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一生大事にしたい「鬱の本」

点滅社さんから「鬱の本」が届きました。心待ちにしていました。


本としての作りへの感動

届いた~わ~い!と、荷物をあけたときに真っ先に感じたことは

「きれいだな」。

きれい。

B6判変形というサイズ感はとても手に持ちやすい。手に持った時のおさまりが良いのだ。それにハードカバーなので、背が丸くなってしまうとか、余計な心配ごとをせずに読めるし、このちょっとかっちりした感じから、「ずっと大切にしてね」というメッセージを感じる。大事にします。

表紙のちょっとざらっとした感じも、落ち着く。

きっと一気に通読するんじゃなくて、持ち歩いたり、本棚にしまったり、また持ち出したりしながら、時間をかけて読んでいくことが想定それているんじゃないかなと思った。

そして、本の中を少し読んでみると、そうしたくなる本だった。

心地よい温度

この本はとても心地が良い。

鬱という言葉でゆるくつながっている。だけど、けして押しつけがましくない。自分はこうだよ、ということをただ伝えてくれる。何か「こうしろ」とか、「変化しろ」とか言わない。隣同士知らない人が並んでそれぞれ本を読んでいるような心地のよさを感じる。

私はウツになったとき、すごく落ち込んで「メンタル」関係の本を探し狂ったり、逆にハイになって、啓蒙してくるような本を読んだりしていた。
だけど、エネルギーの強い文章だと、その火の暑さ、明るさで余計に自分に落ちる影が濃くなるような感覚になることがある。簡単に言うと、余計に落ち込むのだ。

だけど、「鬱の本」は励ますでも、叱咤激励するでもない。「あったかい」のだけど、ある意味淡々としていて、「毒にも薬にもならない」というクスリだと感じた。


 私的「鬱の本」  原田マハ「さいはての彼女」

最後に私的「鬱の本」を一冊ご紹介。

「鬱の本」にも紹介があった原田マハの「生きるぼくら」は読んだつもりだったけど、よくよく考えたら読んだのはこちらだった。

鬱になって休職になったとき、いままで小説もろくに読み終えたことがなかったのに(そもそも半分も読めずに3分の1くらいで挫折する)、読み終えられて、そのことに感動した本。一章が短く、章の区切りが来ると、「私読めてるじゃん」という気持ちになれた。

そして、そもそもだけど話が面白い。
一話目は社長をしていた女性が旅に出て、そこでの出会いが描かれる。最初は社長?成功した人じゃん?と、今の自分の状況と比較してしまい、冷めた目で見ていた。

しかし、物語が彼女に与える「非日常」は、私にも開放感を与えてくれ、まさに旅に出たときのような、普段の生活での嫌なことを読んでいるときだけはまったく忘れ去っていたのである。

本を読むことは今とは違う場所に連れて行ってくれること。
それを実感した本です。

そして「鬱の本」もまた、私的「鬱の本」になるでしょう。
なんかうまくいかないとき、もう人生を投げ出したくなるとき、そんなときにこの本が目に入るのだと思います。






ちなみに森野花菜さんの最後の文が抜けてしまっているとのことです。メモ紙にこの二行を書いて挟んだらよりこの文が体に沁みました。


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