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「たまご焼き」が「厚”焼きたまご”」になる不思議を言語学的に調べてみた(未解決)

たまご焼きってあるでしょう。わたし今あれが食べたいんです。
自分で焼くことに挑戦しても良いけれど、ごはんやさんや居酒屋さんで出て来るあつあつのふかふかなたまご焼きに勝るものは無い気もする。
外で食べたいものがまたひとつ増えてしまった。

実はたまご焼きについてここ半年ほど考えていて、答えが出なかったので一念発起して、学生時代を思い出しながら言語学の論文やらサイトやら眺めながらえっちらおっちら書き物してみました。これが初記事ですが、言語学に限定せずに気になったことを書いていく場にしたいです。映画とか漫画の純粋な感想ははてなブログ(たえてさくらのなかりせば)に置いています。

思っていた結論は出なかった上に割と長くなったので、最初に概要載せちゃいます。↓の2行になります。

(概要)
疑問:「たまご焼き」はなぜ「厚」が付くと、ひっくり返って「厚焼きたまご」になるのか?「厚たまご焼き」にはならないのか?
回答:ひっくり返る理由はわからずじまいですが、形態論の論文を拾い読みしたら、複合名詞として見たときの「たまご焼き」と「ゆでたまご」の違いは判りました。

***



●「たまごやき」と「あつやきたまご」の大きな違い

思いつきは去年の冬、仕事を終えた寒くて暗い帰り道、わたしはたまご焼きをたいへんに所望していたわけです。
「たまご焼きたべたいな~居酒屋さんで焼きたての、あっつあつの厚焼きたまご…フフッ"アツアツ"の"あつやき"て・・・ふふふ」
としょうもないことを考えながら自転車をこいでいたんですが、ここでふと気づく。

「……あれ、『たまご焼き』だよな。そんで、『厚焼きたまご』だよな。
 あれ?元々は『たまご+やき』なのに『あつやき+たまご』になるな?なんでだ?」
何を言ってるんだと思いましたね?


何を思いついたか。解説するとこうだ。
●「たまご焼き」ということばは、分解すると「たまご」+「やき」という組み合わせから成り立っている。「たまご」という名詞と「やき」、「焼く」という動詞から派生した名詞の組み合わせだ。
こうした複数の語を組み合わせて成り立つ語のことを「複合語」と呼び、複合語の名詞のことを「複合名詞」と呼ぶ。
(参考:単純語と合成語(複合語・畳語・派生語)について(旅する応用言語学)


一方「厚焼きたまご」はどうだろう。
「あつ」+「やき」+「たまご」という組み合わせの複合名詞になる。すばらしい。三種の神器にしたい語群だ。

わたしが疑問に思った「卵焼き」と「厚焼き卵」の違う点、それは「たまご」と「やき」の関係だ。
たまごやきは、「たまご」が先、「やき」が後。
けれどあつやきたまごは、「(あつ)やき」が先、「たまご」が後。
卵を焼いて巻いた料理としては限りなく近い、というか検索してもほとんど同じものが出てくるのに、語の構成が変わっているのだ。


●疑問1:言語学的に理由があるはずなんだ

と、ここまで読んでくださった希有なひと、こう思ったのではないでしょうか。
だからどうしたってんだ
わかる。わかるよ。日常生活でこういうこと口に出すとだいたいみんなそういう顔するよ。
「たまご」と「やき」がどんな順番で並んでいようが、目の前のお皿に並んだふくふくであつあつな食べ物のおいしさは変わらないじゃん。わかるよ。私だって大根おろしと日本酒をお供に、冷める前にでっかい口で頬張りたいよ。あまいのもしょっぱいのも好きだよ。

でも不思議に思った理由説明するからもうちょっとだけ待って?

疑問に思った理由をもうすこし解きほぐしてみると、「『(厚)焼きたまご』では別の食べ物になってしまうのではないか?」という直感的な感覚が根底にあるのである。

一緒によーく考えてみてください。ちょっと箸置いて。
たまごやき
やきたまご

このふたつ、日本語を普段話す人から見て、直感的に違う食べ物のように思えませんか?
仮に「焼き卵」という食べ物があったら、それは「卵焼き」と違う調理法・味のする食べ物だと、なんとなく思わないでしょうか。
わたしたちは無意識のうちに、言葉を見たとき、直感的にその意味を判断して理解している。そうでなければ、コミュニケーションは取れていないはずだ。

単語の中に、どういう要素がどういう順番で組み込まれるとどんな意味を持つのか。
そこにあるであろう規則性を明らかにしようとする学問分野を、言語学のいちカテゴリとして「形態論」と呼び、今回の複合語の話はその中でも主に「語形成」というジャンルになる。

要するに、複合語を作るときの、要素を組み合わせる順番には規則性・理由がある。と形態論では考えている。
だから、理由もなしに「たまご焼き」が「(厚)焼きたまご」にひっくり返るはずがないのだ。ほとんど同じ食べ物のはずなのに!

