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AZ-COM丸和HD(東証プライム/9090) 株主総会レポート 2024/6/26

 東証プライム上場のAZ-COM丸和HD(旧:丸和運輸機関)の株主総会に出席しました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。また、同社の株式売買を推奨するものではございません


1.参考記事

 まず同社の関連記事についてご紹介したいと思います。ここでは昨年の株主総会のレポートを再掲しておきます。

2.基礎情報

 それでは、まずは株主総会全体の流れや当日の状況をメモに残しておきたいと思います。次の章において質疑応答の状況を個々の所感と共に整理していきたいと思います。

 今年は51回目の株主総会ということで、会社としても設立50周年イベントも一通り終えられ、なんとなく新たなスタートを切っていくという雰囲気です。会社全体の状況としては、中期経営計画に沿って業績面でも順調な成長が続いています。一方で、足元の株価の軟調ぶりや、足元で行われたC&Fロジさんへの買収の仕掛けなどもあり、これまで荒れることがなかった同社株主総会も少し雰囲気が変わるかな、なんて一抹の不安も感じながら参加をいたしました。
 しかし、会場に入って参加されている株主席を見渡してみると、いつもの年と変わらぬ地元の方々や、和佐見さんとのゆかりがありそうな方々の面々が中心で和やかな雰囲気がそこにはありました。実際、議事運営全般においても、不穏なことは一切起こらず、終わってみればいつもの年と変わらぬ大拍手の中、全ての議事を終えました。
 参加株主数も用意されていた100席ほどがほぼ埋まる状況で、後方には同社の元役員の方など関係者も多くいらっしゃり、さながら同窓会のような様相でもありました。私も何人かの方と軽く会釈をしたり、ご挨拶をしたりとしながら開会までの時間を過ごしました。また、どうしても僻地での開催となるため、中々普段やり取りをしている株主さんにお目にかかることはないのですが、今年は初めて、お一人交流のある株主さんがいらっしゃり嬉しく思いました。その株主さんとは閉会後も、ランチをご一緒させていただき、独特の株主総会を体感してもらえて嬉しいなと思った次第です。この会社の株主総会は一度参加してみる価値はあると思いますからね。
 実は受付開始より早めに着いていたこともあり、少し本社前でお待ちしていたわけですが、今年も和佐見さんがエントランスに出て来て下さり、朝イチで握手と共にご挨拶することができました。なんとなく緊張しながら株主総会に参加するわけですが、こういう何気ないひとときによっても、足を運んで来て良かったなと思わせてくれるものです。会社によってはとにかく株主とは出来るだけ動線も分け、接点がないように努めている会社さんも多くあります。様々な事情でやむ得ないこともあると思いますが、こういう対応の一つ一つがエンゲージメントを高めてくれるというものです。開会までの間にロビーで飲み物を頂いていても社員の方が声を掛けてくださり、窓から望む松伏の新設中の工事の様子を色々お話ししてくれたりもするわけです。トップだけでなく、会社としてもこういう文化を大切にしているのだろうな、ということが伝わってきます。
 また、今年は毎年インタビュー記事が掲載される「潮流」だけではなく、以下の記事が投稿されている雑誌も配布されていました。

 こちらの記事では和佐見さんの徳積みと報恩感謝の経営についての対談になっています。この記事は以下の記事でも同趣旨の内容が挙げられており、今年はこの文脈でも質問をぶつけてみたいなと思っていました。

 だいぶ冒頭から脱線してしまいましたが、株主総会の内容に戻っていきます。まず、大まかなタイムチャートをご紹介しておきます。あくまで手元の時計でみた大まかなものです。今年も和佐見さんが登壇される会場入室の際には、元気よく「失礼しまぁっすっ!」という掛け声がありました。最初の同社の株主総会の見せ場です(笑)。

