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Dear Grower #009 マリサベル・カバジェロ(ホンジュラス)

ホンジュラスの面積は日本の1/3ほど。もともと世界で上位の生産量であったが、近年さらに伸びている。生産量だけでなく、品質も向上している伸び盛りの国だ。もともとコーヒー関係者の中で“眠れる巨人”と呼ばれていて、美味しいコーヒーができるポテンシャルがあるということは分かっていた。というのも、ホンジュラスの国境周辺にある隣国の農園が、COE(カップ・オブ・エクセレンス)という国際品評会で1位を獲得する素晴らしいコーヒーを続々と生み出しているからだ。つまり、美味しいコーヒーが育つのに必要な気候風土といった自然条件が整っているのだ。

では、なぜホンジュラスは“眠れる巨人”に甘んじていたのか。それは、生産処理、特に乾燥に問題を抱えていたからだ。どんなに栽培に適した自然条件が揃っていても、それだけで美味しいコーヒーができるほど簡単ではない。農園主がどんな風に育て、生産処理を施すかで品質は良くも悪くもなる。ホンジュラスには、コーヒーが育つ条件は整っていたが、それを活かす術がまだ育っていなかった。ところが、あることをきっかけに急成長を遂げることになる。COEだ。COEはコーヒー生産国ごとに開催される品評会で、ホンジュラスでは2004年から始まった。入賞した豆はオークションにかけられ通常の何倍もの値段で取引され、農園は世界中のバイヤーから注目されることになる。きちんとつくれば、評価され、ビジネスになる。そのことを理解したホンジュラス生産者たちのなかで、コーヒーの品質を高めようというモチベーションに火がついた。栽培方法や生産処理を研究するようになり、本来もっていたポテンシャルを活かせるようになったというわけだ。

ついに“目覚めた巨人”となったホンジュラスのなかでも、とくに実直に品質を追求しているのがマリサベルさんだ。4世代続くコーヒー農園の家に生まれ、幼少から生産に携わってきた彼女には、父親の背中を見ながら身につけたコーヒー生産の基礎があった。そして、彼女の農園にとってよりよい品種、栽培方法、生産処理方法を研究し、真面目に丁寧にコーヒーと向き合っている。そんなマリサベルさんのつくった豆が、ついに2016年のCOEで1位を獲得。誰もが認める断トツの高評価を得た豆は噂になり、オークションで当時のCOE史上最高価格を更新した。

COEは、時にひとつの国のコーヒー事情を変えるほどのインパクトを持っている。マリサベルさんも1位を獲得したことで世界中のバイヤーから注目されている。多少は浮かれてもバチは当たらないと思うが、きっと彼女の姿勢は変わらないだろう。今日もホンジュラスの空の下、いつもと変わらない誠実な眼差しでコーヒーと向き合っているに違いない。

マリサベル・カバジェロさん

国名 ホンジュラス共和国
地域 ラ・パス県 チナクラ
生産者 マリサベル・カバジェロ・ガルシア
標高 1,500 - 1,680 m
農園面積 120 ha
品種 ゲイシャ、カトゥアイ
収穫時期 1月~4月
お取引開始年 2016年


引用:Beans Menu 2017.12 より


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