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シュッピン(東証プライム/3179) 株主総会レポート 2024/6/28

 東証プライム上場のシュッピンの株主総会に出席しました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。

1.参考記事

 まずは、同社の昨年の株主総会記事を再掲しておきます。

2.基礎情報

 まずは、総会の全体の流れを整理しておきます。時間は手元での時間ですので、誤差があると思いますので、イメージで捉えて頂ければと思います。
 なお、今年から午後開催になりまして、13時開会となりました。株主総会集中シーズンでもありますから、かねてよりお願いしていましたがこうやって対応頂けるのはありがたいですね。

  13:00 開会 (小野社長)
  13:02 議決権数の確認(事務局)
     ■今年
      11,081人/20,234人(54.8%)
      146,996個/211,532個(69.5%)
     ■昨年
      8,759人/21,373人(41.0%)
      147,265個/210,241個(70.0%)
  13:04 監査報告(米田常勤監査役)
  13:05 報告事項・対処すべき課題(ナレーション)
  13:18 議案上呈(小野社長)
  13:20 質疑応答
  14:19 決議
  14:21 新任取締役紹介
  14:22 閉会
     ~休憩~
  14:35 中計説明会
  14:58 質疑応答
  15:38 説明会終了

 まず、株主数は前年に1.2万人から2.1万人に急増しましたが、今年はそこから若干減少しましたが、高位を維持しています。この辺りは優待の権利取りなんかもあるんでしょうかね。議決権行使の比率は7割を切っています。この辺りはもう少し行使率があがるといいですね。

 また、昨年からの変更点としては、報告事項の部分が小野社長のプレゼンからナレーションによる報告に変更になっています。個人的には社長が自ら説明される方がよいと思っているのですが、小野社長のプレゼンは非常に進行が早いことや2部できちんと説明の機会があるという事を考えると、まだ同社についてあまり知らないという方々へのわかりやすさ、という点からすればナレーションの方が良いかと思います。昨年のレポートにもそのような提案をしていましたし、この辺りも多少加味してくれたかもしれませんね。

 全体的に質疑にもきちんと時間を割いて下さる運営でしたし、質疑の内容もお客様相談センターに言えよ、という類の質問もなく大変よい対話の機会になったと受け止めています。

 参加者は個人投資家が多く、背広族はあまりみられません。ざっと70席くらいあって40席程度が埋まっていた感じでしょうか。かつてコロナ禍前にお土産があった頃と同じ位の参加率のように感じました(今はお土産は廃止されています)。

 それから、今回退任となる澤田取締役は体調不良により欠席ということでした。IRでも大変お世話になりまして、最後に改めて対面でもご挨拶したかったのですが、残念です。

3.質疑応答

 質疑応答に入ります。質疑については、昨年同様、1人1回2問までということでした。時間に猶予があれば2巡目も受けるという運営でした。第二部での質問については特に質問数の制限は明示的にはなされませんでした。
 また、第二部があるため、株主総会での質疑は議事に係る事として欲しいという要請がだいたいあるものですが、同社においてはそういう要請はありませんでした。そもそも第二部があることの案内がなかったので、この辺りは招集通知への記載、議事の中でもその旨案内した方がスマートだと思います。
 それでは、以下、質疑の様子を私の主観で脚色を加えて表記していきます。交わされた内容を忠実に再現しているものではありませんので、ご参考程度にお読み頂ければと思います。また、悪意なく誤認等している可能性を含みますため、投資判断にご活用される際には、ご自身でIRへの確認等を含めて確認頂くようお願いいたします。ここでは株主総会の質疑と第二部の質疑を纏めて掲載していきます。
 なお、私が発言した内容には冒頭に★印をつけております。

