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清夜に響くブルーライン4曲目

ただいま~

私はガラガラ扉を開ける。
鈴虫の音が聞こえた。

おかえり!
机には母親と父親が座ってごはんを食べている。今日は素麺だ。

風鈴が風に靡いてチリンと鳴り
エアコンがきいてる居間は涼しい。

夕食を食べたらまた出かけるか。

「学校今どんなかんじ?」
母親に聞かれた。
「文化祭に向けて準備したり、今日席替えがあった!」
私達は夕食を食べながら談笑した。
親とは仲が良い方だと思う。

「ごちそうさま!ちょっと友達と2時間だけ遊んでくる!」
「夜は危ないから気を付けなさいよ。」
父親は何にも言わなかった。


友達と遊ぶはちょっと嘘。
私は川原でいつも夜歌っているのだ。
田舎なので人は少ないし
近所迷惑にもならない。
夏の夜風が気持ちよく月の光が反射していて
中学の頃から歌っている。
都会は路上ライブがさかんらしい。
いいなあと思いながら
一人で口ずさむ清夜が好きだったりもする。
嫌なことがあったらヘッドフォンをつけて
音楽をきいてこのあたりを散歩する。

歌うのは私の好きな曲をただひたすらに。
夏は夜でも少し暑いからだいたい一時間くらい。

深呼吸をする。
首にかけていたヘッドフォンを耳につける。
音が鳴り出す。

私は口ずさんだ。
観客はいない。ただ鈴虫が鳴いてるだけ。
この時間が放課後のリフレッシュ時間だからいいんだ。

もう少しここはキーを上にしたり
ここでブレスを入れた方がいいな。
好きな曲は自分が納得するまで何度も練習する。

パチパチパチパチ

ん?今拍手の音がした?
振り返ると暗くて見えなかったが
自転車にまたがってる制服を着た男性が
拍手をしてくれたようだった。

「歌、うまいんですね。」

この声どこかで聞いたことがある。
携帯の光で照らそうとしたら
彼は自転車をこいで行ってしまった。

誰だろう…いつから聞かれてたんだろう。

その時は彼が今日席替えで前になった
あの人だとは思いもしなかった。

つづく

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