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カナリア諸島にて

子供の頃、車の中でよく親が聞いていた大瀧詠一のこの曲。

なんとも言えないトロピカルを感じさせる歌詞。そんな場所に30歳で旅行に行きました・・・

それはスペイン領で大西洋に浮かぶカナリア諸島。

新卒で入社した会社で思うように仕事ができず、周りに迷惑をかける形で退職をしてしまっていた時。次の仕事こそ決まっていたものの、自分の生き方や仕事の能力など色んな事に悩んでいました。

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カナリア諸島に行った理由は二つ。

子供の頃、車で何度も聞かされていた「カナリア諸島にて」の歌詞のフレーズに憧れていたこと。

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薄く切ったオレンジをアイスティーに浮かべて
海に向いたテラスでペンだけ滑らす
夏の影が砂浜を急ぎ足に横切ると
生きる事も爽やかに視えてくるから不思議だ
カナリア・アイランド
カナリア・アイランド
風も動かない

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もう一つは気になるサッカー選手がカナリア諸島のチームに所属していたこと

その選手の名前は福田健二。

筆者がこよなく愛する名古屋グランパスに所属していて、筆者と同じ歳の選手。

難しい生い立ちをもち、もがき苦しみながら選手としてキャリアを切り開いていく彼をずっと追いかけていました。


幼少の頃からの憧れの場所に、追いかけいるサッカー選手が挑戦している。再就職まで一ヶ月ほどの時間の猶予がある。行かない理由がひとつもなかったです。


2週間のスペイン一人旅の半分をカナリア諸島の滞在にあてました。

歌詞のイメージからひと気のない静かな街を想像していたのですが、実際はヨーロッパでは結構有名なリゾート地らしく騒がしくはないもの、活気のある場所でした。海沿いのこじんまりとしたホテルに部屋をとって、街をぶらぶらしたり、ビーチを散策してのんびり過ごしていました。

ホテルで朝食を取っていた時に、肉付きのいい同年代くらいの男性が一人で食事を取っていて、お互いに一人だったので会話をするようになりました。その彼は中国人でX線を使った船舶用セキュリティ機器のメンテナンスエンジニアでした。カナリア諸島は漁業用の大型港もあり、新製品の納入に伴い半年ほど駐在をしているとのこと。仕事もそんなに忙しくないとのことで、その後ちょくちょく彼と行動を共にする事になりました。

ビーチをぶらぶらしたり、Barでお酒を飲んだり、彼の行きつけの中華料理屋にも連れて行ってもらいました。人懐っこいけど、垢抜けない見た目で、中国の田舎の食品工場にいそうな雰囲気だったので、僕は彼を「工場長」と呼んでいました。

工場長と二人でビーチで白人をナンパしたり、現地の子供達とサッカーをしたり、彼のおかげでカナリア諸島の滞在では孤独感を感じることなく楽しく過ごせました。

そして、旅のもう一つの目的だった福田選手には直接会うことができました。

当時皆が使っていたMixiを使って、旅行前から情報収集をして、カナリア諸島に住んでいる日本人の人とコンタクトを取っていると、福田選手の奥さんと友達ということでチャンスがあれば会えるかもとの事でした。

試合のある日に合わせてスケジュール組んでいたので、工場長を連れて試合観戦に行ったのですが、残念なことに福田選手は怪我をしてしまっていて出場することができませんでした。ただMixiで知り合った方のはからいで、なんと福田選手の奥さんと隣の席で試合を観戦しました。とても気さくな奥さんで「せっかく日本から来てもらったのにすいません、良かったら健二に挨拶させます。」という事で試合の後に福田選手に直接会うことができました。福田選手もとても良い方で、なんでそこにいるのか良くわかってない工場長にも愛想良く接してくれました。

これからも頑張ってください!と激励の言葉を伝えて、彼が奥さんと子供二人を連れてスタジアムを去っていく姿を見て、家族を支える一人の男性としてなんとも言えない哀愁というか力強さを感じる背中を今でも鮮明に覚えています。


30歳で家族を支えながら、日本から遠く離れた場所で奮闘している福田選手に会うことができて、自分も「仕事が上手くいかないくらいでクヨクヨしてる場合じゃない」と身体に漲るものがありました。

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子供の頃の記憶にあった曲と気になっていたサッカー選手。

いわゆる自分探しだった旅は、工場長との楽しい思い出と福田選手の背中姿と、一生忘れることがないであろう思い出ができた素敵な旅になりました。



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