  10:03 開会の前の挨拶 (和佐見社長)
  10:04 開会 (和佐見社長)
  10:07 議決権行使数の確認(事務局)
  10:09 監査報告(田中常勤監査役)
  10:11 事業報告・対処すべき課題(ナレーション)
  10:20 議案上程(ナレーション)
  10:23 質疑応答
  11:17 議案決議
  11:20 閉会
   ~休憩~
  11:30 成長戦略の説明会(和佐見社長)
  12:10 質疑応答
  12:25 終了

 まず、冒頭で電車の遅延があり、駅からの送迎バスの到着がぎりぎりになったようで、それを待ってからの開会とする旨、案内があり、数分ですが定時を過ぎての開会になりました。
 また、例年同様に株主総会後に成長戦略の説明会という事で実施頂きました。過去には正午を過ぎてタイムアップで質疑を受け付けられないという年もありましたが、今年はそういうことはせずに限られた時間ではありましたが、質疑も受けて頂きました。結果、目安とされていた正午を過ぎての閉会となりましたが、個人的には大変満足いく運営でありました。

 次に議決権行使状況です。まず株主数が急増しています。この件は開会前にも社員の方とも話していましたが、この増加ぶりは他社でも同様の傾向がありますが、びっくりしますね。同社の場合、株主優待を実施していないこともあり、直接的なコスト上昇はありませんが、やはり事務手続きコストは増えますからね。
 また議決権行使率が年々下がっています。この辺りはより個人株主が増えてくると率としてはどうしても下がっていってしまうということなんでしょうかね。

 ■第48回株主総会
 ・1,465人/4,172人
 ・599,802個/640,011個(93.7%)
 ■第49回株主総会
 ・2,598人/7,423人
 ・1,159,616個/1,259,791個(92.0%)
 ■第50回株主総会(前回)
 ・2,311人/6,823人
 ・1,150,927個/1,261,366個(91.2%)
 ■第51回株主総会(今回)
 ・4,420人/12,340人
 ・1,170,924個/1,350,158個(86.7%)

 ちなみに臨時報告書によると今年も和佐見さんの再任には反対票が多く入っています。この辺りは機関投資家の投票状況等も後々見ておきたいなと思います。

 事業報告から対処すべき課題、議案上程までは全てナレーションです。私はせめて、対処すべき課題くらいは、社長自身の言葉で語ってもらいたいなといつも申し上げていますが、同社の場合、この後第二部できちんと説明頂けますし、株主総会の円滑な進行という観点からみても、和佐見さんが自由に話されるよりはこのような運営の方が無難であるという事務局側の思考も十分理解できます。ですので、特にネガティブな印象も持ちませんでした。
 もちろん、このナレーションで述べられている内容は、一応決算をフォローし、決算説明会動画の精査も終えている身としては復習です。というわけで、この記事においても成長戦略の説明も含めて重複する所が多いため、割愛いたします。

3.質疑応答

 それでは、ここからは質疑の様子を私の主観と脚色に基づきメモを残していきます。主観と脚色を加えていることから、正確性を保証するものではありません、参考程度に扱って頂けましたらと思います。なお、株主総会と第二部の説明会後にそれぞれ質疑がありましたが、特に識別することなく、記載して参ります。★印については、私が投じた質問です。
 なお、同社の特徴ですが、基本的に様々な取締役に答弁を振り、その後で社長が補足をするという形で答弁されます。こちらからお願いせずとも、適当と思われる取締役にきちんと振っていくスタイルはとてもいいなと思います。

