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価格が左右するもの

【ラジオ体操134日目】

こんにちは。
それなりに高いものを購入する際は、複数店舗を訪問して相見積もりを取ったり、値引き交渉をするものの、最終的な決断は価格ではなくスタッフの対応で決めてしまう非効率人間コマリストです。


今日は『価格と価値』というテーマで書いていきたいと思います。


皆さんは、何かものを購入する際に決め手となる基準を持っているでしょうか?


多くの方は”価格”を基準にされていると思いますが、高額商品になればなるほど価格以外の要素を決め手としている傾向があるように感じます。


今日お話しさせていただいた会社の経営者が、”失敗談”として価格設定のミスについて話をしていて、それが面白かったのでnoteに残しておきたいと思います。

新規参入の仕掛け

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今日お話しさせていただいた方は、様々な業界で使用される「刃物」の研磨を生業としている会社の経営者さん。


この会社はもともと、木材加工用のバンドソーといわれる刃物の研磨を専門にしてきました。


ただ、木材の高騰や木製家具の需要が縮小傾向にあることから、3年前に満を持して「金属切断用刃物」の研磨に挑戦したのです。


木材を切断する刃物と、金属を切断する刃物は、形状や材質、価格、研磨方法などすべてが異なるので、3年前の時点では全くの素人同然。


それでも会社の未来がかかっているということもあって、必死に勉強して、知識と技術を身に着ける傍ら、新規開拓のために必死に営業をしていったのです。


その営業方法は、驚くことに「飛び込み営業」。
しかも、電話やメールでアポイントを取得してからの訪問ではなく、ピンポンを押して挨拶するところから始める本物の飛び込み営業です。


何十年も前の話ではないですよ。平成31年の出来事です。


その結果、大手では5社、中小企業も含めると数10社というお客さんを獲得し、今では対応しきれないほどの案件を抱えるほどになっています。


新規事業の仕掛けというタイトルにそぐわない、泥水をすするような地道な活動が、会社の未来を引き寄せたんです。

成功の要因

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この話を聞いた私は、本当にびっくりして、他にもいろいろと伺ったのですが、その中で出てきた話がこの成功を導いた要因となっているということを理解したのです。


成功の要因は3つあります。
❶同一地域内に、刃物の研磨に対応できる会社が存在しないこと
❷圧倒的低価格でのサービス提供
❸本人の想像すら超える高品質


まず、同一地域内に刃物の研磨に対応できる会社が存在しないという点については、日本全国を見渡しても数えるほどしか存在しないというほどの希少性を備えていたんです。


そのため、丸鋸といわれる刃物を使用して金属の切断加工を行っている会社のほとんどが、超高額の費用を支払って遠方の研磨会社に依頼をするか、使い捨てしているという状態でした。


そして価格について、金属切断用刃物の研磨に関する知識を持っていなかったため、相場もわからず、自分自身の稼働時間だけを計算して価格を設定していました。


その結果、新品刃物の1/10という低価格でサービスを提供し始めたのです。これには、金属加工会社が飛びつかないわけがありません。この会社に依頼するだけで刃物購入に年間数千万円かけていたものが、1/10になるんですから。


最後に品質について、当初の想定では新品を購入するのと同じくらいの頻度で再研磨が必要になるという想定で、提案活動をしていました。


けれど、3年が経過してみて実際のところどうだったかというと、新品よりも刃の持ちがよく、1週間に1本新品の刃を購入していた取引先は、10日に一回の再研磨でよくなってしまったんです。


交換頻度も削減されて、価格は1/10です。こんなものが選ばれないわけないですよね。

価格設定の失敗?

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この方は私と話をする際に、何度も「価格設定に失敗した」という言葉を口にしていました。


当初の想定を上回る品質で、お客さんから喜ばれているのはいいけれど、再研磨の頻度が計画よりも少ないので、売上が伸びないんです。


この言葉に対して私は、「失敗なんて一つもしてませんよね」と返しました。


3年前、素人同然だったこの会社がこの短期間で大量の受注を獲得できたのは、先ほど書いた要因があってこそです。


つまり、お客さんの信用獲得と実績を積み上げる期間として低価格戦略をとって、十分なデータを取ることができたということです。


ただし、ここから先の案件については、最低提供価格を新品の半額(現状の5倍)として、提案価格は新品の7割にして下さい。とお伝えしました。


もちろんこれは、儲けて下さいという意味ではありません。


これから新規で取引する会社に対しては、品質が新品以上だということを証明するだけの証拠が揃っている状態で、コストを3割削減しませんかという提案をするんです。


相手にとっても、これ以上ない提案ですよね。


これに加えて、この会社にはすでに新品を取り扱っている刃物メーカーから”新品が売れなくなるから品質を下げてほしい”という謎のクレームが入っています。


つまり、この会社がこれ以上超低価格で展開し続けると、金属加工用刃物業界そのものが縮小してしまう可能性があるんです。


そうならないためにも、品質と価値に見合う価格を設定して下さいという提案をしただけ。


価格設定が自社の可能性も広げることにもつながるけれど、過度な低価格戦略が業界をダメにしかねないということを学べる生きた事例だったなと思います。


何かの参考になってたら嬉しいです。

じゃ、またね!

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