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全国保証(東1/7164) 株主総会レポート 2021/6/18

 東証1部上場の全国保証の株主総会に出席してきました。株主総会の様子について、当記事にてご紹介したいと思います。なお、当レポートは私の心証に基づき脚色されており、意図せず誤認している可能性もありますのでご容赦頂ければと思います。

1.参考記事 

 参考として昨年の株主総会のレポート記事を再掲しておきます。なお、同社については、決算毎の精査記事はUPしていません。

2.基礎情報

 それでは総会の全体の流れをまずは整理しておきます。時間は手元での時間ですので、誤差があると思います。

  10:00 開会 (石川社長)
     ~議決権数の報告や監査報告は割愛~ ※
     ※社長が審議に足る旨と監査適正の旨一言言及して終了
  10:04 報告事項(動画ナレーション)
  10:16 対処すべき課題 (石川社長)
  10:18 議案上程 (石川社長)
  10:28 質疑応答
  11:02 採決
  11:05 閉会

 今年もお土産はなく一昨年に比べると閑散としていました。KITTEの4階のホールにみっちりとしきつめられた席も結構埋まっていましたが、今年は同会場でソーシャルディスタンスを確保して用意された150席あまりの席もほぼ空席です。背広族の方が大半で、全体でも20人程度だったかと思います。個人投資家と思しき方はは4、5人だったかと思います。そろそろ会場変更してもいいかもしれませんね(笑)。

 しかし仮にもJPX400にも採用されている銘柄で私の保有する銘柄の中では大きな会社ですが、その株主総会がここまで閑散としているのはコロナ禍とはいえちょっと寂しい気もしますね。まぁ、同社のビジネスモデル上、あまり質問すべきこともないというところなのかもしれませんけどね。

3.議事進行

 開会にあたり事務局の方が、この後役員が入場するが、会場の都合により上手より入る事への恐縮の念が語られます。これは同社の総会ではもうおなじみのものです。金融機関を相手に仕事をしている会社なのだな、と感じさせられます。

 石川社長の冒頭の挨拶も、事業上、皆さまには大変お世話になっています、の下りです。いや、この会場にいるの、機関投資家界隈の背広族の方とほんの数人の個人投資家だけですけどね(笑)。まぁいつものことですがとても誠実な語り口で開会されます。

 報告事項と計算書類の説明はナレーションですが、まぁコンパクトによく纏まっているかと思います。決算説明資料や動画を予め確認していると、特段目新しいことはありません。
 対処すべき課題については、石川社長自らが説明しますが、昨年同様、超コンパクトです。中計の3つの基本方針である「事業規模拡大」、「事業領域拡大」、「企業価値向上」というスローガンが書かれたスライドでこれらを頑張りますって一言ですね(笑)。まぁコロナ禍で短縮版での運営という断りがあるわけですが、昨年も感じたようにもう少し丁寧な説明があってもいいかなと思いました。

 議案の上程では2号議案の報酬改定と3号議案の業績連動型株式報酬制度については、丁寧に説明がなされていました。一応議案ですからね。報酬改定は月額上限の取り決めを12倍して年額上限とするものの年間では実質同様であることと、業績連動型を導入することでより株主と同じ目線で・・・というくだりですね。特に丁寧に説明頂く必要も個人的にはないのですが、まぁいいでしょう。

 まぁこんな感じであっといういう間に質疑の時間となります。

4.質疑応答

 昨年は1人1問でお願いしたいという協力要請がありましたが、今年はその指示はありませんでした。
 以下、質疑の様子をメモとして記載していきますが、あくまで私の主観に基づき脚色しております。意図せず誤認している可能性もありますのでご留意ください。

