前回記事で紹介したGIVEN BY THE FLAMESの曲「PURGING NIGHT」について、意訳と考察(に加え作詞者・Willianに確認した内容補足)をしようと思います。
周囲に言われるまま従ってきた主人公が「悪魔を飲み込む」ところから
歌が始まります。
この曲、英語の歌詞を読んだ初見の解釈としては
「言いなりにされてきた人物が、悪魔を飲み込んで、その力によりこれまで自分を蹂躙してきた世界が粛清されて行くのを見守る」
というホラーな復讐の歌なのかなと受け取っていました。
でもそれだと、「鍵を置き去りにしてきた」というところの意味が分からないのです。
扉が閉まっていて、開けるための鍵は暗闇の中に置き去り=扉を開けることができないし、簡単には取りに行けないことから、鍵を暗闇に置き去りにした人物(文中の「You」)に対して、必要なものを不可抗力な場所へと追いやられてしまった無力感と怒りが見て取れます。
「You」とは誰の事なんだろう、自分を支配してきた他者のことなのかなと思っていたんですが、「これは過去の自分」という作詞者・Willianの説明を聞いて、筋が通ったと膝を打ちました。
周囲に対する他罰的な怒りではなくて、
「過去の自分を粛清する歌」ということなら、
私の解釈「自分を蹂躙してきた世界が、悪魔の力により粛清されて行くのを見る」ということではなく、
「自分を蹂躙してきた自分を、意志をもって粛清する」ということが
このPURGING NIGHTという歌の姿ということで理解ができます。
歌詞の中で飲み込むdemonsは「自分の意志・自我」ということになり
これは、キリスト教の考え方に基づく部分があると思います。
キリスト教は神の教えに従って生きることを是としていますが、それに反旗を翻す(蛇に誘惑された原罪を持つ)意志を持った人間本位主義のことをキリスト教は誘惑・堕落の象徴としてdemonsと呼びます。
(話は逸れますが、エヴァンゲリオンも意志を持った人間の群れを、神の側が使徒を使って滅ぼしに来てましたね、あれは人間VS神の構図)
悪意のある存在としての悪なる魔物と契約したのではなく、
自分の意志を体内に飲み込んだ(インストールした)ことを踏まえて、
過去の従順な自分に対峙し
「お前の魂までをも見通す。これがお前の終焉だ」と意志と怒りを持って
「悪魔(=自我)を飲み込む」覚悟を示しているということになります。
「奴ら」は、上述のとおり、殺人鬼でもモンスターでもなく
「意志・自我を持つと覚悟した自分」であり
「私たちを狩りに来る」は、
「これまでの意識・記憶を残している自分」を示すということ、
「狩る側」も「狩られる側」どちらも自分ということで
「狩る側」「狩られる側」いずれも他人事にできず
「狩られる側の意識」が上記の恐怖心として存在しているということ。
もっと言うと、「暗い夜」に、
一人で過去を悔やむような衝動が訪れた時、
愚かだった過去の自分を都度否定して前を向くという決意が
この歌詞の主題なのかもしれないと思います。
狩られる恐怖心を抱きながらも、悪魔=自我を飲み込む覚悟をし
これまでの自分を粛清する宣言に繋がります。
「奴ら」も過去の自分で
都合の良い自己欺瞞を続けてきたことから目を背けず
これまで自分を騙してきたこと。
過去の「言いなりの人形」であった自分は死に
「冷たくなった体」はその死体を示し、
粛清が完了したことを示します。
◆
自身の英語力、理解力では正しく受け取れていなかったことを申し訳なく思いつつ
不躾な質問に親切に答えてくれた作詞者・Willianに改めて感謝して、
この内容を、GIVEN BY THE FLAMESを知った人へ共有しようと思います。
内容を正しく把握できていないまま、格好良くて好きだったこの曲が
すごく純度の高い内省的な歌だったということを踏まえて
理解の一助となることを望みます。
◆
GIVEN BY THE FLAMESを紹介した前回記事はこちら