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Dear Grower #011 ポール・スタリー(グアテマラ)
ポールさんは繊細だ。ときにナーバス過ぎやしないかと思えるほどに。「そこまで入念に豆を洗わなくてもいいんじゃない?」と言っても、「いや、味をきれいにしたいんだ」と聞かない。でも、その細やかさが確かにコーヒーの味に出ている。彼にとって、豆を洗うということは味を磨くことなのだ。真面目で頑固な完璧主義者。そう言ってしまうと、とっつきにくい人物だと思われるかもしれない。実際、ポールさんとの関係は、最初の一年くらいはお互いに多少の壁があった。それでも「良いものは良い。ダメなものはダメ」とはっきり言うポールさんは、フェアで信頼できた。いまでは冗談を言い合う気心の知れた仲になり、もちろん大切なビジネスパートナーでもある。
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ポールさんのサン・ヘラルド農園は、グアテマラシティから車で一時間ほど。カルデラ湖であるアマティトラン湖を見下ろす山に広がっている。農園を見てまわると「実にポールさんの農園だなぁ」という印象を受ける。何というか、真面目なのだ。ピッカーたちは、ゆっくり丁寧にチェリーを摘んでいる。完熟したものだけを摘むようにとポールさんが指示しているからだ。収穫されたワインレッドのチェリーは色が揃っていて美しい。そのチェリーを洗い、乾かす生産処理場は、屋内かと思えるほど清潔で整備が行き届いている。味をきれいにしたいから豆をしっかり洗う。ポールさんのその言葉は比喩ではなく、本気なのだということが分かる。
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栽培している品種は、グアテマラ伝統のブルボン。原種に近い品種で古くから愛されているが、繊細で病気に弱い。コーヒーの木にとって天敵であるサビ病という病気があるが、かつては気温が低くなる標高の高い農園では見られなかった。ところが、地球温暖化の影響で標高1,500mくらいの農園も被害を受けるようになってしまった。ポールさんの農園も、そのひとつだ。病気に強い品種に切り替える農園もあるなかで、ポールさんはブルボンにこだわり続けている。ブルボンを愛し、揺るぎないプライドを持っているのだ。
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2017年の1月、グアテマラでの買い付けでポールさんのブルボンをカッピングしたときのこと。例年だと点数は83~84点くらいのところ、その年は86.5点。丸山健太郎がポールさんの豆に付けた過去最高の点だった。ポールさんは子供のように飛び跳ねてよろこんだ。しかも、ポールさんのブルボンは、日本にくると点がさらに上がるという特長がある。丁寧に処理されているので豆の乾燥状態がよく、味に伸びがあるのだ。なるほど、真面目な農園主がつくると、コーヒーも真面目に育つようだ。
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引用:Beans Menu 2018.2より
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