もう始まっている。もう止まらない

CDとはコンパクトディスクの略語である。新しもの好きの若者たちに、おじさんたちは、苛立ちまぎれに「中日ドラゴンズ」かと親父ギャグで返す。(ちょっと笑った)いつの時代も繰り返される不毛なマウンティングを尻目に、筆者は人生で初めてCDを買ったのであった。(以下、敬称略)

「交響組曲AKIRA」である。

言わずと知れた昭和最後の超大作アニメ映画「AKIRA」(1988年)のために作曲された芸能山城組による「もう一つのAKIRA」という位置づけのアルバムで、ジャンル的にはサウンドトラックに分類されるが、これとは別に劇中の音声を再編集した「オリジナル・サウンドトラック盤」(ひと昔前のアニメ音盤には必ずあった「ドラマ篇」という理解でだいたいOK)もあるので、購入の際は注意が必要だ。(オリジナル・サウンドトラック盤は現在廃盤)

映画を見た方なら(見てない人は今すぐレンタル店なりデジタル配信サイトへいきましょう)ご存知のとおり、芸能山城組の紡ぎだすAKIRAははっきり言っての一言である。監督(原作者)の大友克洋は「そこを狙っての起用である」とうそぶくが、実のところ扱いにはかなり困ったのではないかと推察(愚考)される。

なんと言っても度肝を抜くのは、オープニングの「ねぶた」である。ラッセーラッセーラッセーラーである。近未来(2019年!)でこの歌唱を使う企図は、今もってさっぱり意味不明なままだが、とにかく凄い自信なのである。(?)

「人の声を最良の楽器」と主張する(芸能山城組)主催の山城祥二(本名・大橋学)の頭の中に渦巻くAKIRAとは、文字とおり「ポリフォニーのカオス」である。近未来もサイバーパンクもへったくれもない人類の遺伝子の根源にまで届くという大上段な、希有壮大な、ゴーイングマイウェイな姿勢には、素人ごとき(?)が敬意を表す余地はない。平伏すか、全否定のいずれかである。

一曲としてまともな楽曲のない(褒めことばである為念)このアルバムを「独立して聴く」ことはほぼ不可能である。再生すればそこに金田少年や鉄雄、ケイやナンバースの子供たち、敷島大佐の顔しか思い浮かばない、そのため(だけ!)に作られた(創られた)音楽はもしかすると「(ピーキーすぎる)理想の劇伴音楽」とも言えるかもしれないが、根本的に間違っているとも言える。(ついでに言うとこの答えは永遠に出ないと思われる)

公開から30年を経て、物語の一部が実現(「中止だ中止ぃ」で検索してみましょう)となってしまっても「ずっと変な音楽」であることは変わらない。自分の人生の中では割と大きな位置に存在する、し続ける音楽なのである。

ちなみにプレーヤーは後から買ったので、アルバムをきちんと聴いたのは半年くらいしてからであることも併せてここに告白しておく。(この時代あるある)どっとはらい。

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