もっと詳しく、という方のために、複合語が作られるときの関係性にはいろんなパターンがあるという例を引用しておきます。気になる方はリンクから全文どうぞ。

日本語複合名詞の意味解釈メカニズム(由本 2016)より引用、太字は投稿者)
主要部が名詞で修飾関係によって複合語が形成されている場合、その修飾関係は以下に示すように実に多様性に富んでいる。(cf.影山 1993:194)
(2) a.様態、様子:石頭、イワシ雲、獅子鼻、烏口、菊皿
  b.原料、材料:紙箱、硝子戸、砂袋、縄梯子、肉団子
  c.場所/時間:脇腹、外堀、庭石、春風、夜道、夏風邪
  d. 目的 雨靴、茶道具、天ぷら鍋、ケーキ皿、荷車
これらのいわゆる一次複合語の意味解釈は、このような多様性と慣用性から、長く語用論の問題として扱うしかないと考えられていた。しかし、母語話者は初めて耳にする複合語であっても、構成要素となっている単語についての世界知識によってある程度正しい意味を予測することができるという事実を見逃してはならない。たとえば、我々は「革靴」と「雨靴」とでは、「靴」の材料や目的についての知識によって、二つの名詞の意味関係が異なることを理解することができる。すなわち、「革」は「靴」の材料となり得る素材なので(2b)、「雨」はその用途に関わる情報を与えているので(2d)に分類される。

ちなみに、ここで出てきた「語用論」というのも言語学の中のジャンルの一つで、この記事では深く突っ込む必要がないので手短に言うと「言葉の使い方は人とか文脈によって変わるから普遍的なルールは無用だよ」というものです。
言語学って学問は、規則性を見出してカテゴリ分けをするのがほとんど命題といってもいいのに!でもそういうアバンギャルドな一面もあるし、語用論は語用論の世界観でちゃんと普遍的なルールを見出そうとしている。言葉は人間の道具で、人間同士関わりあう中で絶えず変化していくものだけど、人間だからこそ、その変化の仕方も必ず共通点があるはずなんです。


●疑問2:仲間が見つからない

大学で言語学を学んで、言葉の成り立ちとか組み合わせ方、ひとの使い方に応じた意味の違いに興味を持つようになった。
それから、興味を持った単語についてはメモに残しておいて、似たような組み合わせの単語が見つかったら書き足したりしている。ある程度溜まったら、共通事項やことばの規則が見つかったら良いなーと。
なんか仕事の待ち時間とか、自転車こいでる間とかにぼーっと考えていると良い暇つぶしになる。


今回も次の条件を考えて、当てはまる単語がないか探してみました。

・二語から成り立ち、「食材」の単語を含む複合語
・↑には「煮る」「焼く」などの調理方法に関する言葉がついている
・さらに、↑の複合語の一番前にひとつ単語を付け足したら、新しい複合語として成立するか。


たとえばこういう感じ。
(注:単語の前の「*」は「それは言わない、意味が明らかに変わってしまう」という非成立を表す記号、
 「?」は「言うか…?言うかもしれないけどメジャーではないししっくりこないな…」という記号)

▼*焼きたまご/たまご焼き厚焼きたまご 
①*たまごゆで/ゆでたまご 固ゆでたまご 
②?トマト焼き/焼きトマト → *薄焼きトマト
③*たまご巻き/?巻きたまご → だし巻きたまご 
④*焼き姿/姿焼き → *厚姿焼き 

だーっと書き出してみたけど、それぞれの複合語の構成を解説するとこんな感じ。

▼*焼きたまご/たまご焼き 厚焼きたまご 
…前に「食材」、後ろに「調理方法」。付け足しても成立するが関係が逆転する。
①*たまごゆで/ゆでたまご固ゆでたまご 
…前に「調理方法」、後ろに「食材」。付け足しても成立する。
②?トマト焼き/焼きトマト → *薄焼きトマト
…前に「調理方法」、後ろに「食材」。他に付け足すと成立しない。
③*たまご巻き/?巻きたまご → だし巻きたまご 
…前に「調理方法」、後ろに「食材」。付け足さないと成立しない。
④*焼き姿/姿焼き → *厚姿焼き 
…前に「食材(の比喩?)」、後ろに「調理方法」。他に付け足すと成立しない。

