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ステップ(東1/9795) 株主総会レポート 2020/12/12

 東証1部上場のステップの株主総会に出席しました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、私の個人的な心証に基づき脚色して記載していると共に、正確性が担保出来ない点はご了承頂ければと思います。
 なお、以下画像より私のツイッターアカウントへリンクを張っています。記事の内容についてのご指摘、ご質問、感想などがございましたら、お気軽にメッセージを頂けますと幸いです。

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1.はじめに

 まず冒頭、同社に関する関連記事を再掲しておきます。

■昨年の株主総会

■直近決算の精査記事

 上記資料のうち、同社のビジネスモデルの纏めを抜粋しておきます。

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2.当日の流れ

 それでは、早速株主総会の中身について記載していきます。この章で全体の流れをご紹介し、次章より各項目の中身について順番に整理していきたいと思います。最後に、全体を俯瞰した私の所感を記したいと思います。長文となりますが、お付き合い頂ければと思います。
 まずはタイムテーブルをご紹介します。時間は手元の時計での確認ですので多少の誤差があるかもしれません。

  10:00 開会 (議長 遠藤社長)
  10:02 株主数・議決権数の確認(取締役 新井さん)
      →2,002人/5,547人(36.1%)
      →142,790個/165,021個(86.5%)
       ※【参考】昨年データ
       →1,816人/5,552人(32.7%)
       →134,213個/165,039個(81.3%)
  10:03 監査報告 (常勤監査役 上田さん)
  10:04 決算報告 (財務部長 今野さん)
  10:15 小中学部の事業報告(遠藤社長)
  10:35 高校部の事業報告(取締役 大黒さん)
  10:48 キッズ・会社全体概況(龍井会長)
  11:10 質疑
  11:38 議案上程・決議(上程→質疑→決議を議案毎に実施)
  11:42 閉会
   ~ 休憩(室内消毒・レイアウト変更)~
  11:55 事業説明会開始
  13:05 事業説明会終了  

 今年はコロナ禍の影響により、株主総会の運営にも大きな制約がありました。まず、現地での株主総会については、事前登録制で定員超過の場合には抽選になることとされました。また、株主番号の事前登録により、株主総会の様子をインターネット中継で視聴可能という運営でした。
 私は感染予防の基礎的な対策を行いつつ、現地での株主総会出席に関する事前登録を行い、今回現地での参加が可能とのご案内を頂き出席しました。

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 昨年は出席人数も多くなったことから、近所のホールに会場が変更となりましたが、今年はステップ本部のホールに戻って来ての開催となりました。従来はずらーっと椅子のみが配置されていましたが、今年は長机が間隔を空けて配置され、各机に1人が着席するという配置となっておりました。また、居室内の窓は解放され換気を常に取られています。更に入場時には検温と消毒という、昨今の情勢で考えられる最善の予防策が講じられておりました。

3.開会までの過ごし方

 私は例年通り、電車遅延等が生じても困らぬように藤沢には8時過ぎには到着する電車で向かい、何ごともなく、予定通り8時には藤沢入りしました。いつもの駅の中のスタバも空いており、ここで質問するための頭の整理をしつつおいしいコーヒーを飲みます(質問の整理は一夜漬けどころか、当日漬けです(笑))。そして、9時位にはステップ本部のビルに到着します。といっても駅からすぐの場所なのですが。

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 招集通知によると、受付開始が9:30となっていますから、流石に会場である7階まで上がるのは躊躇われ、1Fのロビーで生徒さんが自習室へ入っていくのを眺めながら待ちます。明らかに場違いなおじさんがロビーでうろうろしていて、不審者ですね(笑)。そういえば、毎年9:00のビルオープン時には高校生たちの長蛇の列がありますが、今日に限ってはそこまで長蛇の列という感じではなく、そこそこの待ち行列という感じでした。この辺りにもコロナ禍の影響でもあるのでしょうか。たまたまかもしれませんが。
 ロビーには今春の合格実績だと思いますが、合格おめでとうの札が沢山掲げられています。この札にもステップらしさが表れています。普通、こういった類の札というのは、「●●大学●●学部 ●●さん ●●高校出身」みたいな感じだと思うのですが、ステップの札には高校名の後に部活動名が書かれるんですね。「●●高校 野球部」とか「●●高校 茶道部」とかですね。
 大学受験ステップについては、「高校生活と志望大学現役合格の両立を応援する」というコンセプトが掲げられており、その紹介ページにも部活と両立という事が謳われています。このように公立志向や部活等の学生生活との両立という事をステップは大切にされているわけですが、それが単なる理想ではなく、生徒が学校生活と学業を両立をしながら日々励んでいる、つまりエリート一辺倒、詰め込みを是とするわけではく、人としての成長という側面でも両立を図れる塾という在り方が表れているなと思いました。受験生にとっても、部活動まで明記されていると、諸先輩方をより身近に感じる要素にもなりますしね。
 と、まぁそんなことを考えながらロビーで待っていると、いつもお世話になっている事務の方が声をかけて下さったり、何人か役員の方が出社されるのを私が出迎えるみたいな変な感じになり(笑)、ここでご挨拶ができたりと案外こういうのも楽しいものだなと思いながら時間は流れていきます。龍井さんとも朝、軽くご挨拶が出来て、お元気そうでらっしゃったのでよかったなと。また、IRを含めた所掌の新井さんとは少し立ち話もさせてもらいましたが、このコロナ禍での総会の運営に悩まれている様子でした。他社での開催状況なんかも色々質問して下さり、真摯に株主総会の運営の事を考えられておられる様子に、その寄り添う気持ちに嬉しくなりました。
 ロビーのエレベーターから社長の遠藤さんが降りてきたのですが、何か用があって降りてこられたのだと思うのですが、私がうろうろしているのをみるや、いやいや、どうぞ上がって下さいと7Fにエスコートしてくださいました(笑)。お言葉に甘えて7Fに上がり、検温と消毒を済ませて受付させて頂きました。席に着きとりあえず一息です。
 その後、株主の方がちらちらと来場されるのですが、その受付で役員の方が一緒にお出迎えになったり、席までご案内していたり、談笑されたりしています。他社の株主総会を知っているので余計にこの対応の特異さに驚きます。だいたい役員の方々というのは、開会ぎりぎりまで控室におられ、開会直前に株主の導線と分けられ、ステージの袖などから重々しく登場されるのが常です。なんとなくちょっと距離があるというか、直接的な接触は出来る限りしないような見えない壁があるものです。しかしステップではそういうことはなくて、談笑されながら、時間になると株主と同じ導線でひな壇の方へなんとなくゆるりと着席されるわけです。こういうのって結構社風というか会社の雰囲気が表現されていると思うわけです。重々しく登場もしないし、形式的にお辞儀をしてそれっぽい登場というのはありません。

4.株主数・議決権数の確認

 元気な遠藤社長の開会の挨拶の後、まずは取締役の新井さんより株主数と議決権数が発表されます。冒頭に記載した通りですが、株主数はほぼ変わらず、議決権行使数は昨年より向上し86.5%が行使されています。これだけコロナ禍の影響などで業績面でも大きな影響があり、事業環境も変わる中で、株主の入れ替わりもあったかもしれませんが、結果として株主数はほぼ変わらずたった5人減ということで、安定的な株主基盤があるのかな、なんて思いました。

5.監査報告

 上田さんの朗読会ですが、この部分はコロナ禍の影響で短縮バージョンの多かった12月決算企業(2020年3月開催)では割愛する企業も多かったですね。今回はそこまでの短縮バージョンではなかったため、一応朗読は行われましたが、形式的なものであるという理解なので、一言、「記載のある通り、監査役会で確認、了承済です」、という宣言だけでもよいのかなと個人的には思います。実際議長が一言、監査役会から適正と報告を受けていますと、もはや監査役がマイクすら握らない会社もあるくらいでしたしね。まぁ後々不祥事があった時に、監査役は何をしていたのかということにもなりかねないので、儀式としても、マイクを取って一言発してもらう位は必要なのかもしれませんけどね。

6.決算報告

 毎年のことですが、ここでは財務部長の今野さんより決算報告として定量的案な部分を中心とした説明があります。今野さんは財務部長でおられ、いつも熱い短信文章を執筆されている方ですが、ぜひ財務面のプロとして取締役になられ、ステップの経営に参画されて欲しいなと常々思っています。ステップの社内の取締役の方は、現役の先生方々が主流となっています。塾の経営として生徒と向き合う現場の肌感覚のある先生方が集結していることが自然というステップの文化は当然合意なのですが、これだけの規模の会社になっている事も踏まえると、社内の財務面からの経営参画というのも必要な事なのかなと感じています。もちろん社内の様々な情勢もあってのことですし、取締役なのかどうかという形式にあまり捉われずとも、風通しのよい組織と思われますので、さして困っていないという事なのだと思いますが。
 話は脱線しましたが、決算説明資料に沿ったスライドに、一部投影のみのスライドも織り交ぜながらの説明となりました。簡単にトピックスを挙げておきます。

・新規開校スクールの紹介
 生田スクールは川崎市多摩区として初の出校
 キッズ茅ケ崎は自社物件での開校

・決算(PL)
 コロナ禍影響で減収減益
 業績推移は創業期からプロットしたものを紹介(紙では2008年以降)
 設立来初めての減収、営業利益は20期ぶりの減益

・新型コロナの影響
 学校休校時に2週間の休講 →2.8億の返金
 緊急事態宣言下でオンライン授業 →3Q売上▲34%
 通常授業再開・夏期講習は工夫で昨年比同等授業時間 →4Q売上+6%

・費用詳細
 人件費は昨年の特別賞与の支給により今期は伸び率は抑制
 備品費は昨年の集中購買があったため今期は減少
→人件費は社員数の漸増もあり、毎年数%程度は伸長しているのが常ですが、今年の伸長率がやや抑制的だった件については、前期に特別ボーナスがったためと丁寧な説明をされていました。人数が増えているという側面もありますが、その特別賞与で前期が増えていた中でも今年も伸長していたのはよいですね。なお、ちょうど有報が更新されていますので詳細について該当箇所をみてみます。

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 2019年は平均年収594万円、2020年は584万円ですね。減ってるということは処遇が悪化している?とみえますが、前期に特別賞与がありました。818人に特別賞与184百万円を支給していますから、1人平均でみると22.5万円となります。この額を昨年の給与から減算して基準を合わせると572万円となります。今年が584万円ですからYoYで2%程度の増加となっています。平均年齢が0.5歳増えているとはいえ、まぁ処遇が悪化しているとはいえません。むしろこのコロナ禍にあってもきちんとベースの処遇は改善しているとみえます。