★Q 1兆円企業に向けた展望について
 当社の成長戦略としてM&Aがあるわけだが、同意なき買収を仕掛けるなど当社としては大胆であったと思っている。その内幕をここで詳らかに質問する事は野暮だと思うので控えるが、今後の1兆円企業を目指していく上での展望を伺いたい。売上高1兆円に向けた大きな柱として低温物流事業の成長を志向されている。向こう3年で1000億級の売上を目指すとすると現状からおおよそ5倍程度に伸ばす必要がある。今回の一連の買収合戦の経験も踏まえて、この成長をどのような方策で実現していくのか。またアマゾンさんの仕事は地域毎に棲み分けも進む中での成長限界等や、物流各社MA合戦で競争もより大局化していく中で、当社が1兆円企業を本気で目指していく上で活路を見出せていけるのか展望を聞かせて頂きたい。
A
 低温食品物流の1000億規模の目標を掲げたわけだが、25年4月には松伏の新センターが開設し、ここは食の物流の大きな拠点となる見込みで、現在も優良なSM事業者と交渉を進めており期待を持っていける部分。加えて、これまで当社の低温食品物流は主にSM事業者が中心であったが、今後はこれまであまり接点がなかったメーカー様との取引も見据えた体制作りを進めている所。またECの部分については、当社の3つの強み(ラストワンマイル、ミドルマイル(幹線物流)、センター運営)を活かす事で、まだEC市場全体の伸びから見ればやれていない領域も多々あり、今後の成長は持続出来ると考えている。とはいいつつ、オーガニックで5000億をみつつも残る5000億となるとやはりMA戦略も重要(参考:足元の業績は全社売上で2000億)であり、ここで詳細は申し上げられないが当然意欲的に取り組んでいくことになる(岩崎取締役)
 松伏の新センターは3万5千坪という規模になり、1社で開発する規模として最大規模。今回の新設に当たり、工業地域のセンターは高さ制限が30mというものがあったのだが、どうしても先進的な設備を導入するとこれを超えてしまうということもあり、国や県に再三交渉を行ってきた。その結果、高さ制限を緩和してもらい、当社の思うような設備投資を具現化出来る事になった。こういう先進的なものとして求められるものをきちんと形にして、お客様に当社のコアコンピタンスの一つである食品物流をより高度に提供していけるための体制作りをしており、こういう営みの積み重ねで成長していきたい。
 またEC関連ビジネスでは3つの強みを活かしていくためには、市場はECが伸びていく事は必然。その中でもアマゾンが一強。我々はそこに寄り添っていくことはもちろんであるが、一方でそこにだけ依存(請け負うという概念)しているということもよくない。我々が思う先進的な仕組みを常に模索し、高度なソリューションや機能を提供できる会社になっていく事が重要である。(和佐見社長)
■考察
 1問目で敢えてC&Fロジの買収合戦の裏側を聴く事は野暮だからやめておくと、敢えて表明しました。あまりこの個別案件の事を掘っても建設的ではないですし、丸和側の立場だけを聞いても結局、実情はよくわからなでしょうし、既に結果も出ていますからね。
 それよりもこういうひとつの大きなMAへの挑戦に対して様々な次の手を考えれているだろう中で、長期展望における今後の成長戦略を改めて伺っておくのが無難だろうと思いました。観点としては、MA戦略とアマゾンを中心としたEC物流の成長限界への対応についてです。
 低温物流観点でのMAを継続模索していくとありますので、それを直接的に聞いてもお答えはできない、となるため、もう少し抽象的な質問にしています。また、アマゾンについては、既に地域毎の棲み分けが進んでいるという実情を踏まえてどうしていくのか(つまりある地域で力のある会社(例えばファイズさんとかロジネットさん)とかへの対応という観点)を入れました。まぁこの総会で何か有益な情報を得る事はないですので、大きめの玉を投げておけば、色々お話頂けるだろうという打算的な部分もありました(笑)。
 答弁の中で興味深かったのは、メーカー等新たな属性のお客様へのリーチを模索しているという点です。ここはまだあまり表面的には見えてきていない所ですね。メーカーからSMへの物流というのも特にイオンGなどでは様々な声をよく見聞きし、まさに2024年問題という関連から課題も多いと聞きますので、面白い話を聴いたなと感じました。
 また、松伏の件にも予想通り言及があり、まさに自己勘定投資として初めての大規模開発ですから社運がかかっているともいえますからね。そしてSM事業者との交渉事も上手く進んでいそうですしよいですね。にしても、この施設には高速道路が通り、新設箇所にインターチェンジまでできてしまうのですが、その力に驚くばかりだったのですが、更に工業地域の建築条件についても交渉してOKをもらうって、どこまで交渉できちゃうんだーと驚きました。昭和の漂いを残す会社ではありますが、令和においても、きちんと交渉して正義を通すのが素晴らしいなと感じました。