特に分かりやすいのは、「たまご焼き」と「ゆでたまご」の違いですが、②③の例と比べても、やはり前に「食材」後ろに「調理方法」がくる「たまご焼き」型は少なそうです。同じ条件での例が少ないと比較もしづらい。困った。
食材をあらわす名詞と調理方法をあらわす動名詞、この前後の順番は、完成する複合名詞の意味に関係するのでしょうか。


●論文引用1:基本は「後ろが主」

まずは複合名詞全体に共通する原則として、「意味を修飾する単語は前にどんどん付いていき、意味の主体は一番最後に来る単語」というものがある。
(参考:「原則、あとにくる品詞のものが主体」『科学技術のアネクドート』

↑は理工系のライターさんのブログ記事で、非常に短いので一読いただきたいのですが、その中で「名詞+動詞(から派生した名詞)」型の複合名詞は、どちらが意味の主体なのか、という話題があります。今回の「たまご焼き」もこの仲間ですね。

(参考:「原則、あとにくる品詞のものが主体」『科学技術のアネクドート』より引用。太字は投稿者)

国文学者の森山卓郎さんは、「料理の文法!?」という随筆で、次のように述べています。
_____
名詞(調理法にちなむもの)+料理法(動詞連用形) という形で一語の複合名詞になる場合です。しかし、 ご心配なく。この場合も、後ろが意味の中心だということは言えそうです。後ろに来るのは料理法にちなむ動詞ですから、全体として「そのような料理法」、「そのような料理法による料理」を表します。
_____
やはり、「名詞」「動詞」という順であっても、うしろにくる「動詞」のほうが主体であるようです。しかし、「卵焼き」は「卵」(名詞)を「焼く」(動詞)であるのに対して、「茹で卵」は「茹でる」(動詞)対象としての「卵」(名詞)となります。あとにくる品詞が主体であるという原則には、例外もあるようです。それがことばのなりたちということなのでしょう。

やはり、「たまご焼き」と「ゆでたまご」の違いに首を傾げている…でもこの方は「それも言葉か」と納得しているようで。
さっき比べてみた通り、「たまご焼き」の方がマイナーなグループのようだけど、考えるには似た構成の言葉が少なすぎる。どうしてだろう…。これも一つの謎である。

これまでの話を踏まえて、今回の疑問を整理してみました。

●「厚焼きたまご」は「たまご焼き」と同じ食べ物、あるいはそこから派生した食べ物をあらわす単語であると解釈できるが、なぜ「厚卵焼き」では意味が取れず、「厚焼きたまご」になるのか
●「たまご焼き」と同じく「食材」が前に、「調理法」が後ろに来る複合語の例が少ないのはなぜか。(例:ゆでたまご)


▼論文引用2:「~焼き」と「焼き~」の違いから「たまご焼き」を考える

複合語に関する研究のひとつとして、調べている中でよさげだった中村(2004)を取り上げます。
「大文字焼, *林檎焼-動詞連用形複合名詞の印欧語的分析」(明治大学教養論集)
タイトルごついし、最初急にサンスクリット語の話とか出てきて面食らうんですが、これはどうやら、日本語の複合語の分類を、インド・ヨーロッパ語(印欧語)族であるサンスクリット語でやってる分類を手掛かりに考えてみようというものです。
タイトルにあるように、「焼き」のつく複合名詞についての話題がメインです。「どんど焼き」「鎌倉焼き」「浜焼き」のように、単なる表面上の単語を組み合わせた辞書的な意味では分からない、その言葉が生まれた土地や人々の背景も含まれた意味が、語の中には詰まってるんだという整理をした論考ですね。

鎌倉焼きは鎌倉を焼いているんじゃなくて鎌倉(でとれたエビを)焼いたものだ、とかね。じゃあ「蛸焼き」は蛸を焼いているのか、いや蛸そのものではなくて正確には小麦粉を溶いたものを焼いている、しかし万が一蛸が入っていないひとつがあったとしてもそれは「蛸焼き」と呼ばれるだろう、とか、本文中ではとっても真面目に考えてタイプされてます。
言語学ってこんなこといちいち正確に取り上げて、しかもこんなのしょっちゅう考えてんの?って言われそうですけど、ええ楽しいじゃないですか?たまにはうるせぇやいと思ったりもするけど。