・BS
 コロナ禍影響の不透明さもあり借入金によるキャッシュ増

・設備投資
 当期開校スクール、校舎新築、増床内装等で総額5.1億拠出

・株主還元策
 配当は当初(2年前)約束通り、配当を拠出

・21/9期の予定
 開校は3校舎を予定
 生徒数の状況から上期はまだ緩慢と予想
 下期にはコロナ禍前の生徒数を確保する前提で伸び率算出
 配当は20/9期でやや配当性向が高まった事から今期は据え置き

 特に目新しい情報はありません。ただ、内容は要点をきちんと説明されており、私のいつもの冗長駄文に比べると雲泥の差のある要点に沿った素晴らしいサマライズです(笑)。

7.小中学部の現況報告

 昨年は授業形式で、面白おかしく紹介されていましたが、今年は総会の運営のスピードも意識されてか、そもそも人数も少ないこともあり、普通の形式でプレゼンされていました。元気な遠藤先生ですね。

●コロナ禍での対応
 公立高校の合格発表は2/28(金)だった。その後、3/2(月)は県下一斉休校となった。これに合わせてステップ全校舎共に2週間の休講措置を取り、授業料を在籍料(全体の10%)のみとして9割の総額2.8億を返金する対応をとった。春期講習はなんとか授業をすることが出来たが、その後緊急事態宣言が発出され、完全オンライン化へ舵を切ることになった。約2か月間は全面的にオンライン授業となり、当初約束のライブ授業が出来ていないことから、6-8割を値引きした特別授業料を適用した。
 このオンライン配信では、各校舎、各教師が自分たちの生徒に向けて動画コンテンツを作成し配信し続けた。他塾では1学年で科目毎に共通の動画を配信していたが、ステップでは教科担当講師毎に配信する事を徹底した。子供たちは慣れ親しんだ先生がオンラインで授業をしているので、違和感なく受講することが出来るという心理的ハードルを下げることを大切にした。決算短信には4万本という文章を載せたが、本当に大丈夫か?と俄かに信じがたいという声もあり、自分自身(遠藤社長)で確認をしてみた。ログから動画コンテンツ数を改めて数えた所、総量は54,000本に至る内容であった。本当にこんなになるものかと改めて計算してみた。(講師数約500人 × 約4本/1日 × 30日 =6万本となり、おお、いくな、ってなった(ニコ))
 またオンライン授業対応中には、Zoomを使ったホームルームをやった。生活のリズムを作る意味でも、動画みたか、とか毎日コミュニケーションを取り続けていた。そして、このコミュニケーションに手応えもあり、Zoomを使って双方向で授業も出来るのでは、という事でチャレンジもした。

 ~ ここでZoomオンライン授業の様子を動画で紹介 ~

 ■オンライン対応によるプラス面
 ・保護者や生徒から感謝の言葉がものすごく寄せられた。
 ・また保護者も在宅勤務で自宅にいた事もあり、
  授業の様子を一緒に見てもらう機会もあって、
  ステップの授業の面白さを感じてもらう機会になった。
 ・ホームルームやイベント等を状況に応じ使い分けられるようになった。
 ・学校閉鎖等でステップに来られなくなった生徒へのフォローが可能に。
 ■オンライン対応によるマイナス面
 ・生徒募集時期に直撃し、低学年中心に生徒募集にマイナス影響
 ・特別授業料の設定の影響で、設立来初めての減収となった。

●生徒数の推移
 足元の生徒数のうち、小学生が軟調なのは想定通り。小学生の募集は社会情勢の影響を受けやすい。過去にも消費増税や東日本大震災の時にも、少し様子をみようかという家庭があり時が進めば入会されていくとはいえ、足元では影響を受ける。まして、ステップは公立志向で非受験層のため、入塾時期を先送りするという判断も生じやすい
 中1は好調であるが、これは中1の募集は小6の冬には入会を決める。1月には新中1の新年度の授業が始まることから、入会は概ね2月までに落ち着くことから、コロナ禍の影響を受ける前に募集が立ち上がっていた。一方で中2、中3生は2月末の定期テストの結果を見てからの入塾も一定量あり、その層の募集においてコロナ禍影響を受けた。全体で見れば、粘り強く生徒数を微増とはいえ増やすことが出来ている

●横浜翠嵐プロジェクト
 翠嵐高校は昨年もTOP。今年も昨年より多い人数をとってTOPを取りたい。2019年でTOP奪還した年に入塾した中1生が来春受験となり、ここで3連勝取り、TOPであるという循環を作っていくようにありたい。
 また翠嵐以外の上位校についても引き続き堅調な実績をあげられた。

 ~室長会議の様子(動画)+高校ガイダンスの様子(動画)~

●オリコン顧客満足度TOP
 3年連続で3冠でのTOP。バースも落合も3冠3連続はない(笑)。

8.高校部の現況報告

 高校部は大黒さんですね。毎年の事ですが、遠藤先生は元気いっぱい、大黒先生はちょっと柔らかく優しい感じの語り口です。
 そういえば、朝、ロビーで待っている時に大黒さんが出社される所を、私が出迎えるという形になったのですが(なんだそれって感じですね(笑))、そこでご挨拶をしていた時、生徒が大黒先生の周りに何人か集まってワイワイやっている光景をみて、あぁ、大黒先生もまた人気者なんだなって思いました。

●大学入試の状況
 センター試験→共通テストに移行する年。出題のされ方など形式が変わる。知識活用が重視されることから、難易度は上がり平均点は下がるといわれている。英語については、民間試験の導入は見送られた。但し、私大では既にメジャーとなり立教や上智では大学独自の英語試験をやめ、民間試験化する事になるなどの動きがある。この他、早稲田の政経や青山学院大学などでは共通テスト受験必須としてきたことから、志願者の動きなどの変化にも注目している。
 ステップとしても教師の研鑽を重ねており、英語では英検準1級以上の取得者が更に1級を目指している教師もおり、全体としてのスキルアップに励んでいる。
  共通テストの第二日程の希望は僅か0.1%だった。その後のスケジュールがタイトになるだけなので、実際の希望者が少なかったと推察。2次試験では範囲を縮小したりフォローするなど各大学で配慮をする中、神奈川県下の横浜国立大学では2次試験を廃止し、共通テスト1本化となる衝撃の発表があった。

●来春の入試展望
 ・定員厳格化が進む(私大)
 ・休校等の不安もあり安全志向がより強まると思われる。
 ・志望校動向は景気に反応する。
 ・最近は文系志願者が増えてきた中、今年は理系が急伸。
  (リーマンショックなどの時、一気に理系の人気が高まった)
 ・国際系や観光系はどうしても軟調。情報系はものすごい人気。

●生徒数推移
 生徒人数はこの環境下でも伸びている。高2と高3がプラスになっているが、これは昨年に十分生徒を確保出来ていた事とその生徒がきちんと残ってくれているから。一方、高1生は減っているが、これは高1生の入会の90%が3-4月の進級時に入塾するが、この時期にコロナ禍直撃で影響を受けたのが要因。ただ、そんな中でも昨対比でマイナスとはいえ、絶対数として生徒数は相応の数を集めることが出来ていて、この成果に注目してもらいたい。

●今後の展望
 15年、19年にそれぞれ生徒数が伸びている。これは校舎を新設した年でもある。であるならば、校舎を増やせばいいではないかという指摘もあるが、校舎展開はここはとにかく慎重にいきたい。人材育成が何より大事で、慎重にじっくりとやっていきたい。じっくり状況をみて、3-4年に1校という従来の考え方に基づき、基礎を固めながら進めていきたい。

●部門別の利益率
 小中学部と高校部の利益率の比較。(スライドのみの情報のため詳細の記載は割愛します)高校部がしっかりとステップを支える柱になっているぞという説明。

●合格実績
 トータルでみると一番良い結果が出たと評価している。東京一工(東京、京都、東工大、一橋)と、多くが志願するMARCHが過去最高になった。またこの実績は公立高校の生徒が大半を占めるステップ生の実績であり、同じ層でみると屈指の実績だと自負。とはいえ、もっともっと実績を伸ばしていけるよう、教務力を高めて頑張る。
→トータルでみるとという前置きがあったため、個々にみると課題も認識しているのかなという言い回しに聞こえました。私大では定員厳格化が進んでいることから、経年の評価が難しい中でどのような部分に課題を認識されているか、聞けずじまい。とはいえ、まだ校舎も少ない中で、神奈川県公立生主体でのこの結果は特筆すべき実績だなと。

 ~合格発表の時の様子(動画)~

●神奈川フューチャードリームの紹介
 ステップがユニフォームスポンサー。このチームが今年リーグ参入初年度に優勝という快挙を挙げた。これにあやかって、高校部も躍進していきたい。今年は飛躍の年になる予感
→今年は飛躍の年になる予感とわざわざ強調されました。それだけ自信があるということなのでしょうか。入試制度も変わり、コロナ禍で波乱もありそうですので、出てきた結果を一面的に捉えて良し悪しを評価してもあまり意味があるものではないと思うのですが、しかし、動画で流れた合格発表の時の喜ぶ光景が来春も多く目に出来る機会があればいいなと思います。全くOK他人の子ではあるのですが、動画で合格との報に触れて、先生だけでなく、そこにいる事務員の方など全員が総立ちでよっしゃーて一緒に喜ぶ熱い姿こそ、ステップらしさなのだろうなと思いました。魂を感じるのです。

9.学童・会社全体の現況報告

●学童部門について
 昨年説明した通り、藤沢校が無事に立ち上げが進み多くのノウハウが整理、定着してきた中で、新規開校を進める判断をした。茅ケ崎校と辻堂校での新規募集の状況は藤沢校の初年度の時とほぼ同等な手応えとなっている。今後茅ケ崎、辻堂の募集年次が広げられること(初年度は募集学年を絞って立ち上げを行っている)で、今後収益貢献も進んでいくと認識。校舎の進出に加え、手話など新たなコンテンツも拡充してきている。

 ~キッズの授業の様子(動画)~

 キッズのコンテンツが強力で最強の競争力を持っていると感じている。但し、それを支える人材がもっと大きな課題。キッズの指導が、高校生など難解な事項を扱うものと比べて簡単ということはなく、それぞれに指導の難しさがある。それに対応していくための人材が必要ということだ。現下、3校体制になり専門人材も増えるが、何よりその方達の育成に注力をしていきたい(従前キッズは、小中学部の先生が隙間時間等を使って対応していたが専門人材を配置するようになってきているということ)。それがスムーズに進むならば、10年後の総会において、高校部で大黒先生が宣言したように、キッズもステップの屋台骨を支える大きな存在になると申し上げることが出来ると期待している。

