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【訪問看護の採用戦略】人材紹介会社は悪なのか?結論、使い方と付き合い方次第。


「人材紹介会社は悪」

私は「えん訪問看護ステーショングループ」という訪問看護ステーションを経営していますが、しばしば上記のような言葉を聞くことがあります。実際、X(旧:ツイッター)上でも、多くの議論がなされています。

この記事では、なぜ人材紹介会社は悪と言われているのか、私自身はどう思っているのか、そして人材紹介会社とはどのように付き合っていけば良いのかなどを中心にお伝えしてまいります。


人材紹介会社が「悪」と言われている理由

まずは、なぜ人材紹介会社が「悪」と言われているのか、その理由を抑えておこうと思います。

それぞれに理由はあるかもしれませんが、多くの場合は至ってシンプル、「料金の高さ」だと思います。

下記は採用手法別の相場費用です。

  • 人材紹介会社:費用は100万円前後

  • スカウト型求人(ジョ○メ○レー):看護師60万円、セラピスト25万円

  • SNS関連(広告ありorなし):0〜数十万円(投稿コストは発生)

  • HP・LP関連:0〜数百万円(開発・維持・運用コスト)

  • リファラル採用:0〜数十万円


一目瞭然、人材紹介会社が頭一つ抜けて費用がかかることが分かります。

人材紹介会社は想定年収の20〜30%を手数料として支払わなければなりません。

例えば、「想定年収450万円」で「手数料20%」の場合は 、『税込100万円』という具合です。

経営者であれば見慣れた方式かもしれませんが、これだけ聞くと、正直高い!と思うのも不思議ではありません。

特に資金余力の少ない5人くらいの事業所では、かなり大きい金額と言えます。

毎回紹介会社を利用していれば利益はすぐに飛んでいくし、何なら赤字になることも大いに考えられます。

加えて、採用したスタッフが本当に良い人なのかどうか、乗るか反るかという博打という要素も多いでしょう。連続で反ってしまったら間違いなく立ち行かなくなり閉鎖に追い込まれる可能性もあります。

このような背景から、人材紹介会社が「悪」という意見が出てくるのも理解できなくはないのかなと思っております。

 

訪問看護経営者である私は、人材紹介会社をどう思っているのか?

では、訪問看護経営者である私は、人材紹介会社についてどのような考えを持っているかお伝えしましょう。


結論は、「良」です(決して悪ではない)。

なぜなら、人材紹介会社を利用するメリットもあるからです。

ただし、使い方や付き合い次第という条件は入れておきます。

そもそも、採用にあたっては必ず人材紹介会社を使わなければならないという決まりはありません。

ではなぜ、人材紹介会社を利用するのか。

少しトゲのある言い方をしてしまいますが、「あなたの会社が採用するためのプラスαな準備やSNS運用などの動きが出来てなかったから人材紹介会社に頼んだんでしょ?」ということです。

これは一種の企業戦略であり、会社の自己責任といえます。

このような企業にとっては、人材紹介会社がなければ採用することはできないため、費用が高すぎるから「悪」と決めつけるのは短絡過ぎる考え方といえるでしょう。

人材紹介会社があるからこそ、あなたの会社は運営できているのです。


人材紹介会社を使うメリット

弊社はおかげさまでSNS運用やリファラルの採用戦略がうまくいっており、人材紹介会社の利用率は1割未満となっております。

ただ、その中でもゼロではないということは強調しておきます。

時と場合によっては、人材紹介会社が大変助けになってくれるケースもあります。

  1. 急な退職や休職で訪問が回りきれなくなる場合

  2. 稼働が上がり過ぎたが採用が追いついていない場合

  3. ピカイチな人が現れた場合


1、2に関しては、現場に支障を来している(来たす可能性がある)場合なので、費用云々は一旦置いておいて、人材確保に注力をします。

毎回人材紹介会社に頼るのではなく、100万円前後のコスパを凌駕できるケースなのかを見極め、戦略的に使うことが重要になると考えています。

3に関しては、大きな金額を積んだとしても欲しい!と思える人材に出会えたときです。

ただ、このような人材と出会えるかどうかは、人材紹介会社との付き合い次第といえます。

このように、人材紹介会社には明確なメリットもあるため、まったく使わない(お付き合いをしない)というのも問題だと認識しております。


人材紹介会社との効果的な付き合い方

それでは次に、人材紹介会社との効果的な付き合い方をお伝えしてまいります。
人材紹介会社と効果的に付き合うためには、以下のポイントを押さえておくことが重要です。


1.信頼できる会社と固定的な関係を築く

FAXや営業電話でむやみやたらに付き合いをはじめて、どの会社なのかも分からない状況は危険なので辞めておいた方が良いです。

無差別に複数の会社と付き合うのではなく、2~3社程度に絞り込んで固定することを推奨します。

その際、できれば会社ごとに担当エージェントをつけてもらい、手数料や内容の交渉窓口を固定化して、長くお付き合い出来る環境を作っておくと良いでしょう。

この点、担当エージェント側としても、長くお付き合い出来るところと信頼関係を築きたいと思ってくれているため、双方にメリットがあるといえます。

 

