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PR TIMES(東証プライム/3922) 個人投資家向け決算説明会 2023/4/13

 2023/4/13に東証プライム上場のPR TIMES社が23年2月期通期決算を発表しました。この日の夜に個人投資家向けの決算説明会が開催され、私も参加させて頂きましたので、当記事でその様子をご紹介したいと思います。

1.はじめに

 同社は2月期決算となりますが、10月の上期決算と4月の通期決算のタイミングで決算説明会を開催されています。15時の決算開示後、15時30分から機関投資家向け、同日19時から個人投資家向けという具合での開催です。なお、前回までは、個人投資家向けは決算開示日の翌日でしたが、今回より同日の開催となっています。即時性やフェアディスクローズの観点で歓迎されれる一方で、決算内容を咀嚼した上で質問を整理するための時間が取れないという弊害もあります。まぁ、1日の猶予があったとしても、私の咀嚼力では結局大した質問もこしらえられないのですけどね…(笑)。
 なお、15時30分から開催される機関投資家向けの説明会についても、ライブ配信のみとはなりますが、質疑応答を含めて視聴することは可能です。ですのでここである程度予習して、重複を避けつつも個人投資家視点で質問を整理していくことになります。

 以下、決算説明会の様子を従来通り、くどくどと書き連ねていきます(当記事も残念ながら3万字超の規模になるものと思います(笑))。私は同社の株主として参加していますので、基本的に、会社側にポジティブであろうというバイアスの下で、様々な内容を受け取り、ここに表現しています。また、理解するキャパが狭いもので、意図せず誤認していたり、解釈が実態と異なる可能性を多分に含みます。会社の公式見解と相違する可能性も含めて、内容の正当性については何ら保障できません。投資判断をされる際には十分ご自身で検討を重ねて必要に応じて会社側の公式見解に沿って判断頂けますようお願いします。また、もし心優しい方がおられれば、私の誤認等を是正するようなコメント等を頂けますと嬉しく思います。

 なお、前回(上期決算)の際の同説明会のレポート記事をこちらに再掲しておきますので、もしよろしければ合わせてご覧ください。

2.決算説明会の流れ

 それでは、早速当日の流れを時系列で書いていきたいと思います。
 手っ取り早くQAだけご覧になりたい方もおられるかもしれませんので、お急ぎの方は3章の質疑応答に飛んで頂ければと思います。

 まず今回も説明会の実施形態は、リアル(対面)とリモートのハイブリッド型となっています。リアル会場は、本社オフィス内で執務室を横に見ながらのスペースとなっており、株主の参加が優先となりますが非株主でも参加は可能です(リモートは非株主は参加不可です)。本社オフィスは溜池山王ですが、アクセンチュアさん等も入居する大変意識の高いビルです(笑)。

PR TIMES本社オフィス

 エントランスで受付した後に、会場のフロアまで上がっていきます。案内も出ており、特に迷うこともありません。

 今回は全席に机が置かれており、メモを取ったりする立場としては大変助かりますね。それにしても椅子も通常のオフィスチェアもあれば、ハイチェアもあったりで、様々な椅子と机が並んでいます。同社のオフィスで使う什器や備品類は、PR TIMESのお客様から出来るだけ広く調達する事を心掛けているため、会議室の椅子等も含めてバラバラなのです。

 この写真の右側にはガラス張りになった執務室が一望できるようになっています。また本棚にはビジネス書はもちろん、デザインからファッション雑誌など千差万別の書籍が並んでいます。開会前までその辺りを観察しながら時を経つのを待ちます。

 司会進行を務められる取締役の三島さんが、恐縮そうに私の所へいらして下さり、質問は1回1問ずつで、一巡して時間があれば2周目ということで、とお伝え下さりました。はい、心得てますが、毎回頼まれてもいないのに多くの質問を携えてきてしまいます。ちなみに今回は10問に留まりました。前回は20問超を用意してきていたので半減です。我ながらよく絞ったなと思いつつ、今回も大量のお蔵入りは確定です(笑)。いや、それ覚悟で書き上げてきているのでいいんですけどね。前々回のようにエンドレスにお付き合い下さるような機会があった時に、そのせっかくの機会を無駄にしたくないですし、何より、質問を色々構成する事は、自分の思考を整理したり、改めて投資家としての思考論点を深めて、自覚する事に繋がりますからね。願わくば、こういう質問群に耳を傾けてみたいと会社側に思ってもらえるようにありたいと思います。
 多くの参加する株主が単なるネタを仕入れるという発想だけでなく、質問を通して、会社の課題をより明確にしたり、ポジティブになれるきっかけをもたらせるような建設的な対話機会を産もうというエネルギー源となれれば、それを会社側も価値として感じてもらえて、もっとよりよい機会が拡がっていくと思っています。もちろん、私個人の能力では限界があるため、会社を動かす力にはなれませんが、出来る事を重ねていく事しかできませんからね。

 本日の式次第というものがあって、これは事前に案内もありましたが、JootoとTayoriの各サービスの責任者の方々から両サービスの概況等についての説明のパートがある旨、案内がありました。この説明会では毎回何かしら趣向を凝らした企画があります。初回は、長年同社に寄り添ったアナリストの澤田さんとコーポレートミッション策定に関わった美濃部さんが登壇されるセッション等がありましたし、前回は会社側からIR活動に関する逆質問という形での交流がありました。そして今回は現在絶賛推し中の2つのサービスを紹介して下さるというわけですね。

 開始時間になり、冒頭で山口社長が挨拶をされました。

・山口社長挨拶

 山口社長から開会の挨拶という事でお話がありました。特に改めて決算説明プレゼンの時間があるわけではなく、この挨拶の後、速やかに質疑応答パートにいくこともあり、決算の概況についてごく簡単に定量部分についてお話をされていました。

 まず、前期実績については、特に利益面で大幅な未達に至り、特に1年前に今期は大きく投資をするという宣言下で、期待が大きかった分、結果が出せなかった点についての忸怩たる思いを吐露されていました。利益は元々減益予想ながらそこを更に掘って、大まかな目安としてのブレを15%と置いている中で、そこをも突き抜ける点についての謝罪なのでしょうが、期待に応えられなかったという趣旨は、利益の未達というより、投資期という一年を過ごす中で、まだその効果に手応えが十分でない、少なくても数値からはそのように捉えざるえないという事への無念さなのだと感じました。
 そして、同社はこれまで売上成長25%超を維持してきた中で、前期実績は20%にも届かない結果、更に今期ガイダンスは、子会社連結増要素がある中でも20%にも満たないガイダンスとなっている部分にも丁寧に説明をしていきたいというお話をされていました。

 同社では元々マーケットにおける期待が高まり過ぎないように適正な落ち着きが伴っている事を大事にしてきた印象がありますが、一方で、その下でも株主からの期待というものはきちんと理解をしていて、ただ、今の結果が伴っていない点についても、認識も同じ目線に立たれているんだなと感じました。丁寧に説明をしていきたいという事で、質疑応答で十分対話をしたいという頭出しとして良きご挨拶だなと感じました。

 この後、速やかに質疑応答の時間となります。初めて参加される方はびっくりされるかもしれませんね。個人投資家説明会のリリースや申込者へのリマインドメール等に、「対話重視の会とするため、決算説明の時間は設けないため事前に決算内容について開示文章をご覧ください」的な一言を入れておいた方がいいかもしれませんね。まぁ、決算開示直後に、決算内容に係る質問を寄せようと参加されるような変態さんはレアキャラで、そこに絞っているという意味ではこれでいいのだとも思いますけどね。ただ、より投資家認知を広めるための入門編としての普及活動は別の機会があってもいいのかもしれませんね。この説明会は、結局毎回固定したコアなファンユーザーの参加が多いですし、前置きなくいきなり質問タイムが始まるという意味でライトな投資家や株主には参加障壁が高いような気もします。
 質疑応答の内容については、纏めて3章に集約してメモを残しておきます。

