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霊能者が語る 妻とのあの世日記 第163回 「亡くなった猫と妻と」

「たぬたぬが死んだがね」
「仕方ないわね。頑張った方よ、お疲れ様」
「しかし、たぬたぬは手がかかるというか保護する時から手がかかってた感じするよね。あれのせいでログハウス建てたようなもんだし」
「あれは絵を描いたりするアトリエよ」
「アトリエらしいことしてないやん」
「猫たちがいるからよ」
「ほぼ猫小屋、我が子の勉強と絵を描く部屋としては活躍してたけど、その子も今は外でてるし」
「いいじゃない。もうローン終わってるんだし」
「ローンというか貸付というか、5年払いで200万かかってるからね。冷暖房費もかかるし医療費もかかるし、色々金はかかるよね」
「でも放っておけないでしょ」
「別に保護したことに後悔とかは何もないよ。ただ、冷静に見る人からすると猫如きに、と思う人はいるやろなと」
「あなたはそう思う?」
「思わないけど、一歩引いてみると思うこともある」
「面倒ね、素直に思わないでいいじゃない」
「どっちの視点も持っておかないといかんがね」
「とか言いながら、たぬたぬを病院に連れていったりはマメにしてるじゃないの。その一歩引いた視点とか持ってるカッコつけなくてもいいじゃないの」
「猫が、目の前でまだ生きる気力がある目をしてるなら、人間は手を貸すべきだ、と思ってるから。猫に限らす人間に対してもだけどね」
「私の時は?」
「目が死んどったけど、僕が生かしたいから色々介護にも力が入った床屋がね」
「目が死んでた?」
「生きる気力のない目をしてたがね。なんとか気力は出して欲しかったが」
「そう言われても無理なものは無理よ」
「猫だって気力のある目をしてると、なんか回復するもんでね。たぬたぬも何度も復活してきてたが」
「それにしても、お医者さんはすごいわね。原因不明でも予想で大体当ててきて薬が効くのが」
「いいお医者さんだが」
「私がそこ見つけてきたんだし」
「その話は美容室の人から聞いたんやろ」
「それで今も猫たちが助かってるならいいじゃない」
「しばらくはみんな元気でいてほしいけどね。
今年は1月からムギが弱ってきて2月に亡くなって、ついでベルがいっとき死地を彷徨ってたけど、なんか回復して。
その後にたぬたぬのほっぺたがもげたりと、なんかあのたぬたぬ部屋の猫たちが連続して不幸が訪れてたけどね」
「キビ男は?」
「あれは無駄に元気」
「みんな病気持ちだし仕方ないわ。今のとこみんな元気そうだから来年は大丈夫じゃないの?」
「そうだといいけどねぇ。で、たぬたぬはそっちにいるんかね?」
「来てるわよ。あの辺のバラの下で寝てるし」
「このバラ園に常駐するのかね?」
「いつもはいないわ。どっかいって、ふらっときて、またどっかいく。
そっちとこっちを行き来してるんだと思うわよ」
「妻と僕を飼い主と思ってるのかね?」
「飼い主とは思ってないでしょうけど、居心地のいい土地に住む餌をくれる人、とは思ってるみたいだし」
「餌をくれる人か」
「猫から見たら人間なんてそんなものでしょ」


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