★Q 取締役・監査役選任について
 取締役候補のサイトウ氏は、営業畑で活躍されてきた中で、COOと兼務されながら、当社のビジネスモデル上で最も重要な基盤であるITインフラを守るCIOを所掌をされることになる。しかしながら、昨年のスキルマトリックスにおいては、サイトウ氏はDX推進には〇がなく、ITセキュリティの部分も今年は〇がついているが、昨年は空欄であった。スキルマトリックスの〇の有無だけで判断するものではないが、CIOはDX推進やITセキュリティに精通している事が大前提であると考える。
 そこで質問であるが、まずサイトウ氏にはDX推進に関する知見に不安はないか、ITセキュリティのスキルをこの1年でどのように身に付けられてきたかという点、コメントを頂きたい。また、社外取締役のクサジマ氏には、同領域に知見と経験を有している中で、今回の体制について取締役会でどのような意見を出されたか。
 加えて、監査役の遠藤氏はこの1年、全ての監査役が業務執行状況を監視出来る体制を取っている中で取締役を3回欠席をされているが、その理由を差し支えない範囲で伺いたいのと、今回再任となりますが、監視出来る体制として十分なのか。
A
 当社はコンパクトな会社として運営しており、250人の社員が全員新宿のオフィスで仕事をしている会社。営業とシステム部が隣り合わせで仕事をしており、社内向けシステムと社外向けのサービス提供のシステムの双方で業務知識をまずもった方が先導していくという事が大事であると考えている。その上で、当社はシステム開発要員を内製化としてリソースを持つというよりかは、全体のコンパクトな運営という点からも外部の専門会社に支援頂くような形で運営することとしている。
 むしろ、CIOの前任者である澤田氏は営業を経験していなかった点が業務知識の補完という意味合いから弱点でもあった。今回COOとして活躍してきたサイトウ氏をアサインする事が出来ることは前向きな判断。CTOという立場の観点もあろうかと思うが、ここは当社の方針としてはアウトソースする事を前提としていることから、社外取締役のクサジマ氏に近しい役割を担って頂いているものの社内役員としては置いていないというのが実情。
 またシステムトラブルがあった際にも取締役会できちんと議論をする中で、専門的な見地からクサジマ氏には様々なアドバイスを頂いた。
 最後に監査役の遠藤氏については中小企業診断士かつ税理士の専門家として、当社側からお願いをして多忙の中、監査を頂いている所。実際に指摘の通りスケジュールの都合上、欠席となった時もあるが、一方で監査役会の時しかコミュニケーションが取れないというわけではなく、むしろ日常的に社員などにもコミュニケーションを図って頂いており、十分に当社の経営に資する役割を担って頂いていると認識している。とはいえ、今後については、事前にスケジュール調整を可能な限り尽して対応して参りたい。(小野社長)
 当社はお客様本位という所から始まっており、顧客視点でどうあるべきかという視点を常に営業目線で考えてきているところ。それをECを使ってどう実現していくのかという事には余念がない。セキュリティ面についても外部からの様々なチェックを受けて定期的に監視をしている状況。(サイトウ取締役)
 ずっとITをやってきた自分にとっては、常にチャレンジしている姿は興味深いものがあると思っている。サイトウ氏のスキルの点の言及もあったが、ITスキルだけではなく、業務知識や顧客接点の課題認識等を身を持って経験しているからこその強さというものがあると認識している。外部リソースをどう活用していくかという事など、シグマクシスさんとのお付き合いを含めてそれが適切であるかはきちんと監視をしながら進めている所。(クサジマ氏)
 私は本業でも自らが代表をつとめる会社を経営しており、主に商社向けの人材開発支援等の業務を行っている。そういう中で、どうしても自らが代表として登壇せねばならない機会が前々から決まっていたこともあり、スケジュール上、調整が叶わず欠席する事になった事があるのは事実。一方で監査体制としては、日常的なコミュニケーションを図る事も含めて十分に貢献できていると認識している。(遠藤監査役)
■考察
 相当意地悪な質問を最初にしました。こういう点をたまに質問をすることで、ガバナンス上の目線をもってもらいたいという期待を込めたものです。またCIOとCOOの兼務ということが本当に問題がないのか、という提言もしておきたかったです。結果的には各々の方の活躍の状況等も述べて頂きましたし、遠藤さんという方のコミュ力の高さが日常で秀でているということがよくわかりました。

