丸山健二著『千日の瑠璃 Changed writing style for web ver.』の連載にあたって
丸山健二を知っていますか?
こんな小説を読んだことがありますか?
丸山健二は、就職先の商社が合併されて路頭に迷う前の23歳、初めて書いた小説「夏の流れ」で芥川賞を受賞。その後、文壇とは一線を画して長野県に居を構え、今の今まで徹底して純文学を追究している書き手です。
丸山健二は、書くことを止めません。
365日、毎朝、必ず書きます。それが60年近く続いています。
なぜか。
それは一日でも書くことを止めてしまったならば、言語芸術の精髄たる文章力が落ちてしまうからです。
純文学を極みの域まで昇華したいという野心と野望を持つ彼にとって、世界に冠たる日本語が命なのです。
高みを求めて書くことの進化と深化を掘り下げてゆくと、いわゆる文学的な文章では物足りなくなり、ついには過去の自作でさえ、読み返すと恥ずかしくなってくると彼は言います。
かつての自分よりも、今の自分は遙かに腕が上がっているのですから、自己嫌悪に陥るというわけです。
よって、彼は「書き直す」という当然の作業をくり返します。
『千日の瑠璃』は1992年に出版されました。
1988年10月1日から始まるリアルな1000の日々を、ある日は「風」が、そしてまたある日は「ボールペン」が、そう、まさしく1000の語り手が物語ってゆきます。
物言わぬ物体や記号、情念、行動など、この世に存する万物が「人の言葉」を放ち始めた世界、それが『千日の瑠璃』の森羅万象の世界です。
そこに、この壮大な物語で唯一言葉を話せぬ、心身ともに不自由な少年・世一の独特な生き様が、モノクロームに沈む人の社会でひときわ異彩を放ち、俗世に濁された人心のみならず、万物に「重要な何か」を与えるのです。
世界では、「多様性」「SDGs」「ジェンダーフリー」「LGBTQ」など、さまざまな言葉を使って、ホモサピエンスの種として子孫を遺し続けてきた結果のマイナーな課題を投げかけています。
その核心に迫る本質が『千日の瑠璃 Changed writing style for web ver.』全般に及んでいます。
今、このとりとめもない時代に生きているからこそ、ぜひご一読いただきたく、ここに三度目の改稿を加えて発表します。
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