※ ★印は私が質問した内容です。

★Q 既存住宅ローン市場におけるM&Aの状況について
 既存住宅ローン市場において、子会社化や事業承継等で他行様の保証債務を引き受ける活動が活発となっており今後の残高積み上げに期待している。このような動きは金融機関側から当社へお声がけがあって案件が生まれているものと認識しているが、従来の債務保証のアウトソースという事ではなく、保証会社(事業)全体を譲渡するような動きとなっているのはどういう背景によるものなのか。金融機関側で体制のスリム化等を起因とするものであれば当社にとっては選別がよりしやすいという環境なのか。
 また、昨年の総会でM&Aに精通されているという事で今戸さん(※正式の漢字が異なりますがご容赦下さい)を招聘されましたが、一連のM&Aの意思決定においてどのような助言があったのか教えて欲しい。また今戸さん自身、新たに当社の経営に参画されM&Aに取り組み当社の経営における成果や課題についての認識をコメント頂きたい。
A
 金融機関側様の事情も様々であるが、経営の合理化等のご判断があってこのような情勢が高まっているものと認識している。現状では明示的に当社から金融機関様側へ営業をするようなことはしていないが、間接的に実例を用いて金融機関様側にそのような動きがある事をお示しし、機会が高まっている事は事実である。但し、非常にナイーブな事でもあるし、経営を引き継ぐということは大変な重責でもあるので、慎重を期して今後も判断をしていくことになろうかと思う。
 また今戸氏については、元々当社経営層にはM&Aに明るい人材が必ずしも満足にいなかったこともあり、金額面の査定や各種リスクの評価、人材リソースなど様々な面で有益なアドバイスを頂いている。(石川社長)
 私たち社外取締役にとって大切なことは、経営メンバーが意思決定するにあたり、客観的な材料を示し、正しくリスクを認識し、その意思決定をサポートする立場で力添えするということである。M&Aには事業価値の拡大の前提として取得価額の査定や法務、人事などあらゆる面からリスク項目を検討する必要があるが、当社はこのリスクテイクの判断を真摯に受け止め慎重さを期して万全の検討を重ねている所が素晴らしいと思っている。
 一方で今後の課題は、今後もM&Aの機会が増えてくるだろう中で、グループ傘下におさめた会社(事業)を買い物をしたままにすることなく、事業の拡大や事業シナジーを発揮するための継続的な取り組みを行っていく必要があるということである。慎重さの中で新規を積み上げていく事は一定の成果があるため、今後はそれぞれの歩みを絶やさず膨らませていくという両輪での経営が求められていくことになろうかと思う(今戸氏)
■考察
 今後もいくつかの銀行などで成果をみたように既存ローンをM&Aなどで積み上げていく流れは続いていきそうな気がしました。そしてそれを同社らしいといえばそうなのですが、ゆっくりと着地にリスク査定した上で進めていくわけですね。体制的にもとても堅い会社ですからね。営業もナイーブであるからという事で積極的に営業をかけていないようですが、間接的にうまく誘導してそれぞれの金融機関の状況を慮っている様子が伝わってきました。とても良いと思います。
 また、今戸氏の答弁は昨年新任で着任された際には質問をぶつけられなかったため、敢えてご指名させて頂きました。法務にも強くて企業買収などの案件も多く手掛けてきているので、今後増えてくるだろう機会を適切に助言頂けそうですね。課題の所で、今後仲間に加わった会社をきちんと育てていくという所にも課題認識をもたれているのはよいですね。当たり前のことなんですけどね。

Q 3号議案の中計達成度に応じたポイント付与の設計について
 業績連動を中計目標の達成度として評価するとあるが、具体的にどのような設計なのか。保証債務残高の積み上がりによってどのようなインセンティブが働くというものなのか。詳細を教えて欲しい。
A
 中計目標には様々な指標を置いているが、もっとも重要なKPIは保証債務残高であると考えている。なぜかというと、結局この残高が残期間に売上として計上されてくるものであり、当社収益の根幹をなす部分であるからである。従って、保証債務残高の目標達成度に応じた設計となっている。なお、目標を120%と超過した場合においてもポイント付与は100%が上限である。一方未達の場合にも予めその未達度の応じてポイントの割引設計もなされている。詳細の数値は手元にないため、ご容赦頂きたい。
■考察
 まぁ確かに保証債務残高のみで測るというのは思い切った感じもしますが、ツッコミが入るとは思いませんでした。一般的な業績連動型の付与だと思いますが、質問者さんは一度答弁があったのちに追加で、未達の場合の詳細も教えて欲しいとご発言されていました。結果、手元にないということで回答はなされませんでしたが、なし崩し的になされないかという趣旨の質問だったのかもしれませんね。まぁこの点は粛々と評価してポイント付与を決められるでしょうし、実際にはある程度見えた数値なのではないかなと思います(笑)。

Q 保証債務残高の積み上げについて
 3号議案で保証債務残高を条件とした場合、満額のポイント付与がなされるように、無理に保証債務残高を積み上げようというバイアスがかかり信用リスクが悪化するというようなことにはならないのか。
A
 ご懸念そのものは理解するが、私たち経営層がポイント付与欲しさに、ちょっと無理をして受託しようかといった流れはありえない。心配ご無用。
■考察
 まぁこればかりはわからないことですが、同社の社風からみて、業績連動型の条件をクリアするために、ちょっとアクセルふかして積み上げようか、というような動きはまずないと思っています。ただ、まぁ普通の感覚としてそういう懸念もあるよという事を伝えられたという意味ではいい質問だったように思います。