●全社の動きについて
 ステップは大手塾界隈の中で、いち早く大胆な値引きを行った。ライブの授業とオンラインの授業ではできる事が異なる。オンラインでは、「わかる」は提供できても、「できる」まで行かないことも多い。そのため、当初の約束と違うわけなので、大胆に切り下げた。その結果、驚くほどに感謝の声をもらった。
 ステップではモニター制度というものがあり、保護者からの声をいつも募って、批判的な意見も含めて分析をしているが、これだけ感謝の声をもらったのは設立来初めてのこと。
 当時、家庭は混乱をしていた。学校休校時には生活リズムが崩れたり、生徒が孤独に苦しむ中で、ステップ生においても過去に類がないほどの不登校者が出ており、生徒に大きな影を落としている。そのようなこともあり、悩み苦しむ家庭もある中で、些細なことではあるがステップも授業料を下げる事を通して、家庭に寄り添い痛みを少しでも共有したいという姿勢が、この感謝の声に繋がったのだと捉えている。

 ~ 感謝の声を紹介 ~

 私たちのもっとも大事な財産は「信頼」であり「信用」であると痛感した1年であった。これを学びとして、ステップを更に前に進める原動力にしていきたい。
→龍井さんが長いキャリアの中で、このコロナ禍で多くの学びがあったと仰る文脈の中で、改めて信頼、信用が大切というメッセージはとても身に染みるものがありました。地域でこれだけの学習塾を創設しても奢らずに、真摯に家庭からの声を大切にしている、その姿勢が垣間見れるご説明でした。私も以下のツイートをしていますが、本当にこの一言に尽きます。

●競合他社の状況について
 中萬学院、湘南ゼミナール、臨海セミナー、ステップの4大塾からの軌跡を紹介。中萬はいち早くM&Aされ県下の競争から一歩後退。湘南ゼミナールもスプリックスにM&Aされ森塾グループとなる。臨海セミナーとステップが残った。この他、栄光や秀英も撤退色が強まっている。

●臨海セミナーの報道の件について
 ・夏頃から強い勧誘を受けている旨の生徒からの申告が相次ぐ。
 ・内部告発もあった
 ・ステップの申入れは、個人情報収集の扱いに関する内容
 ・生徒は勉強しにきている。生徒を巻き込んだ営業活動は断固反対
 ・19社連合で申入れを行うに至った

 特待生制度はステップでは作らない。成績優秀者を教えるのは難しい。どこまで教えるかという程度や教師側により高スキルが求められる。もちろん成績下位者はそれはそれでどう伝えれば伝わるのか、またこれも難しい。それぞれの難しさがあるわけなので、成績下位者が成績上位者を支えるみたいな構図は考えられないし、それぞれの難しさに向き合う必要があって、それぞれに誇りをもって教えたいから、授業料は公平にもらうというスタンス。
 学習塾の競争は、生徒を如何に伸ばすか、そこに注力するべきだと考えている。この業界があるべき姿での競争となり、自浄作用の中で、切磋琢磨していける環境であってほしいという願いを込めて、アピールをしているところである。

10.質疑応答

 1人2問までという制約と、この後の事業説明会でも質問は受けるという点の説明があり質疑へ進みます。以下、主な質疑について取り上げておきます。なお、重ねて申し上げますが、私の心証に基づき記載は脚色され、また各種事情を考慮して、一部記載については割愛等しております。ご容赦下さい。

Q 人材採用・育成について
 人材の採用や育成は当社にとってもっとも重要な課題と認識。小中学部の教師においては、コロナ禍や他社を含めた人材の流動化等の情勢などもあり様々な変化がある中で、当社はどのように採用や育成の施策を進めてきたか。またキッズはまた違ったスキルが求められる中で今後のネットワーク化構築の中でどのような取り組みをして採用・育成をカバーしていくのか。
A
 小中学部では、まずキャリア採用において、ライブで授業をしたいという根強い現場主義の教師の方からの応募が多く集まっている(コロナ禍もありライブ授業ができる塾がどんどん減ってきている)。しかも全国の室長レベルの人が集ってくれており大変心強い。新卒採用も来春入社予定の内定式も催したが、このコロナ禍にあっても順調に採用できている。
 また、キッズについては、専門スキルをもった方を拡充しており、今後もその専門分野に長けた人材を採用・育成し、強力なコンテンツを強みにして展開を進めていきたい。アマチュアレスリングをやりたい。(遠藤社長)
※所感
 全国から室長クラスの現場主義の方が集まっているというのは心強いですね。コロナ禍で満足いくライブ授業が行えなくなっているという側面もフォローになっているような気がします。一方で、気になるのは、室長クラスのような一定のキャリアを他塾で形成されている方は良くも悪くも従来の文化が染みついているものです。ステップで教鞭を取るようになった際にもミドルやシニアといった一定の立場で対応されることになると思いますが、その際にステップイズムのような既存のよき文化とうまく融合して良い部分が出てくれるといいですが、逆に混乱や人間関係などにネガティブな要素とならないといいなと思います。ステップの先生たちは総じて熱く生徒本位に立っていると思いますが、他塾での一定のキャリアを有されている方がギャップを感じてしまうことを起因に無用な歪みを生むことがなければいいなと思います。その意味から室長などマネジメント層が先生たちの横連携をいかに目配せしながらそれぞれの個性を高める環境を作れるかが大切な気がします。
 それから育成については、特に言及がなかったため、従来通り進めているのだと思います。新卒採用も順調という中で、コロナ禍で変化もある中で、ステップイズムを浸透させていくプロセスとしてキッズのような新たな分野の育成も含めた施策にも期待したいですね。(遠藤社長)

Q 緊急事態宣言下における対応について
 緊急事態宣言の発出時には、日に日に積み上がっていく動画コンテンツ数に驚きを持ってみていた。これを成しえるためには、現場が一丸となっていなければならなかったと思うが、経営として現場にどういう指示をしたのか、また現場がそれをどう受け止め対応してきたのかを知りたい。トップダウン色がどの程度あって、あるいは、現場がボトムアップでやったとするとその現場力はどう有機的に繋がり一致団結し、大きな力になったのか、ステップの現場力の所以を知りたい。
A
 経営サイドとして現場に対して、各スクールへ動画を配信しましょうと環境を用意するということを行ったが、総じて先生たちが自発的にやりたいとまさに有機的に取り組んでいた。とにかく自分たちでやりたいという思いが元々強い先生がステップには多く、そういった先生たちが能動的に対応されていた。
 その思いが強すぎて、むしろ動画をアップし過ぎてサーバー負荷が高まることになり、経営サイドから1日辺りのUP数を抑制するなどの対応をするくらい、爆発的な現場のエネルギーだった。(遠藤社長)
※所感
 やはり現場のボトムアップであれだけの勢いがあったということなんですね。この部分はとても大事で、経営側からのプレッシャーでとにかく何万本必達!みたいな本来論とずれた活動がなされると先生たちも疲弊してしまいますし、よいことがないですね。しかし、答弁にもあった通り、自発的に、使命感をもって対応された結果とするととても嬉しいですね。現場のやりたいという気持ちをむしろ経営として抑制をさせなければならない程に、エネルギーに溢れていた、その先に生徒の事を想う先生がいると思うと、感慨深いものがあります。私は、先生たちがどういうモチベーションだったのか、それがとても興味深いなと思っています。学校の先生は天職だ、利他的だなどといわれますが、ステップの先生も然りだなと思います。一方で、溢れるモチベーションが、逆にコロナ禍等でどうしても社会的に制約が生じやすい中でストレス源になるというようなことがなければいいなとも思います。やりたい気持ちをコロナ禍にある社会やリソースに制限のある経営がある程度コントロールしないとなりません。これは先に生じた労務問題の根源的な課題にも繋がるものだと考えます。つまり、社員の自発的な自己研鑽と労働基準法の下で業務として行う狭間で難しい側面もあるだろうということです。今回の自発的なこの取り組みにこのような問題があったとは全く考えていませんし、過去の経緯からきちんと労務管理を徹底されていると思うのですが、先生たちのモチベーションがどう養われ、それが社員にとっても会社にとっても適正な範疇で効果を最大限発揮できる環境であってほしいと思います。

Q 30億の借入金について
 今回、コロナ禍において30億程の借入を行ったと思うが、どういう背景でここまでの借入金を行うことになったのか。この結果、自己資本比率は90%だったものが80%に下がっている。自己資本比率が全てではないものの、健全性は維持してもらいたいと考えている。また資金面の手当てとして、コミットメントラインの締結など実際に借入をしないまでも枠だけを押さえるという他の手段もあったものと思うが判断ロジックを教えて欲しい。
A
 借入金については、コロナ禍で仮に収入が途絶えても、1年間は社員に給与が払えるような形を作っておきたかった。内部の社員に対して、安心してもらう環境を作っておくという事が大切だと考えた。ご理解頂きたい。(遠藤社長)
※所感
 今野さんの決算報告の中でもこの借入については丁寧に説明があった認識ですが、改めて質問されましたね。個人的にはこの借入を早期に実施したことは英断だったと思っています。当時、どこまで長引くかわからないコロナ禍による緊急事態宣言において、多くの企業で雇用不安のマインドが漂っていました。実際、飲食系など店舗を閉鎖している会社は苦しい状況に追い込まれています。ステップも例外ではなく、休講やオンライン化による収入減が際立っていましたから、社員が不安に思う気持ちも多少なりともあったものと思います。そのような観点で社員へ安心して現場を回してもらうというメッセージとして上場企業らしくぽんと30億もの資金を借入できるというのは凄いことですし、これによって先生たちは安心して生徒に向き合うことが出来たと思うのです。先生に営業活動を一切させないというポリシーにも通ずるのですが、経営がなすべきこと、それは先生たちが全力で生徒に向き合える環境を作る事である、ということをここでも見せつけられた気がします。
 加えていうと、質問者の意図がわかりませんが、自己資本比率がこれだけの借入をしても81%程度です。確かに9割近くからみれば落としたことになりますが、これで健全性が不安になりますかね。私はこれでも財務は厚すぎる、位の認識なのですが…。コミットメントラインによる備えについては、直接的な回答はここではありませんでしたが、単純にこれだけの低金利ですし、コミットメントラインは諸々手数料もかかるわけですし、本気で長期借入するわけではないですから、金利負担なんてたかが知れています。何より、社員に向けた、現金をこれだけ保持して備えているというメッセージングという要素もあるわけですから、コミットメントラインという仕組みではややわかりにくいですよね。まぁ様々な意見というか見方があるものなのだなと思いました。