 質疑応答をある程度こなした後に、JootoとTayoriの事業部長の方からのプレゼンパートです。

・Jooto/Tayoriの事業説明

 まずはJootoについてです。山田さんです。冒頭では、そもそもJootoとはどんなサービスか、という所から始まります。看板方式で誰にでもわかりやすくシンプルなタスク管理ツール、という感じですね。そして誰しもが、この界隈、レッドオーシャンですよね、って懸念を抱くわけでして、それを承知しており、すかさず、界隈のツール類を交えたポジショニングの話になります。サポート軸と機能軸で評価した時に、国内サポート×機能性が単純シンプルという存在は案外プレイヤーが少ないということです。
 この後に大企業向けへの拡販も頑張っていくという話にもなっていくのですが、この国内×単機能シンプルという訴求点が今後刺さっていくのかというところがポイントだと思っています。確かにポジショニングの説明の部分で、プレイヤーが少ないということでしたが、それはオンリーワンになりうるようなポジティブな状況なのか、それともそもそもそこにニーズが創造しにくいからこその現状なのか、という冷静な見方の狭間で価値がどのようなプロセスでどのような人たちに刺さっていくのか、率直に申し上げてやはりまだ見通しがしづらいという印象なのです。
 先の展示会でも簡単なデモを体験させてもらってきたのですが、特段悪い部分もないですし、確かにシンプル故に使いやすいだろうなと思う部分もありました。ただ、一定の規模の組織配下にいると、Web会議が当たり前の中で、例えばteamsの中であらゆるタスク管理を含めてデファクトになっているとすると、独自ツールを採用するにしても、所詮、自チーム内でやってみようかということになり、組織レイヤーが広ければ広い程、それをデファクト化していくのはいばらの道なのだろうと思うわけです。
 タクシー広告を始めた事もあり、CMの動画も流して説明されていました。コミュニケーションツールが多様化してきている中で、流れていく管理ではなく、ストックしていく管理、というような話でした。この辺りは何が契機でスイッチングされていくのかという所ももう少し考えてみたいなと思いました。恐らく、べき論やタスク管理に求められている一般論ではなかなか難しいと思います。

 一通りサービスの説明の後に、事業計画関連の話になります。以下の決算説明資料の内容に沿った説明です。定性的な話としては、グルコースさんのジョインで機能改善等のスピードアップへの期待感は大きいようです。また、大手企業をターゲットにしていくことでセキュリティ面の対応も急ぎ対応を進めていかれるようです。
 私が解せなかったのは、以下の定量的な結果の部分です。例えば有料会員数を今期が重要なKPIにしてきた中で、足元のQoQの伸びはわずか2社増に留まっていますが、これも順調に有料会員を伸ばす事が出来た、という一言で総括されていたり、前年比伸長にフォーカスし過ぎており、計画未達だった点については言及がなかった部分です。アピールをする場だから、敢えて言及する必要性もないという立場もあろうかと思いますが、広告宣伝も積極投下してきた中で、通期でみればそれなりに伸ばす事はできたものの、今後の目標を見据えていくためには根本的に全然足りません。本気でPR TIMESを凌駕するサービスに育てていく上で、この計画未達をどう分析している等の話がないと、今期予想で大幅増という話もワクワク感が半減してしまうわけです。そもそも前期比1.5倍とか計画比84%とかの比率って規模が小さいのであまり意味をなしてないとも思いますけどね。

 次にTayoriについてです。竹内さんですね。ご経歴としては前職を含めてSaaSビジネスに精通されている方のようですね。こちらも冒頭でツールの説明がありました。動画も使い理解促進を図っておられました。カスタマサポートツールということですね。問い合わせフォームの作成や集客上のサポートが出来ることや、FAQの作成運用辺りが中心でしょうか。チャット対応やアンケート収集などの機能もあります。
 こちらもやはりレッドオーシャンです。MSのFormsはもちろんですが、既に多くのツールが運用されています。またチャット等を含めたコミュニケーションツールとしては例えばTwilio等のソリューションもあります。これらのサービスは複層的にソリューションを提供しようというのがトレンドですが、Tayoriについては、シンプルさでのライトユーザーが気軽に単品で使える事を志向しています。

 Tayoriについても同様にサービスの一通りの説明の後、事業計画の話になります。Jootoと同様に以下のスライドを中心に説明されていました。
 まずは展示会やCM等で課題と認識された認知不足を補う活動をやってこられた成果を語られていました。また、ここはあまり認知しておりませんでした、前期はサーバー整備等基礎体力を整える部分への投資もされてきたようで、これは今期進行していく上での弾みになるというご説明がありました。この辺りは、資料にも明記しておいた方が良いかなと思いました。ユーザー目線でみてもよいことですしね。

 以上、2つのサービスのお話を伺った全体としての印象としては、まずSaaSビジネス全般における一般論に係る内容が多いように感じました。例えばカスタマサクセスがとても重要で、そのためにコミュニケーションを密にし、お客様の顔を知れたりする展示会機会は有益だったというような話です。確かにこれはとても重要なのですが、商品戦略上はレッドオーシャンにある中で、一生懸命に差別化しようという意志は感じます。ただ、レッドオーシャンの下で、それを打ち返す程の期待感というものがまだまだ実感が伴わないというのが率直なところなのです。ただ、中の方々は本気でやっているのだと思いますし、選択と集中をという声を多く聞く中で私は応援したいと思っています。
 そのためにも、丁寧かつ誠実な説明がまず前提に求められると思います。重要KPIについて、目標から見た伸長としては足りません。規模も小さいことから、伸長率の%そのものにあまり意味はないようにも思います。例えばJootoの売上も前期比1.5倍ってありますが、計画は未達ですし、この手応えをどう感じていて、これを踏まえてなぜこの今期見込みになるのかという点で納得感の醸成が不足しているように感じます。我々株主はどこまでいっても究極的にはわからない部分があると思うのですが、中の方々が本当にこの目標に気持ちを乗せておられるのか、鉛筆なめなめの世界になっていないか、前期の振り返りを元に積み上げられたものになっているのか気掛かりにも感じました。また、対象顧客を大手にシフトしていくという戦略の進め方がまだ腹落ちしないですし、サポートを厚くしていくということが一般論としてではなく、どういう活路になるのかなどわからないのです。いや、こういう基本所作こそがセオリー通りちゃんとやれれば成功するってことなのかもしれませんが、そんな簡単ではないとも思っています。

 今回改めてこの2商品にフォーカスを当てるということで、私の期待が大きかったのかもしれません。一部の方からは、むしろ早期に見極めをして欲しいという声もある中で、単なる収益というだけでなく、問題児事業を抱えることの人材面での意義みたいな部分も含めて、私は応援しようと思っています。事実、こういうチャレンジがあるから、山田さんや竹内さんのような優秀な方々がPR TIMES社にJoinして下さったのだと思いますしね。しかし多額のお金を投下し、PR TIMESと同じようなコアな事業を志向していく、という中で、例えば今進めている内容、説明で本気で上場企業でも多くの会社が使われるプラットフォームになれるのかということです。

 この後、両サービスに関連する質疑の時間が取られました。こちらも3章に纏めてメモを残しておきます。

 そして、この質疑をこなした後、再び山口社長向けの質疑が行われました。といってもENDである20時30分を回った頃、終了となりました。基本的に私が2問、それ以外の方は各1問ずつということだったかと思います。なんなら、質問を出来なかった方もいらっしゃったのではないかとも思います(私が2問目を質問させてもらったのは、Jooto/Tayoriの件の質問において周囲を見通して挙手がなかったためであり、誰かの機会を奪っての振る舞いではありません)。

 21時には完全撤退するということで、終了後、各位と少しお話をさせて頂いた後、会場を後にしました。

3.質疑応答

 それでは、同説明会で交わされた質疑の様子について、メモを残しておきます。重ねて申し上げますが、実際のやり取りを私の解釈で脚色しています。そのため、事実誤認等もあろうかと思いますので、ご参考程度にご覧頂ければと思います。
 ★印は私からの質問です。また回答者に明記がないものは、山口社長がお答えになっています。