★Q ITシステム構築体制について
 当社はECを主軸とされている事から、今後の成長のためにもITシステムの高度化が重要な課題だと認識している。現在のDX活用の領域は非常に多岐に渡っており、当社では様々な協力会社さんと連携してこれらの対応を行ってきている中で、シグマクシスさんと資本業務提携をされているが、多岐に渡る領域に得意・不得意がある中で特定の会社さんと繋がりを深める事のメリットやデメリットもあると考える。現状のITシステムの高度化取り組みにおける成果や課題について教えて頂きたい。
 また、高度化と同時に可用性という観点でみると昨年末には大きなシステムトラブルもあった。内製化の体制等にも課題が露呈した部分もあったものと思うが、可用性確保は当社の事業の大前提である。可用性という観点から、ITシステム構築における人材面、体制面で内製化比率や外注戦略等の今後の方針を改善されていくお考えはあるか。
A
 12月に基幹システムのリプレイスでトラブルがあり、お詫び申し上げたい。その上で、社長になって以来感じているところは、やはりテクノロジーを常に先端のものを求め、様々な領域の知見を当社のシステムに活かしていくという事が重要であるということ。その中で当社としては内製化をしないという事がポイントになっている。常にその領域毎に得意な会社を選定し、必要な技術を求めてフレキシブルに対応していくという事が大事。自分達でそれらをこなそうとするとリソース戦略上も先端技術のトレースに限界があるというのも事実であるから。その中で、ではどうやってベンダー選定を行っていくのかという話になるが、この部分で広い目線でコンサルを頂ける機会ということで、シグマクシスさんとの提携になっている。資本量としてもベンダーロックするようなものでもなく、自由なベンダー選定を継続できる。(小野社長)
 システムインフラの部分においては、今後より大きな会社の規模になった時にも耐えうるアーキテクトを志向して現在様々な手立てを打っている状況。システムトラブルに際しての混乱については重ねてお詫び申し上げたい。(サイトウ取締役)
■考察
 同社がECを主軸にして事業運営している中で、戦略的に内製化をしないという事を志向しています。ここはメリットとデメリットがあるわけですが、やはり前年末のシステムトラブルについては、こういうリスクを改めて目を向ける必要があるということだと思っています。シグマクシスさんとの関係性とかコンサル力というものが未知数ですが、ベンダーロックもせずにあるべきシステム可用性を備えていってくれることを期待したいですね。ここは同社の根幹をなすところですからね。

Q 買収対策について
 大株主構成をみると、外部からの買収対策も気になる所であるが、何か対策等を考えられているか。
A
 創業者の鈴木氏と資産管理団体を合わせてみても、過半数を取られるという事は可能性としては拭えないと考えている。買収そのものが既存株主にとって必ずしも悪い事ではないかもしれない。ただ、従業員や企業価値を毀損するような結果を招くリスクも当然あるわけで、我々が経営のイニシアチブをとって邁進していくためにはやはり株価を上げていく事が大変重要だと認識している。市場に対してコメントするのは控えるべきではあるが、やはり今の株価に満足はしていないし、もっと信頼を築いて、IRを率先して実施し、株価水準をあげていくという事が結果的に防衛になるものと思う。(小野社長)
■考察
 必ずしも悪いことではない、とまで仰るのは面白かったですね(笑)。で、ここで株価に言及すべきではないとされつつ、株価上昇への強い拘りを持たれていました。まぁこれはどの経営者も同じでしょうけど、こういう発言は来年の総会できちんと回収していきたいですね。株価そのものは投資家が決めるものなのですが、それに対処していくIR活動を始めとした各種施策がどう進展したかは振り返りをしたいところです。

Q ブックオフ問題
 ブックオフにおいて買取における不正報道が出ている。このような手法が仕組みとして出来てしまうという事だと思う。御社も同じ買取をする事業ということで、この辺りのリスクへの対応としてどのような認識・対応を取られているか。
A
 当社では仕入から販売までの監視システムにおいて予防できるし、そもそも0円買取のようなことはない。仮に処分を依頼された場合にも委任状等をもらいシステムできちんとトレースできるようにしているし、四半期毎の棚卸等においても精査しており、該当のような事象は起こり得ないと考えてもらって大丈夫。(小野社長)
■考察
 この質問は出るかなと思いましたが出ましたね。これは結局やろうと思えばできてしまうという事だと思っています。確かにブックオフと比べればやりにくいし、管理もされているという事だと思いますが、性善説に立つのではなく対処をしていってもらいたいですね。