28Pあるのでそこそこな量ですが、その後半に、今回の疑問のヒントになる内容があり、とても興味深く読みました。
「皿 複合語前分と後分の関係」(P23~P26)では、「~焼」という名詞を「焼~」とひっくり返し(「転換」し)ても成立するか、という、まさにどんぴしゃりな話題です。
その中では、「卵焼」と「焼卵」は意味が変わらず転換可能、とあっさり言われているのですが、この項で重要なのはそこではなく「~焼」と「焼~」の意味の違いをまとめてあるところです。

(中村2004 「大文字焼, *林檎焼-動詞連用形複合名詞の印欧語的分析」(明治大学教養論集)より引用、太字は投稿者)
[+食材]焼の場合は多くが、単に「焼いたもの」という意味ではなく、複雑である単なる「焼いたX」の時は「焼[+食材]」が基本形である。(中略)一方、「X焼」の方は、これまで検討してきたように、調理法、出来上がりの色・形の比喩の前分が多かった
焼リンゴは リンゴそのものを蒸したものであるが、蛸焼は蛸それ自体を焼いたものではない。もし蛸を焼いた料理が日本のどこかにあれば、それは現地方言では、*焼蛸と呼ばれているかもしれない。逆に、*林檎焼というと、リンゴ以外のものを、リンゴ状に(赤く、丸く等、リンゴの属性に従って)焼くことを意味すると思われる。この文脈で言うと、標準語では非語だが、
*焼雀と聞けば、焼かれた雀だとわれわれは感じることはできる。もし焼いた雀を食べる地方があるなら、その地域方言では*焼 雀 と呼ばれている可能性はあるだろう。

この先生はやたらと焼きリンゴにこだわっています。おそらくトースターで焼いてるときにこの論文思いついたんでしょうね。バターはたっぷり乗せるのかな。

引用の部分をかみ砕くと、こうなります。
・「食材+焼き」の場合は、単純に焼いたものではなく、言外の意味も含んで加工されたものという意味合いが強い。一方、「焼き+食材」の場合は単純に焼いたものを示すことが多い。

例として挙げた「姿焼き」と同じく、「目玉焼き」もこの解釈ができますね。何かの目玉を焼くのではなくて、(卵を)目玉(に見えるように崩さないまま)焼くという意味。

(この論文では、意味が複雑になる「食材+焼き」のグループでもやはり「たまご焼き」は例外で、単純な意味を持つと書いていますが、本当にそうかな。単純に焼いたらいわゆる「目玉焼き」になってしまうとわたしは思うのだけど……。
ま、ここで「複雑」とされているのは、表面に出てきている単語以外が主役(「鎌倉焼」はエビだとか、「雲丹焼き」は雲丹を食材に塗って焼くものだとか)の場合だから、当てはまらないという理解でしょうか。
「たまご焼き」は分厚く巻かれていることが重要なので、たまご(を砂糖やしょうゆと一緒に溶いてフライパンで破れないようにそーっと)焼き(巻いた食べ物)という意味の表し方もできると思うのだけど、どうだろう…)

「厚焼きたまご」の解決には至らないのですが(というかこの論文では意味が変わらない語として説明されているし)、これを踏まえると「たまご焼き」と違って「ゆでたまご」の「たまご」が後ろに来る妥当な理由が分かります。
「焼き+食材」は単純に焼いたものであるなら、「ゆで+食材」も単純にゆでたものであることが多い、という推論が立てられます。正真正銘、卵を殻のまま鍋に入れてゆでた食べ物だから「ゆでたまご」というわけです。


そして、ここまで調べて、「おそらく『食材+焼き』と同じ構成の複合名詞で、「厚焼きたまご」のような変化を見せる語は、ほとんど見つからないなこりゃ」と半ば諦めがよぎりました。
なんでかって?
理由はこれまた中村(2004)からの推論です。

・「食材+焼き」は表面の名詞から多くの意味を補って理解しないといけない複雑な語である。
・複雑な、言外の意味とは、「あらかじめ味噌漬けにして」とか「砂糖と醤油を入れて」、さらに味付けや加熱の仕方等、たいてい調理方法も含まれている。