★Q PR TIMESの成長鈍化への対応について
 PR TIMESの利用頻度低下に課題があると理解したが、現在の施策はTVCMによる地方を中心とした認知向上やUI等の改修によるハード面の改善に注力されているように感じる。もちろん認知向上による新規拡大や、ハード的な利便性向上も重要と思うが、一方で求められているのはプレスリリースそのものの価値や効果をより身近に実感するためのソフト面の対応なのではないかとも思える。まだ使い始めて間もないユーザーへ如何に次のステージを訴求出来るかという泥臭い対応が求められているようにも思える。PR ゼミ等でマス向けにヒントを共有して自律出来るユーザーは実際にはごく一部で、多くの迷い人を喚起するための施策というものがあるとよいと考えている。利用頻度の改善というボトルネックへの対応を改めて伺いたい。
A
 TVCMで認知度を高めていく施策、プロダクトのUPDATEによる利便性向上に係る施策、そして指摘のあった利用頻度が一部低下している要素についてという話であるが、そもそもこれらの各施策や論点に関連性はあまりない。利用頻度低下がみられる前から、TVCMやプロダクトのUPDATEは元々計画していたものを粛々と長期的目線に則って対応してきた。そこに一部利用頻度の低下という課題が顕在化してきたという状況である。
 利用頻度の低下という課題への取り組みについては、営業本部の立て直しを行ってきた中で、私(山口社長)がどのような活動をしてきたかを説明するのがわかりやすいと考えるため、ご説明したい。
 まず大きな変化があったのは、お客様との接点を持つ機会を大幅に増やしてきた事である。これまで正直あまり能動的にお客様との接点を増やしていくという事に意識を置いてこなかった。というのも、プレスリリースというものにお客様自身がニーズを感じられ、PR TIMESの利用申請を行い、実際に自学自律の下で入稿して発信をされるというフローが自然と回っていた中で、どうしてもサポート等の利用促進機会を積極的に持っていくという所への優先度意識が低かったという甘えがあった。
 こういった慢心から脱却するために、お困りごとがあれば対応するというサポートという色彩に留まらず、我々がプロアクティブにお客様へお声がけして、よりきめ細かい提案を行うような接点作りを行う事が大切だという事を改めて組織に定着させたマネジメントをこの1月から行ってきている。
 我々は個々のお客様の販促やマーケティング活動のタイミング等を知る術は限られるのだが、だからといって、お客様の発信機会をただ待っているということではなく、お客様との接点を増やす中で、個々のお客様の状況を教えてもらいながら、如何にプレスリリースを通して効果を実感してもらう機会を創出できるかという事を念頭に促進活動に勤しんでおり、その活動を重要指標として設定するようにマネジメントも変えた。故に個々の社員が持つべき職能も、これまでは新規顧客のリード獲得や契約の継続率等といった営業サイドの職能が中心だった所から、一線の営業マンであっても、PRそのものの意義や手法等のプレスリリースそのものから生み出される効果極大化に資するようなコンサル的な職能を重視するようにしている。もちろん、これは一朝一夕で身に付くものではないが、カスタマファーストに向けては重要な観点だと考えている。
 多くのお客様はマーケティング/ブランディング/リクルーティングのいずれかの組み合わせとしての効果をプレスリリースに期待されている。そのような中でPR TIMESサイトのPVは過去最高、かつ伸長率も高い状況にある。つまり、知ってもらう機会としてのフィールドは堅調な状況が続いているわけで、やはりそこにきめ細かく発信機会を提案する活動が求められていると考えているし、そこに大きなポテンシャルがあるものと承知している。
■考察
 足元で進めているTVCMによるとりわけ地方の認知度向上施策、あるいはプロダクトのUPDATEを本格化させていく事で利用者側の利便性とイノベーションを興すという施策を進めておられますが、これらの施策と今もっとも重要な課題となっている利用頻度低下という課題対処とは関連しないと明言されました。まぁそれはそうですよね。
 お話があったように、TVCMやプロダクト更改はもっと長期的目線で施策の企画が立ち上がっていたし、これは長期的にPR TIMESの価値向上に資するものだから粛々とやってきたということだと思います。そこに後発的に利用頻度低下という既存ユーザーにおける課題が顕在化したという構図であり、そこは進行中の企画からの施策とは切り出して対応を進めているということですね。そのためには営業組織を一から立て直すということで、その活動内容をご説明頂いたということです。
 もちろん、私もこの構図は理解していますし、こういうやり方しかないとも思うのですが、各施策の関連性がチグハグな印象も拭えないのです(いや、間違いだとまではいえないですし、目線として長期で見れば問題ないのかもしれません)。既存ユーザーの中に発信機会や効果実感に課題感があり頻度が下がっているという課題がある中で、これまで利用が限られた地方に向けて新規利用を求めた認知向上に積極的になっているという違和感です。
 ちょっと例が適切ではないと思いますが、ある飲食店の既存店売上が満足度低下により軟調になっている中でも、積極的な出店戦略を続けるばかりか、以前から決めていたからと米国にまでお店を出していく事を続けて新規のお客さんを求めていく、みたいな話に根源的に似ているように思うわけです。これまでになかった工夫で一世を風靡して黙っていてもお客さんはどんどん来てくれていた中での慢心だと思うわけです。
 で、もちろん私はPR TIMESの応援団としてはこのような道を進んで欲しくないわけです。会社側も立て直しをしようとされている中で、どういう見立てをしているのかという所に関心があって質問したわけです。
 慢心があったということを、社長に言わせてしまうのは悲しいですね。こういう場面で、社長が自らの誤りを認められると、手腕に対して非難も巻き起こったりしそうですが、株主としては、当時、慢心せずに顧客接点こそ大事だという事をもっと声高に対話する事は出来たはずです。このような課題が顕在化した時に経営を責める事は簡単ですが、それは株主として、きちんと経営に対して声高に懸念を示してきたかと自らの言動を振り返ってみるとやはりそういう行動は満足にとれていないわけです。結果をみてから、顧客接点を蔑ろにするなんてけしからん、というのは簡単ですが、実際には当時のリソースを鑑みてものを語らないといけません。今回の回答を受けて、改めて今、数年先に新たな課題を回避したり軽減させるために、自らの目線でどんな提言ができるかと真剣に考えないといけないなと思いました。
 回答内容としては、営業本部の立て直しの一端がよくわかりました。組織マネジメントも重要指標の改訂や人材の職能に及ぶまでの意識改革には、社員の皆さんへの喚起を興す意味で良い面と副作用もあるように思いますが、全体として前向きに進んでいけるように願うばかりです。重要指標とされた既存顧客との接点機会や頻度というものがどこまで我々株主の目に触れる事が出来るのは不透明ですが、ここは託すしかありませんね。PV数などプラットフォームは堅調であるが故に、そこを活用することを、お客様自身の内側に潜在化してしまっているニーズも含めて寄り添って伴走出来るように期待したいですね。

Q PR TIMESの減速の要因と立て直し活動の現状について
 3Qから急激にPR TIMESの減速感が顕在化してきたように感じるが、このような急激な減速感は何が主因だと分析されているのか。また、これを受けて、社長がトップに立ち、提案型の活動をされているという事は先の回答でよく理解したが、足元でその成果や手応えとしてはどのような状況になっているのか。今期業績予想についてもまだ道半ばという感覚だからこそ、こういう(弱い)ガイダンスになっているのかという辺りの感触も併せて教えてもらいたい。
A
 原因については複合的だと捉えているが、まずコロナ禍の下で、我々のサービスを利用頂く機会というものが増えてきたのは事実で、特に一時的な利用というものも従来説明のように存在していて(マスクや消毒、あるいはお家時間等)その反動という部分もある。ただ、やはりこういった一時的と思われていたお客様に向けても、もっと早期に次の機会を一緒に創っていくという提案機会が蔑ろになってしまった部分は否めず、結果、一時的なものとして反動という形になってしまったのは、ひとえにカスタマリレーションの組織体系として顧客接点不足の所以だと考えている。
 また、プロダクト面でも2015年以降、UI等の機能を変えずにやってきた。インターネットサービスとしては異例であり、相応の改修等は行ってきたつもりではあったものの、抜本的な改修には至らず、結果利用するお客様にイノベーティブな体験を十分にもたらす事が出来なかったという点も反省している。もっともプレスリリースは米国では淡々と事実だけを記者向けに発信するというクローズドな世界のものだったものが、我々のサービスではUI改善やお客様の工夫などもあり、一般消費者でも目に触れ楽しめるような存在になれたことは世界でも稀な成果である。これはプロダクトのイノベーションから引き起こされたものだと思うが、やはりその進歩がここ数年満足に進化させられなかった点も鈍化を招いている要因だと考えている。
 他にも、この期間、新規事業への取り組みや他のサービスの立ち上げということではなく、PR TIMESに集中していたら、もっと早期に手が打てていたかもしれなかった。
 では、足元の営業活動についてはどうかというと、足元では伸長率は低下し続けている一方で、手応えとしては長期的には常に楽観している。もちろん短期的にはもっと良い対応があった事は否めないがそれは致し方ないとも思う。この事業の責任者として、これまでやれてこなかった顧客接点等の対応をこの立て直しの間で改善を図り、改めて顧客との関係性を築く下で、お客様もまたその機会発信を重ねてくれる個々の状況には大いにポテンシャルを実感しているところ。顧客属性に拠らず、多くのお客様と接点を持つことで、そのポテンシャルを実際の数値にしていく道筋はみえており、その規模感としては足元では数%の伸長に留まっているが、国内だけをみても数倍程度の余地が十分にあるものと期待している。
■考察
 冒頭の質問を受けての内容でとてもいい質問で助かりますね。減速の主因は、端折って端的にいえば、コロナ特需への対応やプロダクト開発において後手に甘んじたということなのでしょう。前述の通り、これをけしらかんというより、なんでもっと株主として懸念の声を経営に届けられなかったのかが悔やまれます
 足元の状況については、長期的に楽観していると仰り(これは以前から変わっていませんね)、ポテンシャルを強く感じられてるというポジティブな発言部分はちょっと意外でした。これまで山口社長は一貫してあまり期待を上げるような事は仰らない傾向にありました。もちろん、ここでも短期と長期に分けてお話をされていましたから、この辺りのバランスは従来通りだなと思いますが。この数倍とも評されたものを実際に機会に繋げられるかは、大いに期待を寄せると共に、より広い目線で経営に声を届けられるようにありたいなと思いました。

