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【第4回】 再生医療安全推進機構セミナー『再生医療における政策立案の落とし穴・現場の声の不在とその影響』レポート ~前編~

皆さんこんにちは。
今回は2024年5月31日(金)~6月2日(日)に熊本城ホールで開催された第24回日本抗加齢医学会総会において、再生医療安全推進機構に所属する【劉 懐旭】が行ったイブニングセミナーを3回に分けてレポートします。
まず前編からお届けします。

セミナーの構成は以下の4点でした:

  1. 基本的な再生医療についての説明

  2. 再生医療に関する法規制の背景と内容紹介

  3. 再生医療のアジア市場と日本市場の状況について

  4. 理想的な再生医療と現実に行われている再生医療とのギャップについて

それでは詳しいレポートに入りましょう。

1. 基本的な再生医療についての説明

主に幹細胞治療、PRP療法が知られる「再生医療」は、身体の損傷個所や病気などによって失われた組織や器官を修復・再生する医療として、脳血管障害や脊髄損傷、変形性膝関節症などの疾患を持つ患者さんに提供されます。現在、そのほとんどが保険適用外の自由診療として行われていますが、従来の治療法では解決できなかった疾患に対して新たな治療の道を開いています。

しかしながら、法整備が整う以前にはいくつかの問題がありました。

  • 明確な規制の不在:各医療機関や研究者が独自の基準で治療や研究を行っていたことによる。

  • 承認プロセスの遅延:従来の薬事法下では、再生医療製品の承認プロセスが非常に長期化していました。

  • 臨床試験の規制不足:試験デザインやデータの質にばらつきがありました。

  • 医療機関の設備基準の不備:設備基準や認定制度の未整備により、治療の質や安全性に対する懸念がありました。

  • 市場導入後の監視体制の欠如:導入後のデータ収集やフォローアップが不足していました。

  • 患者への情報提供不足:治療を受ける患者への情報提供やインフォームドコンセントのプロセスが十分ではなく、治療のリスクやベネフィットを十分に理解できないまま治療を受ける患者が多くいました。

これらの問題を解消するため、2013年に「再生医療等安全性確保法」(安確法)が成立し、2014年には「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)が改正されました。

2. 再生医療に関する法規制の背景と内容紹介

「再生医療等安全性確保法」の目的は、その名の通り【再生医療の安全性を確保すること】です。治療リスクに応じて第一種、第二種、第三種の3つのカテゴリーに分け、それぞれに適した規制が設けられています。再生医療を行う医療機関は、事前に提供計画を提出し、第三者機関である「特定認定再生医療等委員会」で審査・承認された後、厚生労働省にて提供計画が受理される必要があります。

出典:厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/000679801.pdf

「薬機法」は以前「薬事法」という名称の法律でしたが、2014年に施行された「薬事法等の一部を改正する法律」により、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」に改名されました。これを略して「薬機法」と呼んでいます。有望な治療法については一定の条件下で早期に承認され、市販後に追加データを収集する仕組みです。また、再生医療製品の特性に応じた柔軟な規制が導入され、製造販売業の認可制度も整備されました。

出典:厚生労働省資料 https://www.mhlw.go.jp/content/000679801.pdf

これらの改正により、再生医療の安全性と迅速な治療提供が大きく進展しました。明確な規制と一貫した評価基準が整備されたことで、治療の安全性が向上し、承認プロセスが迅速化されたことで新しい治療がより早く患者に提供されるようになりました。
市場導入後の監視体制も強化され、製品の長期的な安全性と有効性の評価が可能となりました。

一方で、法改正による影響として、医療機関や企業にとっては提供計画の作成や施設認定のための手続きが増え、事務的・経済的な負担が増加した面があります。

前編はここまでです。
次回では再生医療のアジア市場と日本市場の状況などについて話された内容をレポートしていきます。

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