Q MA戦略について
 昨年の株主総会における社長の報告の中で、1兆円企業を達成させていく上でMA戦略の重要性を説明なされていた。今回の買収の発表もあり、こういう戦略も前に進んでいくのかと思われたが、他社の動向もあり難しくもなった。今回の買収に関する現状の認識と、今後のMA戦略についてどのように考えているのか。
A
 1兆円企業に向けてオーガニックとMAを各々で努力していく必要がある。その中でMAについては、直近でもC&Fロジさんへの買収を行う事を発表してきた。我々としては3000円という価格は丁寧な計算を行い算出した価格であった。一方で今回の件でSGさんが出された価格というのは、我々の目線からすると到底手の出ない価格という事で、取締役会でも丁寧に対応を検討したが、降りるという判断になった。我々としては、自ら算定した範疇において、しっかり中長期的な収益機会という事も大切にしていく義務があると認識しており、やはりそこから外れるリスクのあるような事には手を出さないということ。今後もMA戦略は遂行していくわけだが、そこは地に足のついたシミュレーションに基づいて判断していくという事は大前提として大事だと思っている。その方向性については、まだ様々な方法を模索中であるものの、現状で資本業務提携を締結している会社さんもある中で、そういう会社さんともよりより形の関係づくりの可能性というのは常に見据えながら、当社の成長を展望出来る体制作りを進めていきたい。(山本取締役)
 成長する企業は必ず投資は必要。当社は成長を続ける会社であるがゆえ、投資を避けて通るわけにはいかない。しかし、投資をするということで株主の皆さんにも心配をおかけする事も事実。大事なことは身の丈にあった投資をするということ。今後も、身の丈に合った投資を、シナジーの生みだし方等も伸長に戦略的に見据えながらやっていくことになる。我々は常に挑戦する会社である。トラック一台から始まった会社。このDNAが身に沁みついている。挑戦をする事で今回のように心配をおかけすることもあるかもしれないが、我々は常に真摯に会社を成長させていくことを目指している。(和佐見社長)
■考察
 私の質問と似た観点ですが、副社長である山本さんが答弁されたこともあり、また違った話を伺えましたね。C&Fロジの件についてだろうということで、質問者さんも直接的には固有名詞を出さない配慮の中で、ストレートな回答をされていましたね。この判断プロセスについて、概ね想定していた通りでした。良いなーというか安心出来るなと思ったのは、今後も含めて身の丈の投資を心掛けていくという所ですね。決してマネーゲームには加担しないし、我々がきちんと見定められる範疇で物事を判断していくということで、ここは株主としても安心できますよね。
 トラック一台からの・・・の話も出てきましたが、そういえばその時代からの苦楽を表現したエントランスの絵画も紹介して株主にもみてもらった方がいいですね。中々見ごたえのある絵なのですよ。

