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『ネット依存症と社会脳の関係性』- ネット依存症による社会脳の働きへの影響について

岡田尊司さんの本で『回避性愛着障害 絆が稀薄な人たち』の中で引用されていたデータです。2012年、中国科学院武漢物理・数学研究所の雷皓教授らが、ネット依存症の若者の脳をDTI(拡散テンソルイメージング)という最新の手法で調べた結果、眼窩前頭野、前部帯状回、脳梁などの大脳白質で、神経繊維の走行の乱れの増加や密度の低下が認められたと報告されたようです。
前部帯状回は共感性、眼窩前頭野は報酬系と呼ばれる意欲や抑制に関わる領域です。
ネットワークを介した顔の見えない関係では内側前頭前野などの社会脳が働きにくいそうです。社会脳は顔を見る、気持ちを推測するといった社会的な行動に際して使われるのです。対面で会った人の行動を見ると同じ行動に関わる脳の領域が活性化するのです。この活性化がミラーシステムで、共感や共鳴が生じます。ネットを介して相手の行動が見えない状況では数字を処理するのと同じ働きになるので共感を司る部分は活動しません。なので、zoom会議などでは人とのやり取りであっても社会性を司る脳の領域は働かないのです。

愛着とネット依存

ネット依存になりやすい人の傾向として愛着が希薄な人が多い傾向があるようです。安全基地となってくれる人がいなかったり養育態度に情緒的な温もりに欠けていたり、過干渉過ぎたりする人がインターネットの世界を避難場所として求めている傾向があるとのことです。愛着の問題により、ネット依存という問題にも
繋がってしまうのです。


特別支援としてのアプローチ


特別支援教育の観点からも、ネット依存症に苦しむ子どもや若者に対しては、以下のようなアプローチが考えられます。

まず第一に、ネット依存症の予防と早期発見が重要です。教育機関や家族は、子どもや若者がネットに過度に依存しないように心理的なサポートを行う必要があります。具体的には、適切なネット利用のルールや時間管理の指導、バランスの取れた生活習慣の促進などが有効です。また、定期的な健康チェックや心理的な変化に敏感に対応することも重要です。

さらに、ネット依存症による社会性の低下やコミュニケーション能力の欠如に対しては、特別支援教育の手法を取り入れることが有益です。例えば、グループワークや対面のコミュニケーション訓練、感情や意図の読み取りを重視したプログラムなどが有効です。これにより、社会的な関係性の構築や相互理解の促進が図られます。

また、家族へのサポートも重要です。ネット依存症に苦しむ子どもや若者の家族は、理解と支援を提供する必要があります。家族間のコミュニケーションの活性化や共同活動の推進、専門家やサポートグループへの相談などが役立つでしょう。

さらに、ネット依存症に対する啓発活動も重要です。特別支援教育の教員や関係者は、ネット依存症のリスクや影響について正確な情報を提供し、子どもや若者、そしてその家族に対して適切な対策やサポートを伝える役割を果たすことが求められます。また、学校や地域社会との連携を強化し、ネット依存症への取り組みを総合的かつ持続的に推進することも重要です。



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