見出し画像

『きみの行く道』を読んだ。

「きみの頭には、脳みそがつまってる。
 靴には、足が入ってる。
 つまり、行きたい方角へちゃんと行ける。
 まったくひとりで。
 なにしろきみは、知ってることは何でも知ってる。
 そのうえ、行く道は自分で決めるタイプでもある。」

この本の最初の部分。ここを読んだ時にふっと思い出した。

大学受験を前にした高校3年の秋、将来の自分が何になりたいか、わからなかった。
わかろうと必死で考えることもなく、日々を送っていた。衣食住が整っているのが当たり前で、そのことに疑問も持たずの高校生の日々。
毎日学校に行って、授業を眠らないようにノートを書きながら聴いて、放課後は部活の部室でおしゃべりしたりして、家に帰る日々。
家と学校、それが自分の全世界であった日々。
ある日、土曜日の休み時間のおしゃべりの中で、友人が、今日、いろんな大学の説明会があるんだけど、一緒に行くかと誘ってくれた。
たまたまおしゃべりの輪に入ったので、私にも声をかけてくれたようだった。たまたま放課後の予定もなかったし、受験情報が少ない方なので、ついていった。
会場では、20か30校くらいの大学のブースがあって、それぞれ学校から出向いた職員や教授が集まった学生に説明していた。
一緒に来た友人たちの志望校は知らなかったので、会場では別行動になった。
どんな学校が集まっているのかさえ知らずに入り口で渡されたパンフレットを手にキョロキョロしながら会場を歩いた。
すると、私の受験予定の短大の、それも入りたいゼミの教授が、その学校の代表としてブースに着席していた。心理学を学びたいけれど、4年生大学へ行くのが良いのか、その短大でも心理学のゼミがあるので、どの程度学べるのかなど、準備もしてなかった割にはじっくり質問し、教授も丁寧に説明してくださった。
担任や親とも話していない自分の想いや考えを、初めて会う大人にこんなに話せるなんて、不思議な経験だった。
終わってみて自分で自分に驚くぐらいだった。
未来が見えた瞬間だった。
今でもこの時にこの場所で教授と話さなければ志望校も確定しなかったし、もしかしたら、中学から続けていた演劇関係を学べる学校を受験したかもしれない。
興味があった人格心理学について学べる大学、それも2年で4年生大学と同程度のゼミで学べることがわかり、わからないことから来る不安は無くなった。
この日、私の志望は定まった。

この本を読みながら、ページをくるたびに、自分の人生のいろんな場面が思い出されてくる。
うまくいったこと、失敗したこと、いつも偶然と奇跡が起きる。
就職、海外旅行、仕事、その中での出会い、別れ。
それから、結婚、出産、退職、
大きな山を超えたり、広い場所にポツンと置かれたような不安になったり、人と違う歩み方を選んだり、だから誰かに相談もせず自分で決断する。
家と学校が全世界だった頃より何十倍も世界は広がっている。
宇宙全体のような現実世界を超えた世界も自分の中にある。

「きみは、歩きつづける。
 そう、きみは、どんどん歩きつづける。
 顔をあげて、まっ正面から、自分の問題に
 ひるまず、きみは、ぶつかっていく。」


そして今の私。
どんな道がこれから開けるのか、
わからないから楽しみで、
わからないから面白い。
世界は広くなりますます自分が自由になっている今。
進む道に迷いはない。

「さあ、出発しなさい、きみの道をね。」


よろしければ、サポートをお願いいたします。いただいたサポートは創作活動に使わせていただきます!