Q 時計事業の業績推移について
 時計事業の利益凹凸が激しいわけだが、もう少し詳細や商品在庫の状況等の課題感を示して欲しい。
A
 時計事業については、相場をAIで監視しサポートしていくという事を進めている。投機的な動きによって我々も苦労したが、長い目線でみれば順調に推移すると考えている。在庫をきちんと持ち、適正な管理を行っていくことをしていけば、伸びると考えている。
 トレンドを読む仕組みをAIMDとして導入しているため、上手くV字回復させる事が出来た。今後も相場が安定していえばきちんと利益が出るし、大幅に崩れたとしても同じ轍は踏まないようAIMDできちんと担保できる体制を構築している。
■考察
 AIMDによる成果はまだその後に大きな相場転調がないため真の力はわかりませんね。もちろん、前回のような事にまでは至らないのかもしれませんが、AIMDが絶対的なものではありませんからね。。。
 ただ、足元でロレックス相場は漸減していると思いますが、その割に株価は底堅いため、一定の粗利体質が構築されたというコンセンサスはありそうですね。

Q 商材の拡張余地や拠点展開について
 株価上昇のためには期待が必要で、商品構成が拡がる、あるいは拠点が増えることによる拠点展開の拡大等の可能性が示されないと厳しいのではないかと考えている。新たな商材拡張や拠点を増やしていくという余地は検討できないか。
 加えて海外の伸長という点でも期待を寄せる事が出来ると思うがどうか。
A
 常に商材の拡張や多店舗化等については検討することもあるが、我々のコアコンピタンスはECにある。そしてリユース事業にはなりたくない。あくまで専門店を運営する会社であるという認識の下で、そこでは新品も中古も扱っているというスタンスでありたい。ほぼ新品と中古も半々であり、両方扱える会社は回転をさせる事が出来る。これが強み。
 そしてこの強みが活かされると考えるとなかなか条件にマッチするものがない。ましてオーディオなど大型商品となると管理コストもかかる。そういう意味で既存の商品群でまだやれるところがある。
 多店舗展開という点についても検討はしているし、各地域で商圏をみれば概ねの売上はシミュレーションできる。但しそのためには販管費コスト、人材分散のリスク、在庫管理等課題も多くなる。2店舗目を持つ事自体が当社においてはNGだと考えている。多店舗化するコストがかけられるのであれば、それを商品在庫や既存のシステムに投下して、より磨きをかける方が合理的だと捉えている。売上に一番近い所に投資をするということ。
 海外については、確かに伸長余地は大きいものの、本格的に進行させていくためには現地仕入をしっかりとっていくという事が大事。国内在庫を海外に回すという事をやり過ぎるのもよくないし、やはりそれぞれの地域で買取と販売の回転を回していける体制作りというものが大事であり、そのような体制を取れるように対応していきたい。(小野社長)
■考察
 商材展開の話と店舗展開の話は必ず質問が出ますね。ここは先に説明をした方がいいのではないかと思いますね。スライドにそれぞれの方針を整理して、先に説明をした方がいいと思います。
 ちなみにこの拡大戦略へは慎重というのは個人的には大変いいことだと思います。期待を高めるために、価値を毀損するリスクの高いことをやると匂わす事自体が、何の得もないと考えています。

Q 長期ビジョンについて
 現状のPERには満足していないという話もあったが、評価がなかなか得られないのは不思議。そして思うのは、やはり長期ビジョンがきちんと示されていないという事に課題があるのではないか。中期経営計画の先にある期待感が得られにくいのではないか。ニッチな市場でやっていく中で10年、20年というビジョンで語って頂きたい。
A
 中計は毎年ローリングしている中で、カメラと時計でシェアをとっていく事を志向しており、業界団体の情報からみると新品カメラは8%程度、中古カメラでは20%程度。マーケットはメーカーの出荷台数をみても増勢となっている中で、この市場トレンドに沿った成長に加えて、中古市場のシェアを20%程度取れるようになってきたこともあり、価格決定権でリードできるようになってきている。
 時計についても1兆円市場がある。リユースとしては上場会社もあるが、専門店としてはまだ数が少なく、信用という点で真贋力という点での安心を提供している事を着々とやっているということ。将来的にはグローバルを含めた対応もしていけると考えている。
 またITを活用した会社としては単なるEC事業者ではなく、インテリジェンスを足したEICという概念でもって単なる小売というセグメントではない目線でやっていきたいという野望も持っている。(小野社長)
■考察
 長期ビジョンが足りていないというのはその通りだと思います。EICという概念も示されていて、こういう意気込みとかを織り交ぜってどういう方向に会社を導きたいのか、そろそろ小野社長の経歴も長くなってきている今、整理をしてもいいのではないかなと思います。

