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ウェルビー(東1/6556) 2022/3 Q1決算精査

(2021/8/17追記)

 ウェルビーの2022年3月期Q1決算が開示されました。当記事において決算の内容を精査したいと思います。あくまで個人的見解に基づき記載しておりますので、誤認等もあるかと思います。お気づきの点などございましたら、ぜひツイッターからお気軽にご指摘を頂ければ幸いです。

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 参考記事として前回の決算精査記事と以前に読んだ有報記事を再掲しておきます。

 それでは決算の中身をみていきたいと思います。なお、同社からの決算説明資料が充実しているため、手書きのエクセルは用いず、決算説明資料に沿ってみていきます。

1.サマリ

 2桁の増収に対して営業利益は僅かな増益ということで、一応増収増益ではありますが、表紙のインパクトとしてはさほどない印象でしょうか。

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 同社の事業構造上、急に利益が急伸するものではなく、施設の充実等に応じて労働集約型に沿って緩やかに利益も増えていくことになります。加えて、拠点新設を続けている事もあり、その立ち上げコストも踏まえ、元々特に今期上期は辛うじて増益という+0.8%の営業利益がガイダンスとなっていました。従いまして特に利益も含めて計画に対して弱いということはなく、むしろ売上が2桁増となっており上期ガイダンスが+9.6%だった事と、期の進行に沿って拠点増が寄与する事を考慮するとQ1でこの売上伸長ですから、好調とみてもよいと思われます。

 また、先日開示のあったヘルスケアの取り組みのうち、5-ALA原体の販売に係る事業を子会社で扱うとのことでしたが、子会社を連結化し、連結業績に加味することにしたようです。従って、このQ1のタイミングで業績予想の修正を行っています。

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 今回連結化した背景としては、このヘルスケア事業が拡大していく目論見を加味したようで、これはまだ不確実性も多い中ではありますが、会社側の本気の姿勢は感じます。少なくても以前のダチョウよりは余程真面目にやるということでしょう(笑)。
 この馴染みのないなんちゃら原体については、同社の取り組む障害者支援事業にも効果がある(かもしれない!?)事を期待しての事業化意欲ですから、こういった側面でもやっていくんだ、へぇ、という軽い印象でしかないのですが、この辺りの動向は今後この新たな子会社の中で様々な方策を検討していくというメッセージでしょうから、怪しいものでない事を祈りつつ、見守りたいと思います。

 この連結化を踏まえての業績予想の修正が出ています。

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 上期の修正幅はごく僅かですが、下期ではその幅は拡大しています。下期に向けて立ち上がってくることを想定しているものと思います。なお、以下のスライドが今回の決算の一番気になったところですが、ここを見ると既存事業での修正はなしということですね。

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 一番気になるところってところですが、やはり思わせぶりな「複数案件が進行中」って所ですよね。業績予想の修正のスライドでこのコメントをどう受け止めればいいのかわかりませんが、MAを含めて色々な検討がなされている動きがあるのは以前からでありますから、いいご縁に恵まれるといいですね。
 決算のサマリとしては増収増益できており、上期業績予想からみると若干売上は好調さが滲みますが、利益面含めてみると、概ね想定通りという所だと思います。既存事業の療育と就労支援共に利用者も順調に増え、単価も上がっているし、新規拠点新設も進んでおり、堅調かと思います。
 そんな中で、ヘルスケアへの取り組みが具現化してきて連結子会社化、そしてしくみデザインへの出資決定等、新しい動きも模索しながらの活動ということでよいのではないでしょうか。
 株価は相変わらず軟調な推移を続けていますが、会社の状況としてはそんなにおかしい事は起こっていないし、むしろ新規の取り組み含め私として安心できる内容でした。

2.財務情報

 それでは決算の中身を、会社から開示されている決算説明資料をみていくことにします。開示資料がとても充実していますからね。

 まず既存事業の就労移行支援と療育に関してそれぞれみていきます。前段として開設数だけ先にみておきます。

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 各3拠点の出店となりました。就労移行支援は通期で10拠点を予定しており、既に7拠点は決定しています。また療育については既に今期予定4拠点はすべて出店済となります。素直にみると療育はこのペースをみてしまうともう少し出店余地があるのではと思います。この辺りは物件もさることながら、人材面が肝でしょうか。

 この出店数も踏まえながら、各事業の概況をみていきます。まずは、就労移行支援事業からです。

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 売上は10.5%の増収ということで、利用者数、単価共に増加となっています。基本報酬が4月から変更となっていますが、順調に定着率等の加算を取得できていますね。

 次に療育で事業です。

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 こちらも利用者数の増加に加え、アイリスの寄与も増えているようです。一方で、既存放課後デイの伸びが小さい点は報酬改定への対応状況も踏まえてどういう状況かは確認しておきたい所です。ただ、いずれにしても増収率は16.7%と堅調な伸びを示しているので全体観としては好調かと思います。

 ではコスト面として原価と販管費の状況も見ていきたいと思います。

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 まず原価要素ですが、原価は全体としてはQoQで13百万円の減少で、YoYでは2億円の増加となっています。ボトムラインを見る上で原価は小さい方がいいというのが一般的な見立てとなるため、YoYでこれだけ原価が増え、粗利率も4%強下がっているのでけしからんとなるかもしれません。
 ただ、同社の場合、労働集約型ビジネスです。そしてこのQ1で新規出店を強力に進めている中で、むしろ人材が集まり人件費が増えているのはこの先の規模拡大を見据えた時には不可避な道だとも思っています。しかも、同社はまだまだ処遇も低い状況にある点も課題だと認識しています。ですから、原価の約7割を占める人件費がこれだけ増えているのは決してネガティブなものではないかなという印象です。この1Qの段階で細かくはやりませんが、1人当たり売上高や拠点単価等もう少しレシオを元に確認をした方がいいかもしれません。この辺りは期末に定点でモニタリングが必要かもしれませんね。
 消耗品費の動向等も含めてきちんとコメントが入ってるので、ありがたいですよね。

