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自分のことばを探す旅①

 細川英雄『自分の〈ことば〉をつくる』を手に取ったとき,初見の本のはずなのに,まるで長い間探していて,ようやく見つけたような感覚があった。そのタイトルから,この本には何かヒントがある,一歩先に進むきっかけが必ずあると,私が直感したからかもしれない。
 いつか何かを書きたいと思っている。思考を進めようと,自分は何を書きたいのか,なぜ書きたいのかに答えを出そうとすると,上手くまとまらない。納得できない。もやもやを抱えているうちに,日常の慌ただしさに流され,そんな問いは頭の片隅に追いやられてしまう。情けないことにそんなことを数年続けている。
 そんな中,この本に出会い,読み終えた。正直,シンプルな主張に肩透かしを食らった感があったが,再読すると確かにそうだと思える。

 あなた自身が考えていることを相手に伝えるためには、あなた自身の〈ことば〉の中身が不可欠です。その中身とは、あなたにしか語れないことであり、あなたの全存在を賭けて相手に問いかけるものであるとも言えるでしょう。この、あなたにしか語れないことを、この本では「自分のテーマ」と呼びます。

 一部を引用した。この本によれば,「自分のテーマ」を相手に伝えることは,「全存在を懸けて相手に問いかける」ことなのだ。私が「自分のテーマ」を扱うとき,私は何を書きたいのかという問いは,私は全存在を賭けて何を問いかけたいのか,と言い変えられる。そして、私はなぜ書きたいのかという問いは,私はなぜ全存在を賭けて問いかけたいのか,と。
 この本のおかげで,私は書くことを,気晴らしや趣味としてではなく,私の人生は何であるのかを追求する行為として捉え直すことができた。もしかすると,この行為への渇き,切望が,書きたい気持ちの源泉だったのかもしれない。次に私がとるべき行動は,「自分のテーマ」を見つけるために書き続けることであろう。なぜなら、私たちは歩み続けるからだ。たとえ人生の意味が分からずとも,いつかそれを見つけるときまで。

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