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『影響力の武器』は噂どおりヤバい内容だった-#カタノリ 読書会vol.4 開催レポート

『影響力の武器』を課題図書にした #カタノリ 読書会 第4回も、かなり盛り上がり、参加者一同ホクホクで終えることができました。良かった。

当日の盛り上がりはなかなか再現できませんが、この記事では、本題に入る前に確認している「著者の立場、課題図書の概要(時代背景)」部分のフルバージョン(当日は抜粋のみ)と、参加者の皆さんの感想をお届けします。

著者のバックグラウンド

著者は、ロバート・B・チャルディーニ / Robert Beno Cialdini さん

図3

めちゃめちゃチャーミングな笑顔のおっちゃんです。
こんなおじいちゃんになりたい。

名前を見てのとおり、イタリア系ですが、ウィスコンシン州ミルウォーキー出身のアメリカ人です。ミルウォーキーというと ビールの Miller が有名ですが、どうやらドイツ系移民が多いようですね。

図4

(左)ウィスコンシン州はココ。(右)Millerのビール工場(撮影は萩原)

基本的にはずっと研究畑の学者さんですね。アリゾナ州立大学 心理学・マーケティング名誉教授とありますが、現在は引退されて Influence at Work という会社を通じて、活動されているようです。

ずっと学者ですが、稼げなかった若いときの下積み時代に働いた、中古車ディーラー、寄付金支援団体、テレマーケティング会社などでの経験も著作に反映されているそうです。

『影響力の武器』という本の成り立ち

日本語版『影響力の武器』の原題は "Influence: Science & practice" ですが、その前作がオリジナルのようで、"Influence: The Psychology of Persuasion" というタイトルだったようです。
最新著作のタイトルも "Pre-suasion" だったりするので、Persuasion/説得 というのが、チャルディーニさんの関心の中心なのかもしれません。

図5

オリジナルが出版されたのは1984年ということで、35年以上にわたる大ベストセラーということ。そんな前から、既にここまでの内容が研究されていたというのも驚きです。

社会心理学、脳科学、行動経済学などで新しい研究成果が発表されているが、本著作は少しの修正に留め(追加はしない)、そういった新しい知見は『影響力の武器 実践編』(原題:Yes! 50 Scientifically Proven Ways to Be Persuasive)や『影響力の武器 戦略編』(原題:The Small BIG: small changes that spark big influence)へ反映されているそうです。

図6

原題やオリジナルの装丁と、日本語版との違いよ


日本語版の特長は、専門家(社会行動研究会)と翻訳者のタッグで書かれているというところでしょう。
おかげで、圧倒的に文章が読みやすい。
翻訳書にありがちな「ん?ここ何言ってるの?」という読みにくさが、ほとんどない。素晴らしい。

6つの「武器」

返報性  Reciprocation
コミットメントと一貫性  Commitment and consistency
社会的証明  Social proof
好意  Liking
権威  Authority
希少性  Scarcity

この6つの「武器」については、世の中にたくさん「まとめ記事」的なものが溢れているので解説はしません。
むしろ、読書会をやってみて、あらためて感じたのは、「まとめ記事」をいくら読んだところで、全然理解は深まらないな、ということ。
各章の最後に「まとめ」があるのだけれど、それを読んだだけでは、ちっとも頭に入らない。

期日までに読もう、自分に刺さるポイントはどこだろう、と意識しながら読むことに加えて、やっぱり本文内のエピソードを読むことで圧倒的に理解が深まり、記憶に残る

これがまさに「超有名だし、なんとなく知ってるけど、ちゃんと読んだことない名著」を、読書会で取り扱うことの最大のメリット。

どの武器も「これはやべぇな...」と思いながら読みましたが、一番心に残ったのは「社会的証明」の章に書いてあった「人通りの多い場所で死にそうになった時の助けの求め方」でした。

あとは、マーケティングをやってると感じる、日米で顧客に効く手法に差がある理由も理解できました。

アメリカ:個人主義の傾向強い → コミットメントと一貫性が効きやすい
日本:集団主義の傾向強い → 社会的証明が効きやすい

ということなんでしょうね。

7つめの武器?

どうやら最新著作で「7つめの武器」として Unity principle を発表したらしいです。

According to Cialdini, the Unity principle moves beyond surface level similarities (which can still be influential, but under the Liking principle). Instead, he says, “It’s about shared identities.”
“It’s about the categories that individuals use to define themselves and their groups, such as race, ethnicity, nationality, and family, as well as political and religious affiliations.
A key characteristic of these categories is that their members tend to feel at one with, merged with, the others. They are the categories in which the conduct one member influences the self-esteem of other members. Simply put, we is the shared me.”
When we belong, or feel we belong to a group, we’re likely to be more open to persuasion attempts.

Unityとは、表面的な類似性(影響力はあるが、好意の範ちゅう)を超えて働く。共有アイデンティティに関することだ。
自分自身や自分たちが属するグループを定義するときに使うカテゴリー、例えば人種、民族、国籍、家系、または政治的、宗教的な結びつき。こういったカテゴリーの特長は、他者と一体と感じる点にある。そこでは、あるメンバーの行動が他者の自尊心に影響する。つまり、「私たち」とは「共有された自己」ということだ。
グループに属する、または属していると感じているとき、人は説得に対してオープンになりやすい。
出典: https://cxl.com/blog/cialdini-unity/ 
翻訳は萩原。

「好意」との違いが分かりにくいですね…… ご存じの方は教えてもらえるとうれしいです。

参加した皆さんの感想

関連書籍のご紹介

この本に出てくる「カチッ・サー」というのは、二重プロセス理論で「システム1」と呼ばれるモノで、こうなってくると、やはり行動経済学をもっと学びたくなってくる。

ということで、読書会中に言及されたのは、最近出版されたコチラと

古典になりつつあるコチラでした。

#カタノリとは

たいていの人生の悩みや仕事のコツは偉大な先人たちが多くの苦労の末にたどり着いた知恵を残してくれているものです。

現代に生きる私たちは、素手で戦う必要はなく、偉大な先人たちが残してくれた知恵をうまく使っていきたいものです。なにせ、現代の問題はただでさえ複雑化している上に、加速するスピードの中で、問題を解決していかなくてはならないのですから。

先人の知恵をベースに、自分の置かれた環境で成果を残すことを「巨人の肩の上に乗る」と表現したりします。

アイザック・ニュートンは同じ科学者であるロバート・フックへ当てた手紙の中で、「私がかなたを見渡せたのだとしたら、それはひとえに巨人の肩の上に乗っていたからです。(If I have seen further it is by standing on the shoulders of Giants.)」と書いています。

私たちは巨人の肩の上に乗る小人のようなものだとシャルトルのベルナールはよく言った。私たちが彼らよりもよく、また遠くまでを見ることができるのは、私たち自身に優れた視力があるからでもなく、ほかの優れた身体的特徴があるからでもなく、ただ彼らの巨大さによって私たちが高く引き上げられているからなのだと。
ー イギリスの作家・哲学者 ソールズベリーのヨハネス著「メタロギコン」より

そんな生き方、働き方を多くの人に知ってもらいたくて発信しています。
ハッシュタグは #カタノリ です。

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