品田遊『止まりだしたら走らない』を紹介する
『止まりだしたら走らない』は、中央線を舞台として、個々の思考を綴っていくオムニバス小説である。ダ・ヴィンチ・恐山としても活躍する小説家、品田遊のデビュー作。
この小説について、ネタバレを避けつつ、以下に紹介する。
そこには、すぐに逃してしまうような感覚や、忘れていた感情が、生々しい質感をもって言語化されていた。年齢も性別も職業も背景もバラバラな人たちが、中央線という一つの軸で少しだけ交わっている。その中心から、著者の視点を通して眺めることができる。そのあまりの細やか