Q 経営判断の難しさについて
 高い成長を続けて来られた一方で、足元では減速感が出ているという事を自認されている中で、経営判断において難しさは、これまでと比べて難しくなっているとか、変わらないなどどのような感触を持たれているか。経営判断といえば、例えば人材リソースの部分において、高成長の組織が故に優秀な人材が集まり定着してきた一方で、成長が鈍化する組織となる事で日々の営業活動の在り方にも変化が生じ、人を扱う上での難しさなどがあるのではないかとも思慮している。
A
 我々は会社のミッションを大切にしてきた事は改めて良いことだった。足元の業績や報酬等でやりがいを持って働くという部分は当然大事だろうと思っているが、ここで働く理由ややりがいについてミッションを共有しているという事はとても大きい。確かに減速感は過去の高成長からみれば鮮明になっているとはいえ、成長が止まったわけでもマイナスになっているわけでもない。むしろPVの数やSNSやお客様からの反応は総じて好意的な環境に恵まれている中で十分にやりがいを感じてもらえる環境は毀損していないと考えている。そういう意味で人的リソース面での経営判断としては、あの時に苦労してミッションを生み出し、継承してこれたことは大変良かったと思うし、それによって今救われていると考えている。
 一方で、経営判断の誤りの部分では、これまでPR TIMESを運営してきた中で、あまり多くの投資を必要と認識することもなく、実際それでも高い成長を持続してこられた。特にコロナ禍の下では更なる一段の需要増によって、十分な投資をせずとも、成長持続できてきたわけだが、これを内部要因、外部要因にきちんと切り分けて考える事なく甘んじてきてしまった。実際、過去の決算説明の場でも外部要因による特需的な要素があると説明はしてきたが、一方で内部の経営判断においては、厳しく線引きをして、あるべき投資やマネジメントを怠ってきたという点でミスジャッジがあったと自覚している。
 ここで線引きをより厳しく行い、また必要な措置を講じる事が出来れば、もっと早くに体制構築や人事等の組織づくりも出来ていたと考えているが、この部分が後手になったのは難しい部分であった。
■考察
 この質問もいい質問ですね。私は人材獲得や定着という観点で質問を用意していましたが、人材面を例示しつつ、より広義的な経営判断の難しさについて質問をして下さいました。ヒト、モノ、カネというのが経営判断の大きな要素になりますがヒトの部分では、幸いにもミッションを大切にしてきた事から、足元の状況を鑑みても大きな懸念はないという事かと思います。実際、最新の従業員数をみても、離職優位ということはないですし、むしろ増えているようですからね。
 一方でモノをUPDATEしていき、カネを還流させるという部分では状況に甘んじてしまったということなのだと思います。
 同社に限らず、外部要因で持ち上げられた業績に危機感は示しつつも、どこか油断してしまうということはよく見る光景ですし、それに対して投資家目線で常にその先を見越した提言をすることもあるわけですが、実際に経営手腕を握る中で、様々なファクターがある中で、隙が生まれてしまうことは止む得ないことなのだと思います。そういう意味では、耳が痛いような事を日常的に発言してくれる存在というのは大きいのかもしれません。本来、社外取締役などにその役割が求められますが、この山口社長が振り返る反省に対して、社外取締役も含めて慢心していたのだとすると、改めてここでうるさいことを言う社外取締役を登用した方がいいのかなと感じました。株主であっても、過去の決算説明会で示されていたように、外部要因による押し上げという事を十分に認識されていたトーンでもありましたから、なかなか本質的な課題を突き詰めるまでの行動はとり得なかったですからね。ここも株主として、より甘んじていてはいけない、というトーンを前面に出せなかったのは残念でなりません。

---ここで会場質問は締め切られオンライン質問に移行(早過ぎますね)---

Q 24年2月期の業績予想について
 24年2月期の予想は、グルコース社の連結化の寄与もありながらも売上で20%成長にも満たないものとなっている。積極的な広告宣伝を投下されている中で、更に25年の中期目標の水準感を鑑みれば、24年2月期には大きな反転上昇が期待される所であると考えるが、この水準のガイダンスとなっている点について説明願いたい。
A
 まずグルコース社(3月期決算)の連結については、3月末で子会社化しているため、4月から2月までの期間を24年2月期の予想の中で連結化織り込みをしていくこととなる。具体的な寄与内容については、23年3月期のグルコース社の数値は公表できないが、22年3月期は1.83億円あった中で、最新の状況を踏まえて適切に組み込んでいる状況。なのでこの部分は詳細に申し上げられない。
 一方で指摘の通り、中期目標を見据えた時に我々としてもより高い成長へ回帰する事が必要だと認識をしている。PR TIMESがより大きな規模になり、また新規サービスも順調に収益貢献をしてくれるような状況を作っていかねばならないと考えている。ただ、今回業績予想を出す上で大切にしようと思ったことは、「信用」を改めて積み重ねていく事だと考えた。これまで、上場後、業績予想を常に達成し増収増益基調を続けてきた一方で、23年2月期は減益予想をお示しした中で、更にその業績予想すらも未達に終わるという結果になり、積み上げてきた投資家からの信用を大きく毀損したものと考えている。
 この毀損した信頼は一回で取り戻せるとも思っていなし、何か逆転満塁ホームランのような奇策で満たせるものでもなく、まずは24年2月期に積み重ねの一歩を歩んでいくためにも、アグレッシブな目標とすることなく、信用の一歩を刻めるようなことに重きを置いて策定、提示したものである。
■考察
 グルコース社云々は当然開示出来ないでしょうし、これは昼の機関投資家説明会でも同様の説明をされていましたね。論点は、中期目標の目線感、また23年2月期にこれだけ先行投資を重ねてきた中で、この程度の増収に留まるということへの懸念の声だと感じました。
 そして回答の中でこのガイダンスに込めた想いを語られていました。要するに23年2月期のように業績未達による信頼失墜を省みて、改めて信頼を得るため、コンサバティブに出したということでしょう。単に保守性を重んじて出した、というニュアンスですと社員からの目線でよろしくないという想いもあっての事と思いますが、丁寧にこのガイダンスに込めた想いを説明されていたように思います。
 ただ、これを「保守的」と受け止められたこともあり、背水の陣です。元々同社はあまり数値に縛られることなく、長期的目線に立って運営される志向が高いものと受け止めていますが、ミニマムラインが意識されたことにより、数値での経営判断がなされる事での歪みが生まれないかという点は懸念してしまいます。ミッションが最も大切であるわけですが、そのためにある程度数値を作っていく、という事に意識が向かうことで、弊害が生じないかという事は心配になりました。
 また、このような想いを持って開示され、それをこういう場できちんと表明頂けるのであれば、これは説明資料にも補足的に明記された方がよいように思います。以下がその該当スライドですが、これだとこの意図が全く伝わりません。特に売上がこの程度の伸長では足りないという自覚があり、それが中期目標を掲げられている中で、あるいは前期に先行投資を重ねてきた中で、マーケットから不足感と感じ取られるという事が予見されていた中で、「前期業績未達の反省をもとに、改めて投資家の信頼を積み上げていく事を大切にガイダンスを策定」というような事を一言入れておくだけでも、だいぶ印象は変わったのではないかと思います。それとも、それが明示化されるといよいよ追い詰められてしまうという感覚でもあるのでしょうか。