Q アイディオットとの資本業務提携の意図について
 アイディオットとの資本業務提携をされたと思うが、この件のシナジーや詳細について解説頂きたい。また、当件について、先方からはリリースが出ているものの、当社からはリリースが出ていないと思うがその理由をお聞かせ頂きたい。
A
 アイディオット様はAI領域に強いスタートアップとして、従来から配車サービスの構築や川上から川下までの物流システムの効率化システム構築を共同で研究開発を進めてきた。今回、先方からの申し出もあり、当社としても高度技術の活用の意義から合意をして提携することになった。リリースについては、規模的に開示はしていないものの、今後提携による具体的な成果が出てきた所で、具体的な内容と共に開示をして参りたい。(葛野取締役)
 アイディオット様はまだ若い会社で経営者も若く、今後の技術進展においても大いに当社のためになる提携。こういった提携は随所で行ってきており、質問の趣旨とは異なるが、港湾関係の上組さんとの提携等もその際たるもの。我々としては港湾関係にスキルが無かったところで、この業界のリーディングカンパニーとの提携は大きかった。海外展開に強い上組さんに当社としてもインドネシアなどに人を出してノウハウ交流を図っているところ。(和佐見社長)
■考察
 細部の質問ですが、いい質問ですね。こういうリリースが出ていないぞ、という声はきちんと届けるべきだと思います。規模的に開示が必要ではないと考えたと弁明されていますが、そこは規模的に必須かどうかというより、自社としてこの提携を通してどういう志向をしていくのかを表明するいい機会なのですから、後に私も質問もしますが、やはり広報効果という側面からも積極的に開示するべきだと思います。
 今回の提携前からずっと協業していたこともあり、あまりリリースすること自体に意識がなかったということもあったのではないでしょうかね。
 ちなみに和佐見さんが敢えて聞かれてもいない上組さんの事を述べられていて、敢えて答えていると仰っていたのが気になりました。この文脈で敢えて個社名を出したのは単なる補完的な提携だったかということだけなんですかね…。
 ちなみに当件提携については以下が先方からプレスリリースされています。

Q 2024年問題への対応について
 2024問題への対応について、当社としてどのように捉えられていて、どういう手を打っているのか、給料減等の対応についても伺いたい。
A
 この問題はどの会社も頭の痛い問題であると認識している。働き方改革の文脈であるが、年間960Hまでという規制が入る中で、従前のやり方では1200Hなど当たり前の世界。どうしていくかずっと前から対策をしてきており、社内では860Hという独自目標を掲げて取り組んできている。国もこれまでより本気で予算を設けてフォローするという状況になっている。だからこそ、業界、個社も取り組んでいかないと問題解決にならない。同業の中での模範的な会社になろうという事で独自目標も掲げ、また労働者が残業あり期での給与が減ってしまうという問題もベースアップ等の処遇改善により減ってしまうということがおきないよう、制度設計して取り組んでいる。来年の株主総会では、こういった成果も発表出来るのではないかと思っている。(和佐見社長)
■考察
 遠方から来られたと前置きをされ質問されていました。私も地方に行って前泊とかありますが、それもなかなか楽しいものです。しかしこんな僻地まで(失礼)よくお越しになりましたね。都内で多く遭遇する個人投資家各位もぜひ同社の株主総会には一度は参加してみてもらいたいなと思っています。
 2024年問題ともなれば、想定問答も用意があったと思うのですが、特段それを用いることもなく、社長が自らの言葉で説明されていました。この質問は他の取締役には振られませんでしたね。なぜでしょうかね。
 質問者がさんが追加で給与対策の件も質問されたので、この辺りはベースアップで対応とありました。ただ、やはり膨大な残業を前提とした給与を完全に賄う事も出来ないとも思えて、この辺りのGAPをどう埋めていくのかとうのはやはり気になりますよね。丸和の問題というより、業界全体の考え方だと思います。来年の総会で成果を報告出来ると思う、とまで踏み込んで答弁されているので、これは来年きちんと回収しないといけませんね(笑)。

Q 同意なきTOBという報道に対しての所感
 新聞記事等の報道では今回のTOBについて様々な報道がなされてきた。実際のところの本音を伺いたいのと、今後のTOBについての考え方についてはどうか。
A
 