Q ラグジュアリー市場への対応
 個人的にはラグジュアリー市場へあまり傾注していく事へのリスクを考えるとあまり足を深く突っ込むべきではないのではないのかと考える。どうしてもレッドオーシャンで粗利も取りにくい構造。時計でのボラを踏まえて、今後のラグジュアリー市場への対応方針を聞きたい。
A
 ビジネスにはメリットとデメリットがある。昨年は痛い目にあったが、一方で長い目線でみた時にみればメリットの方が大きいと認識している。コモディティ商材は次にリ・バリューというのには馴染まないが、ラグジュアリーでは、リ・バリューが通用する世界。利益重視の会社としてみても、単価の高い商材を扱う事が理に適っていると考えている。(小野社長)
■考察
 ラグジュアリー市場への慎重な見立ては確かに時計の損失状況をみるとそうだよな、とも思うのですが、やはりここはバランスなのでしょうね。少なくてもコモディティにいくということはそれこそ寡占化していくことになるので、現状の枠組みの中で、どうやって保守性を保ちながら運営していくのかということなのかもしれませんね。

Q カメラ新品
 カメラ商材は実際には手に取ってみないと買えないというものだと思う。新品市場を伸ばすという意味で、1店舗だけで運営していく事への限界もあると思うが見解を問いたい。
A
 都市圏にいれば他店で手に取る機会があるが、地方では違うという事も認識している。ただ、現状で多店舗化されている量販店さんに対応して、当社も多店舗化していくのかといえば違う。インターネットで販売する事のメリットもあって、リアルでは物怖じしてしまうようなシーンもある。商品とお客様を繋ぐものが店舗、しかしこれからはコンテンツになると考えている。大事なことはリアル店舗を超えるコンテンツや顧客接点をどうIT上に創っていくかという事が大事で、メリットを訴求できるような運営をして参りたい。(小野社長)
■考察
 ここもやはり多店舗化には慎重で、むしろインターネット上での店舗だからこそできる事、みたいな所を訴求していきたいということですね。ここは、私は個人的にもカメラユーザーなのでよくわかりますが、リアル店舗よりもいかに情報量があるかとかが大事な気がします。その点、コンテンツの方が伝わりやすい事が多いので、あとは工夫次第な気がします。

【コメント】 個人投資家IR頑張って
 ログミーさん、kabuberryさん、湘南投資勉強会さん等良い機会がある。ぜひ個人投資家IR頑張って欲しい。
A
 個人投資家IRは担当者の離職等もあったが、今後頑張る。
■考察
 こちらはどなたが質問したかわかってしまうような内容ですね。ちなみに私もIR窓口などとの対話の中でこれらの勉強会のメリットを列挙しておススメしていましたので、私以外からの株主からも固有名詞と共にこういう場で提言があったのは大きいと思いますね。ありがたいことです。

**** ここまでが株主総会での質疑 ****

★Q 利益率の考え方
 当社のビジネスモデルでは、粗利率は顧客目線とのバランスからみても上げ過ぎる事は競争優位性を損なう懸念もあり、AIMDの作用などがあったとしても大きな向上は期待できないと考えている。また販管費率も低位であることから、ここから更なる利益率向上を期待するのも難しいと考えている。このような背景から、中計の数値目標も概ね営業利益率は7%台でみられているかと推察している。
 この点を踏まえて質問したいが、今後の当社の成長として利益率向上分の寄与は限定的で売上成長主軸という理解になるのか。もしくは効率化分の利益成長がまだ期待出来るのか。また、例えば当社の保有する撮影にまつわる様々な情報プラットフォームを活用したサービス提供等の形態でビジネス創発をしていくことで、利益率が従来と異なるような事は中長期的に展望されないのか。
A
 まず、この中計は既存事業の延長線で前提での策定を行っている。当然ながら指摘のあった他のサービスでの課金等の余地がないかなどの新たなマネタイズ機会創出というのは役員の大きな課題として認識している。現状のコンテンツも6万コンテンツ位あり、中古を扱っている性質上、優良なコンテンツも多くあると自負している。そういう中で、より価値を高めていきながら、有効会員が10万人以上いる中で、サービス創造できないかという事は考えている。
 また既存事業の中においても、中古比率に増減によっても変わってくる。今後新品が多く出てくる中で、回転という中で中古を取り扱える機会を増やせれば漸増傾向は作れるものと考えている。
 全社のマネタイズの事も含めて構造的な利益率上昇を目指していく所存ではあるが、一方で中計の利益率については、一旦既存の延長での枠組みという事でご理解頂きたい。(小野社長)
■考察
 ここは中計の利益率を下方修正している点には敢えて言及せず(実際には閉会後に苦言を呈しておきました)、その中でどういう目線を持っているのかをお伺いするための質問でした。また、既存の収益モデル以外の育成という観点も聞きたかったんですよね。
 ここは役員でも重要な課題と認識されているようなので、今後のアクション等も見ながら、より具体的な提言をしていきたいですね。個人的には機材の情報など、購入のエントリー側では課金は難しいと思うのですが、撮影情報などのスキルやナレッジという所では大いに可能性があると思っています。