Q プレスリリースマーケットの現状と優位性について
 現在、企業のプレスリリース機会の拡がりによる市場成長を認識した上で、PR TIMESの発信件数が鈍化しているということは、他の情報発信手段に代替されている構図もあるのではないかと思料する。他の情報発信手段を含めた市場認識と、他のツールに比較してPR TIMESが提供出来る提案付加価値とはどういうものか。
A
 明らかに増えているのはSNSによる情報発信であり、特にTiktokに代表される短尺動画によるコミュニケーション重視型のB2C交流機会の台頭だと捉えている。数年前までは大きな存在とは思ってなかった存在が、コンテンツ主軸ではなくコミュニケーション形成という軸で台頭してきている事は想定以上だと考えている。ただ、企業が一般消費者らに発信をする上で、様々なコンテンツやコミュニケーションを求めていく中で、プレスリリースはその一面を満たすソリューションであり、並行してコミュニケーションの深化という部分で動画等の活用というものがなされている認識である。従って、現状で、彼らのようなSNSの台頭が我々の機会を奪ったり代替するとまでは考えていない。企業の発信は総じて、SNS、オウンドメディア、記者会見やPRイベント、インフルエンサーやメディア向けコミュニケーション、プレスリリースの5つに大別されるが、そのバランスや成長スピードはまちまちである。特にSNSはどの期間でみても、我々のプレスリリースと比べても高成長である。ただ、SNSはPR TIMESと親和性が高くシナジーもあるのだが、短尺動画のようなものはニュースとは相性があまりよくないという部分はある。なので、我々としてもこのような領域における脅威があるとすればそれを機会に転じていくようなチャレンジはしているが、まだまだ道半ばではある。
■考察
 私のアンテナが鈍いのか、TikTokが企業コミュニケーションにおいて台頭してきているという認識はあまり抱いていませんでした。むしろ、SNSの中でもnoteのような媒体の方が気になっており、私も質問に仕込んでおりました。
 PR TIMESサイトがPVで大きな伸長を見せる中で、エンゲージメントの高いプラットフォームであるが故に、その拡散力を含めて優位であるとは思っていますが、常に進化の大きなITサービスにおいて入れ替わりというものが起こりうる業界でもありますから注意が必要な論点だと思いました。
 TikTokが企業の広報を主軸とした発信の代替にはならないだろうというの見立てはその通りだと思いますし、ちょっと種別が違うもののようにも感じます。一方でnoteのような媒体は脅威だと思っています。むしろなんでnoteが出てこなかったのかが不思議です。noteはクリエイターが創る世界観とそこを訪れる訪問者とが交わる街をつくるという発想でのプラットフォームですが、最近では自治体等でも採用されるようになっており、発信ツールとして台頭してきている認識です。もちろん、様々な違いがありますけどね。

---ここで第1部としての質疑は終了---

 この後、前述の通りJootoとTayoriについての事業説明が入ります。そしてその説明後、JootoとTayoriに係る質問を各事業部長が受けるという流れでした。PR TIMESに課題感がそこまでなければ、ここにも力を入れるのもわかるのですが、絶賛推し中のサービスなのでわかるのですが、優先度としてはここに絞ることなく、質問の時間を確保頂きたかったですね。

Q Jootoの料金プランの契約分布やタスクDXプランの詳細について
 Jootoの料金プラン別の契約の分布(比率)を教えて頂きたい。また、タスクDXプランについてはライセンスの上限等はなく一律定額ということなのか。
A
 プランの内訳については非開示としている。単価はスタンダードで500円/1ライセンス、エンタープライズで1000円/1ライセンスとなっており、全体の単価の上昇からみて、エンタープライズの比率が上がってきているとお考え頂ければと思う。
 タスクDXプランは沢山問合せしてもらって嬉しい限り。ライセンスは定額であり、いくつか条件はあるものの基本的にお客様の予算取りの兼ね合いもあり定額制としている。(山田さん)
■考察
 この質問の真意はどこにあったのでしょうか。恐らく単純に比率を聞きたかったとか、定額条件を知りたかったというわけではないのかなと思いました。ストレートに聞いても答弁の通り非開示といわれるのがオチですし、たぶん真意は別の所というか、先々をより見通すための質問だったのではないかと感じました。
 単価の所でもエンタープライズの比率が上がってきているという話があった通り、数値を見ているとこの事自体は推察されるのですが、どういう背景でこの動きになっているのか、とか値付け戦略等で、考えている事や志向していることなどを聴いても面白かったかなと思いました。
 また大企業を意図したプランについても、価格(値付け)と契約のしやしさ(定額の方が稟議を通しやすい)といった面が本当に導入障壁を下げていける要素なのかどうかというところですよね。実は社内のデファクトツールとどう共存させていけるのかの訴求の方がよほど大事なのではないかと思っており、その辺の会社側の見解は伺ってみたかったです。

Q 規模別/リード別の導入状況の開示充実について
 各サービスの有料アカウント数等をみると、Jootoは頭打ち感もあって伸び悩んでいるし、Tayoriさんもまだ伸びているとはいえ鈍化しているようにもみえる。かかる状況を踏まえて、今後は従来の小規模法人のユーザーから中規模から大規模のお客様に向けて拡販をされていくという方針の説明があったと思うが、現状の規模別の導入状況を可視化してその遷移を示してもらえると理解が深まるのではないか。単価の動向と合わせてみる事で、相関を捉えやすくなるし、今後の拡大を想像しやすくなると考える。このような情報をご提供頂けないか。
 また、両サービスとも、PR TIMESのお客様への提案導入というものが当初は多かったと思うが、今後もまだこのチャネルでの拡販余地があるということなのか、あるいはPR TIMESのお客様ではない新規開拓が必要ということなのか、この顧客属性の比率なども開示頂けるとわかりやすい。
A
 内訳の開示についてご要望頂きありがたい。Jootoでは非常に多岐に渡る業界のお客様に利用して頂いている。企業規模についても具体的な数は示せないが大規模事業者のお客様の利用も進んでいる。ただ、一方でその利用シーンとしてはプロジェクトに閉じた利用であったりと局所的であるというのが実情。従って規模別の状況をお示し出来たとしても、適用範囲の広さという部分もまちまちであり、一概に正しい状況が示せないという部分もある。ちなみに、過去から現在に至るまで、この規模別という部分で見るとあまり大きな変化はない。但し、部署内で使う中で、その利用ユーザーが増えてきているというのはいえる。このような状況であるため、リクエストを頂いた趣旨を踏まえて、何をわかりやすくお伝え出来るかという点については今後検討して参りたい。
 PR TIMESのお客様は主に広報部門であるが、Jootoのお客様は営業部門だったり管理部門が中心であり異なるセクションであるため、我々のチームが広報部門外の方にとっても情報発信機会を創出できるような働き掛けをしているという状況。特に地方では広報が兼務であることもあり、地方利用が拡がることで、これからもっとJootoを含めた提案が出来る機会が拡がっていると考えている。(山田さん)
 Tayoriについても基本的にJootoと同じような状況であるが、詳細の比率等の数値は開示できないが、利用料金が安いということもあり、中小規模のお客様にも気軽に利用頂くシーンは多い。営業体制の整備を進めてきた中で、足元では大手企業の新規事業部門の方々の利用が徐々にみられるようになってきた。
 PR TIMESの利用顧客との重なりという部分では、Jootoと同様に利用ユーザー部門のセクションが異なるため、個別に各々でドアノックをしている状況である。(竹内さん)
■考察
 単純な社数としてセグメンテーションしたデータを示したとしても、結局利用シーンは局所的だったりするため、一概に状況把握がしにくいということですよね。例えば、数人規模の町工場の会社さんが全社的に利用をされているケースもあれば、トヨタ自動車のあるA担当のチーム数人で利用されているケースは利用状況としての実態は同じですが、規模別にみれば違うということですよね。もちろん、トヨタ自動車のA担当で使われている事でB担当の目にも留まり横展開余地があるという期待感はあるかもしれませんが、むしろ全社標準のような仕組みが出来上がっている中での難しさもあります。そう考えると実は町工場の社長さんがお隣の町工場の社長さんに紹介して…という方がまだ現実味があるような話のようにも思えます。
 大企業をターゲットにするという意味合いですが、大企業の中で存在感を出していくためには、社内の標準的なツールとして選定される必要があるわけです。もしそうではなく、チーム単位での拡販を進めていくということであれば、それは「大企業」をターゲットにする、という意味合いがあまりないのかもしれません。この辺りは、この問答を聞いていて改めてよくわからなくなってしまいました。
 またPR TIMESのお客様とは部門が異なる事から、結局個別の営業活動にならざるえないというニュアンスでもあり、益々この事業に取り組む意義、みたいな所も不明瞭のままという印象です。
 もちろん、ミッションである「行動者発の情報が、人の心を揺さぶる時代へ」を体現するように、行動者に寄り添うという意味で発信機会を提供するPR TIMES単体ではなく、行動者が行動するために求められるツールとしてこれらの新規立ち上げをしているモチベーションは理解をしています。そして、ある程度成熟したPR TIMES単体ではなく、PPMの構造上において問題児事業を抱えていることは、志向の高い人材の活力をもたらす意義があるということもわかっています。しかしながら、レッドオーシャンの下で、かつ広告宣伝を投下している中で、まだ効果はこれからとみるむきもありますが苦しい状況が続いている点をみると、本当にこのまま2025目標上で収益貢献とまで掲げている姿にもっていけるのかという疑念を抱いてしまいます。そもそも2025の目標目線である収益貢献のスタートで終わってはだめで、その後、PR TIMESのような事業に育っていかねばならないしそれを企図されているわけですからね。
 なにより、基幹事業であるPR TIMESですら、足元で課題感も台頭している中で、まだまだできることは沢山ある、という社長の答弁にもあった通り、機会を機会とするべく出来ていない課題も山積という状況の中で、それ以外の事業にアクセルを踏み続けている事に懸念を抱いてしまいます。
 外側からしか見ていない所感ですし、そんなに経営判断というものは容易くないものとも承知しておりますので、最終的には託してお任せするし、やるからには応援したいと思い、私も展示会で実際に触れてみたりとしているわけですから、今後の判断を支持し、ただ時に厳しい目も向けていきたいなと思いました。