今回の同意なきTOBという報道があったが、2年ほど前から両社において経営統合という件を積上げてきた交渉があった。しかしながら相手側の社長が交代ということもあり状況は暗転し、交渉が白紙になってしまった。このような一方的に白紙にされてしまうということもあり不本意な部分もあった。その後、当局よりMAの指針に際して必ずしも同意が必要ではないという見解もあり、先方の株主さんに対してこの経営統合の是非について問いたいということで今回の発表に至っている。このような経緯があってのことなので、一方的に敵対的に事を進めたというような事ではない点はご理解頂きたいと考えている。では、今後のMA戦略をどうするのかという問いに対しては、我々はやはり大きな野望を持っている会社でもあり、当然のことながらシナジーを発揮できるような幹線物流を持つ会社など当社との間で相互補完できる相当規模の会社をグループ化していくということになる。競争から協調の時代になることを見据えて社会インフラであるこの領域で成長していくという覚悟。加えてDX領域でも生成AIを始め、新たなフロンティアが各所に技術進展がみられる中で、そういう先進的な会社も含めて射程にしていくことになる。(藤田取締役)
 C&Fロジさんの件では、社長交代という契機で様々な前提は変わったものの、その後も当社との統合をする一定の理解もあった中で、経営統合やMAなど複数の案を提示しながら最終的に曖昧なままであることもよくないという状況の中で、株主に問うということであのような行動になった。相手を困らせているということではなく、我々として真摯な対応をしてきたつもりだし、業界においてもこういう事は起こり得るんだという理解醸成にも繋がったと考えている。(和佐見社長)
■考察
 本音と聞いてこういう株主総会でどこまでお答えになるのかなとドキドキしていましたが、結構本音で答弁されていました。こちらも想定問答があったと思いますが、そういうものには目を落とさず、粛々と率直な想いを語られていましたね。内容云々より、この会社らしさなのだなと思いました。そういえば、過去全ての株主総会において、一度も原稿やメモに目を落として答弁するということは各取締役含めて一度もなかったように思います。
 それから答弁の中で注目するべきは、今後の方針の中で、現在資本業務提携をしている各社とのより良い関係構築という文脈で語られているように受け止めました。さて、どういうリリースが出てくるんでしょうね。私は別にイベント投資家でもないため、何かそれでベットするようなことはしませんが、ただただ、当社グループがより価値あるものになっていってくれればいいなとの想いです。

Q 保有車両の電動化への対応について
 保有者の電動化やハイブリッド化への対応についてはどのような認識か。
A
 現在当社には2400台程。その中でハイブリッドは数台程度。電動化も今後検討はしているがまだ具体的な話はこれから。(小倉取締役)
 ハイブリッドや電動化は、お値段的に採算面で厳しいものがある。EVは補助金もあるが、まだ現状では厳しく本音としてはもう少し時間がかかる。(和佐見社長)
■考察
 ここも正直な回答ですね(笑)。まぁペイしないものはペイしないですからね。環境問題とか様々な流れの中で、表面的に頑張ります、と言ってもいいのでしょうが、そういうことは言わないんですね。いいと思います。
 とはいえ、今後そういう政策によって右往左往させられるときが来るかもしれません。もちろんそういう時には、お得意の交渉で色々な手立てをしてくるのだと思いますが、AZ-COMネットワーク会員組織向けの対応という事も踏まえて、影響力が大きいため、今後の方策は様々な目線で検討されるといいのかもしれませんね。