★Q コンテンツクリエイト活動の状況
 数年前にはまだコンテンツが玄人向きで面白みに欠けるというような議論もさせて頂いた。一方で最近では様々なチャレンジもされていて、若いエントリー者向けにも喜ばれるような発信も増えてきている。このような発信力の進化などによって、消費や顧客リーチにどのような変化をもたらす事が出来ているか。またコンテンツを量産するだけでなく、これを拡散していくという事も大事だと思う。コンテンツをより広げ、リーチ力を拡げていく施策についての検討状況を教えて欲しい。
A
 25年3月期の取り組みにおいてもスタジオ新設等の取り組みを進めている。まだコンテンツと商品の紐づけや、拡散という点で課題も多いと認識している。SNS運用を含めたエンゲージの作り方を模索していくことになる。(サイトウ取締役)
 youtubeなどでは自社発信だけではなく、インフルエンサーとのコラボ等も面白いのではないかと思っている。youtuberとのコラボでクーポンを出すなど販促の一機会にもなり得ると思っているし、拡散という点でも有効と考えている。(小野社長)
■考察
 こちらは今後の顧客リーチ等の観点で今期の重要施策にひとつにもなっていましたから質問をしました。拡散という点ではPR TIMESを使った方がいいとかも閉会後に個別にコメントしましたし、コラボの件を含めてより認知度をあげていく、特に玄人だけでなく、エントリー者の創造という観点で頑張って頂きたいなということです。

★【コメント】第二部開催の周知について
 このような熱心な第二部の説明会がある事を招集通知に記載がない。こういう機会があれば足を運ぼうという株主さんの参加も増えるかもしれない。
A
 記載する上で問題ないと思うので、今後改善していきたい。(小野社長)
■考察
 これは来年是正される事を期待したいですね。

★【コメント】個人投資家IRについて
 先ほど別の株主さんからも個人投資家IRについて具体的な提案もあった。私もIR窓口などに同具体的な機会をご紹介しつつコミュニケーションを取ってきた。昨今、東証の動きもあり、各社がIR活動を積極化される中で、これをされない事で、相対的に御社の価値を下げることにも繋がる。今日の第二部のような熱弁ぶりがより多くの投資家の方に届くことを切に願っている。
A
 個人投資家IRは頑張ります。(小野社長)
■考察
 今回他の株主さんからの要請もありました。改めて提言をするため、コメントとして期待を寄せておきました。

Q 中古と新品の利益率について
 中古と新品の粗利率の違いはどの程度か。
A
 中古は25-30%程度、新品で10%程度。これは有報等で計算をして頂くと大体出てくる情報であるため、ざっくり感としてここにご紹介する。(小野社長)
■考察
 ここはある程度計算すればわかりますからね。

Q 価格設定について
 AIによる価格設定は日々更新されるのか。また、人の手によっての設定はしないのか。またカメラ以外についても同様に価格設定しているのか。
A
 毎日クローリングはかけているが変わらないものもある。AIの判断による。ただそれをトリガにPVが変わるため、相応の変化は反映されているものと思料している。
 またキングダムノートやクラウンギアーズについては、AIを導入していない。これはデータ量がまだ有意になるほど集められないという所にある。ある程度データ量が蓄積しないと有意な判断ができないということ。
 やっとカメラで日次の売買で1000を超える機会となりようやくできた。専門店だからこそ、データ活用が出来るようになったと思っている。これが量販店だとデータノイズも多くできないと思っている。
 時計についても今はまだサポート。今後データ蓄積等を重ねながら対応していくことになる。
 商品閲覧数やカート登録数など、様々なデータからどう買取するかというデータを有意にしていくためには、やはりデータ量が大事。(小野社長)
■考察
 データ量が大事というのはAI構築の基本ですからね。

