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一人営業通信dgtl_Vol.5「ヒットの要素3/6_品揃え」

#3 品揃え

※この記事は、2018年にに営業ツールとして発行したニュースレターを加筆修正してnoteにアップしたものです。


5回目の「元バイヤー目線~」は3つ目の要素である「品揃え」について解説致します。
「品揃え」と聞けば、見た目の賑やかさとか、選ぶ楽しさとかそういった所を想像するかもしれません。確かにそれも正解なのですが、今回はそれよりももっと踏み込んだ視点のお話を書きたいと思います。

メーカーやお店には得意な商品というのがあります。厚岸の食品メーカーならば牡蠣があるでしょうし、置戸には木工の得意なメーカーがあるでしょう。函館にはイカ、帯広には豚丼、小樽にはガラス工芸……といったように、まぁ必ずしも地域産品と結び付くわけではないのですが、メインを張る商品、いわゆるフラッグシップの商品というのがあると思います。これは非常に判り易く魅力的です。
先ほどは敢えて、地域産品と結び付くわけではないと言いましたが、地域性が反映されているに越したことはありません。
極端なことをいえば、農業の盛んな地域の山奥で海鮮丼を出す店があったとして、味もよく新鮮であれば良い商品だとは思うのですが、ただ消費者は「?」マークを浮かべるでしょうし、バイヤーとしてもよほど納得性のある事情が解らない限り、それはリスクとしか感じません。ただそこに「積みかさねた歴史」とか「敢えてそれをやるという広告宣伝」とか、そういった挑戦的な試みや、引き込まれるような劇的な来し方がある場合は別ですが……

では、そのフラッグシップの商品を中心にして、どのような展開をするのがいいのか。
僕が思う品揃えの理想形というのを説明しようと思ったのですが、書いているうちに「これは図にした方がいいかもしれないな」と思い始めてしまいまして。というのでまずは、こちらの図をご覧ください。
はい。これが佐藤の思う理想的な品揃え、名付けて「品揃えピラミッド」です。

早速ピラミッドの構成を見ていきましょう。

これが品揃えピラミッドだ!

メイン

これが先ほども書きましたフラッグシップの商品とお考えください。
と、いきなりで申し訳ありませんが、ここに関しては、バイヤーや消費者が外野からどうこう言うことではないと思います。
なぜならそもそもお店というのは、このメイン商品ありきでスタートするものだと思います。「とりあえず会社を作ったけど、さてこれから何をしようか」みたいなこともないわけではないのでしょうが、そういう場合は僕のお話は役に立たないでしょう。
ただ、そのメインの商品をどうやって宣伝し売り出すのかという部分は、後追いでいくらでも変えられる部分ですから、ここに関しては考察の余地はあると思います。
メインの商品というのは、店の顔となる商品です。可能な限り一年を通して、もしくはそれが季節ものであればその時期には必ず手に入り、価格が安定していて親しみやすく解りやすい商品が理想です。例えばそれは「からあげ」とか「クレープ」「だいふく」「あんぱん」など消費者にとって判りやすく、その正体を想像しやすい言葉で説明するのがいいと思います。
いたずらにオリジナルのネーミングを考えたり商品の性質とかけ離れた売り出し方をしてしまったりと、そういったことをしてしまうとマスの消費者は離れていきます。
言葉の正体に理解が追い付かないと、その中身を想像するまでに時間がかかり、時間をかけて想像したものを飲み込んで、それを欲しいなと思うまで、果たして客がそこに立ち止まっているでしょうか。その可能性は限りなく低いと思います。
とにかくわかりやすく、親しみやすい。これがメイン商品の秘訣です。

次はその下。「季節物」と「用途別」と「企画別」が並んでいます。

季節物

これは歳時記に合わせた商品が季節ごとに登場し「今感(いまかん)」を演出するのが役割です。「今感」というのは、読んで字のごとくで、作り手側が常に「今」稼働していることを表し、消費者と「今」を共有していることを演出します。
解りづらくて恐縮ですが、これが実はすごく重要な要素でして、消費者というのは、ネットやテレビなどから常に新しい情報を取り入れながら動き続けいています。動き続ける日常のその合間に買い物にくるわけですから、つまり消費者が感じている時間軸からずれていれば、消費者は少し前のモードまでスイッチを切り替えなくてはいけません。世間と季節がずれていれば、それだけで見逃される可能性は大きいですし、逆を言えば、合致しているだけで消費者の興味を引く可能性は格段に上がると思います。