Q 横浜・川崎への展開について
 県西は人口が減っているのに対して、横浜・川崎は人口も増えている。またステップは横浜・川崎にはまだ校舎も少なく進出余地もあるように思うが、この地域への展開をどう進めるのか教えて欲しい。
A
 川崎方面への進出には4路線ある。田園都市線、小田急線、東横線、JR線。そのうち、手薄だったJRはハイステップ川崎をようやく作ったものの、鶴見など人口増の地域にはまだリーチできていない。
 それに加えてこの4路線を縦に繋ぐ南武線はまだ完全空白地帯。いずれにせよ、まだまだ空白地帯が多いと認識しており、進出余地は十分にあると考えている。時間をかけてじっくりやっていくので、期待して欲しい。(遠藤社長)
※所感
 横浜・川崎地域への余地は十分にありますからね。ステップの出校戦略は路線に沿ったドミナント戦略に基づいて進められています。もちろん、この地域は出校に際して得られる物件もまた価格も高いでしょうし、思うように調達ができるかという側面もあり、自社都合だけでなかなか進まない局面もあろうかと思います。ただいずれにせよ、出校に際しては相当緻密に計算されてますし、品質や既存校舎への影響(人事異動が生じると色々と短期的な影響も出る)を考慮し、ゆっくりじっくりいくのでしょう。成長を期待するとどうしてももっと出校を、ニーズは沢山あるよ、という声は理解はできますけどね。一方で、その欲に流されず、規律を持ってやっているうちは安心だと思っています。

Q ガイダンス等や対策講座が藤沢校のみの件
 自分の子供は横浜の大学受験ステップへ通っている。各種ガイダンスや英検対策講座などを実施してもらってありがたいが、その多くが藤沢校のみでの開催となっている。こういったイベントを他の校舎でもやってもらいたい。ライブに特化しているからこそ、藤沢校だけでなく、多面的に対応して欲しい。
A
 オンラインではみられる環境は作ってきた。でも横浜でもやりたいとちょうど思っていた。(言われたからというわけではないが)来年からやれるよう改善してきたい。(大黒さん)
※所感
 毎年保護者の株主さんから様々な質問が寄せられます。今年もこういう類の要望が質問として寄せられます。B2Cの現地ローカル企業ならではだと思います。恐らく、質問されない方の中にも様々な改善要望を持たれている保護者株主の方がいらっしゃるのだと思います。普段からお客様の声みたいな窓口はあるようですが、株主総会においても何かお客様の声を聞くブースみたいのを作っておいて、そこでもご意見聞きますみたいにしてもよいのかもしれませんね。今年はコロナ禍で縮退運転でしたので、来年とかに運営についての要望みたいなものを集約できる場があってもよいのかもしれませんね。他社の株主総会で●●の使い勝手が悪いとか、●●店の店員の態度が云々とか、細部過ぎる点を挙げて大論説される方がいるのですが、株主総会は本来そういう場ではないですからね。お客様センターへいってくれ、みたいのが主流になるとせっかくの機会がもったいないですからね。
 横浜校舎でもちょうどやろうと思っていたと、まるでそば屋の出前のような状況に会場では笑いも起こっていましたが、本気で来年からやろうと画策されていたようです。そうですよね、大黒さん(笑)!

Q 塾全体の業界変化が与える生徒流入への対応
 様々な他塾の状況が変わる中で、生徒の流動化もより出てくるのではないかと思う。ステップにとっても、生徒の流入のような流れもあるのではないかと思うが、ステップとして他塾からの生徒の受け入れについてはどういう考え方で対応されるのか。
A
 従前からと同様、教室に空きがあれば、どこの塾の生徒さんでも受け入れを歓迎したいと思う。そもそも塾に行ってなかった生徒さんも、他塾に行かれてた生徒さんも特に色分けすることなく、教室に空きがあれば受け入れてきている。外部要因で様々な動きがあったとしてもこれまでと同様に対応していく(遠藤社長)。
※所感
 答弁の内容は差し障りのない内容ですね。というか、そりゃ、定員に空きがあれば、特に色分けせずどの生徒でも引き受けるでしょうね。質問者の意図としては、むしろそういう流動化によって引き合いが増えているとかの状況が聞きたかったんじゃないですかね。個人的にはそれで一時的な入会があったとしても、それは本質的な増加ではないですし、それより、もっと長期的な目線でステップが価値を創出してそれがより多くの方に最初から評価されているという姿を追い求めていたいな、と思います。今は他塾が様々な背景もあり、苦しくなっているでしょうから、益々、ステップの優位性が光るわけですが、それに驕ることなく、突っ走っていって欲しいなと思います。

Q 遠藤社長への評価
 新社長として取り組まれてきた姿を木島先生はどう評価しているか教えて欲しい。
A
 これについては、あとの事業説明会で、みたいな雰囲気になったのですが、短めバージョンで答弁することとなり、いよいよ木島さんがマイクを握ります(笑)。
 ニコニコしながら、短めバージョンで話すよ、と。長くなったら打ち切ってと注文をつけて、話し始めます。面白いですよね、毎回。長めバージョンは後でやるよ、とか言いながら。

※木島さんはとにかく話好き。話が長い。答弁の大論説になり、途中で取締役の人たちが失笑するみたいな面白いことになるのが定番です(笑)。

 業界のレジェンドともいうべき龍井さんの後で社長をやったら、誰でも大変。自分だってちょっと躊躇するし、難しいと思う。全国の中でも稀有な学習塾を作ってきた龍井さんだからこそ、その難しさは誰がやっても同じ。遠藤社長は龍井さんの教え子のようなものなので、まさに師匠の下でやるのはどんなに頑張っても大変だろうし、すぐに師匠に勝るなんてことは厳しいでしょう。遠藤社長の評価としては、率直に申し上げて、若いし、なりたてだしという面からも、知性、教養、経験、素養どの面からみてもまだまだ。しかし、だからこそ、みんなで育てていかねばならないっと思っている。まだまだという評価もあくまで龍井さんと比較してしまえばということで、そんな中でも頑張ってやっている遠藤先生の姿というのは素晴らしいと思っている。だから我々も、株主の皆さんもみんなでこれを支えて、時に厳しい声をぶつけて育てていくという目線で見守ってもらうことが大切だと思う(木島さん)。
※所感
 これは私も質問項目に入れていました!質問制約もあり後にとっておいたのですが、質問された方がおり嬉しかったです。やはり木島さんにお話しして頂く時間もないと、どこか総会に来たという実感がしませんからね(笑)。木島さんは一貫して、自分の役割は社外取締役なので客観性だと仰います。今回もそのような事を述べられていましたが、他塾の情勢や社内の組織状況に至るまで、ずばずば遠慮なく意見をするようです。未だに龍井さんにも物申すようですしね。そんな木島さんは遠藤社長を「まだまだと」評されました。でも節々に愛情があります。それが答弁からもにじみ出ていて、好き勝手しゃべっているようですし、本心でお話をされているのだと思いますが、なかなかいい事を仰いますね。ぜひ木島さんには身近に叱咤激励を飛ばしてよい方向に助言頂く事を期待したいと思います。

Q 遠藤社長自身の社長としての振り返り
 新社長として過ごしたこの1年の振り返りを聞かせて欲しい。
A
 昨年の就任挨拶で抱負を語った時には、コロナとかZoomとか一切予見もしていなくて、大きな変化の中でのスタートとなった。まさかこんな環境になるなんて思っていなかった。しかし、他の先生たちと連携して生徒を支えられた経験、またステップ生も勉強が出来た1年だったと思っており、来春の実績を期待しているところ。(遠藤社長)
※所感
 社長として波乱のスタートとなりましたが、それでも前向きに進められてこられたのは良かったと思います。何より遠藤先生は元気が漲っていますし、自分のクラスの生徒さんだけでなく、ステップの先生たちも含めてリーダーシップを率いていって頂けるといいなと期待をしています。そして社内の財務成績が云々とかの反省とかなくて、生徒と向き合えてよかった、期待が高まっているとやはりここでも生徒を向いているのがいいなと思いました。ちょっと糞まじめな方だと、減収減益となってしまって残念とか、稚拙な反省の弁とか述べられそうですが、そんなことなくて、前を向いていていいですね。それだけ誇りがあるという事だと思います。

Q 湘南ゼミナールへの対応について
 スプリックス傘下となる湘南ゼミナールは集団と個人のパッケージが提供可能となる環境となるが、ステップとしてどういう対応をされるのか。
A
 湘南ゼミナールがスプリックス傘下に入るというリリースが出たのは、木島さんの誕生日だった(会場笑)。フォレスタをどう湘ゼミに適用してくるのかなどまだ見通せない部分もあるが、注視しながら取り組んでいきたい。(遠藤社長)
※所感
 湘ゼミの創業者である木島先生の誕生日に、湘南ゼミナールがスプリックス傘下に入るというリリースが出たそうで、なんとも面白いと会場からも笑いが出ていました。木島先生、ほんと、もってますよね(笑)。
 遠藤社長の答弁はまぁ湘ゼミがどういう変化があるのかわからないという事もあるのだと思いますが、取り立てて対策というものは持ち合わせていないような印象でした。これは結構面白いなと思って、要するにあまりライバル視してないという事なのかなと感じました。もちろん、森塾の持つノウハウやフォレスタシリーズというパッケージ化されたシステム、個別指導を含めた対応力は一定の存在感があるものとは思うのですが、ステップがステップらしくあることで、さして自分たちのやっている事に不安はないという事なのだと思います。ここ何年か、ITを使った講義ソリューションやAI学習ツールなども台頭していても、あまりブレずにあり続けているあたりに芯を感じます。こういう背景もあって、競合動向を聞かれた答弁がなんとなく宙を浮いたような表面的に聞こえた所以かなと思います。もちろん、油断をしてはいけませんし、他塾の良い部分はきちんと分析され、必要に応じてチューニングされていくものと思いますが、この辺りの各塾の分析は龍井さんも木島さんも大変明るいようですので、そんなに心配をしていません。

