東京家族~迷彩服~

 家事の一つに洗濯がある。洗濯を辞書で引くと「汚れた衣服などを洗って綺麗にすること」と書かれている。しかし、家事としての洗濯は洗濯機で洗った衣服を干し、乾いたら取り込み、たたみ、それぞれの場所に収納するまでを言う。
 衣服を洗うのは洗濯機がしてくれるのでそこまで大変ではない。その後が本当の洗濯だと思っている。我が家は三人家族だが洗濯物は割と多く出る。その理由は夫だ。夫は朝と夜にお風呂に入り、外から帰ると必ずパジャマの前に別の洋服を挟む。すぐにお風呂に入ってくれれば一着分の洋服を選択せずに済むが、夫曰く、家に帰ってきたら少しゆっくりしたいらしい。気持ちは分からないでもないが、お風呂に入ってからゆっくりした方がより一層「ゆっくり」を堪能できると思う。しかし、それは人それぞれなので夫の意見を尊重することに決めた。しかし、大人の洋服は割とかさばる。さらに大判のバスタオルを一人一枚、一回のお風呂で一枚使う我が家にとって、バスタオルを二枚使う夫は本来なら極刑に値する。それに夫の意思を継いでか夏場は娘も汗をかいたと言って学校から帰ると着替えることがある。そんなこんなであっという間に洗濯籠は山盛りになる。
 今の季節、強い日差しに高温な環境なので洗濯物はあっという間に渇いてくれるので洗濯という視点で見ると夏はありがたい。しかし、近年の夏の日差しは強烈だ。おしゃれや美容などではなく安全の為に日焼け止めを塗ったりサングラスをしなければならないほどだ。洗濯物に関しても強い日差しの元に干し続けていると生地が痛む。けれども仕事などで家を空けなければならないので、乾いたらすぐに取り込むという事も出来ない。なので私は夜に洗濯をして朝に取り込むようにした。気温にもよるがバスタオルやTシャツなどは乾いているので空気の入れ替えに窓を開けると同時に取り込む事が出来る。しかし、取り込んだだけでは洗濯を終わらせたことにならない。たたんで元の場所に収納するまでが洗濯だ。なのでその作業をなるべく少なくするために、取り込んだ洗濯物から使ってもらうことにしている。
 朝のシャワーを浴びる夫がバスタオルを一枚と下着を使い、学校に持って行くハンカチを娘が使う。多少なりとも作業が減るが、減るだけだ。残された洋服はたたまなければならない。なのでより作業を減らす為、私は自分自身のあるものを差し出すことにした。それはお洒落だ。私は取り込んだ洗濯物の中から昨日着ていた洋服引き抜き着替える。大人の洋服が二枚減るだけで洗濯物はかなり減る。
無地の黒色のTシャツに無地のオフホワイト系のズボンというどこにでも馴染む洋服をここ数日着ている。十年以上連れ添っている夫にも日中を共に過ごしている娘にも気が付かれてはいない。

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