用途別

これは主に進物用途、手土産などの話です。商品そのものというよりは、どちらかというと詰め合わせや包装についての話でしょうか。
消費者の用途というのは、100人いれば100通りあると考えてよいと思います。販売側が想像もしないような用途、例えばバレンタインに漬物を送ったり、お中元に毛布を送ったり…
そういった予想だにしない要望に万能に対応するために有効なのは、商品の統一感です。
つまりは、何か歳時記がある度にそこに合わせてパッケージを変えていたらきりがありませんし、コストが掛かって仕方ありません。商品パッケージに統一感を持たせているだけで、詰め合わせなどの発想に結びつきやすくなり、チャンスが生まれるというわけです。
多くの場合消費者とは、予備知識がない状態で来店するものです。そこで商品がばらばらだと、視線を定めることができません。買い物をするとき人は無意識のうちに全体の商品を何となく把握し、その中から徐々に自分の興味に合わせて絞り込んでいきます。
見た目に統一感があれば、商品が選びやすくなり、消費者の中におぼろげにある、自分なりの値段設定やサイズ感などの理想を追求しやすくなります。いちからパッケージを変える必要などはなく、シールを貼る位置やPOPの付け方、メーカーとして何か一つ規則性・統一感を持たせるだけで、選びやすさは格段に変わると思います。

企画物

これは飛び道具的な部分でしょうか。例えばそれは以下のようなものです。
焼きあがった鶏の丸焼を、オーブンから取り出して目の前でカットしてくれるサービス。地場産の高級ソーセージを使った一本2000円のホットドッグ。ほかにも、メイン商品の巨大バージョンや逆に小さいもの、何かとのコラボや激辛やレアもの。くじ引きにガラガラに抽選にプレゼント。
つまり企画物とは、メーカーとしてのりしろを見せつつ、消費者を楽しませる部分で、少し悪ノリするくらいの方が効果は大きいと思います。(この辺りの判断は自己責任)
メインの商品のついでに買うことも考えられますしこれが目当てでこの時だけに来る消費者というのも沢山いるでしょう。
どちらにしても、インパクトのある商品で記憶に残すというのも一つ手ではないでしょうか。


レギュラー

これは細分化された消費者の好みに対応する為の部分です。
これまで書いてきた他のジャンルと何が違うのかといえば、それはいつでも買えるということで、では同じくいつでも買えるメインとの違いはというと、レア度や魅力の大小など様々あると思います。つまりレギュラーの役割とは、いかにかゆい所に手が届くかということでしょう。
例えば僕の得意なコーヒーを例にとって考えてみますと、コーヒーは豆の産地違いで味の方向性がきまってきます。今度はそれを焙煎の深さやウォッシュの方法などで更に細分化していくことで、様々な味のニーズに対応します。また別の方向ではブレンドという攻めかたもあるでしょう。
酸味重視、苦み重視、香り重視、値段重視、製法重視……様々なニーズがある中で、どこまでをどうやってカバーするのか。

商品が沢山あればそれだけ多くの趣向をカバーできますが、単に種類が多いだけでは消費者の視線が定まりませんし、コストもかかるでしょう。
行きつくところは「何が売れるのか?」というバカみたいな悩みになるわけですが……それが分かれば苦労はないですね。
しかし判らないまでも近づくことは必要で、僕が思うにそこで重要なのは、あらゆる趣味趣向の人間に対して「世の中にはこういう人たちがいる」ということを知っておくことと、そういうあらゆる趣向の人を理解することではないでしょうか。自分の当たり前は当たり前じゃないという想像力こそ、品揃え強化の近道と考えます。


さて、長々と書いてきましたが、まとめますと、やはり必要なのはごくごく単純なことで、

①わかりやすさ
②季節への敏感さ
③統一感
④楽しさ
⑤想像力

といった所だと考えます。

しかしまぁ言うは易しですね。あくまで参考までに。何か一つでもヒントになれば、そう願いつつ今回はここまで。


・・・つづく

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