Q 学習塾業界における営業手法について
 この学習塾業界ではもんぱい(門の前でチラシを配布する営業活動のことで、往々にして問題になる事が多い)や金券類等を用いた販促活動など、悪しき営業手法が蔓延っていると認識しているが、これは業界としてなくならないものなのか。業界全体に不信感があり今の現況が得策とは思えない。見解を問いたい。
A
 業界としてなくならないのかといわれると、なんともいえない。だがステップとしては、社是として歪んだ営業活動は一切しないということは胸を張っていえる。各塾が生徒本位にたち、業界の自浄作用の下で健全な競争環境が構築されることを願う。(遠藤社長)
※所感
 かなりセンシティブな質問ですね。ステップが学習塾としては稀有な存在でありますが、業界全体のあるべき像をこの場で示す立場ではないですし、他社のことをとやかくいえませんしね。この営業活動も総じて悪しきものというのもある一方の価値観でしょうからね。中には募集のために程度の問題はあるとはいえ、一定の営業活動を是とする会社もあるでしょう。ですから、業界全体のこととしては答弁しづらいものと思います。実際に答弁しにくそうでしたしね。ただ、ステップに関しては、これまでも、これからも営業活動を生徒や先生にさせるようなことはしないと宣言されていました。

Q 配当について
 配当については、配当も当初計画を据え置きということだが、業績が悪くなった、また授業料を返還するといった対応をとった中で、株主も痛みを分け合うという意味で、当初計画に強引に合わせるではなく、減配してもよかったのではないか。当初の計画を遵守する姿勢はありがたいが、今後はより多面的な視点で配当方針の議論も行って欲しい。
A
 今回の配当40円は2年前に約束したものなので、それを遵守した。ありがたい意見。(遠藤社長)
※所感
 まさか、株主から減配してもよかったのではないかという指摘が上がるとは驚きました。もちろん、質問者の意図はわからなくもありません。家庭に対してその痛みに寄り添う値引等を行ったことで、会社の財務も一時的とはいえ抑制される結果になったわけです。それであれば、株主もその痛みを分かち合うという意味での減配となるのも致し方ないではないか、ということですよね。いや、どこまでステップの株主って変態が集まっているんだろうと思いました。まぁ自分も同じ穴の狢(むじな)なのかもしれませんけどね(笑)。
 一方で上場企業として広く投資家に対して開かれている会社として、別のロジックで2年間の配当を約束していたわけで、それを反故にするというのはやはり違った面で影響も大きくなります。そもそも一時的な外部要因であるということと、大赤字を出したわけでもありません。多少毎期積み上げる剰余金が減っただけのことで、配当余力は十分にあります。そういったことを総合的に鑑みれば、適正な判断だと私は思います。ステップは特別配当の反動以外で普通配当を減配したり横這いだったことはありませんから、今期の配当予想を増配しなかった辺りがその判断の一要素になったのではないかと思います。いいバランスだと思います。

 ここで質疑は終了し、各議案の決議に入りますが、各議案に対する質疑も個別に募られました。第2号議案の取締役選任の件で質問です。

Q 取締役選任で新たな方の検討について
 今回の取締役選任については、全員が再任となるが、コロナ禍や競合会社の変化への対応や、キッズや横浜川崎への進出というチャレンジをしていくということを鑑みて、新たな方の選任について検討されなかったのか参考に教えて頂きたい。また、検討されたとしたらどういうキャリア、ノウハウの方を模索されたのか教えて頂きたい。
A
 現取締役のうち、社内取締役は会長を除き全員が40歳代。現状ではフレッシュメンバーで構成されているため、当面はこのメンバーで頑張っていきたい。(遠藤社長)
※所感
 そうですか、答弁の様子から新たな方の検討は特になされた形跡はないように受け止めました。私自身も別にガバナンス的にも事業運営的にも現状の構成に不満があるわけでもなく満足しています。逆に人数が多くなり過ぎると機動性が損なわれる側面も出てきます。従って特に提案事項に異論はありませんが、こういう質問を通して、常に役員の選任に際して、現状維持でいいんだという慢性的な雰囲気を払拭できるきっかけになるのはいいかなと思います。冒頭で述べた今野さんも然りですし、例えば学校関係者など現場キャリアの方、文科省や県教育局など役人キャリアの方など、様々な優秀な人材がよりステップに活力を与えてくれる機会があるといいなとも思います。全体のバランスをみながら、今後、より活性化と外部人材も含めた多面的な役員の議論の場があることを期待したいと思います。

11.事業説明会

 さて、休憩をはさみ、事業説明会に移ります。参加株主は30人弱でしたが、このうち残った方が10人程度、残りの20人の方はここでご退席です。いつも不思議なのですが、ここからが本番という感じなのですが、ここで帰られる方はどういうマインドなのかなと感じます。いや、ケチをつけているわけではなく、純粋に疑問なんですよね。特に今年はコロナ禍で事前申し込みでかつ、感染拡大もある中で一定のリスクを踏まえて現地参加を選ばれています。それを承知で集まっているということは、それなりに会社の理解を深めたいとかそういう人が集まっているものと思うのです。まぁ予定があってどうしても残れない、みたいな方もおられるのでしょうね。
 なお、Webの中継は株主総会のみで、この事業説明会の様子は配信されなかったようです。といってもそもそも株主総会の中継の視聴者も20-30人だった模様なのですけどね。というか、流石にこれだけ興味深い(と私が思っているだけですかね)株主総会の視聴者がこんなに僅かだったと知って、もったいないな、と思いました。企業のIRセミナーとか勉強会も有益ですが、何より一次情報に触れられる機会ですし、情報を得るというより、会社の雰囲気とか文化を感じる場でもあるわけで、そのニーズがさしてないのかと思うと、そして別に投資家にとってそこまで重要なイベントでもないという事を知り、衝撃を感じました。
 さて、事業説明会ですが、別に新たにプレゼンや説明があるわけではありません。もう説明はし尽したので、追加の質疑を受けるということで、なんとなく始まります。ちなみに例年は懇親会として飲食をしながらですが、コロナ禍ですので、着席スタイルでの実施です。というわけで引き続きやり取りのあったQAを記載しておきます。

Q 臨海セミナーへの申入れの今後の展開について
 臨海セミナーに対して行われた申入れに対して、先方からも文章が出ているが、現状をどのように捉えられているか。
A
 19社で合意した趣旨は2点。
  ・違法性が疑われる状態で収集された個人情報リストの破棄。
  ・当該リストを営業活動で使わないこと。
 生徒から多くの証言があがっており、内部告発もある中で、生徒を巻き込んだ営業活動が学習や受験に影響があるとしたらよくないので、個人情報の取り扱いに関して適正な対応を申し入れたということ。(龍井さん)
 ステップとして重要なことは、申入れに際して、先方の事情にも配慮して業界全体が自浄に向かっていくような空気感を醸成しながら申入れ、対話を続けていく事が肝要である(木島さん)
※所感
 ステップとしては、生徒を困らせるようなことになってはならないという事なのだと思います。その意味で、臨海セミナーに対しても申入れという形で適正な運営に努めてもらえるような働きかけを行っているという事と認識しました。いずれにせよ、このような問題が露出し、双方が良い意味でライバルとして切磋琢磨出来るようにあって欲しいなと思います。なにせ、神奈川では中萬や湘ゼミが一線から退き、実質、ステップと臨海セミナーの一騎打ちという様相でしたので、双方が高め合う意味でも生徒本位の中で競争されることを切に願います。

Q 不登校者への対応について
 コロナ禍にあって、過去に例がない程の不登校者が出ているとのことで、ステップ生にもその影響があったとのことだが、それはフォローしきれなかったものなのか。
A
 不登校が多いのは夏休み明け。長期休暇明けに戻れなくなるのが一番多かった。今回コロナ禍で夏休みを超える2か月もの休暇がある中で、部活動も出来ず、生活リズムが崩れる生徒も多く、これだけの不登校者が出ているという実情である。一種の人間関係を回避したり、コミュニケーションの欠落が大きな影を落としており、そのまま不登校になった生徒が相当数出た。そして、家庭から出られなくなってしまった生徒さんへの対応というのは、学習塾としては出来る事も限られる。ステップとしてもホームルームをやったりする中でコミュニケーションに努めてきたが全てをフォローしきる事は出来なかった。(龍井さん)
※所感
 この問題はステップの問題というより、家庭の問題なんですよね。もちろん、生徒本位として寄り添えるような工夫はなされたのだと思いますが、家から出られないとなるとなかなか出来る事も限られてしまいますね。リモートでホームルームなどで毎日短い時間でもコミュニケーションを取るということくらいしから対応のしようがないのでしょうね。コロナ禍ですから例えば家庭に赴いていって様子をみにいく、みたいな、地道なこともそもそもできないですしね。龍井さんも子供たちが大変な影響を受けていると懸念を示されていましたが、大きな影になってしまいそうですね。

Q 東京志向の家庭への対応について
 今後進出する川崎中央部やみなとみらい地域などでは、東京志向であるものの不動産市況等の兼ね合いから流入してこられる家庭も多い。元来の居住者に対して、これらの家庭では地元での進学というより東京志向を持っている中で、ステップとしてこういう家庭層に対してどのような対応をとっていくのか。
A
 川崎中央部の進学といえば、川崎予備校だったが、そこが廃業となり、今は早稲田アカデミーに講師共々流れている。その意味で来春開校するハイステップ川崎を出校し、この領域で教務を活かす意味でいい場所だと思っている。みなとみらいの辺りはまだ世代が若い。従って小中学部というより、人材さえ揃えばキッズを出していきたいエリア。(遠藤社長)
※所感
 東京志向の話では武蔵小杉の例も挙げられていましたが、武蔵小杉は東京価格で家賃も高いようで、こういう所へのフィットはまだまだ先になる予感ですね。いずれにせよ、人口動態や家庭像も意識して戦術的に進められようとしているようですから、地域の志向性に合わせて出校をゆっくり進めていって頂きたいですね。