---ここでJooto/Tayori向けに最後1問と宣告---

 せっかく企画頂いたのに申し訳ないのですが、今回用意してきた質問のうち、Jooto/Tayoriの件は1問だけでした。興味がないとかではなく、PR TIMESの件で伺いたい事が多かったですし、組織全体の話でも聞いてみたいこともありました。なので、スルーしようかと思ったのですが、どなたも最後の1問に反応しなかったので、挙手して質問することにしました。
 本当はこの後に山口社長向けにせめてもう一問と思っていたので、ここで発言をすることは、もうこれでおしまいということです。悲しいですね。しかも、用意してきた質問ではなく、抽象的な事を伺いました。

★Q 2025目標を見据えた上での覚悟と展示会の意義
 両事業とも事業責任者として参画され、権限も持たれ、広告宣伝活動も展示会等積極的に投下された一年だったかと思う。しかしながら、少なくても現段階では微増に留まっている状況だと認識している。2025年目標において収益貢献という事を掲げられている中では力不足だと感じる。このような状況下で、今期も広告宣伝活動を展示会等で認知を高めていくというお話も伺っているが、この施策はこれまでの延長線のようにも感じられ、このような施策で今後目標に向けて加速していけるのかという疑問もある。改めてお伺いするが、サービス責任者をされているお立場から、2025目標を見据えた上で、これを実現していくという覚悟をどのようにお持ちなのか。
 また広告宣伝のうち、展示会については、私も足を運んで様子を拝見したのだが、名刺を集める活動に躍起になっている部分もあり、有効なリード獲得という観点でどこまで成果があるものなのか、この出展意義についても伺いたい。
A
 2年前にJoinしたわけだが、それ以前にJootoを利用していてこのサービスに魅了された。この可能性あるサービスを責任者という立場で拝命しているわけだが、当時の気持ちからは変わっていない。ただ、どのような方々にどういうプランで、どういう仕様でご提供していく事がいいのかこれまで手探りであった。そしてその状況もようやくみえてきて、例えばタスクDXプランというものの発表にもなっている。訴求点がようやく見いだせてきたというのが今であり、その可能性に覚悟をもっている。特に大企業向けにはやはり単価も大きく伸ばせる余地があるとも実感する事が出来ていて、十分今からでも2025目標は狙える数値だと思っている。素地は整ったので、達成する気概をもって責任感をもって頑張っていきたい。
 展示会については、有効な手段であると認識している。我々のお客様になってもらえるレイヤーの方々(情報システム部門の責任ある方や業務改善に取り組もうとされている当事者の方)と直接接点が持てるということは貴重。しかも述べ3日間で決裁権のあるような方々とも多くの接点を持つことができたわけだが、これを個別にアポを取って、というプロセスでは得難いものである。このような機会を得られるということからも今後も投資をしていきたい。(山田さん)
 Tayoriの責任者として目標を達成するためにあらゆることにチャレンジしていきたい。昨年からJoinしてから、お客様からポジティブな声を頂くこともあって、まだまだ可能性があるサービスなのだと自負しており、認知度が低く、PR TIMESのような認知度を高めていく事が出来ればまだまだ飛躍できるチャンスは大きいと確信している。
 確かに広告宣伝やTVCMといった従来の延長線上という部分もあるが、23年2月期にサーバー投資などでインフラ基盤を整備出来たという手応えは大きなものである。これを活かして今後伸ばせる出来ると考えている。
 展示会についても多くの方にデモをして認知を拡げる事が出来た。一方で形態としてはB2Bとなるため、4月の新年度以降の予算取りエントリーに向けてキーマンとの接点を持てた事は大きい意義だと感じている。(竹内さん)
■考察
 これは感覚的なものなのですが、これまでの説明や質疑の様子を伺っていても、「ワクワク感」がビシビシと伝わってくるという印象があまりなかったのです。劇場型である必要もありませんし、そういう場ではないので、淡々と魅力や質疑の応対をされていただけだと思うのですけどね。もちろん、普段の様子から熱く取り組まれているのだと信じています。ただ、その充足感がどこか満たされず、「覚悟があるのか」という抽象的な質問になりました。
 施策も認知向上と大企業側へスケールを狙うというなんとなくありがちなお話でしたし、どこまで勝機を見据えて、各々の方々がワクワク感をもっておられるのかなと思ったのですが、やはり覚悟という部分においても、なんか根拠はない、ひきつけられ、なんだかいけそうな気がする、という妙な高揚感はなかったんですよね。
 で、高揚感はなくとも、論理的な緻密さがあればとも思うのですが、やはり個々でみていくとどうしても普通に感じてしまうのです。例えば、Jootoで顧客が喜ぶためにどういう仕組みやプランがあればよいのか手探りで検討を重ねてきた中で生まれたのがタスクDXプランであるということですが、大企業向けという事を考えれば定額制というものはある程度すぐに想起できると思います。これが検討してきた結果としてここで紹介されるレベルだとするとまだ施策そのものの深度が浅い気がするのです。Tayoriについてもユーザーからのポジティブな声を見聞きしたからポテンシャルが高いという論理も確かにそうなのだと思いますが、もう少しロジカルな理解を深められると見通しやすいのかなと感じます。
 この他、展示会についても、確かに接点を持てる機会としては量は圧倒すると思います。個別のアポ攻勢をかけるより、展示会で接点を持てることの意義、みたいな話もありました。しかし、本当にそうなんでしょうか。いやそうなのかもしれませんけど。
 大きなブースを構えた通路には、サービスのTシャツを召した営業メンバーが沢山おられて、道行く人に積極的に声掛けをされ、やや強引とも思える位にしつこくて、根を上げてブース内に招かれているようなシーンも散見されました(これはこの展示会全般そうなのですが)。そこで自社サービスの良い部分を怒涛のように紹介を受けて、とりあえずその場を後にする、というのが一般的な接点のように見受けられました(実際にはここで有益な対話機会が多いという話なのかもしれませんが)。展示会後、フォローメールをお送りし、いわゆる見込み客化していくまでのフローを想像してみると、本当に費用対効果の高いやり方なのかという理解があまり私は出来ていません。少なくてもあれだけ大きなブースで、あれだけ積極的な声掛け営業が心地よくまたエンゲージメント創造の基点になりうるのかということです。しかも、実際には決済権限がある人が来場しているというケースはそこまで支配的ではないと思います。少なくても私は社内で助言こそする立場ではありますが、直接的な選定決裁権限を持ち合わせてない中で、来場していますからね。戦略的に展示会出展を目玉のマーケティング施策とされるのであれば、実際に顧客獲得の区分を分析したり、1獲得辺りのコストなどで分析されていればわかりやすいと思うのですよね。むしろ紹介や丁寧に関係性を築いてきた顧客の方が結果的に長く深く付き合ってもらいやすい、というようなことはないのかなと。
 もちろん、こういう場に出展をすることでリード獲得という直接的な効果だけではなく、他社から見た時のブランディングや社員の皆さんのモチベーション等副次的効果もあるのかもしれませんけどね。
 少なくても覚悟をもって進んで下さるということですし、展示会が有効であるという評価をされたので、今後の成り行きを見守りたいと思いますし、その覚悟の結果や展示会の効果面もよりわかりやすく評価できるようになっていると思うので、また次のタイミングで経過を伺ってみたいなと思いました。

