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久万ノ台温泉が大好きです。

愛媛県は松山市の中央通り。久万ノ台交差点から北へ進んでいくと、右手に江戸時代の酒蔵のような建物があります。案内にしたがって右折で入れば、すぐ先に見える広い駐車場。その奥に確認できる柔らかいベージュ色の施設が「久万ノ台温泉」です。

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履物を玄関で脱いでいると、スピーカーから力強い演歌のBGMが聞こえてきます。スマホひとつあれば音楽を聴ける日常で、最後に演歌を聞いたのはいつでしょう。こぶしのきいた歌唱力に、家族で「のど自慢」を見ていた幼少期の午後を思い出します。

せっけんやシャンプー・トリートメントを持っていない人は、受付にて少量サイズを購入OK。ロビーにも温泉独特のほんわかした香りが漂っています。

ゆったりとした待合ソファは、視線がぶつかりにくい絶妙な配置とデザイン。湯上りしたお客さんたちが、思い思いの姿でくつろいでいます。みんな赤ちゃんみたいにピンクの頬をしていて、艶やかな頭髪からは湯気が立ち上ってきそう。平和です。

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先へと進めば、広くて清潔な脱衣室や、重厚な大理石で仕切られている洗い場。新しくはないけれど、とても大切に手入れされているのが分かります。スペースに余裕があるせいか、混雑していてもストレスを感じることはありません。普段のカリカリエブリデイを忘れ、時おり聞こえてくる優しい伊予弁に耳を預けて微笑むのみです。

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大浴槽にざぶんと浸かります。弱アルカリ性低温泉。

檜風呂と岩風呂はひとつづきになっていて、目を閉じるといつか見た森林や清流の景色が脳裏によみがえります。俳句でも詠もうかと思わせる自然の息づかい。天国かよ。風呂の底から湧き上がるバブルの音。「そろそろ露天風呂に」「いやマダだ」と自問自答する私の身体を、ボコボコ心地よく刺激します。

そしていよいよ、露天風呂へ。見慣れた松山の空の色に包まれながら、全身たぷたぷ、お湯に揺れるという非日常といったら。

「ウェ~イ」「ゥォッホ~」

至福のため息を漏らしたところで、「いやぁ今年も頑張った(まだ秋だけど)」「風呂上りはビールだわ(車だからむr)」「コンクリートジャングルの日常を我慢して良かった(四国だけど)」…と、心の中の自分はどこまでも饒舌です。おひとりさま温泉最高!

もう一度大浴場に戻るのもよし、露天風呂のベンチで休憩しながら粘るのもよし。もはや演歌であるかどうかも分からないジャンル不明のBGMが、恍惚感と相まって湯上りの判断を鈍らせます。

いつまでも変わらずここにあってほしい温泉。
わたしは、久万ノ台温泉が大好きです。


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