Q 木島さんのステップとの関わり方について
 元々ステップと競合の関係にあった湘ゼミを創業された木島さんは紆余曲折あって、今はステップの社外取締役となられているが、どういう気持ちでステップに向き合っているのか。また創業者の在り方についてどう捉えているか。
A
 ステップとはもう長い間、闘ってきた。その間沢山の事を学んだ。元々ステップは湘南からスタートした会社であり人口密度が比較的低い所を基盤としていた。一方で湘ゼミは横浜など人口密度の高い所を基盤として創業していた。そのため、例えば人材獲得ひとつとっても湘ゼミでは比較的容易に獲得ができたが、ステップはそうではなかった。その違いによって、自ずとステップは社員として採用してその小さな芽を育てる姿勢が強く、湘ゼミはある意味学生バイトでも採用が出来たこともあり、割り切りながらという所に違いがあった。人材に対する扱い方という点で両者の違いがじわりと実力の差にもなっていった。人的資産が高まっていくステップと数年で入れ替わってしまう湘ゼミという構図に危機感をもった。そのため湘ゼミも社員を採用してガチバトルをやった。こういう部分でステップを叩かなくても、いい塾さえ作れればいいんだという学びになった。切磋琢磨をしていく中で、ステップに育ててもらったという意識を持つようになったし楽しかった。
 学習塾は生徒のためにある。自分が湘ゼミ退任した後に、合格実績のダブルカウント等の件で泥試合となり、生徒不在の争いごとになったことを大変悲しくなった。とはいえ、龍井さんに迷惑をかけたということもあり、ある時に既に退任をしていた中ではあったが、個人的に挨拶にいったことがあった。その時、龍井先生は滅茶苦茶ウェルカムみたいな雰囲気で気持ちよく迎え入れてくれた。人を扱うことがとにかく長けているなと実感した。
 そんなこんなで、やはり尊敬していつつもどこかでライバルと思っていた龍井先生の下、自分も生徒本位の塾というものを考えた時に一緒にやっていってもいいなというように思うようになった。生徒のためという共通認識があるからこそ、感覚も近いし、全く違和感なく参画出来ている。役員会でも率直な意見をどんどん言わせてもらっているし楽しい。龍井先生にも物申すときには他の役員が言えない時にも言える。
 創業者とは会社そのもの。会社の文化を作るもの。ユニクロだってソフトバンクだってみんなそう。創業者から経営をどう引き継いでいくかというのは最大の課題である。そもそも創業者と同じようにならないというのが私の結論。じゃ、どうするんだという事だが学習塾でみるとほぼ全国的にみてもそれに成功しているところはない。龍井さんが元気で精神的な支柱としておられるうちに、若い方がどの程度学べるかにかかっている。なのでまず龍井さんには長生きして欲しい。その上で出来るだけ多くのことを若い方には吸収してもらいたい。経営者たるもの稀有な才能が必要だが、今の遠藤社長にそれがあるかはまだ未知数だと思っている。しかしその中でどう育成するかを現実的に考えていくしかないし、周りが支えていくしかないのだと思う。
 競合他社を見渡してみるともうステップの最大の敵は内部にあるといっていい。遠藤先生を全員がリスペクトしているかというと必ずしもそうではないかもしれない(そういう事実があるわけではなくそういうリスクが一般論としてあるんだよという指摘です)。同じ年代層の役員構成の中で仲違いのようなことが生じて内部崩壊していく事が一番の懸念だと考えている。敵は外ではなく内にあるということだ。なので、内部で龍井さんが作ってきたいい文化を残し育てていこうとみんなで一致団結できるかが大変重要になる。(木島さん) 
※所感
 ちょっとまとめるのに苦労するほど、色々なことを仰っておりました。過激な事も色々述べられていましたが、まぁ塾というものが好きなんだなとつくづく思いました。途中、仲違いなんて物騒な事をお話されていましたが、遠藤さんとか即座に否定していましたけどね(笑)。そんなことありませんよ~とか。

Q コロナ禍を受けたスクールの対応について
 コロナ禍において、教室の運営において定員を絞ったり、感染予防の対策をどのようにやられてきたか。
A
 6月の再開時はクラスを半分にしてオンラインと対面の併用する形で運営した。学校が普通に始まった後はステップでも従来通りの運営にしている。マスクや換気、検温などの基礎的な感染予防対策を施して運営を行った。ごく少数オンラインがいいという希望生徒もあったが、ほぼ全員が対面授業へ復帰する事となった。(遠藤社長)
※所感
 まぁ普通の対策を行っていますね。まぁ逆に言えば特別なこともやりようがありませんからね。

Q M&Aへの姿勢について
 M&Aについては検討されないのか。
A
 M&Aの案件自体は良く来る。特にコロナ禍にあって、英語の予備校とか、学習塾などからの案件が多い。しかしながら、私たちが最も重視しており、唯一の判断基準である「良い人材がいるか」という尺度で判断をしており、なかなかそういう案件に出くわすことがない。(新井さん)
※所感

 生徒数とかは全然関係なくて、中身の人材のみしか判断していないようですね。球団を買って選手をもらうという趣旨なのでしょうが、なかなか良い案件は出てこないというわけですね。まぁそれはそうですよね。あとはあるとしたら、小さな塾が世代交代を迎える時ですかね。いずれにせよ、従前からM&Aは人材がいれば、と常々仰っていて、それが長年実現しないということは、なかなかそういう塾が売り物になって出てくるということがないんでしょうね。

Q 借入実施の背景について
 コミットメントラインという手はなかったのか。30億も借入をする必要があったのか。資金は授業料としてキャッシュインしてくるものなので、実際の借入まで必要だったのか。
A
 先が全く読めなかったため、1年間の収入が途絶えても給与を支払えるようにと即断即決した。確かにコミットメントラインという手もあったが、時間も要する事から見合わせた。(龍井さん)
 コミットメントラインは検討したのだが、期間が長いことと手数料が高いということ、更に低い金利(条件)で取引出来た事、更に借りるとしても期間は短く支払う金利は更に限定的になるということもあり借入を選択した。更に社員への安心を示す意味でもあったため、実際のキャッシュを持つという事が大切だという観点もあった。(今野さん) 
※所感
 総会の時にも同指摘がありましたが、そんなにコミットメントライン締結に拘りがあるんですね。どこかでコミットメントラインの良さを説かれてきたんでしょうかね(笑)。同手法は手数料が高い、実際のキャッシュが充当されない、長期的な借入を要さない等の事由から、超低金利という環境下で敢えて選択しないですし、逆にそんな手段に出たら、なんで?って突っ込みますけどね(笑)。

★Q 動画コンテンツやオンライン支援のナレッジ活用について
 当初はオンライン対応も手探りで、不慣れな中で対応した事により、返金や大幅値引きという判断をされた。今回様々な苦労をされる中で得られたナレッジというものも多く今後ハイブリッド化を志向される中で、その得られたナレッジをどう活用して、保護者や生徒に対して費用対効果を示しながら活用されていくのか。また万が一休講となったら同様に不慣れなのでといって返金や大幅値引きということではなく、得られたナレッジを体系化し、費用対効果を示せるような事があれば教えてもらいたい。
A
 ノウハウがなかったこともあり、当初は動画をどの程度あげるとサーバーがパンクするかもわからない中で対応を模索してきた。そんな中で授業料をもらうわけにはいかないという判断があったし、「わかる」を「できる」に昇華できないケースがあったのも事実。今後完全に休講という事はないとは思うが、今後については、得られたノウハウを基に、以前よりは真っ当な形で費用対効果を訴求し大幅値引きを要さない形には持って行けるようになっていると思う。
※所感
 オンラインには限界がある、でも活用シーンはあるので、使いわけるというものですが、そんな中で得られたナレッジを体系化し、うまく活用出来るようにあって欲しいですね。今後は不慣れだからと大胆な値引きで補填をするということではなく、その特徴や効果を出来るだけ形にして、価値を訴求できるようにナレッジを高めて生徒へ向き合えるようにあって欲しいですね。それから作成したコンテンツを外販していくなど全く違うスキームについては一切考えられていないようですね。

★Q 設立後初の減収となることへの取締役会の議論について
 設立来初めての減収となる事を覚悟する重い意思決定をされたとき、取締役会ではどういう議論があったのか。全員が賛成となったのか様々な議論があったのか。その信用を優先するとした重い決断をされたときの役員の皆さんの議論の様子を知りたい。
A
 龍井さんが、最初減収幅が大きすぎるといったよね、といって大黒さんへ回答を促されていました。

 最初は減収幅が大きすぎると感じたが、その後の議論を経て、むしろもっと減収幅を大きくしても良いという気持ちに変わった。その思いの変化は、その当時はとにかく寄り添う事が大切で、長期的にみて、また築いた信用を基に取り戻していければいいのではという考えに変わった。(大黒さん)
※所感
 この質問はちょっといじわるでしたね。大黒さんには回答に当たり、苦しい思いをさせてしまって申し訳なかったと思いました。私の中では大黒さんのように異論を主張したという方がいて安心したんです。というかそうあって欲しいと思って質問しました。設立来初めての減収へ舵を切るという、この重たい判断をするときに、当然、結論として売上より信用を優先するというのはこの会社にあって必然なのですが、これがすんなり何の議論もなく決まるより、様々な意見があって、大黒さんの答弁にもあるように、改めてこの優先する信用とはなんなのか、それを優先して長期的にまたステップらしさで頑張って取り返しておこうという雰囲気が議論の中で醸成されたのかどうかを気にしておりました。なにより、そういう異論も含めて自由に議論が出来るというのもいいなと思いましたし、少なくても大黒さんは今回異を唱えたことで、改めて長期的に頑張っていこうと強く思った事と思いますし、周りの役員にもそういった思いが伝搬され、いい形で議論がなされたのかなと感じました。

さて、ここで木島さんがちょっとお話がしたくなったようで、自らマイクを握ります。いつものことながら、社外取締役が積極的に自らマイクを持ちだして語りだすって、それこそ稀有ですよね(笑)

 私はこの議論の際に、龍井さんと話をしていて、この大胆な値引きは広告費だと思うようにした。これだけの大胆な値引きというのは他社ではなかなかできないし、今回減収となったわけだが、それはこの1期という決算でみれば確かにそうなのだが、この先の事を考えると、差別化という意味で大きな意味を持つと判断している。今後の未来においてステップがあるべき姿を示したことはとても有意義なものだっと解釈している。(木島さん)

※所感
 なるほど、広告費ですね。ステップは口コミをベースとして広告宣伝費は極限まで少なく推移していて、それが販管費率の抑制となり、ひいては営業利益率で20%を超える水準を維持し続けている所以でもあります。そんな絞りに絞った広告費のような概念でこういった値引きをするという議論が取締役会で交わされたことは興味深いと思いました。広告費を抑えて展開するというのは同社の強みのひとつなわけですが、こういう事態になった時に、その既成概念を取っ払って発想を大胆に転換できるというのも素晴しいなと思いました。

 とここで、木島さんマイクを置くのかと思いきや、そのままちょっといいですか、って前問のナレッジの件についても語り始めます。もう止まりません(笑)。

 ナレッジの活用の部分だが、私が一番驚いたのは、「日本で最強のアナログ軍団」であるステップが、同業他社に先んじてそしてもっともデジタルを活用していたということ。最強のアナログ軍団が、最強にデジタルを使いこなすと、それはもう強いに決まっている。
 そして、アナログに強ければ強い程、デジタルの効果というのは大きくなると思う。アナログとデジタルというのは対立するものではなく、アナログに強くなければ、デジタルは活かせないということ。
 デジタルを活用出来たというナレッジを得たことで、説明会にしろ補講をするにしろ、様々な局面で活用シーンというものは想定されるが、そこに力を発揮できるだけのアナログ力があるということ。コロナ禍で業績面では減収となったが、一方でデジタルすらも活用して他塾を圧倒するという姿を示すことでステップはより強くなったと思う。
 社外取締役として客観視し、他塾との状況を比してみていても、ステップはすげぇな、と思っていた。それくらい活用できていたし、それは何よりもアナログ力がしっかりしているからだと考えている。