---ここから再度山口社長向けに質問タイム2部---

Q 中期経営目標と計画の意味について
 中期経営目標は従前、2025年に営利35億と掲げられてきた。しかし、今回、2025年計画として同25億と併記されるようになった。元々の目標値と今回追加記載された計画値の違いについて確認したい。
A
 我々は上場後すぐに中期目標を掲げた。2016年時点で1.6億だった営利を2020年に10億にするという内容だったわけだが、これだけの伸長は、計画ではなかなか立てる事は難しい。一方で親会社がある中での上場ということで、急成長を遂げることで上場意義を示す必要性も当時はあった。そのような観点で、合理的な積み上げによる計画値として10億円というものを掲げるには無理があったが、目標値としてそこを目指すというニュアンスで示す事に一定の意義があったと考えていた。急成長は急ぐ事ではなく、一定の成長を持続的に継続させていく事が大切という考えの下で、なんとかこの目標を射程に捉える事が出来た。
 一方でその次といわれて考えたことは同じで、やはりここから更なる成長を遂げたいという熱意は抱いていたものの、合理的に積み上げて作る計画としてはなかなか難しいという中で、目標として掲げる事としたものが35億である。この目標の前提としてPR TIMESが東京だけでなく、全国あるいはグローバルという所まで見据えた姿を目標として掲げることにした。
 しかしながら、この目標に向けて歩んでいく中で、23年2月期決算では培ってきた信用を毀損したという反省もあり、これだけの減益かつ未達という事態に将来を懸念される事も想像出来た。マーケットに関してフレンドリであろうと接してきたつもりであるが、これだけのバッドサプライズという事態をもたらしたことについて真摯に受け止める必要性を感じた。その意識から、大きく挑戦し続けて35億という水準を目指していくんだという拠り所だけで歩き続けるのでなく、投資家に対して実効性のある計画値というものも併せて提示しなければ、我々は傲慢なのではないかと考えた
 従って今回、計画値というものを提示したのは、まずはこの水準は達成していくラインとしてお示しした上で、35億という目標をも捨てずに持ち続けるというような事を考えて併記する開示に至った。
■考察
 これは私も質問しようと思っていた内容でした。順番が回ってこないので大変助かります。もっといえば、目標だけでなく、その後の株安を受けて、最終年度だけではなく途中年度も「イメージ」と称して開示をされていました。今回の計画値はこのイメージも下回るものです。ですのでこの辺りの関係性も聞いてみたかったのですよね。恐らくイメージも目標のイメージであって、計画のイメージではないということなのでしょう。事情が分かっていない人からすると、なんかわかりづらくして誤魔化している?とも疑念を助長される内容だと思います。
 私は、咄嗟に目標と計画の区別の意図を汲む事は出来ましたが、回答を伺いやはり想定通りの認識だったわけですが、なかなかそのように受け取ってくれる方は少ないのではないでしょうか。実際に、下方修正を誤魔化しているというニュアンスの発言も周囲で見聞きしましたしね。
 以下がその開示部分ですが、今回目標に加えて計画というものを表現したのであれば、そのニュアンスはここに説明があった趣旨がわかるように工夫をした方がいいと思います。この件は、閉会後、個別にIR発信の丁寧さという観点できちんと改善要望としてお伝えしました。

 ごく端折っていえば、35億を目指す事に変わりはないが、信任を受けにくくなっている状況も踏まえて、実効性の高い(保守性を重んじた)数値として計画値というものを策定したということです。
 いずれにせよ、まずは今期回復が鈍い中ではありますが、着実に達成できる水準感を示されたので、再び信頼を重ねる運営に期待したいと思います。

Q 販管費と投資の考え方
 営業利益は大幅な未達となっているが、仮に売上が予算を充足していたとしても利益は未達という状況に変わりはなかったように思える。ということは、何かに想定超の支出があったものと捉えている。しかしながら、広告宣伝費で捉えると、1億円程度未消化の状況であった。なので、集中的な投資として位置づけられていた広告宣伝費は計画に対して結果的に抑制する事になった一方で、どこかにお金を使い過ぎている(計画に対して)という事かと思うがちぐはぐな印象を受ける。このような状況になった背景や状況について解説頂きたい。
A
 ご指摘の通り、広告宣伝費は予算比で見た時に未消化となった部分があった。一方で、より高めていきたいという志向の下で、計画より多く投下したものがあり、その一つとしてR&D投資が挙げられる。PR TIMESが旧態のシステム構造のままとなっていた事もあり、オンプレミスで自前サーバーでの運用という事でアーキテクチャー全般に古さがあった中で、刷新を急ぐ必要性があった。23年2月期にはこのクラウドシフトを図っていく中で、投資というものを想定以上に投下して、この刷新を進めてきた。また開発費用についてもJootoやTayoriを含めた内製化及び外注等のコストは計画よりも膨らんだ。なお、この点はグルコースの子会社化によりグループでの内製化体制を整えたこともあり、今後はこういった投資も社外流出を抑制しながら効率的に進めていければと考えている。
 また会社全体の組織も大きくなってきている中で、とりわけ管理部門を中心に規律が失われた事で、採用教育費が想定超に要したという事も一因。我々がこれまではリソース配分できなかった部分に、企業としての成長と共に投下が出来るようになったが故に、その手綱が緩んだ部分はあったのだと考えている。
■考察
 質問された方の懸念の気持ちがひしひし伝わってくる問いかけですね。なんとか業績予想修正までは出さずに済む(30%を超えない)ように、最後はコストコントロールの一環もあっての広告宣伝費の未消化だったのかなと私は邪推していました。ただ、既に投下したものの多くや、クラウドシフトにおける一定期間の並行稼働コストは削れませんので、この部分はどうしても垂れ流す(表現が適切ではないですが)ことになったのかなと思います。
 未消化となった広告宣伝費については前述の通り、展示会やTVCM効果は効果測定を行った上で適切に運用をして頂きたいなと思います。今後については、24年2月期の上期までは少なくても利益を削りながら、引き続き積極的に投下を続けていくということなのでしょう。
 R&Dの部分は正直状況が良く理解出来ませんでした。元々クラウドシフトを志向されていたと思いますし、JootoやTayoriへのシステム投資も視野に入れておられたと思いますが、なぜ計画比で膨らんだのか。回答の端々で満足いく開発には至らなかった中でのコスト先行という趣旨の発言があり、ちょっと心配になる内容のように感じました。本来内製化や既存のリソース内で留めて対応しうることを念頭にされてきた中で、想定以上の工数となって、外注費含めて追加コストが想定以上に出たということなのだとしたら、開発体制そのものの課題を議論しないとなりません。またそんな中でグルコース社のJoinはグループ内リソースの確保という観点では表面的には良さげに感じますが、一方でシナジーがきちんと生まれるのかという所も心配です。
 例えばJootoやTayoriについてもこれまで内製化中心にスクラッチしてきた中で、そこに込められた設計思想やPGの構成等には癖というものがあるはずです。そしてグルコースはまたニッチで高い専門性を持った集団のように思われますので、彼らなりの思想や癖というものが色濃く存在しているはずです。そういう下で単純にグループ内リソースの拡充といえば聞こえはよいのですが、実際には違った文化が融合する時にはとても留意が必要だとも思います。この辺りについても実は質問をしたかったのですが、当然私の順番はもう回ってきませんので…。
 管理部門の規律を失ったという話は期中で説明がありましたね。採用教育費の推移をみると、4Qでは落ち着きを取り戻したようにも思いますが、ここもまた難しい舵取りになります。結局人的投資は継続的に進める必要があり、規律を維持しながらその投資を継続させていくという事は難しさがあります。単に規律だけを意識すると、とにかく最低限の投資にしておこうとか、人材育成そのものがどこかで劣後するようなことになると、組織としては問題が生じます。規律という中身を因数分解し、どの部分を抑制し、どの分は逆に増勢に進めていくのかのメリハリをしっかりもって投下していって頂きたいですね。
 また回答の中で、ここで得られた教訓や今後のアクションプランというものへの言及があるとよかったかなと感じました。例えば規律を失った事の一次原因がどこにあると見立てられ、その歯止めをどう講じてきたのか、それが今後大きな課題となって再発しないような取り組みとかですね。開発体制についてもグループ内リソースで賄っていくというのはあくまで表面的な財務収益性に係る部分の話でもありますが、そもそも思ったような開発体制を推進していくために、何が足りなくて、どうすれば思い描いていた姿になれると思われるのかというところです。今のままだと、また思うような開発が出来ず、グループ内外はともかくとして貴重なリソースを非効率的に投下する事が続いてしまう懸念にも繋がります。

