11月11日11時11分11秒の思い出

11月11日になるとふと高校の頃のその日を思い出す。

私の高校生活はとても地味で、仲のいい友達はみんな別のクラスになってしまい、ほぼ一人ぼっちだった。もう一人私同様仲のいい友達がその年のクラスにおらず、一人あぶれている子がいて、その子と身を寄せ合って日々を過ごしていた。

その友達(?)とは当然のように大学に入学して以降会うことはおろか連絡すらしていない。まあ、そんなことはどうでもいい。

話を戻すが、11月11日は世間ではポッキーの日だったりプリッツの日だったりと、細長いお菓子にあやかった日で俄かに盛り上がる。

私が高校生だった時も例に漏れず、菓子類禁止の学校にクラスメイト達はポッキーをこっそり持ち寄って、教師に隠れて食べていた。

そして、誰かが「11月11日11時11分11秒にポッキーをみんなで食べよう」と言い出した。

当然その時間帯は授業中なのだが、教師が完全に生徒から舐められている科目であり、実行できると踏んだのだろう。

授業が始まる前、全員にポッキーが配られた。もちろん、私にも。陰キャだったのでこういう少しだけ羽目を外したことにすら慣れておらず、少しワクワクしていた。

時間が刻一刻と迫ると、みんなソワソワしたり、顔を見合って笑ったりしていた。教師は黙々と板書をしており、こちらに目を向けていなかった。

そして11時11分11秒になった瞬間、全員でポッキーを頬張った。一気に食べて、自分たちのしたことに大爆笑。教師が驚いてこちらを見るが、何が起きたのか分からないといった顔をしていた。

私もおかしくて笑ってしまった。その時みんなと共通のことで笑ったのが楽しくて、11月11日になってポッキーの日と見るたびにあの時の教室を思い出す。

友達らしい友達がいない居心地の悪いクラスで、あの頃に戻りたいかといわれればそうとは思わないが、あのときの小さな思い出は、確かに私の中で楽しかった青春の一部として残っている。

けど、最近思う。

こんな小さな思い出を毎年のように思い出しているのは、多分もう、あのクラスでは私だけだ。

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