★Q 当社の認知度と広報の役割について
 BCPの活動や産直の活動、あるいは各種実証実験等の参画により、当社の認知度や存在感は益々向上していることと認識している。また、能登地震の際の救援対応等も高い信頼を構築する機会になったとも思え、関係者に改めて御礼を申し上げたい。当社の認知度が向上し、「徳を積む」活動が着実に進展しているものと評価しているが、当社の認知度や自治体を始めとした関係構築においてどのような変化がみられるか。また、当社の認知度をより広報する活動についてもお伺いしたい。昨今は業界に拠らず企業エンゲージメントを高めるプレスリリースに注力している。人材獲得など当社ブランドをより向上させるためにもエンゲージメント創造を企図したプレスリリースも重要と思うが当社の取り組みや今後の方策を伺いたい。
A
 当社の認知度については様々なベンチマークがあり、例えば海外機関投資の認知度は2%弱から6%に向上し、1on1は100社以上の増となっている。個人投資家向けはコロナ禍もあり中々出来なかったが、今秋から実施予定。企業価値は経済的価値だけではなく社会的な価値という部分もあるためそういった事も踏まえて評価頂ける広報をして参りたい。7月には海外機関投資家向けに現地で様々なコンタクトを取ってくる。特に北米においてはベネフィットカンパニーの評価が高いということもあり、こういう趣向に当社は合致しているため訴求して参りたい。(藤田取締役)
 産直の展開やBCPの対応ということなど他社がまだ本格事業化出来ていない領域で我々が活躍していくことこそ、一般消費者を含めた認知を上げていく、企業ブランドをあげていくこと、ひいては採用サイドにも繋がっていくことになる。(和佐見社長)
■考察
 他の質問者がおられず途切れた、かつ最後の1問という様相もあり、なんとなく議長の方から私に対してもう1問受けるよ、って感じで促された感じになりました(笑)。お言葉に甘えて…。
 今回の「徳積み」にも関連させて、こういった活動を通しての認知度とビジネスの関連性、あるいは広報による採用やIRを含めた副次的な企業ブランドによる作用を期待した質問でした。PR TIMESの具体的名を出して活用によるポテンシャルの営業活動(?)もしようかと思いましたが、株主総会の発言の場としては控え、別の機会で直接お伝えしました。
 回答がIR観点に特化していたので、エクスキューズして、より多面的な企業ブランディングについての期待を述べておきました。ここは質問というより、こういう対話を通して、そういう重要性とか課題認識をより持って頂きたいなという想いで投じていますので、答弁の内容は正直どうあっても良かったです。
 それにしてもいよいよ秋口より全国で個人投資家IRをやられるようですね。証券会社主催のものになると思いますので、こういう情報もアンテナ張っておかないとなりませんね。

**** ここから第二部の質疑 ****

Q 社会的な貢献と採算の両立について
 災害対応等での貢献は大変興味深い。一方で採算的な部分とのバランスをどう見ていくのか。
A
 ドメインをしっかり絞っていく事が大事。我々は従前の3ドメインにBCPを加えた4ドメインを見定め、そこにフォーカスをしていくという事が大事。やるべきことをやり、やることではないことはやらないということ。それぞれドメインで強みを発揮していく事が結果的に収益を生む。これまではBCPも無償でやってきたが、BCPのノウハウをしっかり掴んだし、そこで他社を圧倒するノウハウを得たからこそ、今ではきちんと各自治体さんと話をできるようになっている。(和佐見社長)
■考察
 中学卒業後に丁稚で八百屋でのお勤め、そして独立。トラック一台で創業し、スーパー再建などの大きな実績を掲げながらここまでの話の逸話も聴けば聴くほど感激します。
 一方で戦略論の基本でもあるやらないことを決めるという事も徹底されていて、多くの会社があまりできていないことをきちんとなされていますね。直接採算との両立については、中々言及がしにくいのかなと思いましたが、あとから改めて考えてみると、やはり社会的な貢献(和佐見さん的にいえば報恩感謝の経営)を徹底すれば、独自のノウハウ、リレーションが構築され、結果的に収益は付いてくるという事に尽きるのだろうなと感じます。そうでないと、ここまで創業期からお人よしを貫いてきた会社が大きくならないわけです。なんでか?がわかりづらいことが、大きな障壁になっているのかなと感じました。

Q 海上輸送への意欲について
 上組さんとの提携により港湾物流を学び、従前の提携としてANAカーゴさんとの提携で「空」、JR貨物さんとの提携で「陸」ということで、残るは「海」ということになるが、上組さんとの提携により海上物流への意欲を持っておられるのか。
A
 海上については、ライセンスが違うということもあり、なかなかすぐに手を出すのは難しいというのが実情。港湾事業についても上組さんに学ぶ必要がある。海外現地で仕事を拡げていくためにもこういう提携を通して知恵を得ていきたい。(和佐見社長)
■考察
 ここも正直なお答えです。ライセンス上の問題ということもありますが、様々な関係性や事業リスクや先の答弁にもあった身の丈に合わないという判断なのでしょうね。棲み分けという意味でも経営資源という意味からもいい判断だと思います。株価対策面からいえば、表面的にも意欲を示しておいた方がいいのかもしれませんが、そういうのは私は要らないと思っていますからね(笑)。