Q 他EC店舗との競争環境
 コンテンツを充実させたとして、結果的に他EC店舗で買われてしまうというようなことは起きないのか?
A
 実際にそういう事は日常茶飯事にある。コンバーションをどう作っていくかという事が課題でもある。一生懸命オタク気質で深めた記事を書いても、その商品が十分にない、みたいなGAPがあることもある。
 選ばれる基準としてはやはり価格優位性ということになるが、我々のように低販管費で小規模で機動性を持って運営していることもあり、多店舗化しているお店と比べても大きな優位性を持っている。価格でも負けてない。
 サービス品質としても考えさせることをさせないという事を大事にしている。売却時にすぐにその場で買取価格提示出来るという仕組みが出来て、思いついた時にすぐに決断できるという仕組みを大事にしている。(小野社長)
■考察
 潔い回答ですね(笑)。価格面ではユーザー目線でみても、結構いい感じになっていると思います。無名のEC店舗には少し負けることもありますが、大手と比べると最安水準をちゃんと提示出来ていますし、ここは当社の収益構造の優位性が垣間見れますね。

Q 非財務資産について
 BSに乗らない御社の資産はどういうものがあるか。人財だったりユーザー数だったりとあると思うが。
A
 きれいごとでいえば人材。人を大切にしている会社であると自負している。小売としては低い離職率、処遇も相対的には高い。
 そしてビジョンは大事。夢のない経営者には誰もついてこない。我々がEICという概念を先行して示し、全社でそれを目指すという気質などは大切にしていきたい。(小野社長)
■考察
 いい質問ですが、総花的な回答にもなってしまいますよね。コンテンツとか機材ナレッジ、撮影地情報、ユーザープラットフォームとかも資するものだと思うのですけどね。

Q 平均勤続年数が7年と短い点
 平均勤続年数が7年というのはやや短い気もするが、離職等で業務がうまく遂行出来ないというリスクなどはないのか。
A
 もちろん重要な人材が抜けると痛いのは事実。だからこそナレッジの可視化という事にも取り組んでいる。平均勤続年数は上場後15年ということで、かつ新卒採用を始めたのが7年。まだ短いということもある。(小野社長)
■考察
 平均勤続年数はまあまだ若い会社ですし、新卒採用始めたとしてもまだ数人程度を毎年という感じですからね。カメラや時計が好きな社員が集まっていることもあり、案外エンゲージメントが高いと思っているんですけどね。

Q 従業員数の今後の見込み
 今後ITの更なる活用という点からすると、今後の成長においては従業員をそこまで増やさずとも成長をしていく、すなわち1人当たり売上/利益を上げていくという方針でよいのか。
A
 その通り。どうしても物流のアウトソース等も視野にしていかないといけないが、大きく組織を拡大せずに少子高齢化の中で、少数精鋭で営むことを志向する事が急務。(小野社長)
■考察
 いい質問ですよね。1人当たり売上/利益を上げていくという方針ですが、これをどのような方策で進めていくのかという点はもう少し深く聞いてみたいですよね。基本的にシステムも含めて小さい会社を志向していますから、物流を含めたバリューチェーンにおいてどういう形態を最終系として考えているのか、この辺りの青写真は一度共有頂きたいですね。

Q 当社の長期ビジョンと数値目標について
 株主総会でも議論をさせてもらったが、やはり当社のPERが低位になっているのは、長期的なビジョンとそれの果てに目指す大きな数値目標が掲げられていない点に課題があると考えている。このようなビジョン、数値目標を掲げていく事はできないのか。
A
 長期的なビジョンを掲げる重要性については、改めて認識した。また数値の目標も現状の中計ではまずはオーガニックを前提としたしっかり歩める目線で策定を行っているものであるが、更に先の長期という目線においてはどのような開示が出来るのかもう少し精査をしたい。ここ数年、コロナ等の問題、市況の変化などもあって、なかなか長期の目線での具体的な定量評価をみせながらというところに課題があると認識しているので改善できるところを改善していきたい。(小野社長)
■考察
 長期ビジョンは示していくべきだと思いますが、2030年とか2040年に何億円みたいな数値目標ってどういう評価になるんですかね。結局絵にかいた餅にしかならないと思うんですが、それによってPERがあがるものなんですかね・・・。