※所感
 ここは木島さんとしては珍しいくらいにべた褒めでしたね(笑)。ちょっと気持ち悪いくらい。でもそれくらい感心したという事なんだと思います。アナログとデジタルの話は結構私の中ではなるほど、と思った部分があって、妙に納得してしまいました。Zoomの活用とかのインフラをいくら整備したといっても、あるいは、ツールとして様々なソリューションを提供して受講環境の改善や理解促進の仕組みを突き詰めたとしても、そこで繰り広げられるコンテンツ(授業の質)という根幹が伴わなければ結局それは意義が薄まってしまうということですね。そして、各校舎の各クラスの先生がそれぞれにコンテンツを作るという取り組みもとてもアナログだと思うんです。だって例えば中1の数学のある日の授業となれば、せいぜい上位クラスと通常クラス毎にコンテンツが分かれていれば合理的に考えれば事が足りそうだと考えてしまいます。しかし、それぞれの校舎のそれぞれの先生が同じような授業をそれぞれに収録をして配信するわけです。これはとても非効率的な気がしますが、でも顔を知っている先生とクラスメートと共に授業を受けるということを大切にしているわけです。この発想もまたアナログ的思考だと思うんです。コンテンツがあるかないかの0、1ではなく、それがどういうキャラクターや環境で作られていて、自分が受け取れるのかということですね。
 そして木島先生の眼からみて、ここで得られたナレッジが、必ずや今後のステップをより強固にしてくれるという感覚を持って下さっているのも大変心強いです。せっかく新しいチャレンジを行い、四季報にも「ICT活用に目覚める」とまで書かれています。目覚めた後、大いにそのナレッジを活用して生徒のためになっていって欲しいですし、それが会社の成長にも繋がればいいなと思うわけです。とてもいいお話を聞くことが出来ました。

★Q 取締役の皆さんの経営者としてのビジョンについて
 取締役に皆さんは日常は今でも現場で教師業をやりながら、一方で経営に参画されてご活躍されている。生徒を前に情熱的に先生をされているのはよく理解しているつもりだが、一方で取締役メンバーとして経営する側にある時にはまた違った視点やスキルが求めらると認識している。日常、経営に参画される中で経営サイドの顔としてどういったビジョンを持ち取り組まれているか教えて欲しい。
A
 それぞれの取締役の方から一言ずつ回答を頂きました。

 新卒でステップに入社して、とにかく教える事がとても面白くて仕方がなかった。今でもその気持ちは全く変わらない。そして経営メンバーに参画することを通して、自分が感じた「現場は熱く面白い」という気持ちを、他の先生たちが抱けるような現場作りを叶えるような経営を志していたいと思っている。ちなみに私は遠藤先生が大好きで、これからもずっと支えていきたいと思っている。(大黒さん)

 競合他社の状況を見て学びになったのは、経営者の判断がぶれると、屋台骨が揺らぎ状況が悪化するということを改めて見せつけられたこと。現場と経営が分離してしまうとどうしてもブレた判断になりやすいという事だと思うが、今でも現場を一線で回しながら経営に参画できているので、現場感覚の声をそのまま経営に生かすことができるしそうありたいと思っている。繋げる経営を今後も目指していきたい。(袴田さん)

 ステップの強みは経営と現場の分離がないこと。自分自身がスクールの室長として、またブロックと束ねる本部長として週5日現場に出ていることもあり、各スクールでの様々なやり取りなど非効率的だったり改善余地があるところをそのまま経営に生かすことが出来る事が強みだと思っている。また目の前の数値に捉われることなく、生徒ときちんと向き合い、その積み重ねがステップを創っているという視点を意識している。また経営サイドにいると新卒や中途採用など様々な先生方の様子を垣間見る事も出来て、その中で、他者に学ぶという観点で、やった方がいいこと、やらない方がいいことを識別して議論する場に参画できることは大変勉強になるし、そういった知見を現場でも活かしていきたいと思っている(梅澤さん)

 ステップは現場できちんと教える事を志向した集団であることから、そういった先生たちが、現場できちんと生徒と向き合い頑張れる環境を構築していく事が経営の役割だと認識している。(高瀬さん)

 コロナ禍の中で生徒に全力に向き合う先生たちを事務方としてみていたので、ステップって凄いなと改めて感心した。情熱的な先生たちが今後も生徒に全力であたれるような環境を事務方として支えていくことが自分の役割だと思っているので、今後も力を尽していきたい。(森本さん)

※所感
 懇親会という形式ではなかったので、各取締役の方のお声を聞けなかったので、最後の質問にはこういったふりをしてみました。一言ずつくらいはお話を伺いたかったですしね。どうしても全体での質疑ということもありやや表面的な内容にはなってしまいますけどね。
 株主を前にどういう経営を目指しますかと問われて、誰一人業績の話はしません。成長とか株主還元とかも一切言及がないんですよ。面白くないですか(笑)。普通、業績向上に努めますとか、成長のために頑張りますとか、どこか財務を意識した回答となるのが常ですよね。まぁ総会でも減配して痛みを共にしたらどうかという発言が出る位ですから、株主も普通じゃないんでしょうけどね(笑)。
 各取締役が現場の先生方への配慮、あるいは生徒に向き合う事をとても大切にしていて、敢えて私は先生の顔と、経営者の顔では異なるものと思っているよ、とふったのですが、皆さんガン無視で先生という現場と経営というものは繋がっている、シームレスになるものだと口をそろえた論調に、いやーここまでぶれないのはいいなと思いましたよ(笑)。教科書的にいえば、(といっても私は読書をしないのでよくわからないのですが)現場の執務と経営というのはどこかで分離して考えるべきであって、双方の事を慮りながら、時に現場に苦労を強いるような施策も必要なんだ、だから独立性が云々、みたいな論調を耳にしたこともあるのですが、ステップではそういう理屈は一切通用しないですね。

 というわけで、ここで事業説明会という名の質疑応答は終了となりました。途中で何度も笑いもあり、全く退屈をしない時間でした。大変お忙しい中、ご対応頂いた皆様にこの場を借りて御礼申し上げたいと思います。

12.配布資料(胸のうちを話してみたい)

 ステップの総会では、決算内容資料を抜粋した総会資料の他、毎年「胸のうちを話してみたい」という役員の方々の素顔に迫るという趣旨の冊子を頂けます。毎年少しずつ変化があって、今年は、森本さん、遠藤さん、龍井さんの記事がUPDATEされているようです。どの方の記事でもご自身の学生時代の頃の逸話から何故ステップという会社を志したのか、その中でどういう経験や失敗を重ねて今に至るのか、その軌跡をたどり、その方の人となりが垣間見れるということで、中々役員というと距離があるものなので、こういうものは相応に脚色されている要素はあるでしょうが、楽しめますね。まぁこれとは別に社外取締役版として、木島さんの紹介も存分にしてもらいたいと思います。一冊の本になってしまいそうですが(笑)。

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 印象に残ったところをかいつまんでご紹介します。

 まず、チューターのキャリアで役員に登用された森本さんです。ステップの生徒本位の熱量に驚くと共に、自分が納得できる職場だと思って入社され、ところが思うようにならない挫折もありつつ苦労もされています。そんな中で生徒の人生に影響を与える立場にやりがいを感じられ、そこから努力を重ねられています。今後も縁の下の力持ちとして現場を下支えする事に徹する意欲を示されています。

 高瀬さんは元々高校生の頃には荒れてやんちゃをされた方のようです。そんな中で自分の生きる目的みたいなものを見出し、大学にも合格し新聞部として活動し、多くの取材を通して知見を重ねられています。そんな中、チャンピオンをとったボクサーの取材時に、「チャンピオンになるより、チャンピンで居続ける事のほうが格段に難しい」という言葉は今でも常に良い授業をやり続ける姿勢を求める際の学びになっているそうです。
 その後、紆余曲折があり、ステップに入社されます。その後は同期入社の中でももっとも出来が悪いなんて挫折もありながらも「伝えたい」という一心でキャリアを積まれます。生徒向けに「熱くなれ!」という激励通信を発行しているようで、この辺りは新聞部のご経験も生きているのかもしれませんね。全力さが伝わってきますね。今ではステップの広報も担当され、例の件では広報窓口としてご対応されていますので、そういう情報発信という面でも頑張って頂きたいですね。

 新井さんはサッカー少年だったようです。キーパーだったので、1点でも失うとアウトというプレッシャーが大きかったようです。目立たないものの、プレッシャーは凄くて大切なポジションですね。それは今の企画セクションでもそうですね。元来、縁の下の力持ち的な方なのかもしれません。私も同じなんですよね。。。まぁ私の場合、縁の下を支え切らず壊してばかりでしたが(笑)。採用や育成の企画などは今後のステップの成長源泉を支えるお仕事ですから、ぜひ頑張って頂きたいですね。

 梅澤さんは野球少年だったようですね。なんかそんな感じがします。就職活動にネガティブな印象を持っていた中で、好きな事を仕事にしようと飛び込んだ教師業。熱い思いを抱き続け、生徒をうまく巻き込む工夫も重ねられたようですね。異動も多く、生徒の声を支えに様々な現場で挫折もありながら頑張ってこられたようです。なので、生徒にはいつも感謝していると。自分の授業についてきてくれてありがとうって。感謝より感動みたいな表現もされており、いかにも体育会系の感じなのですが、それがステップらしさなのかもしれません。私には絶対に務まらないと思います(笑)。

 大黒さんはバンドロッカーだそうです。ちょっとイメージがないです(笑)。そして予備校時代の講師の方を見て、塾講師を志したとか。大学入学前にそういう出会いがあったというのは凄いですね。そんな早期に志望していたこともあり、教えることにも自信があって入社をしますが、そこで現実を目の当たりにして挫折を味わうことになります。しかし、最後まで自分はできるという自信だけは失わず様々な努力をされたと記されています。
 ある生徒との出会いやその対応は美談でもありますが、そういう経験が教える事への喜びとなり糧になったようです。

