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効かない睡眠薬

睡眠薬にはいろいろあると思う。導入剤や、中途覚醒予防など。

夜の静寂が私を包み込む。月の光が窓辺を柔らかく照らし、時計の針が静かに時を刻む音だけが響く。枕元には、幾度となく手を伸ばした睡眠薬のシートが置かれている。小さな米粒ほどの白い錠剤に、私の眠りへの願いを託したはずだった。

幾度も試みたが、その効果は薄れ、ただの虚しい儀式となってしまった。眠りを誘うはずの薬が、ただの形だけの存在となった瞬間、私は深い孤独感に襲われた。夜の闇はますます深まり、私の心の中の静けさもまた、深い深い暗闇に覆われた。

眠りに就くことは、心の安らぎを取り戻すこと。夢の中でだけ訪れる自由と解放。しかし、効かない睡眠薬は私に、その希望を奪ってしまった。まるで心の奥底に封じ込められた涙が、静かに流れ出すのを止められないかのように、私の意識は絶え間ない不安と焦燥に揺さぶられる。

記憶の片隅には、眠りの中で見たかつての夢の断片が散らばっている。あの日々の穏やかな夜、心地よい疲れとともに眠りに落ちる幸福感。それはもう手の届かない過去のものとなり、今はただ、目覚めていることの苦しみだけが現実となった。

それでも、夜が明けるのを待つしかない。新しい朝が、私に小さな希望を与えてくれるかもしれない。効かない睡眠薬に頼るのではなく、自分自身の力で眠りを見つける日が来ることを信じて。夜が明け、太陽の光が再び私を包み込むその瞬間を夢見て、私は今日もまた、眠れぬ夜を過ごす。

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