Q 海外展開の予定について
 海外展開の予定については、検討中ということだったが、その後どういう動きになっているのか。当社の提携先である金融機関様は自ら海外に出ていく中で、海外での住宅ローン事情を一緒に学び、当社が提供していくという事は考えられないのか。
A
 海外展開については、提携先の金融機関様でも進出の動きが出ていた事もあり、当社としても海外での住宅ローン事情について色々情報集素し調査を行ってきた矢先に、コロナ禍となってしまった。今でも現地の視察やらでなかなか渡航すらままならない中で今は止まっているが、いずれコロナ禍の収束を待ち改めて機会を探っていきたい。
■考察
 まぁ海外展開は厳しいのではないかと思っています。住宅というものへの考え方が国よってもまちまちですし、住宅ローンというものも日本とは大きく違うのではないでしょうか。経営リソースには限りがあるので、手出し無用だと思っているんですが、何か勝算があるんですかね…。

★Q あけぼの債権回収の債権管理業務の展望について
 あけぼの債権回収社では、全国保証だけでなく、銀行からの債権を受託する動きも出てきているようで期待をしている。この活動は収益の多様化を見据えた一貫として今期も拡大を展望されているが、長期的にみて、当社の収益の柱になるというものなのか、あくまで+αの要素であるということなのか、認識を教えて頂きたい。また、数あるサービサーの中であけぼの債権回収社が選ばれる優位性はどの部分にあるのか。
 加えて、サービサー業務では独特な人材が求められると思うが、人材獲得・育成の取り組み状況や債権受託に伴う信用リスクについてはどうか。あけぼの債権回収社の社長である山口さんからもコメントを頂きたい。
A
 金融機関の経営の合理化が検討される中で、コロナ禍となったことで債権管理業への委託ニーズが高まっている状況にある。もちろん、当社としては+αに留まることなく、柱になれるように事業育成に取り組んでいる。但し、足元では、人材面の体制がまだ過渡期ということもあり、受託できる量にも限りがあるため、まだ時間を要するものではある。
 優位性については、やはり全国保証と提携頂いている金融機関さんがこれだけの数網羅されていること、そしてその提携先である全国保証のグループであるということが債権管理業を委託する際に安心となっていると考えている。馴染みのない会社よりは信頼があるということが大きいと考えている。(石川社長)
 優位性の部分は社長の話した通り、提携先である全国保証が築いてきた信頼というものがあると思う。人材面では全国保証の社員でも回収や債券管理の業務経験がある人材がいるため、そういう方を核にしながら育成と拡充を図っていくということ。それから同業界の経験者採用も積極的に進めていき、今体制を整えている所である。今後受託機会も拡大してくると思われるため、しっかり準備していきたい。信用リスクの高まりについては、なにも債権を当社が引き受ける形態だけでなくても、金融機関様の回収業務のサポートという事での収益モデルも可能性があると考えておりそのような面でも進めているところである。(山口専務)
■考察
 社長以外の方にも色々語って欲しかったので、山口さん用の質問でもありました。しっかり答弁して頂けてよかったです。債権管理は辛そうなので、全国保証の社員が配置展開とかなると色々大変だーとかなってそうだなと思いました(笑)。提携先であるという馴染みという優位性より、従来の業務の中で代位弁済後の対応をこれまでとってきたという実績というのもあるのではないかなと思いました。そして債権の受託をするのではなく、回収業務のサポート(つまりSES委託に近いイメージですよね)というのはリスクも取らずにいられるのでいいですね。
 人材面では体制を構築中ということでしたので、来年以降の結果を見守っていきたいと思います。決算説明動画でも今後動きがありそうな言及がなされていたので、色々話題が出てくるのではないかと思います。

5.さいごに

 特に目新しいこともないのですが、毎年誠実な株主総会の運営で参加をしていて気持ちがいいですね。お土産を廃止したからなのか、そもそも参加人数が少ないからなのか、物騒な質問がなくなりましたね。とてもいい事だと思います。お土産や優待へのケチとかの質問はげすいですからね(笑)。

 保証債務残高の積み上がりをメインにみつつ、様々な金融機関や不動産会社等との提携にも目を向けながら、長く緩やかに成長を続けてくれることを期待したいと思います。

 頑張れ、全国保証!

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