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全国保証(東証プライム/7164) 24/3期Q2決算メモ

 2023/11/6に東証プライム上場の全国保証さんが24年3月期Q2決算を発表しました。同社については、安定業績かつ高配当の投資先のひとつとして、あまり決算の細かいところをフォローせず、年に1回の株主総会くらいしか接点がない会社さんです。今回、決算で減益となっていることもあり、IRさんに久々にお電話をしてみましたので、ごく簡単にメモだけ残しておきたいと思います。
 なお、ここに記載している内容は、あくまで私の主観に基づき脚色したメモであり、正確性を保証するものではありません。また同社の株式の売買を推奨するものではありません。その点、ご了承下さい。

1.決算の主なポイント

 とりあえず超手抜きですが、マネックス証券さんの銘柄スカウターを使って四半期業績の概況をみておきます。

 四半期単位で営業利益がここまでの減益になるのは珍しいことです。

 同社の営業費用は主に債務保証損失引当金繰入額です。BSの債務保証損失引当金の増減によってPLにヒットしてきます。BSの引当金は主に保証債務残高をベースに、代位弁済率等を踏まえて計算されるものです。ここの費用が先行していることが今回の減益要因です。そしてここがなぜ増加しているのかは明確に説明はありません。

 一方で同社の最も重要なKPIは保証債務残高です。これが今後の返済期間に渡る長期の営業収益(売上)になるものです。この数値が伸びていると、大きな費用構造の変化(金融不安や失業などが背景となる)がなければ基本的に凹凸は多少あれど、伸長が続くということになります。今回これをみると前期にはやや苦戦した所から、再び増加傾向が見て取れるようになり、この部分では安心感がありますね。

 代位弁済と求償債権回収の状況です。代位弁済がコロナ禍を超えて高まっています。ただ、保証債務残高を母数とした率でみると特段変化はありません(なんならグラフ上は微減しているようにみえます)。
 そして不動産価格の高騰の作用もあってか、求償債権の率も7割超で推移しており、特段変異は見られません。

 以上の状況を踏まえて、計画通りに進捗しているということで業績予想は修正せずということです。費用先行で営業利益減益になっているので、この辺りの背景も踏まえて、念のため、この感覚を確かめておきたいと思います。

2.IR照会

 理解を深めるため、IR照会を行いました。ここに照会を踏まえて私が理解した内容をメモで残しておきます。主観で脚色しているため、あくまでご参考としてご覧頂ければと思います。

・債務保証損失引当金の増加による減益

 債務保証損失引当金は、保証債務残高や代位弁済の状況等を踏まえてロジカルに計算される引当金。同引当金は保証債務残高に一定の割合で引当金を計上することから、保証債務残高が増える事で増加するもの。一方で代位弁済は前年まではコロナ禍の下での政策支援や金融機関側の措置で代位弁済が減少していたことから、債務保証残高の増加の一方で引当金増加が限定的であった(実際には53億水準で横ばい)。足元で通常モードに回帰した事で、引き続き低位とはいえ一定の代位弁済が生じており、保証債務残高の回復も鮮明の中で、YoYでみると引当金が増額することに至った。なお、年間の引当金計画は●億円で上期で18億弱を計上(進捗率で50%未満)であり、計画線で推移している。 

→同社のPL管理上、引当金を計上する必要があるわけで、前年比較ということでみると、環境が変わった事もあり、従来の目線でロジカルに算出されるものに沿って計上する事に至り、コスト先行になった(ようにみえる)ようですね。実際にこの引当金が代位弁済等で適正に管理される事で、結局戻入がなされるというのが同社の恒例でもあります。もちろん、様々な変化がある中で変化が生じるかについては注視が必要だとは思いますが、住宅ローンという商品性質上、社会的にみても、大きく毀損をしていくということはあまり想定していません。ですので、まぁ凹凸が生じるのもある程度先々の見通しを踏まえて保守的にロジカルな計上によるものでもありあまり気に留める必要はなかろうという結論です。但し、そもそも、同社の営業収益がより増加していく必要はやはりあるわけですから、このあたりの動向はみておきたいですね。そういう意味では保証債務残高の回復は良い傾向です。もっと頑張ってもらいたいとも思いますけどね。

・現金から投資有価証券への振替

主に高格付社債を購入。従来からリスク度合いに変化なし。あくまで安全性最重視で取り組み中。一方金利上昇局面では債券価格は下落するものの、そもそも満期保有目的前提であり、損失計上は見込まない。但し、10年程度で回転をさせているため、一定の金利上昇には追随できるものの、金利の急上昇局面で、その運用利回りを全面で享受できる状況ともいえない。ただ、だからといって短期局面も享受することで価格下落等のリスクも受容することになるため、安全性最重視という中では、運用利回りを追求するものではない(現金保有よりましという考え方) 

→金利上昇局面では保有資産の劣後というものが市場の一つの懸念である一方で運用面ではプラスになる面もある、という説明がなされています。しかしながら、実際には安全性再重視という観点から、金利上昇局面でリターンを狙っていくという事は控えている印象です。この辺りは元々前受収益をベースにしたものであるという性質上、同社らしいスタンスでよいな、と思いました。

・金利上昇局面での借換需要の状況

金利上昇局面にあるが、現時点で借換需要が急増しているという状況にはない。借換そのものは、入りと出が双方ある中で基本的にはニュートラル。但し、2016年のマイナス金利局面の際の借換需要が盛り上がった時のように、様々な施策を行い入りを多く取ったように、今後そのような兆候が出た際には取り組んでいく。 

→借換需要に対応したケースは2016年にあり、この時は追い風に出来ましたが、今回ももしそういう兆候が出てきた時に対応できるように期待したいところですね。

・新規保証実行の保証債務のリスク変化

子育て世代応援キャンペーンのようにエンドユーザーの若年化などはみられるが、過去のデータからみても、リスク度合いの高い属性比率が高まっているという状況にもなく、従来通り、リスク度合いに見合った保証料率を設定しており変わりはない。

→新規保証実行において、新たなチャネルやキャンペーンでの流入もあるようですが、特段リスクバランスは変わっていないようです。

・物価上昇を踏まえた保証料設定の値上げ余地

現状で予定はない。ただ、保証債務の単価が上がっている中で当然保証料も絶対額としては増加傾向にある。

 →これは決算そのものの内容ではないのですが、少し意外に感じました。保証料は金融機関にとっても顧客に提示する際にあまり競争関係になるものではないとも思うのでやりやすいと思うんですよね。これだけ値上げが鮮明な中で、一定の余地があるように感じます。今後もう少し頭を整理して働きかけていってみたいと思います。

3.さいごに

 重要なKPIである新規保証実行金額も増え、保証債務残高も増加しています。その内訳も特段リスク度合いが変わるものではなく、従来の延長線上で適正な保証料を設定して積み上げられていることがわかりました。引当金の計上ルールや前年までの環境との差異から、その計上方法も変わり費用先行のようにみえていますが、同社のビジネスモデルそのものを変えるものでもなく、特段ネガティブな状況には感じられません。
 しかしながら、様々な提携等を進める中では成長という側面ではより保証債務を積み上げていく活動はオーガニック、ノンオーガニック共に期待をしたい所ではあります。ただ、同社にあまり過度な成長を期待しているわけでもなく、むしろ着実な積み上げを高配当を期待したい所です。
 様々な変化の中で、あまり短期的な動向に動じることなく、同社らしい安全性と顧客に寄り添った取り組みや回答を示して頂き、同社らしい姿勢だなと改めて感じました。
 頑張れ、全国保証!

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