Q 株主優待について
 株主優待が1回1枚という制限があるのは使いにくいと思う。高額商品も多い中でもう少し制度設計を見直せないか。
A
 優待については、即答は出来ないため検討したい。(小野社長)
■考察
 私がいつも言っていることですね。
 何枚も優待券を頂くのですが、高額レンズとかを年に何回も買うなんてお金はないので、結果的にインクとか消耗品を優待券の枚数分分けて買うということになってしまうんですよね。そうすると何箱にも分かれてインクとかが届くわけです。
 これが纏めて使えればよし、じゃあ、レンズ買っちゃおうかなってなるわけですよ。これって双方においてメリットがあると思うんですけどね。

Q 買取チャネル
 新品をメインにされている量販店において、買取代理店としてより買取強化をする事を検討できないのか。
A
 専門性のある買取をしたい。きちんとリ・バリューできるようなものを選別して扱うという事が重要。もう何年も前のコンデジのようなものや動作自体も不安定のようなものが段ボールで大量に買取してきたとしても管理稼働ばかりかかってしまう。買取する量は重要であるが、一方で当社の目線にあうものを買い取るという事も大切にしないといけない。そういう意味合いから、代理店のような形態で総量を増やす、というようなスキームは検討しづらい。(小野社長)
■考察
 中古ビジネスにおいての重要なのは買取力です。そういう意味ではとても理に適った提言なのですよね。ただ、答弁にもあった通り、当社の特徴を踏まえるとむしろ選別した方がよいということもあって、この辺りは特徴でもあるので興味深いですよね。「価値ある在庫」と当社が表現しているのも、単に在庫が増やせればよいという事ではない事を示しており、このバランスの中でどういう体制があるべきかとうことですね。

Q 新規事業の観点について
 新規事業という観点が中計に足りていなかったのではないか。やはり新規性があるという事が期待に繋がると思うのだがどうか。例えば各中計期間で1商材拡充するというような抱負を掲げてみてはどうか。
A
 期待はある事は承知している。あとはMAの機会があればということ。もちろんやれないことはないが、自社でそれをやろうとすれば大きな投資が必要になり、当然その期は大きな収益圧迫を招くし、ROIの観点からしても難しさも出てくる。 
■考察
 ここでも新規商材については、慎重な姿勢を崩しませんでしたね。

4.さいごに

 改めて振り返ってみると、質問数も多かった一方で、株価評価をあげていくための方策として、新規性を求めるものが多かったように感じました。一方で、新規性は当社のコアコンピタンスの観点でブラさずに経営する重要性を崩さない拘りがあったのも個人的には良かったなと思います。
 だからこそ、この選択と集中を貫く中で、どうやって期待を醸成していくのかという事が求められているように思います。

 閉会後、立ち話をする機会があるわけですが、個人投資家IRの件では固有名詞を出してダメ押しをしておきました。またPR TIMESを活用する可能性についてもお話をしました。小野社長もプライベートでPR TIMESをユーザーとして使っているようで、その視点はなかったな、という感触だったので、「拡散」という文脈で質問をしたことを踏まえてぜひ検討頂きたいですね。
 この他、期待を高めていくこと声が多かった中で、いたずらに期待値をあげていくことのないようにしてもらいたいということは私見として進言しました。大風呂敷を拡げたり、身の丈を超える成長を予見させるようなことをやると、結果的に苦しむことになる、ということは当社においても過去にそういうことがありましたからね。

 いずれにせよ、質疑から閉会後の様々な対話を通して、何か声を届ける事が出来た、会社がまた変わっていくためのきっかけになれるかも、という感触を得られたことは嬉しいことでありました。
 既にPERも10倍台前半まできていますので、仮に大きな成長が無くても、ある程度還元もしつつ、コアなユーザーに支援されることで堅い業績を出していてくれるだけでも十分な気もしています。会社側は成長を志向していますので、とりあえずそれを見守りつつ応援していきたいと思います。
 頑張れ、シュッピン!


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