つまり、既に調理方法もインプットされている語に、「厚く」とか「冷やして」とかアレンジ方法を追加する余地がないのです。「*辛子西京焼き」とか「*冷やし芹焼き」とか。

あれ待てよ、昔近所にあった鯛焼き屋さんは夏になると別の生地にクリームなどを入れた鯛焼きを売っていたな、あれはたしか…「冷やし鯛焼き」。うん、こういうレアケースしかない。
そしてこれも、「*冷やし焼き鯛」にはならないのである。冷やしながら焼かないからね……。


結局のところ謎は解けないまま、それどころか先人たちも首をかしげている語に足を突っ込んでしまったことに気付いてどうしようもできないまま、たまご焼きが食べたい気持ちだけが分厚くなっていくのであった。


▼まとめ

これを読んで、「たまご焼き」「厚焼きたまご」問題は、もっと調べないと解決できないことがわかりました
この著者の論文一つ読んだだけで信用して使ってしまうのは、本当はよくない。考えを補強するなら、別の学者が同じ観点で書いてるかとか、別の視点から書いてる論文探して反論を考えたりとかしないと、研究としては不十分だ。
考察内容も、たぶん検討が甘かったりして、不十分なこともあるかと思う。それについては、もし読まれた方がいたら教えていただきたいです。もっと知りたい言語学。

完全に言い訳としてこれを書いているのだが、本来これは専門としている人に見せるためではなく、友達に普段何気なく考えていることを伝えるために、話すにしては時間が足りなくてうまくできないから書いた記事なので、こういう注釈を書かないと投稿者も読者もこれが唯一だと捕らわれてしまう。
だから読んでいる方も、信じ込まずに「そういう捉え方もある」という程度にとどめてほしいし、もし「こういう考え方もあるんじゃないの」と思ったら、ちょっと検索して似たようなこと言ってる論文が2・3ないか探してみてほしい。
学生でなくとも、今は教員のWebコラムや論文リポジトリがすぐに読める。現に私が今回引用した論文も、すぐに検索出来たものだ。

そしてわたしの「たまご焼き」「厚焼きたまご」問題の解決に手を貸してほしい!!まだ気になり続けているんだよこっちは!!!!
そんなことを考えながら、春の夜は過ぎていきます。ああ、おなかすいたなあ。

ちゃんちゃん。


余談


仲間になりそうな単語を探してググっていた時。
「だし巻きたまご」も同じ構成。でも「*たまご巻き」は無いよなあ…。
と、考えて一応「厚焼きたまご だし巻きたまご」で検索したら、こんな文章が目に飛び込んできた。

無題

複合体か?一体か?

「黄身と白身を複合体として捉えるのが『だし巻き卵』。
一体として捉えるのが『厚焼き卵』です。」

だし巻き卵に必要な6つのこと-「おいしい」のコツ-

なにこの魂のこもった文。料理人の柔和な顔つきの中で一瞬瞳がギラッと光るのが目に浮かぶ。

どうも、黄身と白身の境を崩さずに混ぜて出汁と焼くのが「だし巻き」、砂糖などと一緒に完全に溶いてしまうのが「厚焼き」だそうです。固まる温度差がキモだそうで。考えたことがなかったので読んでてついふんふんとうなずいてしまいました。

余談その2


セブンイレブンでどっちも売っていたので両方買ってきました。

画像1

どっちもうまい!でもやっぱり目の前で焼いてくれるふかふかでアツアツのたまご焼きが食べたい!!
居酒屋に行きた~い!!!


Fin

(追記:書いてから思いついたこと)
もう一つ別の方向からの見方として、引用した由本(2016)に複合語の成り立つメカニズムのひとつとして「大根の千切り」についての項があったんですが、あそこを読んで考えるに、「厚焼きたまご」は「大根の千切り」と同じ形で、「“たまご”の”厚焼き”」なんじゃないかな。「厚」+「焼きたまご」ではなく。
けれどこのアイディアも一つ難があって、「大根の千切り」は元々「大根を千切りにする」という動詞の結果生まれた食べ物のことを、やがて名詞で呼ぶようになったとしている。(名詞は派生語の最終地点であることが多い)でも「たまごを厚焼きにする」とはなかなか言わない。「大根の千切り」と同じ規則に従っているとは、すぐには判断できない。


うーんむずい。

こんどこそFin.

#日常の言語学 #形態論 #食べ物 #たまごやき   

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