---ここで第2部としての会場質疑を終了しオンラインからの質問へ---

Q 米国市場への取り組みについて
 米国市場への取り組みについての現状と今後の展望について具体的に聞かせて欲しい。
A
 今回の決算発表において、一言だけ米国市場について言及している。1年前はある会社と独占契約締結に向けて取り組んできたが、残念ながらご縁が結実しなかった。その後は他の企業やプレスリリース専業だけでなく周辺事業の取り組み状況も見ながら視野を広げて仲間つくりのための交渉を続けている。また米国現地だけではなく、米国に進出をしている欧州を始め様々な地域の企業との提携も模索している。M&Aという選択だけでなく、資本提携等形態も様々な進め方も選択肢としてもっている。
 では具体的にどの会社でどういう交渉を進めているかということについては、相手もあることなので、この場でお話する事は控えたい。ただ、日本でこれだけの成功をしてきた事業が世界でも需要はあるものと確信している。
■考察
 この話題はセンシティブなものなので、まぁ回答はされませんよね(明言するべき事でもないと思っていますし)。ただ、以前はM&Aなのかどうかすらも明言を避けてこられましたし、今後は資本業務提携も視野に入れながら幅広く交渉を模索していくという回答は、これまでのトーンからするとだいぶ積極的にお話をされた印象でした。
 そしてこの際に現地法人を設立し、黒須さんを招聘されたというリリースが昨秋にありましたが、この辺りの話題が出なかったのは気になりました。元々、昨秋に現地法人を設立してからというもの、この件の動きがまるで音沙汰がないのはどうなっているんだろう、とは思っています。別に交渉内容とかに触れる発信などは必要ないと思いますが、現地でどういう調査をしているのか、米国PR市場の現状とかのレポートとか日本で成功をしたPR TIMESが米国でも成功することを確信しているのであればどういう活路があるのかの例示など色々発信をする事もできると思うのですけどね。決算説明資料にも一切現地法人設立を含めた話題への言及はありませんでした。何かしら事情があるのでしょうかね。

 質疑応答の様子については以上です。全体的に山口社長が一つ一つの質問に丁寧に回答をされていたこともあり、逆に回答が長くわかりにくいと思われた方も多かったかもしれません。質問する側も1問しかできないとなると、色々な背景を織り交ぜて欲張ってしまいますし、回答する側も背景や思想を出来るだけ伝えたいという意欲を持って下さっている狭間で、もしかするとコミュニケーションとすると判りにくさもあるのかもしれませんね。いっそうのこと、一問一答方式で数をこなしていくというやり方があっても面白いかもしれませんね。ただそれだけだと淡泊にもなりますし、なかなか伝えたりストーリが伝えづらいという事もあると思うので、2部制にして、従来のやり方と、コンパクトに数をこなしていくというように切り分けても面白いかもしれませんね。そうするとコンパクトにやり取りしたものから、掘ってみたい内容を改めて長尺のパートでコミュニケーションするとかが出来そうな気もしました。

4.さいごに

 まず、皆さん大変お忙しい中、個人投資家向けのIRとしてこのような機会を設定頂いたことには大変感謝しています。今回は質疑の内容も、ここでの私の所感メモも総じて手厳しいものになっていると自覚しております。質疑の時間が短く、せっかくの機会なのに基本的に1問しか質問できないという状況は残念に思っています。ただこれも、こういう機会を通して対話する機会に対して、十分に会社側の方々が価値を感じてもらえてないという証左でもあります。個人投資家向けにIRを行うことで、様々な意見や声が会社をより良くするために資すると、本気で思ってもらえれば、もっと能動的に機会を確保しようという変化を自律的に促せると思うわけです。

 もちろん、平日の夜、即時性を優先しての開催であり、現場で対応される社員の方々のリソース上のバランスなども考慮せなばなりませんから、初回にあったようなエンドレスの会というものは現実的ではないのかもしれません。
 ただ、もっと機会を創ろうと思えば創れるとも思っています。例えば、土日の休日に小さなTKPのような会議室で現地に役員の方(社員を巻き込まず)と有志の株主がふらりと集って喧々諤々と対話をするというような事だって実現出来るのではないかと思います。もちろん広く株主に周知をして開催すればいいでしょうし、結果的に少人数の会になったとしても、そこでの主なやり取りをテキスト等で開示すれば、誰も不幸になることもありませんし、むしろ広く理解が得られるベースにもなると思います。こういう機会に穿った見方をされる方もおられるかもしれませんが、そもそも非株主であっても機関投資家とは1on1を重ねておられるわけですから、交わされる情報の扱いにだけ双方が留意出来れば何ら障壁はないとも思っています。

 山口社長はどこまでいってもわかりづらさは残るし、それは止む得ない事であるという趣旨の発言をこれまでもされてきました。今回のJootoやTayoriの現状認識においてもこの傾向は顕著です。分かり合えないし、その判断のためにすべてのデータを示す事も叶わないと思いますが、それでもこのサービスに魅了されている組織内の目線だけでなく、投資家目線で株主としての意見というものを粛々と交わす事に価値を感じてもらえるような提言をより深めていければ、双方にメリットがあるのではないかと信じています。

 そのためにも、単なる株価の下がった、騰がったとか、数値目標のコミットメントを迫るというような材料探しという部分ではなく、建設的な目線で意義ある質問を重ねて、会社側にIR活動の意義を実感してもらう機会創出を強く期待しています。これはPR TIMESさんだけに限った話ではなく、投資先企業さん全部に言えることです。

 そしてそういう意義に煩わしさを感じるようになったら、もうその企業へ投資する事はやめた方がいいでしょうし、会社側も投資家向けのIR活動を形式的に捉えるような向きが強まるようであれば面倒な事に縛られずに非公開会社として自由に歩んだ方がよいと思っています。

 PR TIMESさんはこの決算開示日と同日、組織変更と人事を発表しています。ここではマネージャー/リード職への新規登用などもありましたが、なんといっても三浦さんが執行役員に就任された点が注目ですね。以下、就任の挨拶ですが、秀逸な文章だと感じました。

就職活動に成功したのか、それとも失敗だったのか。それは内定を承諾した時に決まるものではなく、入社してから活躍できたときに自ら決めるものだと言い聞かせてきました。成長期待の人事に応えられず、2 年前までは正直決めきれませんでした。それでも機会を追求し続け、入社して 6 年が経ち、胸を張って成功と言えるようになりました。今回も実力を大きく上回る人事です。それでも役割を果たし、社会の公器の一員として、一人の行動者としてミッション実現に突き進みます。山積の課題も無理難題も、社会を前進させるためならきっと立ち 向かえると信じています。丁寧に業を励み、大胆に挑戦し、日に新たであるよう心がけてまいります。

三浦さん執行役員 就任コメント

 会社として大きく期待に応えられず信用も毀損し、株価も大きく調整をしています。この1年でざっくり半額になったことになります。

画像はマネックス証券さんのチャート画面

 まだまだ課題は山積していますが、IR活動も止めることなく対応されています。組織運営においては難しさばかりかもしれませんが、だからこそのやりがいを持たれているものと期待しています。今後の挽回を大いに期待しています。

 頑張れ、PR TIMES!

■番外編

 説明会後に参加されていた株主さん同士で軽く一席を供にさせて頂きました。興味深かったのは、その席であまりPR TIMESさんの話題が出なかったことです。映画を観終わった後に、この映画はどうだったと盛り上がったりするものですが、あまりそういう事がなくて、やはり皆さんの会社への情熱という点でも後退しているのかなという印象を抱きました。まぁ私ですら株数を減らしている位ですからね…。結局23時近くまで界隈で盛り上がり帰宅しました。

 また三浦さんの就任のお祝いに小さなブーケでもと思って悩んだのですが、流石に行き過ぎかなと思ってやめたのですが、結果的に三浦さんは現地参加されておらず、お渡しする機会がありませんでした。もし持参していたら、説明会中、机の上にブーケを置いて説明を伺うという謎設定になるところでした。危なかったです(笑)。

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