★Q 高度人材の獲得・育成の成果について
 産学連携の活動を本格化して一定の時間が経過した。社員さんも東大をはじめとした高度教育に触れる機会をもたれてきた。高度人材の採用や育成において、成果や今後の更なる連携や学びを深める機会をどのように創造されていくか。
A
 東大の目黒先生にはBCPに係る研究所を持たれており、ここに3年期間で社員を数名送り込んだ。しかし、今年その期限を迎える中で、あと1年延長!という声がかかり、もっと育てたいということでいい意味でより高度化してくる。先端教育で学んだ社員が実際に能登地震の初動で大変活躍した。専門的な学びを若手にも積極的に提供し、ご両親の理解までを得ながら教育×成長を実践していて実際に成果が出ている。
■考察
 最後にもう一度ご指名頂けました。人財面の話があまり出ていなかったので、こちらの質問をしました。いつもの採用数とか育成について質問しても同じコミュニケーションになってしまうため、今回は産学連携の件を伺いました。和佐見さんも大学にも赴いて学ばれていたと以前に聴いた記憶があるのですが、こういう学びの機会があって、その領域での専門家になれるというポテンシャルがあるということ、とりわけ能登半島地震の初動でも東北大学に学びに出ていた社員が真っ先に活躍されたというような逸話も聴きましたがそういう話はもっと陽が当たった方がいいと思うのですよね。
 延長みたいな話もあって、より高度化していくという取り組みも進んでいるようですから、この人的資本投資はまだまだ規模が小さいながらもよい歩みだと思います。同社は昭和を彷彿とさせる体育会系の様相を残しつつ、IRも含めてブレーンが着実に育ってきている印象が開示資料などからも読み取れ、何か様々なものが融合された形態になっている所も興味深いです。今後、博士号とか専門家とか出てきちゃうんじゃないですかね。

4.さいごに

 閉会後は、玄関エントランスで役員一同がお見送りをしてくれます。社長とも握手をして些細な言葉を交わしました。コミュニケーションにも色々な工夫をしようと、今回は少し違った事もしてみました。

 株主総会全般でみると、やはりMA戦略を問うものが多かったですね。とはいえ、その手法に関する批判といったものは皆無でした。それはそれでいいのかとも思いますが、それだけ冒頭側の答弁が実直に語られていたからともいえるのかなと思いました。
 また株価が軟調なこともあり、その点の言及もあるかなと思いましたがそこもありがたいな株価不満的なコメントもありませんでした。こちらも決して鈍感になってはいけない観点でもあると思いますので、今後のコミュニケーションで適切な場で適切なトーンで語らえるといいなと思いました。
 業界としては労働力不足の問題から2024問題などでネガティブ視される傾向にあると思いますが、これはどの会社も同じ状況です。そんな中でも経済状況を踏まえると荷量が減っていくという事は想定しづらいとも思います。バリューチェーンとしてコストセンタとみられてきた部分がいよいよ転換する契機にもなるのではないかとも思えます。
 大手のヤマトさんやSGさんが、未だ伝統的な形で先進的なリーダーを発揮しているという状況とも見えない中で、当社の存在感ってあがってくるのではないかと期待する部分もあります。
 株価面もかつての陸運としてはありえないPERも是正され、未だまだ割安とは言えない水準ではあるかもしれませんが、財務状況などからみても一定の期待を寄せていてもいいのではないかなと感じました。
 和佐見さんは益々精力的でIPOしてすぐに株を購入していることから、ちょうど10年の付き合いとなりました(2014年4月上場)。今後10年では売上も5000億と1兆円の間位になっている目算になっています。まだまだ不確実な状況ではありますし、その成否はまだまだこれからの施策による所だと思いますが、今後も強いリーダーシップで会社を導いていってもらい、地元のファン株主も多い中で、しっかり見守っていければいいなと思います。
 頑張れ、AZ-COM丸和HD!

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