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あなたはこうやってラーメン店に失敗する

<はじめに>

∞∞ 思いっきりネガティブ ∞∞

私はラーメン店を開業し廃業した体験談をHP上にて公開しています。HP上で私はラーメン店を開業することを勧めていません。それは安易な脱サラは失敗する確率が高いと考えているからです。しかし、私の思いとは反対に私の体験談を反面教師として実際にラーメン店を開業した方もいらっしゃいます。実は、私はその方を尊敬しています。失敗した例を知りながら挑戦する勇気に対してです。

私は考えました。失敗に至る例をもっと紹介しよう! と。

より多くの失敗事例を知ったのちに開業に踏み切るなら失敗する確率はもっと低くなるはずです。

本書は私が見聞きした事例を参考に、読者のみなさんにわかりやすいように具体的に話を展開しています。とくに後半は物語ふうに書きました。一般の人は売り上げ不振で廃業することは想像できると思います。しかしそれ以外の理由で廃業してしまう例もたくさんあります。本書では売り上げ不振以外の理由で廃業する物語を書いています。

開業する前にネガティブになることは悪いことではありません。失うものがなにもないからです。

それでは思いっきりネガティブになってください。


あなたはこうやってラーメン店に失敗する(1)

1.開業前

社会に出て7年を過ぎた春、あなたは会社で働いていて組織に縛られ自分の思い通りに仕事が進められないことに苛立ちを感じています。そして少しずつ「自分の裁量で仕事を決められる」独立を考えるようになります。それはあなただけではありません。あなたの同年代の違う人は「給料が労働時間に比べて割に合わない」と思い、「いっそのこと独立して自分で経営したほうが収入が増える」と考えます。また違う人は働く時間を自由に決められる自営業に憧れて独立を考えます。

独立を考えるきっかけは人それぞれです。そして考えること自体は自由です。しかし独立するにはお金がかかります。そう、資金です。資金がなければなにもはじまりません。何年もかけて貯めた資金は重みがあります。その重みは年数が長ければ長いほど増します。独立の意志の強さが表れるからです。しかしもし自分で貯めた資金でないならその資金は重みがありませんからすぐに飛んで行ってしまいます。資金は自分で貯めたお金に限ります。それがないならその時点で独立に失敗します。

余程多くの報酬を得ている人でなければ独立に必要な資金を全て貯めることは不可能です。ほとんどの人が自分で貯めた資金以外に開業資金を借り入れに頼ることになります。もし開業資金が全て揃うまで独立を我慢するならそれも失敗します。年数が過ぎてしまい精神的体力的にピークを越えてしまうからです。これは実年令ではありません。独立への思い入れに対する年数です。二十才代であろうが四十才代であろうが関係ありません。年数は三年くらいが限度です。

独立には自分で貯めた資金以外に借入金を得ることも必要ですが、最初に考えるのが身内からの借り入れです。例えば親であったり兄弟姉妹であったり、つまり親類にあたる人たちに借金を申し入れることになります。

ここがポイントです。親類といっても親密さはいろいろです。数年に一度会うくらいの親類から、一年に数回は必ず会う親類までいろいろのはずです。そのような関係の中で借金を申し込むのですから薄い親密さの親類に申し込めるはずはありません。とても濃い親密さの親類にお願いするに決まっています。

しかしいくら普段親しくしている親類でも借金をお願いされるのを喜ぶ人はいません。今、あなたがやろうとしていることは必ず成功するとは決まっていないからです。親しくしていられるのはあくまでお互いの利害関係がないことが前提だからです。万が一でも失敗したなら損失が自分にまで及ぶとなるとほとんどの人は腰を引きます。それが親類です。血縁関係のない友人であるなら責任を負う範囲は限られてきますが、親類であるだけに「無制限に責任を負うことになるかもしれない」という不安が沸き上がります。それだけに余計借金を引き受けることができないものです。借金を申し込むなら今までの親密さを失う覚悟を持つことが必要です。その覚悟が持てないなら申し込むべきではありません。強行するなら独立は失敗します。

仮に、運良く親類が資金を貸すことを了承してくれた、とします。しかしそれでも安心してはいけません。実際にお金を手にするまでは安心してはいけないのです。それは了承をしてから実行するまでの間に親類の心が揺れるからです。金額は十万や二十万円ではないのです。数百万円単位なのです。あなたに貸す数百万円はその親類がやっとの思いで蓄えたお金です。親類の人はラーメン店という業種について、脱サラが成功するかどうかについて、必ず調べます。知り合いの銀行の人に尋ねるかもしれません。または知り合いの知り合いがラーメン店をやっている友人に聞くかもしれません。調べれば調べるほど不安材料が多いことを知ります。

親類の人は了承したあとに日数が経てば経つほど不安が強くなってきます。そしていろいろな質問をあなたにしてきます。仮にあなたが質問に完璧に答えられたとしても不安は決してなくなることはありません。そしてついに断りの電話をしてきます。あなたはその頃は借り入れが行われることを前提に話を進めています。物件も決まりあとは保証金を入れるだけの段階かもしれません。または内装の工事がはじまっているかもしれません。そのような段階で断られてもあなたは困るだけです。親類との親密さはなくなっているでしょう。

借金を申し込む相手は「お金が返ってこなくても諦める余裕や度量」がある人にしかしてはいけません。もしそのような人があなたの周りにいないのにラーメン屋をはじめようと考えるならあなたは失敗します。

金融機関に借り入れを申し込むとしても同じです。あなたに資産があるなら問題はありません。しかしそうでないなら親類に借金を申し込むのと同じです。金融機関はあなたの保証人になる人を求めてきます。保証人はやはり親、兄弟姉妹にお願いすることになります。同じ結果となります。

次回につづく。

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