 次に販管費についてもみていきます。

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 大きな変動はないようですが、広告宣伝費については減少しています。この辺りは季節要因もあると思いますが、この広告宣伝費がもう少し抑制できるといいと思います。まぁ口コミ等で集客が理想なのですが、なかなか現実的には難しいのかもしれませんけどね。

 以上の結果で営業利益の階段を見ると以下のようになります。

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 人件費は前述の通り体制増強に伴い人件費が増え、拠点出店が進んだことで、地代家賃も増えるということで、これが営業利益を減少させることとなっています。人件費や地代家賃等は集客前の段階から先行して支出しますし、一定の募集期間を経るまでは損益分岐を超えないでしょうから、このような中でも増益基調にあるのはいいのではないでしょうか。

 次にBSをみておきます。

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 変化があったのは資産で商品という勘定科目が今回新たに出現しています。これは今回連結化した子会社が今後5-ALAの関連商品を扱うための在庫かと思います。現金が15億減り、商品が12億増えています。そして注目はこの6月末基準ではこの他大きな変化はありませんが、後発事項で遂に借入実行をしたようです。

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  そもそも既存事業で見ればキャッシュフローは潤沢ですが、このタイミングで20億ということですから、やはりヘルスケア分野や新規M&Aなどにも備えているものと思います。また私が気になったのは、メガバンク2行なんですよね。社長の出身のぶぎんを含めた地銀は検討されなかったのかなという点です。地銀はやはり地域の様々な情報を持っているわけですから、こういう所で地銀との取引があるといいと思うんですけどね。
 財務面では自己資本比率が90%程度あるわけなので、この借入実行したとしても、全く問題ないレベルかと思います。イメージとしては自己資本比率が90%から70%程度に下がる感じでしょうかね。

3.その他

 トピックスとしては、しくみデザインへの出資ですかね。

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 文字を使わず視覚的にプログラミングが出来るアプリということで、主に幼児の療育の分野等に適用できそうですね。いや、そもそも療育児に閉じたものではないでしょうから、会社としてもいい会社だなと思います。界隈はスクラッチが主流ですが、それよりより簡易に、視覚的に使えるという所がいいところのようですね。

 株価水準の件ですが、LITALICOとの比較でも見られやすいわけですが、全く景色の違う評価がなされています。公費メインの福祉なのか、公費外のサービスなのかとか、色々違っているわけですが、それにしてもここまで明暗が分かれるものなんですね。そしてウェルビー(6556)が決して割安水準ではないということです。ウェルビーも時価総額370億あります。だからプライムも選択できる見通しですが。
 資産価値としてざっくり25億、純利19億で割引率10%だと事業価値もざっくり190億なので、超概算で210億、安全域を考慮しても200億以下辺りが妥当な水準かなとなります。というわけで株価が下がっているとはいえ、では多くの方に魅力的に映るのかというとそういうわけでもない中で、ここまで同業他社と評価を分けているのは、どういうものなのかなと考えてしまいますね。

4.さいごに

 はい、以上決算説明資料に沿った手抜きな心証を連ねました。株価は軟調ではありますが、決算の状況は特段驚きもなく順調ということです。一方でヘルスケア分野などは一抹の不安もありつつも、ダチョウよりはまだ筋のよさそうな案件が今後出てくることを期待したいと思いますし、既存事業の報酬改定の対応等も含めて下期への尻上を期待したいと思います。

 頑張れ、ウェルビー!

5.(2021/8/17追記)IR照会

 IR照会の結果をメモを残しておきます。なお、私の判断で表現を丸めたり、主観を入れていますので、正確でない可能性を含んでいますのでご了承下さい。

・報酬改定への対応はこのQ1で対応を進めている。期初の計画通り、理学療法士等の有資格者の拡充配置等を通して単価向上に向けて取り組み中である。単価増を見込める児童発達支援の稼働を増やしていく点と放課後デイの拡充とのバランスを需要と収益性を鑑みながら対応していく。

・療育事業の出店は既に通期の計画を達成しているが、今後も報酬改定を通した環境整備の状況や人材、物件、需要など総合的に判断して出店余地を検討していく。

・リスティング広告はQoQで減少はしているが、今後も季節性を踏まえて広告宣伝活動は継続して実施していく。

・借入金は金利や借入条件等を総合的に鑑みて、地銀等ではなくメガ2行からの融資を決定した。

・今回5-ALA原体販売分のアドオンを業績予想へ反映。当初は販売先もお得意先中心となり少数で確度も比較的高いということもあり販促活動が低減されることから高い利益率を見込める。今後は、市場に対してどういう販促活動が有効なのかを総合的に調査、判断をしながら販管計画を練っていくことになる(一定の販促をかけていくことになるので、当然利益率は相対的に今後は下がる)。

・5-ALA原体の在庫は、市場価値に応じて評価損が発生するリスクをコントロースしながら対応していくことになる。但し、原体は消費期限があるものではないため、販路拡大と共に在庫を消化していく活動となる。

・訴訟関連はコメントできず。密にコミュニケーションを取りながら協業を深めていく。

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