2.手数料の交渉

採用をする側としては、なんとしても手数料を下げたいと考えるでしょう。

反面、人材紹介会社側としては手数料が高い会社に紹介したいと思うのが当然でしょう。

そのため、何がなんでも手数料を下げろというのは、お付き合いをする上では望ましくないと考えます。人材紹介会社としても利益が大事だということを理解することも大切です。

弊社の場合、事業所の緊急度や採用人数に応じて手数料の交渉を行います。

基本的には20%で基本契約交渉をしますが、急な退職など緊急度が高い場合には個別契約で25%(30%)に上げ、そして良い人を優先的に紹介して欲しいと交渉します。

逆に年間の採用計画で5人を人材紹介会社から採用すると決めた場合には、1人15%などといったように下げる方向で交渉します。

この点、人材紹介会社としても年間5人採用すると約束してくれる企業があるなら売上確定(利確)もしやすいので、担当エージェントも会社に稟議を上げやすくなります(年間5人採用できなかった場合は20%の手数料を追加で支払うなど約束を決めておくことも重要)。

あくまでも、相手の立場も考慮した交渉が大切になるのです。


3.退職時の返金規定の交渉

一般的に、退職時の返金規定は2週間以内で100%、1ヶ月で50%、半年後で5%などですが、これも多少返金率の交渉が出来ます(人材紹介会社にもよる)。

(入社後のマッチングが上手くいかなかった場合、退職をコントロールすることで損失を少なくする裏技も存在します。)

他にもやり方は色々あると思いますが、紹介したような知識や交渉技術を身につけて人材紹介会社とお付き合いすると、数十万円の無駄な支払いが減ったりします。 


大切なのは、日頃から人材紹介会社と付き合っていることです。

いざピンチになってお付き合いを始めてもいい人材は回してもらえず、中途半端な人が来るからまた尻込みしてしまうという負のスパイラルに陥ってしまいます。

すべての人材紹介会社と仲良くする必要はありませんが、いざという時に力になってくれる会社やエージェントとは、定期的に支払い履歴を残しておくのも一つです。銀行付き合いと一緒ですね。 

スタッフが一生懸命に訪問して出した売上や利益を無駄にしないためにも、経営者として人材紹介会社と「日頃から効果的にお付き合いする」という術は身につけておいた方が良いでしょう。


投資と回収のバランスを考えよう

最後に、人材紹介会社を利用する上での、投資と回収のバランスを理解しておきましょう。

人材紹介会社を利用すれば、100万円前後の費用がかかることは前述した通りです。

ただし、スタッフ一人一人がフル稼働している状況で仮に月80万円売上、年間960万円、人件費率65%だったとしたら年間340万円程度は粗利が出ていることも忘れてはなりません。

これは、フル稼働になって4ヶ月あれば投資回収出来る計算です。

このように考えれば、人材紹介会社における費用の見方も変わるのではないでしょうか。

もちろんフル稼働になるまで時間がかかる、辞めたらどうする?といった意見はあるのは分かりますが、 フル稼働に持っていく努力をするのも、辞めないよう早く独り立ちするところに持っていくのも、これがマネジメントというものです。

また、上手く制度化すればキャリアアップ助成金57万円も1年半後には取得出来ます。

この340万円や57万円があれば、次の採用への投資原資ともなります。

例えば、SNSマーケティング出来る人材や採用に特化した人材を月50万円で雇用して月1人採用に至る戦略が組めたら、採用担当に年間600万円(法定福利費込み約700万円)の投資で1200万円超の経費を浮かすことが出来ます。

何なら2人採用出来る可能性も十分に考えられるため、投資リターンはやり方次第なのです。

手元にお金がなくて判断出来ない・使えないということでしたら、追加融資などを準備して、採用や年間スケジュールで投資回収を出来るかを本気で考えた方が良いです。

世の中の成長している訪問看護の経営者は当たり前のようにやっています。

紹介会社を使わない(使えない)と言ってる事業所ほど採用戦略をやってなかったり、採用へのToDoが動いていないため、投資と回収のバランスはしっかりと理解しておきましょう。


まとめ

人材紹介会社の利用は決して「悪」ではなく、訪問看護事業における重要な戦略の一つだと考えます。

高額な費用に見えるかもしれませんが、適切な使い方や付き合い方をすることで、大きな効果を発揮します。

信頼できる紹介会社との長期的な関係を築き、手数料や返金規定の交渉を行い、適切なマネジメントを実践することで、訪問看護事業の成長を支えるスタッフを効果的に採用することが可能です。

さらに、投資と回収のバランスを取り、採用後のフォローアップを充実させることで、スタッフの定着率を高め、事業の安定化を図ることができます。

人材紹介会社を効果的に利用し、適切な投資を行いながら、スタッフの満足度を高める施策を実践することで、事業の成長を実現することができるでしょう。


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記事編集・監修:和田祥平
理学療法士。作家。Webライター。病院・訪問看護ステーションで勤務をする傍ら、介護・リハビリに関する記事の執筆・監修、書籍の出版等を行なっている。最新著書:介護のお世話にならない リハビリの専門家が教える 足腰の教科書(メディカルパブリッシャー)

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