企業と成長した方が圧倒的に良いと考えております。

つまりまとめると、「甘い話には必ず落とし穴があるので注意が必要」「転職は自己責任」ということです。

自身のキャリアアップと生涯年収から考えて、地に足をつけて選んでいくべきでしょう。


えん訪問看護ステーションでは、一緒に働いてくれる仲間を随時応募しています!(会社HP:えん訪問看護ステーショングループ

「訪問看護に興味がある」「初めてでも大丈夫かな?」という方は、ご相談だけでも構いませんので、ぜひご連絡ください!
えん訪問看護ステーションの採用情報はコチラ


記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?