 袴田さんは大学で塾講師のアルバイトを通して、この仕事に魅了されたようですね。全く知識のない社会科の授業を担当することになり、必死に勉強をして高める努力をされたようです。しかし大学卒業後は他社の営業職に就職をされますが、そこでの違和感、そして教師職として先輩にも紹介されステップに入社されると。大学時代からまじめだったということですが、キャリアを積まれる中でも一歩ずつ努力をされる方なのだなという印象です。仕事の楽しさもやはり生徒と向き合う事にやりがいを感じられているという事、典型的なステップの先生ということなのでしょう。

 遠藤社長ですね。生徒と共に映る元気いっぱいの写真がいつも印象深いです。らしさをまさに表していて、ここにもご紹介したいのですが、生徒さんの顔も映っていることから、掲載出来ないのが残念です。プロレスラーを本気で目指し、塾の先生ともやりあったとか。でもその真剣にぶつかりあってくれる大人が嬉しかったとあります。きっとステップイズムの根底はこういうご自身の経験からきているものなのかもしれませんね。誰もが無理という志望校にもその先生の激励があり、真剣に勉強されて合格を勝ち取られたようです。授業見学をした際に、ステップに入ろう、入りたい、いや入るんだという根拠なき自信に従うように入社されました。そんな中、双方向のコミュニケーションを標榜していたにも拘らず、自分自身が熱心に伝えるという独りよがりの授業をしていた事を省みられています。プライベートでもご結婚されたときに、多くの生徒が結婚式に集まってくれたそうで、時代もあるのでしょうが、人気者の遠藤先生は若かりし頃から変わらなかったのですね。写真が小さくわかりづらいのですが、素敵で美しい奥様です。キャリアを積まれる中で大事にされたのは、先生たちの輪だそうです。先生同士が何でも言い合えて風通しがよければ、ミーティングなど形式に捉われなくてもいいスクールは運営できるんだという思いがあったようで、実際には様々な派閥や流派が出来そうなものの中で、コミュニケーションを活性化させる役割をマネージメントの立場になっても失わず、むしろ促進されていたようですね。そしてよりマネージするスコープ範囲も広がる中でも、それをプレッシャーするのではなく、楽しめていることも感じます。その各ステージを入社から社長になるまで経験をしていることをご自身の強みと認識し、それぞれの役職や立場の社員に寄り添う社長でありたいという雰囲気を感じます。これがステップの中で慕われる遠藤先生の所以なのだろうと思いました。しかし、社長として啓蒙活動等を通して底上げを図る中でも一番楽しいと仰っているのは今でも現役で教えている授業だそうです。生徒の立場からすると、社長が目の前で普通に抗議しているってちょっと驚きますよね。生徒の方がむしろ社会的な立場とかそういうものには鈍感で、普通に先生として接しているのかもしれませんけどね。
 冊子の中で「勉強のことはもちろん、自分が生きてきた中で「これをやっておけばきっとプラスになる」ということを全力で伝えていきたい」と仰っています。勉強のことだけでなく、人としての大切な様々なことを、多感なこの時期の生徒に全力でぶつかってくれる先生は、さぞそのクラスの生徒にとっては拠り所になるのだろうなと思います。
 だからこそ、人としての繋がりが強いため、卒業生とは今でも繋がりがあって、ステップの先生になりたいなんて相談を受けると嬉しいようですね。やりがいがあるだろうな、と思うわけです。社長だからとかそういう事を抜きに自然体で今でも現場主義を貫く中で、今後も経営と先生としての両側面で頑張っていって頂きたいなと思います。

 そして最後は龍井さんですね。投資家は往々にしてビジネスモデル分析などを通して、サブスクモデルこそ優位だとか、労働集約型は魅力的でない、規模のメリットが生かせるかとか、まぁ躍起になるわけです。ステップは思いっきり労働集約型ビジネスですし、規模のメリットだってそこまで大きく機能はしません。サブスクといえば毎月の月謝収入ですから該当するのかもしれませんが、そもそもサブスクって何をもってサブスクかってこともありますしね。
 龍井さんは学習塾は究極の人材産業とお話されています。授業の魅力を備えていること、人間的なキャラクターを持ち合わせていること、この両側面を備えた魅力的な先生が構成されることが何よりの競争力になるというわけです。そのための育成にはとても配慮をもっています。
 ステップでは先生に営業活動を一切させないことにされています。その心はもちろん、生徒に全力で当たるために教務力を上げるという事に集中してもらいたいということであるわけですが、それだけではなく「共感性」を養ってもらいたいということを仰っています。共感性とは生徒に対して水平な目線ということらしく、つまり、自分が同年代だった頃に、何に悩み何を夢見ていたかというその感覚を今になっても失わず、共感を持って生徒に接してもらいたいということなんですね。ビラを配ったり営業活動に消耗している場合ではないんですね。

 とまぁ、雑感を含めてご紹介しましたが、この冊子はもちろん脚色されている部分もあるのかもしれませんが、これだけ役員一人一人のキャラクターを知れるのはよいですね。総じて、皆さん生徒が大好きで生徒本位であること、それから決して学業面で超エリートではなく(失礼)、むしろ様々な経験をされてきた方も多く、多くの挫折を経験されています。そしてそんな中で同僚や生徒に助けられ、育てられている点が特徴です。

 ここに掲載されている方々はいわゆるモーレツ世代ですから、今のご時勢において、同じようなことがなかなか通用しない部分もあるのだと思いますが、その根底に流れる文化は受け継がれ、いい人材が育まれ、組織力がより高まる事を期待したいです。

13.全体所感サマリ

 というわけで、総会の内容について頂いた冊子資料の内容も含めご紹介しました。この長文にここまでたどり着いた方が何人いらっしゃるのか、いやいないんじゃないかと思うのですが、まぁいいです(笑)。最後ですが、全体を振り返って所感をサマリしておこうと思います。

 全体を通した所感として、改めて「売上より信用を優先した」という一言に尽きるなと思いました。ステップは上場企業ですから、財務数値できちんと経営成績を上げるということはとても大切なことです。しかし、それより大切なものがあって、このコロナ禍という未曾有のピンチにおいて生徒、保護者へ寄り添う姿勢を守り抜いたという事です。そしてそれが現場力をもって全社が一丸となり、決してスマートに事が進んだわけでもない中で、苦労も失敗もありながら進んできたわけです。財務は一時的に収縮し、コロナ禍で必ずしも満足いく運営が出来てない部分もあったでしょう。サーバーは落ちるし、不登校の生徒への対応にも限界があったりと。しかしそれでも前を向いて先生たちが一丸となり真摯に取り組んだ結果として、多くの感謝の声に支えられ、それが今後のステップの強さの糧になっていくだろう期待を胸にできたこと、それがこの総会で得られた充足感なのです。

 我々投資家はトップラインの成長やEPSの伸長、またそこから導き出さる時価が安いの高いのと色々やります。当然、いいものを安く買って、高い評価になったらそれを売却してリターンを得るというのが投資家のあるべき姿ですから、そういった目線で企業をみていくことは大切です。私がステップの株主として一番危機を持っているのは、こういう目線を自分自身が忘れがちになるところです。もう少し企業を冷静に見て、対処すべき局面で粛々と対処していく必要があるわけです。よく言う銘柄に惚れてはいけない、なんてことも指摘されますね。

 一方で私はやはりこの会社に売上、成長、EPS、ROEなどという指標のものさしをあて、やれ高いの安いのと売買する対象とするということにどうしても抵抗があります。株価の日々の騰落によって表面的な資産は浮き沈みして、それで一喜一憂する時もあるのは事実ですが、一方で達観している自分もあります。大切なお金を投じているので当然なのですが、一方で、現場で先生たちが真摯に子供に向き合い、使命を果たそうと情熱に燃えている姿に触れた時、いってしまえば分散もしていることもあり些細なお金の動きに一喜一憂している自分のスケールの小ささよ、と思うわけです。

 ステップはアナログ集団と評されていたように、結構泥臭く、スマートでない部分もあります。しかし、間違いなく、その地域で相応の価値を提供していますし、それを求める方が大変多いことは揺るぎません。価値をきちんと提供し、会社としてガバナンスも効いている中にあって、そこに託した自分が何を託したのか、託したものの覚悟とはなんなのか、そういったことを考えさせられます。

 この株が騰がるかどうかの予測、テーマがどうこう、材料やカタリストを探し求めて・・・そういう貪欲な姿勢を批判するわけではないですし、そういう世界で闘えるのはそれはそれでいいと思います。実際そういう方が流動性を形成してくれるわけですから。ただ、自分が託したスタンス、覚悟そういうものを改めて認識し、かつ気持ちよくそれを託し続けられる会社だなと思えれば、こんなに幸せなことはいとも思うわけです。そしてそういう会社であり続けているかに触れる機会として、株主総会という場に出席させて頂き本当によかったと思っています。そしてこういう変わり者の自分も一株主として温かく迎え入れてくれる会社と出会えたことは、投資家冥利に尽きるなと思います。私が一方的にそう熱くなっているだけかもしれませんが、でもそういう気持ちを抱き、資本の一部に参加出来ているというのは私の目指すべき理想でもあります。

 今回はコロナ禍の下で、役員の方お一人ずつ、ゆっくりお話をさせて頂く事は叶いませんでした。難局への対応への感謝や今後に向けたエールを個別にお伝えすることが出来なかったのは心残りですが、その思いが伝わり、今まで以上に情熱をもって生徒さんに接していただき、よりよい学習塾になって頂くことを切に願っています。

 頑張れ、ステップ!

あとがき

 私はステップという会社に魅了されていますから、一生懸命ネガティブな側面も探りながら記事化に努めました。これでも、そうなんですよ。批判すべきところをきちんと探して、批判をすることも株主の役目の一つだと思うのです。そういったことも意識しながら今後も寄り添っていきたいなと思います。

 毎年、この総会には敏腕投資家の方々が参戦され、終了後にサイゼリヤに集って語らうみたいな事もありましたが、今年はコロナ禍もありそんな機会もなく残念でしたね。仕方がないので、帰りに以前にお勧め頂いたカレーうどんを食べました。いやー、美味しかったですね。

 食事の後、小田原まで足を延ばし、決算前のお洒落なHamee本社を拝みつつ、籠常商店で鰹節を買って帰ろうと思ったのですが、時間も中途半端でしたし、断念しました。ちょっと足を延ばすには電車で30分ってそこそこありますからね。

 というわけで、一眼レフもない中、江ノ電に揺られることに。鎌倉高校前で下車し、国道134号線沿いをトコトコと歩きます。七里ガ浜を過ぎ、稲村ケ崎を通り越してトコトコと。雲があったので、稲村ケ崎から望む富士山は陰ってしまっていましたが、それでも海はやっぱりいいなと思ってスマホでぱしゃりと。

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